悲劇
悲しみに暮れるミニィにケンタは言います。ケンタにとっていつまでも泣いているミニィを今は励ます事しか出来ません。
「ミニィ、もう泣かないで。悲しい気持ちもわかるけどさ、でも動物はいずれ死んじゃうんだ。それが早すぎたし。」
「だってさっきまであんなに、あんたはよく平気でいられるわよね。でも車が爆発ってまさか一家心中にでも巻き込まれたんじゃ、ショコラちゃんのお母さんが犯人なんじゃ。爆弾っていうのも考えられるけど。」
「その可能性はあり得るね。もしかしたら日常的に虐待をしていた可能性も。それで子供を巻き添えにしたのだとしたら、あまりにも理不尽だよ」
ミニィとケンタの2人の推理が始まります。ニュースでは事故と言っていたがそれも真実なのか分かりません。その時2人に誰かが話しかけて来ました。犬のお巡りさんではありませんか。
「ケンタじゃ無いか?
もしかして旅の途中であの事故の目撃者になっちゃったのか?大変だったな。それにミニィちゃんまで。」
「父さん。」
「ケンタ君のお父さん。」
「ケンタ、車から遺書が見つかった。焼けこげてはいたが、育児ノイローゼによる母親の無理心中だそうだ。死因はガソリンをかけられた事による焼死。娘もかけられたって。
全く皮肉な話だよな。」
「ふざけんな、娘を巻き込んで自殺だと、そんなのてめえだけ死ねば良いじゃねえかよ。これから未来ある人生を送るつもりだったショコラちゃんまで巻き込むなよ。畜生!」
ケンタも込み上げてきた怒りと悲しみが一気に爆発していきました。ミニィは目から涙が流れ出て来ました。そしてこう言ったのです。
「あの子ね、私に言って来た。お姉ちゃんすっごく可愛いねって。それ言われてとても嬉しかった。だから私は忘れないよ。ショコラちゃんが生きた事、ショコラちゃんと出会った事。私ね、旅で出会った人の事例え一回だけ会った人の事、友達になった子の事忘れたりしない。だってその人の人生の一部を共有出来たって思えるから。私はあの子を守れなかったのよ。ううう。」
再び目から、涙が押し寄せてくるのと同時にあまりのショックでミニィの心は限界まで落ち込んでいたのです。そしてミニィはショコラがくれたリボンを大事そうに抱えます。
ケンタは言います。
「ミニィの言うとおりだよ。僕だって忘れないよ。ショコラちゃんの事。ミニィ、僕がいるから。僕が側にいるから。
だから、お願い。もう泣かないで。」
必死にケンタは泣き続けるミニィにティッシュを渡しました。どんな辛い時でも側にいる、そんな存在にケンタはならなければならないとそう思ったのでしょうか。ミニィはケンタのお父さんに言いました。これが彼女の必死のお願いです。
「最後のお別れを言いたくて、ケンタ君のお父さん、ショコラちゃんに会わせて下さい。」
「でも、遺体は損傷が激しい。見たら、気分を悪くする可能性も、」
「大丈夫です。」
遺体安置所に連れて行かれました。そこには真っ黒になって大火傷を負ったけど、眠るショコラの姿がありました。ミニィは手を合わせました。ショコラを見たミニィは涙を流し始めました。ミニィはショコラに言いました。
「ショコラちゃん、守ってあげられなくてごめんね。熱かったよね。苦しかったよね。ショコラちゃんに貰ったリボンを大切にするね。ありがとう。」
「ショコラちゃん、僕にも話しかけてくれたよね。僕も君を忘れないから天国に行っても、元気で、いっぱい遊んでね。」
2人はショコラに手を合わせました。その3日後にモンキ町で行われたお通夜と告別式にミニィとケンタの姿がありました。




