復讐の始まりと終わりの始まり
これは僕が/私が紡ぐ物語
エピローグ
真っ暗な闇の中で私はまた足掻く
あの時の光景を幸せなあの時間をまた取り戻したいから
もう一度ただ幸せな日々を噛み締めるだけでいたいから
この使命から解き放たれたいから
私は諦めない
_________________
昔、人間は弱かった。
他のあらゆる種族と違い自身の身を守る術すらなかった。
ただ蹂躙されるだけの存在だった
この世界で生きることすら許されない存在だった。
人はただ逃げるだけの生き物だった。
村は夜ごとに襲われ、
都市は炎に包まれ、
大地には人の骨が積み上がった。
その時、人は祈った。
「神よ、どうか力を」
だが神は現れなかった。
それでも――
ある日、突然だった。
人の中に“力”が生まれた。
空気を裂く拳。
水を刃のように操る者。
見えない力で物を動かす者。
人は初めて、
異形と戦える存在になった。
そして人類は決めた。
この世界から
すべての異種族を消すと。
それが
人類の戦争の始まりだった。
⸻
「……エルド」
声がした。
エルド・レヴァンは顔を上げた。
広い広場。
灰色の石で作られた巨大な施設の前に、
何百人もの若者が並んでいる。
その全員が同じ制服を着ていた。
黒い戦闘服。
胸には銀色の紋章。
そこに刻まれているのは
人類最大の軍事組織の名。
終末戦線
「ついにだね」
隣で小声が聞こえる。
振り向くと、
綺麗な金髪の少女が笑っていた。
エマだ。
「緊張してる?」
「……少しな」
エルドは正直に答えた。
今日、彼らは
正式に終末戦線へ入隊する。
つまり――
戦争に行く。
広場の前方にある高台に
一人の男が現れた。
一瞬で静まり返る。
男は黒いコートを羽織り、
ゆっくりと前に立った。
終末戦線の代表だった。
低く、重い声が広場に響く。
「諸君」
それだけで空気が張り詰めた。
「諸君らは選ばれた」
彼はゆっくりと周囲を見渡した。
「人類を守るために戦う者だ」
沈黙。
誰も息を立てない。
「この世界は、我々のものだ」
声が強くなる。
「悪魔も」
「モンスターも」
「妖精も」
「この大地を奪った異種族すべてを――」
男は拳を握った。
「滅ぼせ」
広場にざわめきが走る。
しかし男は続けた。
「諸君らの多くは知っているはずだ」
「家族を殺された者」
「村を焼かれた者」
「仲間を喰われた者」
「そうだろう?」
何人かが拳を握る。
怒りの空気。
「だから戦え」
男の声は鋭くなった。
「復讐のためでもいい」
「人類の未来のためでもいい」
「理由はなんでもいい」
彼は最後に言った。
「人類を守れ」
その瞬間、
大きな歓声が上がった。
エルドはその中心に立ちながら、
ただ静かに前を見ていた。
⸻
その後、
新入隊員たちはグループごとに部屋へ案内された。
エルドが入った部屋には
三人の男がいた。
「よろしく」
最初に声をかけてきたのは黒い短髪の少年だった。
「さっき隣にいたやつだろ?」
「エルド・レヴァンだ」
「俺はユウキ」
彼は笑った。
「絶対強くなるぞ」
次に声を出したのは
少し落ち着いた雰囲気の男だった。
「ヒトシ」
短く名乗る。
眼鏡をかけている。
「よろしく」
最後の一人は
ベッドに座ったまま軽く手を上げた。
「トモ」
「まあ仲良くやろうぜ」
少し軽い口調。
だが悪い感じはしない。
勇気が笑った。
「これから同じ部屋だしな」
「死ぬまでは仲間だ」
冗談のように言ったが、
誰も笑わなかった。
ここでは
それが普通だからだ。
⸻
その日の午後。
新兵たちは
巨大な訓練施設へ集められた。
前に立つのは
手入れされていない赤い長髪をした厳しい顔の男。
教官だった。
「俺はロイドだ」
低い声。
「今日からお前らを鍛える」
彼は腕を組んだ。
「まずは測定だ」
「身体能力」
「能力」
「全部調べる」
訓練が始まった。
最初はユウキだった。
計測装置の前に立つ。
「力を出せ」
ロイドが言う。
勇気は拳を握り、
思いきり装置を殴った。
ドンッ!!!
