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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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39:ダチョウと空と


「なるほど、こんな感じか。」



そんなことを口ずさみながら、思考を回していく。


昔に比べると結構強くなった私ではあるが、ふと自分が実際どこまで行けるのかと言うのを考えてしまい、現在できることの確認をしている。まぁレイスちゃん単独でのスペックを再確認する、って奴だね。今のところ色々順調だから高原に戻る予定はないし、戻りたくもないんだけど何かのはずみで新しい"場所"を探しに行かないといけなくなる可能性もある。


急に獣王レベルの奴が『大将! やってる!?』みたいなノリで"ご挨拶"してくることがないと言い切れない以上。自分ができることの確認は重要なはず。非常に野蛮だけど、Powerさえあればどんな場所でも生きていけるってばっちゃが言ってた(顔も見たことない)からね、力こそ正義なのよ。


高原にいたころは日々が地獄すぎて考えなきゃ死んでたんだけど、こっちは色々平和すぎてつい怠けちゃうからね。しっかりとしときませんと。



(と言うわけで、私個人の能力は……)


・莫大らしい魔力

・ダチョウでもおかしい再生能力

・魔力放出による疑似"魔力砲"

・空気を操る技術

・人並みの知性

・ダチョウ並みのパワー



とりあえず、こんなところかな。……え? 空気を操る技術が何かって? そりゃ今使ってる『噴式』って奴だよ。やり始めたら結構面白くて、魔力操作の練習をしながら現在お空のお散歩中。子供たちから目を離すわけにもいかないから、そんな遠くにとか高度を高めたりとかはしてないんだけどね? あ、ちょうどいいし下見てよ。めっちゃ可愛いよ?



「とんでるー!」

「すごいー!」

「まま、すごいー!」

「とびたいー!」

「やるー!」



空から手をふる私を見る子供たち。もう滅茶苦茶お目目がキラキラしてる。中には私の真似をしようとして翼をパタパタしている子まで。さすがに何かの技術を覚えられるほど賢くはなってないし、記憶力も強化されていない。ダチョウの脚力だけでぴょんぴょんしているあの子たち。かわいいよねぇ。


とまぁこんな感じである程度のラーニングを完了している。流石に実戦、高原で利用できるほどの攻撃が出せるレベルの習熟は出来ていないが、こうやって空に足場のようなものを作り、二段ジャンプ三段ジャンプをすることは可能になった。空を飛ぶ、というよりも空気を蹴り続けている、と言った方が近い感じだね。



(けど魔力を消費せずに三次元的な戦闘が可能になったのは大きいよね。)



現状私は魔力消費の心配はしなくても大丈夫なのだが、その総量が大きすぎる故か一向に魔力操作の習熟が進んでいない。力任せに攻撃することとかは出来るんだけど、今の私が空を飛ぶために魔力を足裏から射出した場合、宇宙まで飛んで行ってしまってもおかしくないと考えている。流石に酸素どころか空気すらない場所で生存できるとは思わないので、使用禁止だ。


故に魔力に頼らない移動方法が確立できたのは非常にいいことなんだけど……、現状同時の使用が出来ないんだよね。噴式自体は扱えるんだけど、魔力操作が未だ上手く行かず、片方しかできない。今のところは何も困ってないんだけど、空中戦が必要になった時困るので現在お遊びも兼ねて練習中ってワケ。



(さて、話を戻そうか。)



私個人の強さ、その根幹になっているのはやはり『魔力』と、『再生能力』だ。有り余る魔力で押しつぶし、攻撃を喰らったとしても半壊程度なら何とかなる。自分自身でもすでに魔力の総量が把握できなくなってきている現状、自分の継続戦闘能力がどこまであるのかも理解できていない。普通ならばこれだけでも最強を名乗れそうなものなんだけど……。



「"高原"じゃなぁ。」



あそこじゃ地形が変わったり、地表がガラス化するレベルで焼き払われるなんて日常茶飯事。上手くヤバい奴らの生息域を抜けながら生活すれば何とかなる場所ではあるんだけど、上が上過ぎて正直どうにもならないような気がしている。おそらくだけど私が全力で火球を生成し、それこそ全てを吹き飛ばすような攻撃をしたとしても……、『今のは久しぶりに効いたぞォ! お返しだァ!』みたいなテンションで襲い掛かって来そうな奴がいる。


なんか“特記戦力”の話聞いてる感じ、それっぽいのがこの人間社会にもいるみたいだし……。異世界って怖いよねぇ。


……まぁでも、ある程度何とかなる力は手に入れられたと考えてる。魔力がどうやって伸びてるのとか、なんで脳みそ吹き飛ばしても生きてるのかとか色々疑問は尽きないし、全然理解できない。強みを鍛えようにも思いつく方法が自分の脳を吹き飛ばす以外の選択肢しかない以上、できることはあんまりない。現状で満足するのがいいのかね?



