第8話
零士とリノが兄へのプレゼントを選でいた。
同日、事務所に電話がかかってきた。
「はい、万屋です」
「もしもし、私、優子よ。詳しくは後で話すから、警察署に来てくれる?」
「…わかりました。今から、そちらへ向かいます」
電話を切ると、色は、事務所を出た。
警察署に着くと、優子とその部下、金井が出迎えた。
「悪いわね、万屋くん。来てもらって」
「実はあなたに会いたいって人がいるの…でも、その人は、あなたにとって最も会いたくない人物だと思うわ…」
優子に案内された場所に着くと、一人の男待っていた。
その男は、色が一番憎んでいた人物だった。
「…君が万屋仁さんの息子さんかい?
父親に似て随分いい男になったものだ…」
男の顔を見た瞬間、色は動揺した。
沸き上がる感情を抑えて、色は男に問いただした。
「…何故、あなたは私に会いたいと思っていたんですか?」
「君が仁の息子で何でも屋をしているって、そこの刑事さんに聞いたんだ」
すると、突然、男は土下座をしてきた。
「事件の事、すべて君に話す!!だから!!
俺の娘を助けてくれ!!」
「娘を助ける?一体どうゆうことですか?」
色が問いただすと、男は立ちあがり、語り始めた。
「俺の娘は、中学生の時、突然、能力に目覚めた。…それは人を操る能力“洗脳”だった」
「洗脳…ですか…」
「娘は洗脳の能力を試すため、手始めに俺を洗脳した。教会を燃やせ…と、気がついたら、俺は、燃える教会の前にいたんだ…」
「…洗脳…あなたは洗脳されて、教会を燃やした…中に人がいたにもかかわらず…」
その時、色の脳内で何かが切れた。
色は、抑えていた感情をあらわにした。
「人の命を何だと思っているんですか!!どうして、洗脳されたからって…無関係な人を巻き込むんですか…!!」
色は男の肩を掴み、ひたすら男を責めた。
すかさず金井が止めに入るが、優子がそれを止めた。
「…こんなの…理解不能だ……」
そう呟き、色は、男の肩から手を離した。
今まで、こんなに感情的になる色を見たことあっただろうか?
そう思いながら、優子はただ、何も言わず、色をじっと見た。
「…君の父親を奪ったことは、本当に申し訳ないと思っている。償っても償いきれないだろう…けど、このままでは、娘は俺よりに重い罪を犯すかもしれない…だから!娘が罪を犯す前に、君に止めてもらいたいんだ!」
その後しばらく、沈黙が続いた。
その時、色が口を開いた。
「私は、父の命を奪ったあなたをこれからも許すつもりはありません」
「俺は、許してもらおうなんて思っていない!ただ、娘を…!」
「けど、父を殺された息子ではなく、何でも屋として、あなたの依頼、この万屋が受けましょう。かならず、罪を犯す前に止めてみせます」
「…ありがとう…ありがとう…!!…万屋くん!!…娘をかならず止めてくれ!」
その後、何でも屋事務所
「いいの?万屋くん、あなた、あの人を憎んでいたんじゃないの?」
「はい、確かに憎んでいました。ただ、あの人は洗脳によって、娘によって、人生を狂わされた。だから、これ以上、洗脳で誰の人生が狂わされいくのを見たくないんです」
「そう…わかったわ。私も協力する」
「ありがとうございます…優子さん」
その時、リノと出掛けていた零士が、事務所にきた。
「色、ちょっとええか?って優子、来てたんか」
「今日は一緒にいたのよ。で、零士、どうかしたの?」
「今日、十賀叶子に会った。過去を見破られた」
「零士、それ、詳しく教えてくれないか?」
色は零士の話を聞いた。
「十賀叶子…彼女は何のために、そんなことをするんでしょうか…」
「わからん…けど、ここまで過去を見破られたのは、俺、優子、色、シンの4人。接触をしているが、能力を受けていないのは、アオイとリノだな…」
「リノさんとアオイさんか…
零士、シンに、なるべく、一人でいないようにって連絡してくれないか?
優子さんは私がいない時、アオイさんの側にいてもらえますか?」
「わかった。出来るだけ一緒にいるわ」
夜、アオイが色の部屋を訪れた。
「アオイさん?どうかしましたか?」
「なんか、今日、一人でいるのが怖いんだ…
一緒に寝てもいい?」
「いいですよ。隣どうぞ」
そう言われ、アオイは色の隣に座った。
「万屋お兄ちゃん、一人でどこにも行かないよね?」
突然、アオイが問いかけた。
「そんな質問して…どうしたんですか?」
「私ね、夢を見るの…万屋お兄ちゃんと知らない女の人が暗闇でいるとこを…私がどんなに走っても追いつかなくて、名前を呼ぶと、振り向いてくれるけど、万屋お兄ちゃん、泣いてるの…」
「泣く?私がですか…?」
アオイの小さな手が色の手に触れた。
「万屋お兄ちゃん、いなくならないで…!私…私…!」
大粒の涙を流し、泣き始めたアオイ。
色は泣くアオイを優しく抱きしめ、背中をさすった。
「…もし、いなくなっても、必ずあなたのところに帰ります。信じてください…」
泣き疲れ、眠るアオイを見た後、色は事務所に向かった。
翌日、事務所に戻るとアオイを姿がなかった。
その時、優子から電話がかかってきた。
「ごめんなさい、万屋くん…アオイちゃんが…!」
電話をきり、色は急いで事務所を飛び出した。
続く