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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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86:ダチョウのウキウキパレードin獣王国


全国のダチョウファンの皆様、お待たせしました。ダチョウのウキウキパレードin獣王国。ここ獣王国王都スタジアムはとてつもない熱気に包まれております。実況は私ダチョ・カビラ、解説はダチョ澤さんでお送りします。ダチョ澤さん、今日もよろしくお願いします。


はい、よろしくお願いします。


ではダチョウ獣人たちのスターティングメンバーを見て行きましょう。まずはFWにキャプテンのレイス。そして中盤にドM変態のエウラリア、GKに師匠のアメリアと次期族長候補のデレが入っています。それに挟まれるように群れが150、150に別れて入っている感じですね。


レイスが先導しながら背後150を管轄し、後ろのデレたちが残り150を管轄。距離的に手が届かない、もしくは届くまで時間がかかる中央付近をエウラリアが抑える、といった形でしょう。常に得点を狙える、非常にいいフォーメーションと思いますよ。


ありがとうございますダチョ澤さん。そして対する獣王国のスターティングメンバーですが、左右並び集まる獣人サポーターたちが虎視眈々とダチョウたちを狙っています。彼らからすれば単なる見物に近いものですが、対するダチョウたちからすれば興味の塊。なにせ普段新しい街並みに、数えきれないほどの人。


これは厳しい戦いになりそうですよー。


さぁボールはダチョウ側に。今、キックオフです!





ダチョウ獣人ちゃんたちにとって“人間”は、ママから『襲っちゃダメ!』ときつく言われてる存在です。


お腹がペコちゃんな時や、たまに寝ぼけてもぐもぐしかけちゃうときがないわけではありませんが、みんなママに怒られるのはすっごく嫌です。考えただけでとっても悲しくなっちゃいます。なので『なんかつるつるしてて、お腹から上と下に脚みたいなのが生えてる』存在を“人間”として定義して食べないようにしています。


でも“食べないようにしている”だけで、“食べられない”わけではないのです。


ダチョウ獣人ちゃんたちは、とても優しい子たちです。何せ厳し過ぎる高原で生き抜いてきた彼ら。喧嘩をして体力を消耗すれば怖い存在から逃げ延びることはできませんし、みんなに意地悪しちゃうようなワルイコは群れから追い出されて死んじゃいます。つまり優しくて仲良しさんになれる子だけが生き残り、レイスたちの代までその命を繋いできたのですが……。


彼女たちの“仲間意識”は、ダチョウ獣人にしか反映されません。何せ高原には、ダチョウ獣人しか人間はいないのですから。


勿論、一旦仲間や群れとして受け入れた存在は別です。流石に許容値を明らかに超えたエウラリアという変態もいますが、大体群れのリーダーであるママが『この人仲間よー』と通達し、時間を掛けて馴染むことが出来れば『なんか自分たちとは違うけど、仲間っぽい』という判定を受けることが出来ます。


けれどそれ以外は、ダチョウちゃんたちにとって謎の存在、未知の存在です。


なんか沢山いて、弱くて、あんまり美味しくはなさそうだけど食べるところはたくさんありそう。高原から出て来たころはまだ彼女たちのママが口酸っぱくして教えてくれましたし、人間さんたちも身代わりとなるご飯を大量に用意してくれましたので何とかなっていました。いつの間にかダチョウ獣人たちの中で『襲っちゃだめだよねー』という意識が芽生え、ご飯さんことアランさん以外がもぐもぐされかかってしまう、ということは少なくなったのです。



(……大丈夫、だよね?)



