コガネシティに向けて
黄うさぎのミニィは犬のケンタの方を見ると視線を逸らします。ケンタはミニィにこう言いました。
「ミニィ、待って、まだ決着はついていないよ。僕は、君が信じられなくなった。君は、感情的になると声を荒げて暴力を振るうんだね。君は女の子らしさを捨てまるで性格が変わったように。」
「何が言いたいのよ。私だって感情を持った動物よ。当たり前でしょ。あんただって私を殴ったじゃない。お前が、ちゃんと見てればコウちぃは死なずに済んだ。
あんたいい加減に自分の非を認めなさいよ。お前のせいで、お前のせいで!」
強めの口調で声を荒げたミニィはケンタの頬を強く殴りました。ミニィの拳がケンタの頬に直撃するとケンタはその場に倒れました。倒れたケンタの胸倉を掴むと、もう一度ケンタを殴ったのです。だが、ケンタは負けずに立ち上がるとミニィの頬を殴り返しました。殴り返されたミニィはケンタの耳を掴むと公園の地面にぶつけたのです。ケンタは激昂するとミニィの耳を掴み、ケンタとミニィは取っ組み合いになりました。ミニィはケンタを押さえつけると、大きな声で怒鳴り付けます。
「お前のせいで、皆んな死んだ!ほら痛いかよ!!言えよ!そうやって、怒りに任せて、暴力しか震えねえのかよ!!
てめえはよ!!だったらしゃしゃり出てくんじゃねえよ!クソ犬!!!!」
「うるせえんだよ!!!てめえって言うんじゃねえよ!!!
いじめられて酷い目にあった癖に、逆上かよ!!そうやって、逃げ続けているからお前は負けっぱなしなんだよ!!!
まずはごめんなさいじゃねえのかよ!!コウイチは、僕のせいで死んだ訳じゃねえぞ!!!」
ケンタはミニィの頬を強く殴りました。だが、それに負けずにミニィもケンタの頬を殴り返します。そしてケンタを蹴り飛ばすとミニィは大声で叫ぶのでした。
「しつけえんだよ!てめえは!どうしたのよ?反撃もできねえじゃねえかよ!あんたが喧嘩をやり返したって私は、暴力で返すだけだよ」
ケンタは言います。流石に殴り合いでやられすぎたのか少しは冷静になりましたが、まだ頭に血は登っていました。
「お前だって冷静に話し合いで解決できねえのかよ。そうやって殴れば全部解決なのかよ。ミニィ、汚い暴言を吐いてそれで解決すればカブト幼稚園やクワガタ幼稚園の子供達は戻ってくるのか?もうやめようよ。僕達仲間じゃないか。」
怒りで我を失っていたミニィはふと冷静になります。目の前には傷だらけのケンタの姿がありました。ミニィは痛みを抑えるとケンタに対して口調を変えました。
「やっと本音をぶつけてくれたね。ごめんね。きつい言い方をして、これまでケンちぃとここまでぶつかり合うなんて出来ると思えなかった。ごめん、だって私こんな子だから、無能な馬鹿うさぎだから。もうわからないんだ。何が正しくて、何を信じれば良いのか。もう私は誰かを助けようとすると苦しいの。」
そのミニィの言葉を受けて、ケンタは言葉を詰まらせました。そして言いました。
「それって仲直りのつもりかよ。何だよ。怒ってもう2度と口聞いてもらえないのかと思ったよ。君の情緒不安定っぷりにはうんざりだよ。知ってるよ。君が無能なんかじゃないって事も。これからも一緒に乗り越えよう。拳で語り合ったらそれは親友だ。ごめんね。」
ケンタは拳を差し出しました。その拳をミニィも受けます。
ミニィはケンタと仲直りをしました。そしてケンタはミニィを抱きしめました。だが激しい痛みが2人を襲います。
2人は救護センターで傷の手当てを受けるとため息をつきました。
「ミニィ、よく犯人がわかったね。デージーの奴が、他の街で何かしでかすような事があったら今度こそ僕達が守ってあげなきゃならないじゃないかな?」
「その必要あるのかな?もう、2度も助けられなかった。教訓なんて生かして置く必要もない。私はもうおかしくなっちゃったの。また起きてしまってももう防ぐ事はできないわよ。もうやめましょう。デージーが事件を起こしても私は知らない。ケンちぃ、もう私、疲れちゃった。」
ケンタがミニィの表情を見ると黄うさぎの彼女の目は赤く死んだ魚のような目をしています。ケンタは、ミニィに言います。
「どうしちゃったんだよ、ミニィ!」
「私は、母親を殺した犯罪者、もう限界。コガネシティに行きましょう!あそこならこの疲れた心も安らぐと思うから。もう考えたくない。休みたいの。」
「コガネシティか、結構都会だからそれなりに癒される場所はあると思うだけど、ミニィはコガネシティで何をしたいの?」
「お好み焼きを食べたい。ここのところ、事件ばっかりで全然食べれていなかった。お好み焼きとハンバーグが食べたい。ケンちぃだって好きでしょ。」
ケンタとミニィの2人は、コガネシティ行きのバスを待っていました。ここからコガネシティまではバスで行く事が出来ます。バス停で待っている中でミニィは夢の世界の話を始めます。ここ最近おかしな夢を見るという事。
「ケンちぃは、私の名前がミニィだって事分かっているよね。ここ最近おかしな夢を見るの。その夢の世界では私はうさぎの姿をしていないの。私は全然違う生き物だった。」
「つまりこの世界にいるはずのない、存在になっていたっていう事か?それは夢の世界だから、架空の世界の話なんじゃない?旅に出れば、園児連続放火殺人事件ばかりだし、ミニィも疲れているんじゃないかな?」
時間が来るとやって来たのはバスではなくネモフィラザライドがやってきました。ネモフィラの形をした乗り物です。動かしているのはネモフィラの妖精です。ネモフィラの妖精は2人に声を掛けました。
「うわぁ、ネモフィラザライドだ。ここからでも走っているのね。ねえ、不思議じゃない。私達を見つけてくれたなんて。」
「コガネシティまで行かれますか?どうぞ、お乗りください。」
ネモフィラの妖精に導かれてネモフィラザライドに乗ります。豊かな音楽が流れると突然道路の周辺のネモフィラが輝き始めました。そして光出すと辺りを照らし始めました。すっかりと夜になっていました。するとミニィは笑いながら言いました。
「もしかして私達を歓迎してくれているのかな?ふふふ、可愛い世界だね。お花の妖精さん達は夜の世界の方が好きなのかな?」
「そうみたいだね。でも、こんな僕達の運命をきっと照らしてくれるような存在なんだよ。」
2人は手を繋ぎました。ミニィとケンタの2人は夜のカブトシティを後にしました。




