葬送
ケンタはデージーの振り下ろした金属バットを手で持つとデージーを蹴り飛ばしました。彼の中には今激しい怒りが湧いています。デージーに対して言います。
「マリンってやつの友達はろくな奴がいないんだな、よくわかったよ。女の子を寄って集っていじめて、それで平気な顔をしている。」
「なんだよ、ゴミ犬がよ、寄生虫の引っ付き虫かよ。あーお前か、ミミィを連れて歩いているって言う犬はよ。お前さ、クワガタ幼稚園で仲間死なせたんだろ。園児も守れなかったカスが、今更ヒーロー気取りかよ。死なせたんだろうがよ。」
「守れなかった?正直僕は火災が起きた場所にいなかったからそうかもしれないな、ただその話は別だ。僕はいじめが大嫌いだ。いじめる奴は例え女の子であっても容赦はしない。」
「ふーん、じゃあ、さっさと死ねよ、こら!!」
デージーは何度もケンタを蹴り飛ばしていきます。しかしケンタはそれを何度も避け返します。腕を盾にして次の瞬間ケンタはデージーを蹴り飛ばしていました。そしてデージーが反撃できない隙に金属バッドを持つとデージーに目掛けて振り下ろしました。鈍い音が響き渡るとデージーはその場で気絶しました。デージーは動かなくなったのです。
ミニィは、傷だらけになって怪我していました。ケンタはミニィを背負うと言いました。
「ミニィ、今すぐ家に来るんだ。そして手当てするから。」
「ケンちぃ。」
「どうして私をここまで助けてくれるの?私なんか。」
「ミニィは、自分を責めすぎだよ。君がこれ以上傷つく必要なんかない、ずっと1人で苦しむのは僕には耐えられない。親戚のおばさんはどうしたの?ミニィがこんな目に合っているって言うのに一体何を。」
ケンタは家にミニィを連れて返しました。ミニィは出血が酷いです。ケンタの母親マルシアはびっくりしています
「ケンタ、ミニィちゃん、なんて酷い怪我なの。誰にやられたの?」
ケンタはミニィをソファーで寝かせました。
「デージーとかいういじめっ子だ。母さんガーゼとアズノールとラップを持って来て止血してガーゼ保護しないと。」
「叔母さんは何でいないんだよ。」
「叔母さんは、警察に事情長袖で呼ばれちゃったの、、、
ごめんね、ケンちぃ、私がバカで弱虫だから、こんな目に。」
ケンタはガーゼ保護して止血するとアズノールという軟膏を塗布してガーゼで患部を保護しました。ミニィに包帯を巻くとミニィをそのままベッドへと寝かせました。
ケンタのお父さんが家に帰ってきました。
「ただいま。」
「おかえり、お父さん。」
「ケンタ、火事の事なんだが、コウイチ君だっけ、一緒に旅をしていた仲間が亡くなってしまった事はとても残念でならない。犯人がどうやって幼稚園に忍び込んだかが明らかになった。ケンタが遊んでいた時間から既に幼稚園の裏に忍び込んでいたらしい、爆弾を仕掛けたのは、マリンという犯人が雇った爆弾屋であった。クワガタ幼稚園は防犯が甘かった。防犯カメラの死角を使いマリンは何度も幼稚園へ侵入していたんだ。爆弾屋は工事業者のふりをして天井裏に爆弾を仕掛けた。そしてマリンがコウイチ君にガソリンをかけた時に園児全員が寝泊まりしていた部屋の天井が爆弾により崩落した。これにより園児は生き埋めになり誰も逃げられなくなった。今だに行方は分かっていない。」
「爆弾屋ってそいつは誰なの?マリンとどういう関係が?」
「マリンという女の子はな、母親がいない、ミニィちゃんの母親によって3年前に殺害された。その当時母親が付き合っていた男が爆弾作りをしていた爆弾屋だったんだ。
爆弾屋は警察に逮捕されて全てを吐き出したよ。」
「園長先生は子供達を避難させなかったのは、、」
「園長先生はな、子供達を必死に助けようとした。瓦礫の中怪我をしてでもな、でも時既に遅かった。燃える火が全てを焼き尽くしていったよ。先生達誰もが命を助けようと必死だったんだ。」
「クワガタ幼稚園は防災の対策が全くできていないじゃないか?だって誰も助からなかったのなら、それで必死に助けようとしてたって言えるのかな?僕は一体何の為に旅に出ているんだ。誰の命も助けられないて、僕は本当に無力な人間だ。」
