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その2 浪華世界の北門

(2)



 ――『十三』と書いて『じゅうそう』と言う。


 数字で言えば――『じゅうさん』と発音すべきだが『三』が『そう』として貝塊の如く上の『十』に引っ付いて、滑り音を離さない。

 地名に数字を当てるというのも奇妙だが、この数字は西洋において最も忌み嫌われているのを知らないものはいないだろう。そこにどんな意味を噛みしめるかもまた浪華世界の愛嬌であろうか。


 そんな『十三』の由来には諸説がある。

 それは京下りとしての十三番目の淀川渡し場、もしくは古い大王期の条里制の名残としての十三条――等であるが、しかしどれも定説ではない。

 では現代における『十三』の定説はどうかと言えば、大阪街衢(がいく)の川向うに在って、電鉄の交差する場所として多くの人が乗り降り、そんな人々の享楽を吸い込んだ柳麗な北の盛り場として、堂々たる浪華世界の北門に鎮座していると言える。


 そして『十三』が鎮座していると呼ばれるのに相応しいのは、そこにひときわ際立つ夜の柳営の所為かも知れない。

 その柳営は享楽に酔う人々の足を惑わす狭隘の路地街であり、そこから漏れる燈火が楼閣の如く夜を照らし続ける酒郭。


 酒を呑めば鯨も酔う、ましてや路地に迷い込んだ酔鯨が何処へ逃げれることが出来ようか。

 そんな酔鯨は酔い濡れた唇を開くと、迷い込んだ路地の事を、こう言った。


 ――『卍楼(まんじろう)』、

 そこは鯨も溺れる楼閣と。







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