(89)理由
虫の声を聴いて、子供の頃を思い出した威咲。村を去り2年以上たったが、今あの家はどうなってるのかな…?空間移動で行けないか垂華に頼んだ所、勧めれない理由があると…教えてあげようか?と言われ…
「垂華君はどうして知っているの…?」
「君らがあの村を出た日に村の人から聞き出したんだ。俺らもあの村人達の態度はおかしいと思ってね。それは…」
声の調子を落として話す。
「威咲ちゃんが拾われてきて間もない頃、まだ赤ちゃんだった頃のこと。
ある日育ての親である委波が泣き止まない威咲ちゃんをあやしていた。だがなかなか泣き止まずに、急に一層激しく泣き出した瞬間に、家の物は壊れ、委波は体中引き裂けて死んだんだよ。央円がその場は収めたんだろうけどね。
村の人達はその子供は呪われている、魔物の類かも知れないから殺した方がいいと言ったけど、央円は自分が呪術で抑えておくからどうか殺さないでくれって頼んだんだよ。
…だから央円が死んだと聞いた途端に村人達はあんな態度をとったのさ。魔物の子供が本性を現したに違いないと言っていたよ」
威咲は言葉も無い。
「一夜が威咲ちゃんを連れて出ていったのは正しかったんだよ。もし置いていったのなら俺たちが連れ去っていた。じゃないと威咲ちゃんは殺されてしまうかもしれなかったのさ」
次の日出ていって正解だよ、じゃないと一緒にいた一夜も危なかった、と言った。
一夜は背中が冷たくなるような気がした。手の平に汗がうっすら滲んでいた。
「威咲、大丈夫か?」
血の気が失せている。
「大丈夫…でも、私がお母さんを殺してたんだね。私が、殺した――――――――!」
声が震えている。
「大丈夫よ、威咲ちゃん」
静かな声音にハッとして振り向くといつの間にか多摩がドアを開けて立っていた。
「大丈夫。威咲ちゃんの力は、巫女ももう覚醒したし、魔物の力が暴発することなんかもう無いわ」
「本当、に…?」
「ええ、だから安心していいわ」
威咲がつらそうな顔で項垂れた。
「仕方なかったのよ。威咲ちゃんは悪くないわ」
「でも、でも…っ」
威咲は動揺を抑え切れないようだった。
「威咲ちゃん、今日の魔物退治は無理ね。もういいから今日はゆっくり休んで気を落ち着けて。退治にはあたしが一人で行くわ。垂華は留守番お願いね」
「あ…多摩ちゃん私大丈夫だよ、平気、できるから」
「駄目よ。そんな精神が不安定な状態じゃあ力にも影響するわ。下手したら反撃されるかも知れない。甘く見ないで」
「…ごめんなさい…」
威咲は俯いた。
「気にしないで」
多摩は微笑むと垂華に向き直った。
「その辺に漂ってる魔物はみんなあたしが退治してくるわ。地の封印以外のことは全部やって、あとは封印だけにしてくる」
「やけに頑張るな」
「あたしももう18歳ですもの、やるときはやるのよ。今日は3人前やらなくちゃね!」
「無理するなよ、間に合わなかったら時間には帰って来いよ?」
「わかってるわ。じゃあいつも通り12時に出るから」
「ああ」
「威咲ちゃん、今日はゆっくり休むのよ?」
「うん、分かった…」
多摩は出ていった。
「…威咲ちゃん。気に病んでもしょうがないことだよ。そりゃつらいのは分かるけど、本当に仕方ない。どうしようもない事ってのはあるんだよ。特に過ぎた事はもう変えられない。後は気持ちに整理をつけるしかないんだ」
垂華は静かに言った。だがその目に何か暗い光が宿ったのを一夜は見た。
「…垂華君、私…やっぱり村に行きたい」
俯いた威咲が顔を上げた。垂華が軽く驚いた顔をする。
「家のことを知り合いに頼みたいの」
垂華はため息をひとつついて言った。
「あの家なら君らが出ていってすぐ後に燃えてしまったよ」
「!?」
「央円の術でね」
「な…親父さんは死んでたんだぞ!?それがなんで」
「…」
「垂華?」
「…知らない方がいい事もあるんだ」
「お前…」
「…お父さんはまだ生きてるの…?」
「…いや、確かに死んだよ」
「じゃあ、なぜ…?」
垂華は苦い顔をして言った。
「多分、死ぬ前に全て術を仕掛けておいたんじゃないかな。あの日俺らが行くことを先見で予見してて、その前に死ぬことからその後まで用意したんだよ」
「そんなことも出来るのか」
「時間を置いて発動する術もあるんだ。あらかじめきっかけを決めておいて、その時がきたらポン、とね」
「そうか」
「…一瞬、お父さんがまだ生きてるのかと思っちゃった…」
威咲の目は潤んでいた。
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