婚約破棄をされたので元婚約者と愛人を呪おうとした令嬢の話
「レオニー、婚約破棄だ!お前みたいなつまらない女は見たくない!」
大勢の学友の前で婚約を破棄されたわ・・・
いきなり、それも私がつまらない女だって・・・
隣には可愛い男爵令嬢がいるわ。
「デービット、本当の事を言ったら可哀想だわ」
「優しいな。マリアは」
学友達は何も言わないわ。だって、相手は侯爵家だもの・・・
二人は輝く金髪をなびかせてそれだけ言って後にした。
私の恨み言を言う機会さえ与えないのね・・・・
家ではお父様、お母様に失望されたわ。
「相手はエピング侯爵家だ。折角縁がつくと思ったのに・・」
「そうね。やっぱりレオニーには厳しかったかしらね」
何も言い返せない。
私の心の中に黒い靄が浮かんできたわ。
呪おう。あの二人だけでも不幸になれば良い。
いろいろ試してみたわ。
二人のヌイグルミを作り。燃やす。
「ねえ。デービット様とマリア様、とても良いカップルね」
「聞いた。南にバカンスに行って来たのですって、お土産をもらったわ」
全然、悪い話を聞かないわ。
憎い。憎い。憎い。
だが、この国では呪いは禁止だわ。
本、呪いの本ないかしら。
如何にも場末の本屋に向かう。
乱雑に本が置かれ。猫が会計の台で昼寝している。その隣に金髪でヒラヒラのドレスの幼女がいたわ。お手伝いかしら。
「いらっしゃいませなの~、お探しの本は何なの~?」
見つめられると自然と口が開いた。お人形のような幼女には話しても大丈夫だろうと安心を感じたからかもしれない。
「・・・実は、呪いをかけたい相手がいるのです!」
事情を話した。
幼女はあっけらかんに答えた。
「あるの~!」
「えっ、是非、お願いします!」
「でも、本気じゃないと売らないの~」
「本気ですわ!」
厚い本を渡されたわ。これは・・・
「ただの魔道大全じゃないですか?」
「そうなの~、本物は禁教扱いだからカモフラージュをしているの~」
「分かったわ。頂くわ」
「必ず全部読むの~、でないと効力は発揮しないの~」
金貨3枚、私にとっては大金だわ。
部屋に籠もって読みまくった。
呪いの方法はどこに書かれている・・・
数ヶ月かかる本を一月で読み終えた。
結論は・・・・
「・・・ただの魔道大全だわ・・」
文句を言おう。学園の帰りに返品をしようと本屋に向かおうとしたら。
「大変、デービット様、婚前旅行がバレて大目玉よ」
「まあ、大変ですわ」
「メラニー様と婚約破棄したこと、夫人に話していなかったのですってよ」
こんな噂を耳にした。まさか・・・この本を読むと呪いが発動するの?
「メアリーさん。どうか、他にも・・・」
「あるの~、次は会計要領、難しいから初学者用も揃えると良いの~」
「分かったわ」
「合計金貨4枚なの~」
合計三冊買ったわ。
具体例が書かれている初学者の本から読み。要領を読み解いていく。さあ、呪いはどこに?