彼女たちのママであるレイスはそれを理解していたからこそ、今回のパレードを実行しました。彼女を取り巻く政治的な要因があったことがその決断を後押しした一因ではありますが、子供たちが徐々にその知能を高めているのは確かです。何事も経験、もし失敗したとしてもそれが糧となる。そう思い、街の中に入る決心をしたのですが……。


もしかしたら、少し早かったのかもしれません。


“獣人”という存在は、その名の通り“獣”の要素と、“人”の要素がミックスされた存在です。例えば以前レイスと死闘を演じた先代獣王であれば、ライオンと人を合わせた存在であり、ライオンの顔を持ちながら2足歩行に適した肉体を持っていました。けれど全身は毛に包まれており、手や足も比較的ライオン寄り。獣人たちの種族や、個人差によってその割合は違うようですが……。


ダチョウ獣人ちゃんたちが持つ人の定義。『なんかつるつるしてて、お腹から上と下に脚みたいなのが生えてる』存在と、ちょっと違います。つるつるしてない、つまり肌が毛皮になっている者たちが多い獣王国の獣人たち。そんな彼らは、彼女たちにとって。



「……うにゅ?」

「ふしぎー!」

「はじめてみた!」



そう、未知の存在。


普段のダチョウちゃんたちであれば、まだ踏みとどまれたかもしれません。けれど普段と全く違う場所に、全くの未知の存在。彼、彼女らの“好奇心”、そして“探求心”が強く刺激されてしまいます。しかも獣人の中には、牛などをモチーフに持つ存在もいるため、ダチョウちゃんから見て“美味しそう”と判断されるような人もいるのです。


全員が同じ考えを持っていたわけではありませんが、比較的ダチョウ獣人ちゃんたちの中でグルメに育っている子からすれば……。味が、気になります。


ママから言われていた『人は食べちゃダメ』という言いつけ。とんでもなく怒られてしまうのは理解しているのですが、グルメちゃんの心の奥底から沸々と湧き上がってくる“興味”は止められません。彼らが持つ、人に対してのふわふわとした認識。それと当てはめた時、“獣人”はママの言う“人”と少し違っています。美味しくなさそうなのもいますが、美味しそうなのもいます。



「……じゅるり。」



自然とお口からよだれが垂れてしまうのも、仕方のないことだったのかもしれません。






 ◇◆◇◆◇






「はーい、みんな注目ー。ママの真似してねー! ほらいっち、に!」


「「「いっち、に!」」」



全員を整列させ、同時にさっき言ってたフォーメーション。エウラリアを中央に置き、デレとアメリアさんを後方に置くという陣営を組む。そして両手を挙げて群れ全体に指示を送る。


何事もやってみる、というのは大事だけど何も対策を取らずに突っ込むというのは明らかにダメだ。最悪このパレード会場が虐殺会場になってしまう。恐怖政治を敷くのであればそれでいいのかもしれないが、そもそも私はお飾りの王様というか、そも獣王になることを承認していない。ならば穏やかに行かなければならないだろう。



「右足、左足。交互に挙げて足踏みー! リズム合わせてねー!」


「「「はーい!」」」



手と足を交互に挙げて、行進をさせてみる。私の近くにいた子がそれを真似して、後ろにいる子もどんどんと真似していく。半分ぐらい正確に出来てないというか、挙げる足が反対になってたり、両足を上に挙げて飛び上がってる子もいるが、まぁ良いだろう。楽しそうだし。


これだけ人が居るのだ。まぁ絶対に何か起きる。この会場に集まっている市民側からのアクション、例えば急に私たちの前に出てきて喧嘩売ってきたり、決闘を申し込んできたりする奴は文字通り私が消し飛ばせばいい。けれど私たち側から何か起こしてしまうのは……、ちょっとまずい。


故に私の子供たちにお願いするのは、“遊ぶこと”。ママと同じ動き出来るえらい子誰かな~、作戦である。


強く言っても覚えられない子もいるし、きつく言い過ぎればショックを受けてしまう子もいる。だからこそ成功した経験を持ってもらうために、こちらでコントロールできるように頑張る。少し前まではお歌ぐらいしか有効打がなさそうだったけど、賢くなってきたこの子たちならこういうのもいけるはず。



(……よし! 最初の手ごたえは上々! あとは最後まで歩き切るだけ!)



