(98)久しぶり!蓮
その日は朝弁当を作れなかったので、一夜は昼休みに昼飯を買いに行った。
そこで久しぶりに懐かしい顔を見つけて声をかける。
「蓮!」
「ん?あっれー、一夜!?」
「すげー久しぶりだな…元気だったか?」
「ああ、そっちも?」
蓮は近づいてみるとあれから少し背が伸びたようだ。
「一夜、俺身長が3センチ伸びたんだぜ。一夜は…そのままだな」
「悪かったな!」
今は蓮の方が5㎝程高い。出会って最初にからかわれるとは。
「お前んちはこないだの空爆無事だったのか?」
「ああ、家は駅裏をちょっと行った所で、全然無事」
「そうか、良かった」
「それより遊びに来てくれって言ったのに今まで1度も来なかっただろ!俺もう待ちくたびれて忘れられてると思ってたんだからな」
「あー、まあ色々あったし、しばらくこの街にいなかったりしたし」
「そうなのか」
「お前こそ1回も来なかったじゃん」
「いや、1回行ったんだけど留守で庭とかも人気が無かったからさ…もういないと思ってそれ以来行かなかっただけ」
「そっか…ごめんな」
気になっていた事を聞いてみる。
「そういえばお前母さんとはあれからどうだ?」
「あの後ちゃんと仲直り…ていうか、やっぱりただ突っ走ってもだめじゃんて思って、俺地に足着けなきゃってさ、折り合いつける努力を俺なりにした訳よ。
しばらくは大変だったけど今は上手くまとまってるよ。宿にも絵、飾ってるし」
「そっか、やったじゃん」
昼休みなので戻らないとならなかったので蓮は駅から家までの道を説明すると、後で必ず来いよと言って別れた。
「…で、今日蓮に偶然会ってさ…」
誘われたことを帰って話す。
「えー!?久しぶり、懐かしい~!勿論あたしも行くわよ?」
「私も行きたいなぁ」
「じゃあ日曜に行ってみようぜ。垂華は?」
「ごめんパス。俺も行きたいんだけどやらなきゃならない事があるから」
「そうなの?残念…私たちが出来ることがあったら言ってね」
「うん、でも大丈夫。大変な事じゃないから」
かくして日曜日。3人でお茶菓子を手土産に宿屋VERYを訪ねた。
「こんにちは~…」
フロントには誰もいなかった。
「ねえこれ蓮君が描いたのかしら」
「そうなのかな?でも雰囲気が似てるよね」
スケッチブックらしき水彩画が質素な額に入れられて壁に掛けられている。ここだけで3枚飾ってあった。
多摩が呼び鈴を鳴らすと「はーい」と声がして母親らしき人が出てきた。
「あのー、私たち蓮君に会いに来たんですけど」
「あら~お友達?ちょっと待ってね今呼ぶから。蓮?蓮ー!」
「はいはい何ー?」
「友達が来てるよ早くきな」
蓮が顔を出した。
「あー…」
「蓮君久しぶり!」
「約束通り来たわよ」
「…俺一夜と約束したんだけど」
「なあに?余計ってこと?」
「ごめん冗談だよ」
「もー、口は相変わらずね?」
「おみやげ持ってきたよ」
「まじ?じゃあ茶入れるから俺の部屋で食おーぜ」
8帖の部屋にベッドとテーブル、タンス、机が入り、空いた窓際に植木鉢がありオレンジの花が咲いている。キャンバス等は無い。
「もっと絵かきみたいな物がいっぱいあると思ってた」
「俺基本水彩画だし」
タンスの上にスケッチブックが平積みにされている。それとファイルも。
「見ていい?」
「おうどんどん見てよ。ファイルの方は1回額に入れたやつだから」
どれも鮮やかな色合いなのに優しい風合いにまとまっている。
「やっぱり上手だと思うわよ?それに前より上手くなってる。色の付け方とか」
「分かってくれるか」
客室にも1枚ずつ飾ってあるらしい。
「今は似顔絵も描いてんだ。客に頼まれればだけど、サービスで。…けっこう喜ばれてる」
ちょっとこそばゆいような、自信がちょっとだけついたような顔。
「へえ~そうなんだ。良かったね」
空いている客室を見せられた。蓮の絵には奇抜さは無いが、そこに光があるような暖かさがある。
「これならお客さんも喜ぶね」
「…これからは希望者には売ろうかなー?」
真剣に悩み出す蓮。
「商売人みたくしちゃ駄目よ?あくまで希望者だけにしなさいよ?」
はい、蓮君再登場です!また宜ピコ!こないだの空爆とは(52)clossing参照、ご覧下さい。
今日ね、Amazonで、ARTーSCHOOLのsleepflowers(DVD)を探したら無くて、うっそー!と、ちょい凹み
で、BUMP OF CHICKENのコロニー(シングルCD)の初回版をゲットして(DVD付きなのだ!)、届くのが楽しみです!どんなビデオかな☆
sleepflowersは、こまめに探してたらいつかあるだろうか…ツアーフローラ(DVD)の方ゲット出来たのが奇跡だったのか。