ケンタは苦悩を重ねています。子供を守ろうとして亡くなったコウイチの死を追悼する事しかできませんでした。
ミニィは辺りを見渡すとここは夢の中なのでしょうか。真っ暗なトンネルが先へと続いているのです。そのトンネルの中に向かって誰かが歩いていくのが見えたのです。トンネルに向かって歩く子供達が誰なのかは直ぐに分かりました。それはクワガタ幼稚園の子供達だったのです。子供達に向かってミニィは声をかけるのです。
「待って、皆んな私を置いていかないんで、皆んなそっちにいっちゃ駄目。皆んな、そっちに」
その時誰かがこちらを振り返ったのです。そこにいたのはルオンです。ルオンはミニィの方へとやって来ます。彼女の姿は生前の元気な姿のままです。あの元気な姿を見せてこちらへとやって来ます。エルサが叫んでこう言うのです。
「あ、ミニィお姉ちゃんだ!!!」
しかしミニィの前に来た時突然発見された時への黒焦げの状態に様変わりしたのです。
「助けてってずっと叫んだのに助けてくれなかった。
どうして、どうして、どうして、どうして、人殺し、人殺し、人殺し、人殺し、人殺し、人殺し、人殺し、」
「「「「「「ミニィお姉ちゃんはミィちゃんを守れなかった人殺し」」」」」」
「違うの。待って、皆んな、お願い、ごめんね。こんな事なら私が死ねば良かったのよ。」
ミニィが次に叫んだ時にはミニィの身体に火がつき始めました。そしてミニィは想像を絶する熱さに悶えたのです。
そしてミニィがハッと目を覚ますとミニィは夢を見ていたのでした。ミニィの部屋の前にケンタがいてうたた寝をしていました。ミニィは怪我の手当てによって包帯が巻かれていた事に気が付きました。
再びケンタとミニィがクワガタ幼稚園を訪れた時には幼稚園にはお母さん達が沢山並んでいたのです。そして我が子の遺影を持って幼稚園内に置かれている遺体に会いにいくのでした。我が子の最後の姿を見ようと中に会いにいくとそこには黒焦げになった遺体が横たわっているのでした。その姿を見て泣き崩れていたのです。一人一人の遺体が棺に入れられて出棺されていく様子をケンタとミニィは黙って見ていました。今この場所は地獄と化してしまったのです。リオンとルオンのお母さんが焼けてしまったリオンとルオンの遺体に声をかけるのでした。その声は母親としての優しさに満ち満ちていました。
「熱かったね、苦しかったね。ごめんね。2人とも。。。。
必ず犯人だけはこの手で。。」
ケンタとミニィは彼女達を黙って見守る事しか出来ませんでした。クワガタ幼稚園の焼け跡には花が置かれていました。ミニィはケンタに言いました。
「ねえ、ケンちぃ、世の中には報われない命が沢山あるのね。命が限りあるものだから、その限りある命を大事にして生きていかないと駄目よね。私は負けたくない、こんな不条理で理不尽な世の中にも。だから、コウイチ君の分もしっかり生きなきゃって。そうでもしないとこの世界の涙が増えちゃうだけだよ。」
「それが分かるだけミニィは充分に大人だよ。見なよ、あの遺影に映るコウイチの笑顔も凄く笑ってるよ。
だから旅は続けよう。旅を続ける事で出会いも別れも同じくらい経験をしよう。でも、こういう辛い経験は語り継いでいかないとね。」
ケンタは言います。天気は晴れて涼しい風が吹きます。そんな中でミニィとケンタは手を合わせました。コウイチのお葬式が行われてコウイチの納骨が済むと、ミニィとケンタの2人はコウイチの墓地に行き声をかけました。
「コウイチ、君に出会えて僕はとても楽しかった。
仲間と一緒に旅をするってこんなに楽しいんだね。コウイチ静かに眠ってね。」
「コウちぃ、ごめんね、私は旅を続ける事にしたの、あの放火が起きてから私家にずっといたんだけど、でも、家に閉じこもっても何も変わらなかった。だから旅は続けるよ。
だから天国でも見守っていてね。」
2人はコウイチのお墓に手を合わせて、コウイチを偲びました。