それに今日は、私だけじゃない!


エウラリア! そっち大丈夫……、あ、うん。なんかお前がいる所だけ子供たちが距離を取って、大きな空白が出来てるけど、準備は良さそうだね。それでデレとアメリアさんの方が……、うん。大丈夫そう。デレも楽しそうに行進してくれてるし、後ろから良い感じの声掛けをしてくれるはずだ。


っし! 覚悟決めて、行ってみようか!



「よーし、出発!」


「「「わー!!!」」」



私の指示に合わせながら、子供たちが歩き始める。


それに合わせて観衆たちが上げる声もより大きくなり、私たちのテンションも自然と上がる。……実はちょっと心配してたんだよね、獣王国のこと。私が倒したあの獣王だが、色々と相容れなかったとはいえ良い奴ではあったと思っている。最後まで自分の国の民のことを思っていたし、強さも十分。私という存在を危惧し、速攻で攻勢をかけて来たってところを見ればこの乱世を生き残るのに必要であろう“戦への勘”ってのはあったんだろう。


全ての民に慕われていたってことはないだろうが、支持率は結構よかったんじゃないかなぁとは勝手に思っている。だからこそソレを殺した私にヘイトが集まってもおかしくないとは思っていた。いくら以前獣王国で起きたアンデッド騒ぎを収めたと言っても、そういう悪感情が無くなることはないって思ってたんだけど……。この歓声を見る限り、とりあえずは大丈夫そうかな?



(……よし、気を引き締めていこう。)



ほんの少しだけ緩んだ気を引き締め直し、同時に体内に眠る魔力を全身に流し込んでいく。と言っても量は少量、魔王換算で上半身ぐらいを体に叩き込み、強化するのは自身の感覚器。頑張ればこの群れ全てを指揮することが出来るが、ちょっと今日は周りに人が多い。何が起きるか解らない以上、群れと観衆。両方を注意するために、感覚を研ぎ澄ましていく。



(今の所、観衆には何も問題なし。んで、ウチの子たちは……、およ?)



ウチの群れの中にいる、沢山食べるよりは美味しい物を色々食べたいっていうタイプの子。この前『お前はグルメだねぇ』って子が、何故か行進しながら大きく口を開けている。そして目線は……、私から見ても“食べたら美味しいかもしれない”と思うような見た目と香りを醸し出している、獣人。たぶん、牛系。



「キャー!!! こっち向いたー!!!」



私たちにどう見られているか理解せず、他の民衆たちと同様に声を上げる獣人の彼女。おそらく民衆たちからすれば、新しい王様が子供を連れてやって来たというお祭に類するイベント。しかも私たちがお目目くりくりのかわいこちゃんということもあって、色々とテンションが可笑しなことになっているのだろう。


グルメちゃんがその声に反応し、より強い視線を送り、より大きな歓声を獣人の彼女が上げてしまう。


完全にロックオンしてますね。こりゃ。



「エウッ!」


「付与行きます! ついでに『硬質化』!」



上半身を切り飛ばされた体内魔力魔王の残り、下半身を分解しその魔力を身体強化へ。


エウがその獣人がいる周囲に『不死』だけでなく、肉体の硬度を上昇させる『硬質化』の魔法を付与する。普段はただの変態だけど、この辺りの素早さというか判断能力の早さは流石特記戦力ってところだよね。


そう考えながら強く地面を蹴り、グルメちゃんの元へ。行進自体はしているのだが、明らかに列から離れて民衆たちの方に逸れて行ってしまっている。この子の後ろを歩く子もつられて逸れちゃってるし、速めに止めなければいけない。故に強く踏み込んだのだが……。


