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砂のお城

 犬のケンタと黄うさぎのミニィの2人はフラワーミュージアムの近くの公園でレッサーパンダの女の子のリーナと仲良くなりました。ケンタはリョウタロウというクマの男の子達と鬼ごっこをして遊んでいます。

ミニィはリーナと一緒に公園で遊んでいました。


「ミニィちゃん、私と一緒に砂のお城作って遊ぼう。」


「うん、良いよ。じゃあどんなお城が出来るか楽しみだね。」


リーナと一緒にミニィは砂を固め始めました。ミニィも砂を掘っていき中心に集めていきます。バケツに砂を入れ始めると型を取って行きます。リーナは公園の中心にある蛇口を捻りました。すると水が出てきました。別のバケツに組んだ水を入れるといっぱいになるまで入れます。そして重いバケツを持つと公園の砂場に戻ってきました。


「リーナちゃん、水組んで来てくれたんだね。じゃあ水入れようか。」


「お姉ちゃん、どうしよう。水入れすぎちゃった!」


「大丈夫だよ。余ったら捨てちゃえば良いんだから。」


ミニィはそう言うと、砂が入ったバケツの中に水を入れて公園の地面に落ちていた木の枝を拾いました。枝を棒代わりにして砂を突きます。バケツがいっぱいになるまで繰り返しました。ミニィとリーナの2人でバケツの周りを枝で叩いて行きます。


「じゃあ持ちあげるよ。せーの。」


2人は砂の入ったバケツを持ち上げると土台を作りました。

好きな形へと形を整えて砂のお城を作って行きます。手はどろんこになりながら、リーナは綺麗なお城の土台を作って行きます。ミニィはリーナに言いました。


「リーナちゃん、お城作るの上手だね。本気で作りたいって気持ちが伝わってくるよ。」


「お姉ちゃんも初めてじゃないって感じがする。お姉ちゃん誰かと作った事あるの?」


「うん、妹と作ってたよ。」


ミニィはミィと砂を作っていた事を思い出し始めました。クワガタ幼稚園の砂広場で作ったり、公園で遊んだ時に一緒に作ったり。ミィがミニィに言った言葉を思い出したのです。


『お姉ちゃん、下手だね。砂の形がぼろぼろじゃん。私、もっと綺麗に作りたかったのに。」


『下手って言わないでよ。ミィが一緒に作ろうって言ったんだから、下手でも上手でも一緒に作る事が楽しいんだよ。』

そんな楽しかった思い出を思い出しながら、ミニィは喋り出しました。


「もうね、妹はいないの。お星様になっちゃったんだよ。天使になっちゃんだよ。私より先にね。でも、私の記憶の中ではいつでも可愛い姿のまま。」


「そうなんだ。死んじゃったんだね。リーナもね、お父さん、病気で死んじゃったから、辛い気持ちわかるよ。

お姉ちゃん、ほら出来たよ。砂のお城!」


「うわぁ、綺麗に出来たね!」


「やったねー!」



ファンタジーの世界にあるような綺麗なお城が完成したのです。


「リーナ!何してるの?」

するとリーナの元に2人の女の子がやってきました。茶色のネコの女の子とイタチの女の子でした。リーナは答えます。


「お姉ちゃんと砂のお城作って遊んでいたの!」


「そうなんだー!!お姉ちゃん、黄色いうさぎのお姉ちゃんなんだ、可愛いねー!!私、ラナ、この子は幼稚園のお友達のエレナちゃん!」


「うちはイタチのエレナやねん、砂遊びなんて、お子ちゃまの遊びやねんなぁ、」


するとミニィは一瞬心の中でイラッとしたのです。エレナのませたような口調が気に食わなかったのでしょうか。しかも関西弁。


(なんなの?このイタチの女の子、腹立つー、マセガキか!!)


おやお迎えでしょうか。


「リーナ、帰るわよ!」

「ママー!」


リーナの母親がやってきました。レッサーパンダの女性です。リーナはお母さんの方へと走って行きます。そしてお母さんの方へと近づくとお母さんはリーナを抱っこするのでした。ミニィは気が付きました。このお母さん、どこかで見た事があるなと。するとリーナの母親はミニィの方を見ると声を掛けました。


「もしかしてミニィちゃん、久しぶりね!私、クワガタ幼稚園のルオンとリオンの母です。」


「え?もしかしてルオンちゃんとリオンちゃんのお母さんですか?じゃあ、リーナちゃんって。」


「はい。リーナは妹です。クワガタ幼稚園があんな目にあったから、リーナはここに通わせているんです。まさか、ここで出会えるなんてね。良かったら、家に来ない。すぐ近くなの。」


「はい、ありがとうございます。」


「良いわよ。ご馳走してあげる。」


ミニィはリーナの家にやって来ました。家は至って普通のお家です。だが家に入ってすぐに、リオンとルオンの遺影が目に入ったのです。2人は写真の中でにこりと笑っていました。ミニィは2人の写真を見つめて手を合わせました。

その時リーナの母親は泣き崩れていたのです。強がっていたのに写真を見ると、余計に悲しみが癒えていないのでしょうか。


「ミニィちゃん、ごめんね。辛いのはずっと隠そう、隠そうって頑張っていたけど、それでもやっぱりもうリオンとルオンに会えないのは我慢できなくてね。あの子達が赤ちゃんの頃から育ててきたのに。死んじゃったら、あんな姿で。」


「ママ、やめてよ!もうしないって約束したじゃん!

お姉ちゃん達の話はしないでよ!辛くなるから、ミニィお姉ちゃんに失礼だよ。」


リーナも思い出してしまったのです。感情が昂っていたのか、黒焦げになった姉達の最後を見た時、リーナは泣き崩れて恐怖に怯えていたのです。リーナと母親とミニィの3人でご飯を食べながら、夜になりました。


「ご馳走様様でした。」


「ねえ、ミニィちゃん、良かったら、明日、カブト幼稚園に遊びに来てね。またリーナと遊んであげて。」


「はい!行きます。火事の事も語り部として話さなきゃいけないから、お邪魔しました!」


「おやすみ、ミニィお姉ちゃん。」


ミニィはリーナの家を離れました。そしてケンタが泊まっているカブト温泉にそのままバスで向かいました。部屋に入るとそこではケンタが待っていたのです。


「ミニィ、遅かったね。リーナちゃんと遊んでいたんだ?」


「うん。ケンちぃも来れば良かったのに。あの子ね、お花の知識も凄いし、砂のお城を作るのも上手だったからなあ。フラワーミュージアムのお花凄く綺麗だったね。」


しかしミニィとケンタは再び地獄に巻き込まれていくことをその時は知る由もありませんでした。






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