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CALL  作者: スピカ
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●(9)Birth place2

父親を殺された威咲を一夜は自分の放浪に連れて行くことに決めた。そして少年を助けたり逆に助けられたりして、偶然からたどり着いた街は一夜の故郷だった。一夜の家がまだあるか見に行ってみたが…

 その辺は更地になっていた。

「な?何もなかっただろ。諦めて戻って夜行バスでも探すか」



 そして二人で小川沿いのあぜ道を歩いていると、後ろから女の人の声がした。

「一夜?」

 二人は振り返った。そこには色白で茶色いストレートロングな髪のスレンダーな印象の女性が立っていた。

「やっぱり一夜だ。久しぶりだな、どうしたんだ?」

 誰だろう。

「リン…」

 一夜の声が一瞬かすれて、動きもどこかぎこちない。彼女の方が近寄ってきた。

「来るつもりなかったんだけどちょっと途中下車しちまってさ、家残ってたら泊まろうかと思ったんだけど来たらなんもなかった」

「そうか、ならうちに泊まりな?そのこもいるんだし野宿は無理だろ」

「まあな。威咲、それでいいか?」

「う、うん」

 何だか親密そうな二人の様子である。



 道を挟んだ川の反対側は少し高くなっていて、花畑になっていた。それについてリンと呼ばれた人が説明した。

「見てこの畑。あたしのだよ。あの頃はあんなに頑張ったのにさ、結局戦争で持ち主不在になった土地とか出て、ちょっと線引きし直したりして、それを町で安く売って…馬鹿らしいよな」

 だけどここら辺を花畑にするっていうあたしの夢は叶っちゃったよ、と言って小さく笑った。

「そうか…」




 威咲は二人の後をついて歩きながら二人の関係はどんななのだろうと思った。そうしているうちにすぐ一軒の家の前に着いた。

「さ、ここがあたしんち。どうぞ、入って」

「お邪魔します…?」

 赤ちゃんの泣き声がする。

「ただいま」

 リンさんが言うと、奥から背の高い男性が赤ちゃんを抱いて出てきた。一夜を見て驚いた顔をする。一夜も呆気にとられている。

「一夜?」

「そう。さっきそこで会ったの。偶然この辺に寄って泊まる所がないっていうからうちに泊めてやろうかと思って」

「あっそう。そのこは?」

「ただの連れ」

「なんで泣いてるの?オムツ?」

「さっき交換した」

「おかしいなー、ん?そーかそーかママに来たかったか」

 リンさんが抱くと泣きやんだ。

「その子供って…」

「あたしの子よ」

「俺の」

 一夜は動揺を隠しきれていなかった。

「いつ結婚したんだ?」

「3年前」

「さ、入って」

 大きくはないが明るい家だ。

「お前らいい家住んでるじゃん」

「この家建てるの大変だった~。この辺じゃ早い方だろ?土地の境界がまだ不確定で、決まるまで色々…」

 云々。面倒なことが沢山あったらしい。そんな苦労話や一夜が去ってから今までの街の話などをあれこれしていた。

挿絵(By みてみん)



 タクさんはリンさんのことをスズミと呼んでいた。

 タクさんは薄茶色の肩より長い髪をすいていて、色白で痩せていて耳に小さな金の輪っかのピアスをしていた。



 夜、部屋割りはリンさんが取り仕切った。

「あたし達が部屋は使うからあんた達は茶の間で寝て」

「はーい」

「あたしタクのベッド使うから威咲ちゃんはあたしのベッドで寝てね」

「男は追い出されたな」

「はい毛布。じゃね」


 威咲は部屋で二人になったのでスズミに尋ねてみた。

「あの、どうして一夜はスズミさんのことをリンって呼ぶんですか?」

「あーそれは、あたしの昔の通り名だからよ。わざとリンって名乗ってたんだ。だけど一夜ももう本名で呼べばいいのにな」

「どうして…いえ」

 威咲は口をつぐんで指先を口元にあてた。スズミは少し笑った。

「…元娼婦だからよ。だけどタクがあたしを抜け出させてくれたの」

 そして幸せそうにはにかみながら子供の頭を撫でた。

「あたしが今幸せなのはタクのおかげ。それにしても一夜が女の子連れなのには驚いたな。どういういきさつなの?」

「それは…」


 一夜が行き倒れていたこと、しばらく居候したこと、自分が天涯孤独になって一夜が連れてきてくれたことを簡単に話した。

「そうか…」

 スズミはそれ以上聞いてこなかった。そして今度は自分のことを話し出した。


「昔は…あたしが小さい頃まではあたしの家地主だったの。タクは使用人の子でよく一緒に遊んだわ。

だけどお父さんが保証人になって、その知人が夜逃げして、借金抱えるようになってしまってね、仕方なく土地を切り売りしていって、それに加えてお父さんが突然倒れて死んでしまって、…

お母さんは働いたけど体弱かったし貧乏で、あたしは13で娼婦になったのよ。

お母さんよく一人で泣いてた。

そしてお母さんも風邪をこじらせて死んじゃって…あたしはいつか土地を買い戻すことだけ望みに生きてた。

そんな苦労したのに戦争でこうなるなんてね。その頃あたしはかなり参ってたけど、タクが支えてくれてたの」

 切なげに笑った。




Birthplaceはけっこう好きな部分です。callは高校の頃キャラクターが生まれて、何年も話がないままキャラと数シーンだけありました。それを元に話を作ってるわけですがこの部分は割と古いです。


今回はBGMはアートスクールのLOVE HATEでした。

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