まあ、いいわ。また、メアリー書店に行きましょう。
「アンナ、ドレスを出してくれる?」
「あの、お嬢様、もう、デービット様から頂いたドレスを着るのはお止めになっては・・」
「そうね。昔のドレスを出して」
「はい」
デービット様と婚約を結ぶ前は茶色が基調のシックなドレスだったわ。
そういえば、どうしてエビング侯爵家から婚約の打診が来たのかしら。
馬車に乗り。書店前で降りようとしたら雨になった。
「お嬢様、傘をお出しします」
「いらないわ。【水をはじけ!油ども!撥水!】」
詠唱をして水を弾く。
すると、後ろから声をかけられた。180㎝くらいかしら。金髪碧眼で、髪はサラサラしているわ。少し伸しているけど不潔に見えないわ。私と同い年かしら。
「お嬢様・・・その魔法の原理は?」
「はい、油のイデアで体を包むイメージですわ」
「どうやって抽出されましたか?」
「実は分からないのです。そもそもイデア自体があるか分かりませんわ。もしかして、拭え軟膏の例に陥っているのかもしれませんね」
「拭え軟膏・・・あの名著をお読みになられたのですか?」
「ええ、この書店にございましたの」
「是非、棚に案内して下さい!」
拭え軟膏とは、包丁で手を切ったら、怪我した指じゃなくて軟膏を包丁に塗れば怪我が早くなるとの迷信があった。
実際に試したらその通りだったの。
でも、時間がたって分かったわ。
その軟膏はとても不潔なものだったの。塗らない方が治癒が早いと薬学が向上して分かったのよね。
前提条件を疑え。との教訓を得たそうよ。
メアリーちゃんから本を薦められた。
「これなの~、王国刑法視点!が良いの~」
「あら、メアリーちゃん。私は商法や民事法が良いわ」
「違うの~、刑法が法の考え方を理解するのに一番良いの~」
「じゃあ、買うわ」
「ご令嬢、当家にあります。お貸ししますよ」
「あら・・」
「ウヌー!商売の邪魔をしないの~」
「また、違うのを買うよ」
この青年の名はグルカタス様、学園の生徒会長と同じ名だわ。高貴なお名前にあやかったのかしら。
案内されたお屋敷は離宮?
「まあ、グルカタス様の親御様は、離宮の住み込みの職員ですの?」
「まあ、そんなところだ」
「それとご令嬢と私で二人で書庫にいると何かと噂になる。当家の使用人、貴家の使用人も入って頂こう」
気遣いの出来る方だわ。楽しくお話をしたわ。
学園に行くと噂をされるけど・・・もう、気にならない。
(まあ、メラニー様、お美しくなって)
(何て言うか知的な美人、良妻賢母そうな)
(俺、婚約申し込もうかな)
淑女科で勉学の準備をしていると学園の護衛騎士を引き連れて学園長と生徒会長・・・え、グルカタス様がいらっしゃったわ!
「メラニー・スン、転科の調整に来た。国政・領地経営科の転科を希望しないか?」
まあ、髪は後ろに束ねていらっしゃる。オールバックになって強面だわ。あのときは気弱そうな青年だったけど、人を束ねるために強面にしたのね。
殿下は手を差し伸べた。
「私の側で・・・一生、本を読めるようにする・・」
キャアアーーーと女子から歓声があがる。鈍い私でも分かるわ。
求婚?
「フフフ、調整じゃなくて、王命にしないのかしら」
「君の意思を尊重したい」
私は手を取った。
「例え、地獄でもお伴しますわ」
その後、私は王宮に住むことになった。殿下の婚約者になったわ。
メイドはアンナだけを連れてきた。
お父様とお母様は大慌てで屋敷に住めば良いと言うが断ったわ。
第三王子グルカタス様殿下、国内に留まり陛下をお助けする道を選んだ。
その後、エビング侯爵夫人から正式に謝罪されたわ。
「・・・メラニー様の聡明さにほれて私がデービットの婚約者にしたのよ。それが婚前旅行までして」
「いいえ。見込んで頂いて有難うございます」
デービット様との婚姻の予算を慰謝料として頂いたわ。
デービット様は屋敷で財産管理人補佐として弟に仕える進路だ。
マリアは逃げられずに婚姻させるそうよ。もう、お腹が目立つと言っていた。
その後、夫人から厳しい教育を受ける予定だわ。
そして、今日も。
「グルカタス様、行きましょう」
「そうだな。行こう」
「「メアリー書店に!」」
今の目標はメアリーちゃんを義妹にすることだ。
そう言えば、何故、メアリーちゃんの本屋に行ったのか。動機すら忘れたけど。
もう、どうでも良くなったわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




