第4話
「そういえば、万屋さん」
事務所に来ていたリノが色に話しかけた。
「どうかしました?」
「零士さんって普段は何してるんですか?」
「零士?…あぁ、普段はアルバイトです。ここの近くの喫茶店らしいんですけど、よかったら行ってみます?」
一方、喫茶店、林檎の家
「暇ー。零士ちゃん、何でこんなに暇なのかしら…」
「しょうがないやろ。今、七月やし、暑いしって…店長!ダラけんといてください!」
「だってぇ…ってやだ!エアコンつけるの忘れた!だから暑かったのね!」
その時、店に色とリノがやってきた。
「いらっしゃい…って色か。そして、リノも一緒か」
「こんにちは!零士さん。ここがバイト先の喫茶店ですか!なんか落ち着く」
「あら!いらっしゃい!万屋ちゃんに…えっと、その子は?ずいぶん可愛い子じゃない!彼女?」
「か…彼女?!」
「違う、違う。こいつは最近、事務所に遊びに来る、緋川リノや。リノ、この人は」
「マリエよ!よろしくね、リノちゃん」
「よろしくお願いします!(優子さんもそうだけど、この人も綺麗な人だな…)」
見とれているリノを見た零士は小声で呟いた。
「…言っとくけど、店長は“男”や…」
「へぇー…そうです…へ?…男性の方?!」
「ちょっと零士ちゃん。余計なことは言わないの!あたしは正真正銘の乙女よ!」
「乙女って…マリエさんも相変わらずですね…」
「まぁいいわ。久しぶりに来たんだし。コーヒーとそちらの可愛いお嬢さんにはケーキをサービスするから、なんか一曲演奏してよ!」
「え?別にいいですよ。少々お待ちください」
そう言って、色は演奏の準備を始めた。
「お待たせしました。曲は何がよろしいですか?」
「そうねぇ、リノちゃんは何がリクエストある?」
「え?!私がリクエストするんですか?!…プロの奏者にリクエストするなんておそれ多いって言うか、なんていうか…じゃあ…」
「はい、何を演奏しましょうか?」
「えっと、あ、この曲お願いしたいんですけど!」
リノは音楽プレイヤーを色に聞かせた。
「星に願いを…ですか。好きなんですか?この曲」
「はい、小さい時からこの曲が好きなんです」
「そうですか。私がはじめてチェロで弾いた曲もこの曲です。わかりました」
色はチェロを構え、リクエストの曲を演奏した。
演奏が終わるとリノは感動の拍手をおくった。
「ありがとうございます。間近で聞けて本当によかった!」
「本当に、一瞬暑さ忘れたわ。まぁエアコンつけたばっかしだってこともあるけど」
「それは良かったです」
事務所に戻った色はもらったケーキをアオイに渡そうと考えていた。
しかし、事務所にアオイは居なかった。
「アオイさん?…まさか、一人で外に?」
「ニャー」
気がつくと、色の足元に一匹の猫がいた。
「ダメだよ!入っちゃ!…あ、おかえりなさい!色お兄ちゃん!」
「その猫、野良猫ですか?」
「うん、友だちになったんだ」
「そうですか。…あ、零士のところでケーキもらったんですけど、食べますか?」
「うん!」
夜、ベッドで眠るアオイを見て、色は考えていた。
(彼女は本当にどこからきたんだろうか…?いつか、彼女のことも調べないとな…)
足元にすり寄ってきた猫を抱え、色は事務所に戻った。
第4話です。前の話より、短くなりました。