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アクアリンクの光のショー

日が沈み、空が群青色に染まるころ。

アクアリンクキアゲハのスケートリンクでは、特別な夜のイベントが始まろうとしていました。


それは年に一度だけ開かれるという、伝説のイベント――

**「氷と光のよる」**と呼ばれる、幻想的なショーの夜。


「うわぁ……見て、ケンタ! リンクが……光ってる!」


ミニィの言葉通り、広いスケートリンク全体が、まるで星の川のように輝き始めていたのです。

氷の表面には光の粒がきらめき、滑るたびに虹のような軌跡がふたりの足元に広がります。


場内が静まり返ると、リンクの中央にひとりのスケーターが現れました。

その姿は、まるで氷の精霊のように美しく、白銀の衣をまとい、顔は仮面で隠されています。


「このショーは、“願いを氷に乗せる夜”。

この街で過ごす者すべての夢が、今、空へと解き放たれるのです。」


精霊の声が響いたとたん、リンクの上空に無数の光の蝶が舞い上がりました。

それぞれが、誰かの「夢」や「想い」を形にしたものなのです。


すると、観客の一人ひとりに、小さな氷の羽が手渡されました。


「願いをこめて、これを氷に放ってください。

その想いが澄んでいれば、蝶が現れ、空へ導いてくれるでしょう。」


ミニィはそっと羽を手に取り、目を閉じて静かに願いました。


――“これからも、ケンタといっしょに、いろんな道を歩けますように。”


そっとリンクに羽を滑らせると、その羽は虹色の光に包まれ、

やがて宙へふわりと舞い上がって、蝶のかたちになって飛んでいきました。


ケンタもまた、静かに自分の羽を送り出しました。


そして――


リンクの中央に、巨大な金色の蝶が舞い降りたのです。

それは街全体の願いがひとつになったとき、姿を現すといわれる「光の蝶」。


観客たちが息を呑み、見守る中、蝶は夜空へと高く舞い上がり、

最後にひとすじの光を残して、星々の間に溶けていきました。


「わたしたちの想い……届いたのね」

「うん。きっと、未来へ。」


ショーが終わっても、リンクには音もなく雪が舞い、

風のような静けさの中で、誰もが心の奥に小さな光を宿していました。


ミニィとケンタも、ふたりだけの余韻の中で手を取り合い、

今夜の空と、これからの旅路を見つめていたのです。

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