クワガタシティとマリンの声
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水車船を見終えた黄うさぎのミニィと柴犬のケンタとリスのコウイチの3人は次なる街クワガタシティへとやってきました。山に囲まれた盆地であり、街の内陸部には果樹園があるのです。クワガタシティには釣り堀やクワガタを捕まえられる森があるほかヒノキ庭園と言うシティ最大の庭園があります。クワガタシティのノコギリクワガタ通りにはクワガタシティの名物であるほうとう鍋のお店が何個も並んでいます。
「ようやく着いたわね。クワガタシティ。見てこの広い街。
盆地で空気が綺麗で美味しい場所ね。この街に来たからには釣りもほうとうも食べたいわよね。取り敢えずまずはヒノキ庭園に向かいましょうか?」
「ヒノキ庭園ってクワガタを捕まえたり、ブルーベリーやハーブを食べられるって所だよね。」
ケンタがミニィに聞くと、ミニィが答えます。
「そうよ。夏休みとかの観光シーズンになると家族連れで来るファミリー向けの庭園。ケンちぃやリョウちぃはハーブって聞いた事あるでしょ。ローズマリーやアロマセラピーなんかでもよく使われる香辛料の葉っぱハーブの葉っぱも生で食べられる事もあるけど、後はなんといってもぶどう狩りよ。」
ミニィの解説を聞くとケンタが感心しながら話を続けます。
幼少期に両親に連れられて来た事があったあの時期を思い出します。
「ハーブかぁ。良い香りがするだけじゃなくて、身体にも良いんだよね。きっとヒノキ庭園の名物ツアーだね。まずはヒノキ庭園に行きたいなぁ。」
「いやちょっと待て。折角クワガタシティに来たんだからプールで泳ぎたくないか?」
プールで泳ぎたいと言い出したのはコウイチです。クワガタシティには最大級のアミューズメントパークがありその中にプールがあるのです。あれふと思い出しました。3人とも水着が無いのです。水着が無ければ泳ぐ事も出来ないではありませんか。
「でも僕、水着も持って無いよ。プールはまた今度にしない?僕は釣り堀で釣りでもやりたいなって思ってるんだけど?」
ケンタがそう言うとコウイチが茶々を入れます。そうケンタへの猛烈なツッコミを入れるのです。
「釣り堀で釣りってここの目玉は川魚の掴み取りだぞ。
釣りは他の街でも出来るかもしれないけど掴み取りはヒノキ庭園の限定イベントなんだ。」
「私、掴み取りをやりたい。折角だし、ヒノキ庭園に行きましょう。じゃあリョウちぃ案内して。」
「よし、分かった!ヒノキ庭園まではバスが出てるからバスに乗っていこう。バス停はこっちだ。」
コウイチは地図を頼りにヒノキ庭園行きのバス停を探して歩き始めました。ノコギリクワガタ通りを散策しながら歩き続けるとようやくバス停が見えて来ました。行き先はヒノキ庭園行きと出ています。3人はバスの中に入るとウォッチを端末に翳しました。バスの一番後ろの席を目指して歩きます。バスが発車すると3人は一息を付くのでした。
「バスに乗れたから凄く安心だね。確か5個か6個先のバス停で降りるんだっけ?」
「そうよ。この辺りは盆地だから辺りは畑ばっかりよ。見てあれ全部果樹園なの。今はフルーツ狩りもやってるけど、昔は盗みが酷くて、果実の殆どが無くなってしまったみたいって聞いたわ。」
その時でした。前の方からやって来た猫の女の子がミミィに話しかけて来たのです。
「随分生意気に喋るようになったみたいじゃん。生ゴミうさぎのくせに。」
その声を聞いた瞬間にケンタとコウイチは声のする方を振り向きました。マンチカンの猫の女の子がミニィの方を見て睨みつけていました。
「マリンちゃん。」
「久しぶりね、ミミィ。あんた学校来なくなったと思ったら他の動物達と呑気に遊んでんだ。ねえ、あんた達、そこの白うさぎ、母親を殺したんだよ。親殺しの犯罪者。」
それを聞いたケンタが席を立つとマリンの前に立つと睨み付けました。
「おい、いきなりなんなんだよ。お前は。
お前か、学校でミニィをいじめていたっていうのは?
もしこれ以上ミニィをいじめるって言うんなら僕だって容赦はしないぞ。なんでお前がミニィの事を知ってるんだよ。あの事を。」
「ふーん、あんたミニィの男友達か、当たり前じゃん、ミニィが学校来れなくなったのは母親を殺したから、まあ当然だけどね、あんな母親。ミニィには妹がいたのにその妹を殺した最低の母親、でもミニィはその母親を殺した。
あの母親はね、あたしの人生をめちゃくちゃにしたの。酔っ払って居酒屋で私のママを殴り殺した。だからミニィが憎い。あたしはミニィを生ゴミ扱いしていじめてやったんだから。ねえ、どんな気分、大事な友達がこんな扱いされてたなんて話を聞かされたら、納得いかないよね。」
その時でした。ミニィがバスの席から立ち上がるとマリンの胸ぐらを掴み思いっきり殴りつけたのです。殴りつけられたマリンはバスの窓ガラスを突き破り外へと放り出されました。急に起きた出来事に運転手は戸惑うばかりです。
「お客様、どう致しましたか?
乗客トラブルになるので、おやめください。
急停止します!」
バスの乗客から不安な声が上がります。
「え、何今の音?
誰か投げ飛ばされた?」
「ちょっとやばいって、誰か止めて!」
「やめろ!」
「やばい。
110番しよう。うん、今バスの中で暴力が」
「動画撮っとこう、これは証拠になるし」
「ねえ、ニュースになるんじゃない?」
急停車したバスのドアが開くとそこには怒りで我を忘れてしまっているミニィの姿がそこにありました。コウイチが慌ててミニィの前に行きます。
「ミニィ、やめろ!落ち着け!
こんな奴に仕返しをする必要なんかないんだよ。」
「コウちゃん、どいて、マリンちゃん、あたしを虐めて来た時ってどんな気持ちだった?私の事生ゴミって、呼んでたよね、それってどんな気持ちだった?
おい、、、答えろよ!!!!クソ猫!!!!
てめえが私に対してゴミとかいったせいで、あたしの心はめちゃくちゃにされたんだよ。生ゴミぶっかけるとか狂気の沙汰じゃないよね。」
ミニィはマリンの胸倉を掴むとマリンを殴り付けました。
するとマリンは立ち上がりミニィの頬を更に強く殴り付けていきます。
「はぁー、よくも、私に対してこんな目に合わせてくれたな
、くそうさぎ!犯罪者のくせにのうのうと生きているんじゃねえよ。じゃあ、あんたの事いっちょ前に殺してあげるから。」
その日、楽しかった旅は地獄へと変わったのです。
またお楽しみください。




