カマキリタウンと仏の目
次の日の朝、ニワトリの鳴き声が聞こえてくると、コガネホテルに朝がやって来たのです。朝の涼しい風が黄うさぎのミニィの顔に当たると、ミニィは目を覚まします。布団から起き上がると手を真っ直ぐに伸ばして欠伸をします。ミニィはカーテンを開けてコガネシティの景色を見渡します。コガネシティの海は青く輝いており、ライトアップされていたコガネタワーは柱がはっきりと見えて太陽に反射した銀色の柱が輝いていました。
ミニィは、芝犬のケンタの布団を捲ると、朝の太陽光をケンタの目に当てました。するとケンタは眩しそうにするのです。
「起きろーー!ケンタ!!!」
ミニィはニコニコ笑いながら元気に叫びます。昨日までの落ち込んでいたのが嘘みたいにミニィは元気です。ケンタは、いきなりミニィが大声で起こして来たものですからびっくりして飛び起きました。
「何だよ、朝かー、うわぁぁ!何だよ、ミニィかよ。
びっくりしたよ。ふぅー、朝の日光は涼しいね。
気持ちが良い目覚めだよ。」
するとミニィはケンタの足をくすぐり始めました。ミニィに足をくすぐられたケンタは笑いながら畳に倒れました。ミニィはケンタの脇の下をくすぐって来ます。
「あははは、そこはくすぐったいからやめてよ!そんなにそこまでするんだったら、僕だってくすぐっちゃうんだからな。」
「ふーん、負けるもんかー!」
そう言うとミニィとケンタは手四つに組んで力比べをしてお互いに押し合いました。だが当然ミニィが負けてしまいます。組んでいた手を離すと、今度はケンタがミニィの脇をくすぐり始めました。こうして2人はふざけ合っていた所へ朝食の時間を知らせる合図が鳴ります。ミニィとケンタは、部屋を出てそのまま朝食の会場へと向かいます。朝食のレストランはバー程度の中規模な大きさのラウンジに食事がビュッフェ形式に並んでいます。ミニィとケンタは2人席を発見するとケンタが先に席に座りました。
「ミニィ、僕が先に席に座るから、食事を取って来て良いよ。」
「うん。分かった。私が先に取ってくるね。」
ミニィはお盆をとお皿を取ると、朝食に食べるスクランブルエッグ、食パン、いちごジャム、レタス、マカロニサラダ、ナポリタン、ひじきのサラダを取ります。
コガネホテルを出るとケンタはウィッチフォンを押します。ウィッチフォンにはバスの時刻表が乗っていたのでした。カマキリタウン行きのバスが来るまで荷物を背負い、ケンタとミニィはバスを待っています。
午前10時になるとコガネホテルの前にバスが現れたのです。カマキリタウン行きのバスです。ケンタとミニィはバスに乗るとコガネシティを後にしました。バスは静かに出発します。ホテルが段々と見えなくなってくるとコガネシティの大都会からトンネルに入り峠を越えて行きます。トンネルの中に入るとミニィがケンタに言います。
「これあげる。いらなかったから、食べていいよ。」
「良いのかい?じゃあもらうよ。」
そういうとミニィは卵が入ったサンドイッチをケンタに渡しました。サンドイッチをケンタは口にすると卵とサンドイッチのパン生地が口の中で混じり合い美味しい味をケンタは堪能します。暫くトンネルをバスで走って行き、長いトンネルを抜けるとカマキリタウンが見えて来ました。カマキリタウンはコガネシティと異なり、豊かな田舎街です。カマキリ寺という、仏様が祀られている昔からあるお寺があります。そこにお参りに来る観光客が大勢いるのです。カマキリタウンにある公園ではかなり急斜面がある公園が広がっており、その公園には四足歩行で歩く、鹿が放牧されているのです。その鹿達は喋る事が出来ません。まるで自然の使いです。
