デージーの過去
「あんたの母親、メフィは、あたしのママが経営してる居酒屋にやってきた。」
その日、メフィはデージーの母親が経営している居酒屋に飲みに来ていました。1人でした。
ミニィとミィは家にお留守番をしていたのです。その居酒屋でデージーの母親とマリンの母親は一緒に働いていました。
「いらっしゃいませ!あら、ミニィちゃんのお母さん。
どうしたんですか?1人で飲み?」
「あー、デージーちゃんのお母さん、偶然ね。
今日は飲みたい気分でね。お酒作れる?ウーロンハイで!」
「はい!!」
デージーの母親はお酒を作りました。だが、そのお酒を飲んだマリンの母親は突然激昂して、立ち上がったのです。
「ねえ、あんたさ、こんなまずい酒しか作れないの?居酒屋だったらもっと美味しい酒作りなさいよ。折角、あたしは美味しい酒飲もうと思ってたのに、あたしの事イラつかせやがって!!!!」
「すみません、でも、どこがまずいんですか?教えてください。教えたら治しますから!」
「メフィさん、良い加減にしないと警察を呼びますよ」
マリンの母親は、メフィに近づきました。するとメフィは気が狂ったように激昂して、突然持っていた鈍器でマリンの母親を殴り付けたのです。マリンの母親はその場で倒れました。メフィの目は正気を失っていました。そして、メフィはデージーの母親の方に近寄って来ました。
「やめて、来ないで!来ないで!」
「こんな不味い酒飲ませやがって、子育ての発散に来ようと思ったのによ!あんたも殺してやるよ!」
メフィはデージーの母親を鈍器で撲殺しました。そしてその日、デージー家にいたデージーの妹もメフィによって殺されてしまいました。まだ幼稚園児でした。学校を終えて帰って来たデージーは変わり果てた母と妹の姿を見て号泣しました。
「誰が、ママとマーガレットをこんな目に!ママを返してよ!!!
うわぁぁぁ!!!!!」
デージーは母親と妹を殺された日、マリンの家に行きました。マリンは帰って来ない母親の帰りを待っていました。
デージーはピンポンを押しました。
「デージー、どうしたの?どうしたの泣いちゃって。」
「マリン、ママと妹、それにマリンのお母さんが死んじゃった。殺されてたの。悪い奴のせいで!」
「嘘でしょ。ねえ、マリン、マリン、嘘だと言ってよ!!!!ねえ!!!」
そして犯人はメフィだとすぐに分かりました。しかしメフィは精神病を患っており逮捕後、すぐに精神病院に入院になったのです。その事を知ったデージーは納得がいきませんでした。
「許せない、あたしのママと妹とマリンのお母さんを殺しておいて、罪にならないなんて。復讐してやる。あいつの娘から幸せを徹底的に奪ってやる!!!」
「あんたの母親は私の家族を奪った。だから、私はあんたをいじめた。あんたの母親のせいで、私の居場所は失われんだよ。」
その理由を聞いたミニィは動揺しました。
「ごめんなさい。私のお母さんのせいで、そんなの知らなかったよ。でも、だったら私を殺してよ。他の何の関係のない子供達を殺す動機は何?あたしが子供達と仲良くするから?
その子供達に何の罪もないじゃない?」
「あんたを殺せばそれでスッキリするけど、あんたの幸せを奪うって言うのはそう言う事よ。あのケンちぃと仲良くしておくのね。そのうち、あんたにもっと苦しめてあげるから!」
「待って!デージー!」
気がつくとデージーの姿はありませんでした。ミニィは彼女の後を追おうとしてロビーまで追いかけましたが、デージーは存在を消してしまったのです。ミニィは慌てて部屋に戻りました。そして部屋の鍵を閉めると荒い息を立てました。もしかして自分が殺されるかもしれない。ミニィは部屋の中の布団に入ると寝込みます。物音に気が付いたケンタは、目を覚ましました。
「ミニィ、どうかしたの?ミニィ?
