デージーの逆襲
カブトシティのシティホールに棺が何個も並びました。そのシティホールには園児達の遺影が並び皆んな愛らしい明るい笑顔を振り巻いて笑っています。その子供達がかつて生きていたという証。だがその棺の中に眠る遺体は、その殆どが黒く焼けてしまっており、原型を留めていない遺体ばかりだったのです。追悼の会が行われると涙を流す遺族の姿が映っていました。ミニィはそのお葬式に参加しました。だがミニィが現れた瞬間に周囲の親達が冷たい視線をミニィに向けました。そしてヒソヒソ声で話しかけます、
「あの子よ、あの子があの日火事の現場に居たっていう黄色いうさぎの女の子。語り部として来たっていうのうちの子が死んで何であの子が助かっているのよ。」
「ねえ。あの子、やっぱり口だけの無能なうさぎだったのね。」
ミニィは棺の中を覗きました。あの日まで笑っていたのに、あの日まで喋っていたのに。あの日一緒に遊んだのに。あの日の記憶が蘇る度にミニィの中で思い出が過りました。
ミニィは園児55人の遺体1人1人に花を手向けました。
彼女の表情は険しく笑顔を失っていたのです。笑顔を失ったミニィの目からは涙は流れる事なく。
(何でこの子達が。)
雨が降り注ぐ中、テレビでニュースが流れました。
カブト幼稚園の園児達の葬儀が済み、園児の保護者達は幼稚園の生き残った先生達に対して緊急保護者会を開いたのです。リーナの母親は涙を流しながら話し始めました。
「リーナは本当に優しい子でした。友達思いで、明るく私にとっては太陽のような存在でした。あの日の朝、ママ行ってくるねって行って笑って幼稚園に行ったんです。それからリーナは帰ってこなかった。これが受け入れられると思いますか?私があの子と再開した時あの子の下半身はもう焼けてしまっていたんです。あなた達は、何故子供達を避難させなかったのですか?返してください。私の娘を。
あの日お泊まり会担当の先生は子供達を外に避難せようともしなかったって聞きました。先生達がちゃんとしていれば、リーナは助かったのかもしれない。」
「その件については申し訳ありませんでした。しかし避難誘導をしなかったというのは、事実と異なります。私達は、ちゃんと誘導を行ったのです。しかし出口が崩落して、外に出れなくなった。」
「言い訳をしても、子供達は生き返らないんですよ。なら代わりにあなた達が死んでください。私達保護者はそれくらいの気持ちなんです。私は娘を3人も火事で失いました。
火事の原因は私は放火じゃないかと睨んでいます。この中の先生方の誰かが犯行に及んだ。私はそうとしか考えられません。」
するとカルターン先生はリーナの母親の発言に反論しました。まるで私達を犯人扱いしているような言い方。流石にいくら保護者でもそんな言い方をされたら元もこうもありません。
「違います。私達にそんな犯行を起こすような者はいません!誓っても私達は子供の命の事を考えて、仕事に臨んでいます。」
「嘘を言わないでください!!」
「待ってください!!」
その時叫び声がしました。ミニィです。ミニィが入って来ました。ミニィは、ゆっくり歩いてこちらへと向かっていきます。その表情は真剣でこちらを見つめています。リーナの母親は言いました。
「ミニィちゃん!」
「幼稚園の先生は犯人ではありません。今回の放火事件は、とある動物が起こしたんです。犯人はこの幼稚園の動物達に催眠を掛けて、眠らせている間にガソリンをばら撒いた。そしてガソリンに引火して多くの園児達が犠牲になってしまった。その犯人は、先生に化けています。」
「え?」
先生達が驚きの表情を見せて行くと、ミニィはカルターンに近づいていくのでした。カルターンはミニィを見つめます。
そしてミニィは言いました。
「カルターン先生は火事で死亡して遺体が発見されていない。なのにあなたが生きている筈がない。私を誤魔化そうたってそうは行かないわよ。デージー!!!」
「ふふふ、よく分かったじゃん。流石頭だけは良いんだから。ミニィ。」
そしてカルターンの姿はキツネの女の子デージーへと変わりました。その姿を見た保護者達は驚きました。
「「「まさかこんな女の子が犯人だったなんて。」」」
「大人のあんた達って馬鹿だねー。自分の子供の命すら守れないのに、それで保護者を名乗る意味ってあるの?
全く弱い存在。甘ったれんじゃねえよ。そんな存在価値もねえんだよ!!!」
「よくも、娘を返して!よくも娘を!!」
リーナの母親は、デージーを殺そうとナイフを持って走っていきました。しかしデージーは素早く移動をするとリーナの母親を思いっきり殴りつけたのです。そしてデージーは持っていた水晶を振ると、ミニィは催眠術にかかりました。一瞬、意識が持っていかれそうになると、再び追うとデージーの姿は無くなっていました。犯人は明らかになったもののデージーは逃亡していったのです。ミニィは悔しがりました。
「後、もう一歩の所だったのに。デージーの奴は催眠術を持っているから、絶対に次に会ったら捕まえてやるんだから。」
保護者達は、ミニィの方にやってくると言いました。
リーナの母親はミニィを抱きしめたのです。リーナの母親はミニィに優しく言いました。
「ミニィちゃん、娘の為に犯人を見つけてくれてありがとう。娘を失った悲しみは辛いけど、あなたが娘と会って遊んでくれたって聞いて、娘はきっと喜んでくれていると思います。きっと警察があの犯人を捕まえてくれるって私は信じているから、あなたもしっかり休んでね。」
その言葉を聞きミニィは涙を流して言いました。ミニィの涙は雫のように床に向かい流れ続けました。流れ続けるその涙をリーナの母親は拭き取りました。
「リーナちゃんのお母さん、ごめんなさい。私はリーナちゃん達を助けてあげられなくて。お母さんの思いはきっと天国にいるリーナちゃんに届いています。私が必ず犯人を見つけてこの手で捕まえます。」
「うん。その想いだけで十分よ。」
ホールを出てミニィは逃げるように街を飛び出しました。コガネシティにデージーはいるかもしれない。真っ直ぐに走り出した先の公園にはケンタの姿がありました。ケンタはミニィの姿を見ると言います。
「ミニィ」