「それでさ、ミニィ、カマキリタウンでお参りしたら次はどこへ行くのよ?」
「カマキリ幼稚園よ。宿泊学習で良く来ていた幼稚園だから、そこへ案内してあげる。」
後部座席にはデージーの姿がありました。そして水晶を揺らしながら、2人に催眠をかけていました。こうしてケンタとミニィの記憶から、クワガタ幼稚園、カブト幼稚園で起きた放火事件の記憶が完全に消失したのです。
「うふふ、私の催眠通り、事件の事なんてすっかり忘れてる。さあ楽しみにしときなよ。カマキリ幼稚園も恐ろしい事になるんだから。次の放火事件の現場は、予想の上を行く結果になる。皆んな、真っ黒になっちゃうんだから。」
バスを降りるとカマキリタウンに到着しました。カマキリタウンは田舎溢れる街並み。寺院や神社があり古都の風景を残している街です。
「コガネシティとはまた全然違った。雰囲気を持つ街ね。ケンちぃ、見て、鹿がいるよ。こんにちは。」
鹿へ話しかけますが、鹿は言葉を発しません。ミニィの方を見つめると、どんどんミニィの方へ近寄って行きます。
ミニィは鹿の口の毛の部分を撫でるように触ります。すると鹿はミニィの洋服を食べようとしたのです。
「きゃぁぁ、それはやめて。」
ミニィは鹿を追い払おうとします。すると鹿も直ぐに、居なくなって行きました。ミニィは、笑いながらスカートの裾を戻しました。鹿はそのまま他の観光客のいる方に走っていくのでした。
古都へ向かう道路を歩いていると、ケンタの近くに鹿が近寄って来たのです。ケンタは、鹿の頭を撫でました。ミニィはカマキリタウンの寺の近くにある鹿煎餅売り場へ行くと亀の店員に言います。
「すみません、この鹿煎餅をください。」
「はい。200円です。」
ミニィは200円払い鹿煎餅を購入しました。鹿煎餅の束を千切ると、鹿の群れがいる方へと走って行きます。その鹿の群れは、舌を出しながらミニィの方へ近づいて行きます。ミニィは鹿煎餅を地面に巻き始めました。そしてケンタの腕を取ると一気に走り出します。
「ケンちぃ、逃げるよ。鹿が追いかけてくる。一回あの煎餅をあげちゃうとずっと集まってきちゃうんだよ。」
「おいおい、凄い数だね。」
ケンタとミニィの後ろには鹿が群れで追いかけて来たのです。ケンタとミニィは真っ直ぐ走ると、隣のソフトクリーム屋の前で右に曲がりました。すると鹿達は真っ直ぐに走り去っていくのです。ケンタは汗をかいていたのです。はあと息をしているその時、ミニィがケンタの方に近寄ります。そしてケンタのほっぺに優しくキスをするのでした。そのままケンタもミニィの方に近寄るとミニィの唇にキスをするのでした。ミニィはケンタに言います。
「もうケンちぃを離さないもん。」
「僕もだよ。ミニィ。ねえ、折角、カマキリタウンに来たんだから、大仏でも見に行かないかい?ゾウの大仏があるんだよ。」
「この近くだっけ?」
「ここから歩いて5分くらいの所にあるから。行こう。」
そう言うと、ケンタはミニィの手を取って大仏があるお寺を目指します。裏路地を出ると、先程歩いたカマキリ公園があります。カマキリ公園を真っ直ぐ左に進むと、見えて来たのは巨大なお寺の門です。カマキリ寺の南大門をくぐると、ケンタとミニィは沢山並んでいる観光客の後列に並びました。目の前に見えて来たのは巨大な大仏です。
「これが大仏様?想像していたのよりめちゃくちゃ大きいのね。手が6本も生えている。」
その大仏は、巨大な象であり手が6本も生えていたのです。そして、その仏の目は半開きでしたが、少しずつ開いていくような気がしたのです。大仏を前にして2人は静かに祈ります。