私が成長しているように、この子たちも少しずつ強くなっていたのだろう。私の想定を超える速度で、グルメが動く。目的は、その頭部。



「ちょ!? ストップ! 止まれ! 止まれー!!!」


「あ~~~~「……ぇ。」ん!!!!!」



エウラリアによる魔法が周囲に付与された瞬間。一瞬だけグルメの体がぶれ、件の獣人の眼の前に。彼女が何か言葉を零そうとした瞬間。その口が、閉じられた。



「んむんむ、かちゃい。でもおいしい?」

「! ごはん?」

「ごはんかな?」

「ごはんだ!」


「ご飯じゃない!!! ほらぺ! ぺー! しなさい! お姉さん大丈夫!?!?」



後に続こうとする後ろの子供たちを制しながら、首のあたりをんぐんぐするグルメの口を無理矢理開けて獣人のお姉さんを救出する。エウが放った支援魔法的なものが良かったのだろう。奇跡的に無傷で何とかなったが……、お姉さんの顔が唾液でドロドロになってしまった。


ふ、不死の効果が掛かってるはずだから死んでない筈だけど……。い、息してる、コレ?


まだちょっと食欲の方が勝っているのだろう、もっかいもぐもぐしたそうな顔をしているグルメを片手で抑えながら、お姉さんの口元を触る。口を開け、首を傾けさせることで気道を確保しようとした瞬間、それまで閉じられていた目が、見開かれた。



「く、暗い世界。柔らかい感触。包み込まれるような温かさ。あ、あ、あ! これが、天国?」


「…………?」


「ッ!? そんなに! そんなに良かったのですか!!!」



徐々に恍惚とした顔へと変化していくお姉さんに、文字通り飛んできたエウラリアが彼女の胸倉をつかみ振り始める。ぁあ、そう言えばお前ずっと気持ち悪がられて食われるどころか近寄られてもないからね……。うん? どうしたマイチャイルド。



「まま、たべたい。」


「あの人? だからダメだって。後で何か用意してもらえるようにするから、我慢しなさ……って!」



そう言いながら頭を撫でてやろうとした瞬間、視界に入る、群れの反対側。


何故か子供たちに向かって、大量の果物が投げ込まれており、それを子供たちが口でキャッチし、丸呑みしているという光景が目に入る。



「んぐんぐ。……おいちい!」

「もっかいもっかい!」

「ちょうだーい!」


「え、餌付けしないでくださーい! あと強請るな! 貰っちゃダメって言ったでしょ!!!」



思いっきり踏み込んで、大空へと飛翔。宙に浮かんだ果物を受け止め、投げ込んでいたおそらく青果店の店主さんに投げ返しながら、子供たちに注意する。出発する前にママ言ったよね! プレゼント貰っても受け取っちゃだめだよーって。ご飯も! プレゼント! 入ります! だからダメ!


ッ! というかさっきまで私について来てた先頭の子たちどこ行った!?



「「「いっち! に! いっち! に!」」」


「あぁもうなんかあの子たちだけ先に行ってる! そこの子たちー! 待って! ママちょっと忙しいから! ストップ! 立ち止まって!」


「まま! まま! ちょうだい!」


「あぁ、はいはい。もっと食べたかったのね! わかる、わかるよ! でももうちょっとだけ我慢してね! 店主さん! あとで代金支払うから悪いけど訪ねてきて! ほらみんな! 注目ー! もっかい行進す「お姉様!!!」どうしたエウ!?」


「私も! 私も食べてください!!! 頭から! 頭からお願いします!!! あの方が、とても! とても良かったの! 出来たらもう一度やってほしいと! 私も! 私も!!!」


「…………。はーい、みんな! 行進するよー!」


「「「はーい!!!」」」


「ッ♡♡♡ む、無視されるのも! いい!」



あぁもうカオス!!!






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『ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~』

(https://kakuyomu.jp/official/info/entry/datyojyujin)



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[一言] レイスさんが王様になりたくない理由、納得! 獣王になったら過労死必至 (-_-;)
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