キアゲハシティ
陽の光が静かに差し込む朝、ミニィとケンタはようやく――
キアゲハシティの門をくぐりました。
門をくぐったその先には、色とりどりの蝶たちが、まるで待ちわびていたかのようにふたりのまわりを舞い始めました。
「すごい……まるで夢の中に来たみたい……!」
ミニィが目を輝かせてささやきます。
街には花が咲き乱れ、青い小川がさらさらと流れ、遠くには白い風車が静かに回っていました。
どこからか、優しい鈴の音が響き、道ゆく動物たちが笑顔でふたりに手を振ってきます。
「おかえりなさい。峠を越えた旅人さんたちへ、ようこそ。」
黄色い鳩の使者がふたりの前に現れ、深く頭を下げました。
「キアゲハシティは、勇気を持ってここまで来た者を歓迎します。
光だけでなく、影も越えたあなたたちは、この街の仲間です。」
すると、街の中心から大きな鐘の音が鳴り響きました。
カン……カン……カン……
空に広がるその音は、まるでふたりの歩いてきた道のりを讃えてくれるかのようでした。
街の広場には、たくさんの住人たちが集まりはじめました。
ウサギ、リス、ネコ、キツネ、ハリネズミ……
みんな、ふたりを囲んで拍手を送ります。
「ミニィちゃん、ケンタくん、よく来てくれたわね!」
と、優しい声で話しかけてきたのは、白いドレスを着た女王バタフライでした。
女王はふたりに、美しいリースを手渡しました。
それは、キアゲハシティで最も大切な「歓迎の冠」だったのです。
「あなたたちのように、影に向き合う心は、誰もが持てるものではありません。
これからこの街で、どうぞ羽を休めてください。」
ミニィはそっと、ケンタの手を取りました。
そしてふたりは、笑いながら頷きました。
「ありがとう。ここが、わたしたちの“たどりつく場所”だったんだね。」
そのとき、空に一匹の金色の蝶が舞い上がり、まばゆい光を残して消えていきました。
それはまるで、ふたりの旅の続きをそっと祝福しているようでした――。