大丈夫。」
「ケンちぃ、助けて、デージーが私の前に現れて、事件を起こす理由を話したの。私のお母さんが、デージーの母親を殺したからその恨みだって。私もうどうしたら良いか分からないよ。デージーは復讐の為に私の幸せを奪う事をするなんて。私、もう逃げられない。」
「大丈夫だよ。僕が付いているから、大丈夫だから。」
「ありがとう。ごめんね。」
ミニィはケンタに抱きつきました。ケンタの身体はとても暖かく、ケンタの優しさにミニィは完全に甘えてしまっていました。ミニィは、ふと思い出します。
「私、チーズケーキ食べよう。甘いものを食べれば、きっと少しは気持ちが落ち着くよね。」
まだ買ったけど食べていなかったチーズケーキがあるのです。ミニィは紙袋からチーズケーキを出します。舗装されているパッケージを開けるとチーズケーキを食べ始めました。
甘くて美味しいチーズケーキの味が口の中に広がります。
その予想以上の美味しさにミニィのほっぺたが落ちそうになります。だけど辛かったのか、ミニィの目からは自然と涙が溢れ出てきました。
「ミニィは泣いてばっかりだなあ。ほらじゃあ僕もチーズケーキ食べるよ。大丈夫だって。元気出せよ。僕は君の味方だから。」
「だってケンちぃ、私のお母さんのせいで、デージーがおかしくなってそのせいで、こんなに沢山の私達よりも小さい子供が亡くなった訳でしょう。じゃあ私のせいで亡くなったようなもんじゃん。」
「でもな、ミニィ、逆に考えてみろよ。親を失った奴が、そんな理由で、復讐するなんてどう考えたってデージーがおかしいに決まってる。だって、ミニィの母親はどうしょうもない母親だったかもしれないけど、君は優しくて誰よりも他人に優しくできる最高の友達だよ。僕はそんな君が好きだから。」
「何でそんなに優しいのよ。」
ミニィにとってケンタの優しくさりげない声かけが心にずっしりと響きミニィにとっての支えになります。ミニィはケンタの言葉を聞き、少し元気が出てきました。そしてミニィとケンタは一緒に温泉に向かう事にしました。いつデージーが待ち構えているかも分かりません。ミニィとケンタは部屋を出て、温泉へ向かいます。そして男湯と女湯の前で分かれます。
「じゃあね。またあとでね。ケンちぃ。」
「うん、くれぐれも気を付けてね。」
そういうと、ミニィはコガネ温泉の入り口へと向かいます。コガネ温泉は広々とした大浴場になっており、炭酸泉や源泉掛け流しの温泉があるのです。温泉の中で真っ黄色な毛を毛繕いするのが至高なのです。温泉に浸かりながらミニィは考え事をしてしまいます。自分は犯罪者の娘なのです。家に戻ればまた家族に危害が加わるかもしれない。そして、ミニィは考え始めます。
(でも、私の夢の中に出てきたカリンって一体誰なんだろう。もしこの世界が作られた世界だとしたら、本当の世界は)
ミニィは温泉に入ると気持ちよさそうに外を眺めました。
すると目の前を何やら美しいモンキチョウが飛んで来ました。その美しいモンキチョウは喋り出しました。
「あなたは、自分の運命に葛藤しているわね。どう自分が生きて良いのか、どう考えても分からない。苦しい、辛い。そしてそれを救ってくれる友人すら傷つけてしまった。」
「あなたは、もしかしてモンキチョウの妖精さん?私の心が読めるのね。そうよ。ケンちぃの事傷つけたくないのに喧嘩をした時は酷く暴力や暴言を吐いてしまう。それにケンちゃんだって苦しくて悩んでいる筈なのよ。それにデージーやマリンだってあれほど私を虐めてきたのに、それには深い理由があったって事を知ってしまったら。もう、言い逃れはできないよ。どうすれば良いの?ちょうちょさん。」
「その答えは自分で見つけるしかないわよ。そうあなたは運命を既に選んでしまっているんだから。その運命から抗う事は出来ない。」
そう言い残すとモンキチョウの妖精は羽を静かに鼻音を立てながら、消えていきました。ミニィの目からは光が消えかけていました。




