(92)プライド
一夜が半目になってしまった理由は…
「ねえ、そういえば、アイルとロイはどうなったんだろうね?前にテレパシーが途切れたきりだよね」
威咲が精一杯たまたま思い出したふりをして言った。
垂華が微笑んで返す。
「そのことなら、俺がちゃんと調べてたよ。ちょうどいいから今言おうか」
「あ、うん…」
夕飯の席である。多摩の作ったピリ辛炒めと威咲の麦粥だ。
「テレパシーが拒まれてたけど、テレパシーの繋がった位置から遠見で探し出して、出来るだけ気付かれないように様子を見てたんだ。アイルは復職してる」
「え…」
「どうして?捕まったら殺されるはずだったじゃない」
切り返したのは多摩だ。
「ああ、そうなんだけど…」
「誰かが手引きをした?」
「…オオクラっていう議員が噛んでるらしい。あの二人は国家的には軽視されていたから追っ手も付かないままになっていたんだけど、それをいいことに罪を証拠不十分にこじつけて復職させてくれたんだよ」
「…怪しいわね~、放置されていたとはいえ死罪確実の噂のある人間を手引きしてやるなんて、何らかの利益でも無きゃ普通やらないわよ?」
「そう。オオクラは、知ってたんだよ俺たちの力のことを」
「!…あ、でも」
「そう、死刑になった万朶の友人なのさ」
「ていうことは、他にも知られているってこと!?」
「いや、万朶はオオクラにしか話してない。オオクラも人には話してないようだ」
多摩は一瞬緊迫したが、すぐ肩を撫で下ろした。
「人に知られた時はどうするの?」
威咲が聞くと、
「それはね、記憶を消しちゃうのよ」
「そうなんだ」
威咲が苦笑いをする。
「オオクラに恩を着せられて、今あいつらは密かにオオクラの下についてる」
「あら?おかしいわね。復職させて貰ったら後はオオクラの記憶から力のことを消せばいいのに。なぜわざわざ配下についたりするのかしら」
「そこなのさ。そう、普通ならわざわざそんなこと選ばない。ということは何か裏がある」
少々押され気味の威咲に多摩がウィンクする。
「これ位のことは力でこじ伏せるものよ?」
垂華が粥をひとさじすくい口に運ぶ。
「おそらくは何か脅されてるか…」
「う~ん…養父、とか?言うこと聞かないと殺すみたいな」
「俺もそう思う。あいつがオオクラに従うなんて、理由になるのはそれ位しかない」
因みにアイルは一人っ子で、母は数年前に病死している。
「養父が唯一の弱点みたいなものだからな」
垂華が冷静に言った。
「垂華がオオクラの記憶を消してやればいいんじゃないのか?」
「アイルはプライドが高いから助けられたくないと思うよ」
「そうなのか」
一夜が少し半目になった。
「そしてオオクラは小さいけど自分の秘密組織を作っている」
「そう…えーと、ということは、あたしたちも一応また警戒しといた方がいいのかしら?」
「うん…オオクラはただの人だからいいけど、命じられたあいつらがどう出るかだな。まぁ前みたく本気でどうにかしようとはしてこないだろうけど、養父を人質に取られてるからな」
「はぁ…面倒くさいわね~」
「あの、アイルとロイはなぜオオクラ達の記憶を消してしまわないの?」
「あー、それはね、垂華程得意じゃないからなのよ。大人数は扱えないの。因みにあたしもよ。記憶操作はダントツで垂華が一番手よね」
垂華が小さくピースする。
「そうだったんだ、確かにすごいもんね」
「鮮やかでしょ?」
因みに、ロイは魔方陣を使うこと、アイルは防御と癒しの力が、多摩は攻撃力が一番手らしい。
「実はケンカっぱやいからね」
「違うわよウソだからね?もう垂華は~。あたしは素早さと連続技が得意なのよ」
軽く胸を張って見せた。
ピリ辛炒めと麦粥って美味しそうだよね~麦粥はほんのり甘口なのよー☆
一夜は威咲ちゃんの料理でいいんだもんね☆(そりゃもう一生)
威咲はよく○粥を作るよ?豆粥、卵粥、野菜粥…
味はほんのり甘口~薄塩が主です!野菜って、カボチャやら葉ものやら雑穀やら。ほぼ何でも粥になるのだ☆(※ベースはライスか麦)