機械が激しく揺れる。
数値が表示された。
周囲がざわつく。
ロイドが言った。
「……常人の約100倍」
勇気は照れくさそうに笑った。
「まあそんな感じっす」
次はヒトシ。
彼は手を前に出した。
空気が震える。
次の瞬間、
水が弾丸のように発射された。
ゴォン!!
金属板に穴が開いた。
ロイドが眉を上げる。
「高密度水圧か」
「悪くない」
次はトモ。
彼は何も触れない。
ただ、前を見た。
すると――
床に置かれていた鉄球が浮いた。
そして
ドンッ!!
高速で壁に叩きつけられた。
「サイコキネシスか」
ロイドは淡々と言う。
「訓練すれば使える」
エルドはそれを見ながら思った。
(みんなすごいな)
自分の番も終わったが、
特別な数値は出なかった。
その日の最後。
ロイドが言った。
「明日から能力別に訓練を行う」
「今日は終わりだ」
新兵たちは部屋へ戻った。
だが――
次の日の朝。
警報が鳴り響いた。
サイレン。
館内放送。
「全隊員、至急広場へ集合」
ざわめきが広がる。
広場に集められた彼らに
ロイドが告げた。
「予定変更だ」
沈黙。
「魔物族が攻めてきた」
一瞬で空気が変わった。
「訓練は中止」
「実戦だ」
ユウキが笑みをこぼした
「マジかよ」
周りからも声が上がる。
「まだ、実践訓練だってしてないのに」
エルドは周囲を見た。
笑っている人間がいた。
おそらく復讐をするために入った人達だろう
家族を殺された。
村を焼かれた。
大切な人を奪われた。
そういう人たちがこの軍にはいる、それもかなり多くが
そして勇気もその1人らしい
戦争
ある者は憎しみをぶつけるため
ある者人類を守るため
ある者苦しい生活から抜け出すため—
輸送車が走る。
隊列で並んでいてユウキが隣にいた
「あいつら何匹殺せるかな、見つけたやつ皆殺しだ」
この時を待っていたと言わんばかりの興奮した様子だ
エルドは窓の外を見ていた。
そして
戦場に到着した。
そこはまさに地獄だっただった。
巨大な魔物。
牙。爪。
咆哮。
「突撃!!」
号令。
人間たちは一斉に走った。
能力が爆発する。
拳が魔物を粉砕し、
水の弾丸が体を貫き、
見えない力が敵を吹き飛ばす。
勇気が叫ぶ。
「オラァ!!」
魔物の頭を殴り潰す。
ヒトシの水が
敵の体を貫く。
トモが魔物を空中に持ち上げ
地面に叩きつける。
だが
人も死ぬ。
悲鳴。
血。
肉片。
誰かが喰われる。
腕が飛ぶ。
それでも誰も止まらない。
なぜなら
これは戦争だからだ。
そして
憎しみをぶつけるあるいは虐殺される場所だからだ。
ユウキは笑いながら魔物を殺した。
それを見て人々はさらに怒り、
怒りをぶつけるように。
憎しみを吐き出すように。
長い戦いの末、
魔物族は撤退した。
戦場には
死体だけが残った。
ぐちゃぐちゃになった魔物の死体
身体の一部が喰われたような人間
夕焼けの外はどこか歪んで見えた。まるで世界そのものに日々が入っているようだった。
エルドたちは立っていた。
勇気が言った。
「生きてるな」
ヒトシが頷く。
「なんとか」
トモが笑った。
「まだ死ぬ気はない」
逃げていった魔物たちを睨んでいた
エルドも静かに息を吐いた。
四人とも
生きていた。
そして金髪の少女エマがこっちを見て安心した様子で何かを呟いていた。
だが。
戦場には
多くの人間が倒れていた。
そしてエルドは
まだ知らない。
この戦争の本当の意味を。
なんとも身勝手な神のわがままを
よーよ




