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【6】リュディーヌを灯台守に

 

シルヴェストルは父の執務室に向かった。この時間に訪れる約束を取り付けている。


「アルドワン伯爵家長女リュディーヌの処遇ですが、半島北西の王家直轄地で現在稼働していない灯台があります。その灯台守として送ろうと考えております。

アルドワン伯爵家は奪爵となり、長女リュディーヌは平民となります。

でもそれでは、直接的に何ら罪のない長女に対してあまりにも罰が大きい。

私に属する従者として雇い入れる形を取り、他の王家直轄である港湾守や森林守、鉱山守と同じように扱います。

平民であることに変わりはないですが、私の直接雇用となりますので一応の身分と仕事の保証となります。

とはいえ、孤独で苛酷とも言える灯台守であるので、被害者のオールストン公爵家も納得できるのではないでしょうか。

後はリュディーヌ・アルドワン嬢も納得できるかですが、それはこれから話をする機会を持ち、理解を得られればと思っております」


「……ほう、北西の灯台か……。あの灯台には前の領主時代から手を焼いていたのだ。

島までの細い道は満潮時にほぼ沈んでしまい、往来できなくなる。

食べ物ばかりではなく、水さえ外から運び込まなくてはならないのに、干潮時であっても海が荒れれば渡ることができないというではないか。

直轄地になってすぐに灯台守を王宮から派遣したが、元の職場に戻してくれなければ辞めると数人が立て続けに辞めてしまってからは、派遣そのものを取りやめていた。

陸のほうに灯台を建設し直すという案も出たが、二年前の干害対策を優先させていたのだ……。そうか、あの灯台に……。

オールストン公爵家は納得するだろうが、一人残された姉本人はどうだろうな」


「これから本人に面会する手筈となっております」


シルヴェストルは、父の表情が厳しくないことに安堵した。

自分が父に話した案が、大きく間違っていなかったということだ。


シルヴェストルは、王太子、そののちの国王の座を強く欲しているわけではなかったが、第一王子という立場に生まれた以上、目の前の道は一本道だった。

この道に産み落とされたのならば、曲がらず戻らず立ち止まらず、ひたすら真っ直ぐ歩いていくほかなかった。

シルヴェストルは、ふと、リュディーヌ・アルドワンの道は急に塞がれてしまったようなものだなと、暗い気持ちになる。

伯爵家の令嬢にも一本道があっただろう。それが、妹の蛮行により行く道の真ん中を大きな岩で塞がれてしまった。

その道に、赤の他人のシルヴェストルが王家の勝手な理由から脇に細道を作ろうとしている。その細道の先に暗い海に浮かぶ孤独な灯台があろうとは、リュディーヌは思いもしないというのに。

シルヴェストルは、自分とリュディーヌそれぞれの一本道のことを思うと、落ち着かない気持ちになった。



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