「となると、これ以上強くなるためには……。やっぱ魔法だよな。」



おそらくだが身体能力の向上はこれ以上望めない。魔力を流し底上げすることは可能だろうが、肉体の成長はすでに止まっている。地球のダチョウと同じように、私たちダチョウ獣人も大体一年ぐらいで大人の体を手に入れることが出来る。個体によってはもう少しかかる子もいるけれど、二年以上はかからない。つまりこの体が成長することはおそらくないだろう。


となると、自身の強さを高めるには魔法関係をどうにかして伸ばしていくしかない。魔力操作を高めることが出来れば、色んなことが出来る。身体能力強化の質を向上させたり、現在のメイン火力である『魔力砲』の威力増強、そして未だアメリア師匠に禁止されている属性魔法系の習得に、そのほか便利な魔法。使いこなすことが出来ればより多くの扉が開くわけだ。


まぁ私その最初の所で躓いてるんだけどね?



「ど~も詰まっちゃってるんだよねぇ。魔力操作むずかち。」



アメリアさんに見て貰っている感じ、普通の人と同じくらいの操作は出来ているとのこと。けれど私の魔力が大きすぎるが故に、他の人が扱うレベルの魔力量を私がしようとしたら、滅茶苦茶きめ細やかな作業が求められる、って感じ。……前も言ったっけ? 一応全部を解決できるかもしれない方法として、『脳みそ吹き飛ばして最適化する』ってのがあるんだけどね?



「痺れ切らしてやろうとしたら、ウチの子たちに全力で止められたからねぇ。」



あまりにも進展しないもんだから……、ちょっとキレちゃってね? 隠れてやろうと思ったらたまたま見てる子がいて、私が不穏な動きをした瞬間に『びぃぃいいい!』ってなっちゃって、気が付いたらみんな集まってた上にみんな泣きそうになっててね……、うん。滅茶苦茶反省しました。


私は別に何もないけれど、この子たちからすればまぁヤバいわけで。ママが何してるかなぁ? って見に行ったら頭吹き飛ばそうとしてたらそりゃビビるし泣いちゃうし、全力で止めようとするだろう。私が復活できるとはいえ、仲間が傷ついたらキレるのがこの子たち。ほんとに悪いことしちゃったよね……。


と言うわけでマジで如何にもならない時以外は封印、ってことで、何とか頑張ってみますよ。




「っと、そろそろか。」




そんな風に思考を回していると、下の方でマティルデが手を振ってくれている。口に手を当てて何か叫んでるっぽいし。私のことを呼んでくれているのだろう。


そしてその後ろにはなんか滅茶苦茶落ち込んでいるドロテアこと赤騎士ちゃんと、顎に力が入らず大きな口を開けている軍師君。あはー! びっくりした? だよね~! 赤騎士ちゃんから聞いた話、この技術習得に結構時間かかるんでしょ? 短くても数年、感覚が上手く掴めない人は十数年かかるって! けどそれだけ時間を掛ける意味があるって技術!


レイスちゃんに掛かれば一週間もかからないですよ! むふー! ダチョウは陸だけじゃなく空の王者にもなったのです! こうなったら次は海に行って、最後に宇宙だ! この銀河系をダチョウまみれにしてやるぜ……! え、どうやって宇宙で生息するかって? わかんない!



「そこら辺は気合で何とかするかァ!」


「……何の話だ?」


「んーん、なんでもない。」



ゆっくりと地面に降り立ちながら、マティルデと言葉を交わす。彼女とはもう結構長い付き合いだし、私が空を飛ぼうとも『あぁうん、飛べるようになったのか』ってレベル。全然驚かなくなっちゃった、あと先日の『赤騎士ちゃんお漏らし事件』の折に色々ぶっ壊れてしまったのか、私の"威嚇"が一切通用しなくなっちゃったんだよね……。


本人からすれば『なんかもう頭吹き飛ばされても復活しそうだし、もうそう言う存在として理解した方が早いかなって。レイス殿は悪い人間ではないしな。……色々とトラブルメーカー的な人間ではあるが』とのこと。やだなーマティルデ! 私だって頭吹き飛ばされたら死ぬよ~! ……死ぬよね?



「んで? どうしたのマティルデ? 例の件?」


「あぁ、アタリだ。獣王国の使者が到着したようだ。会談の場所は例の獣王との戦いの場になる。」


「OK、ありがと。」



先日私たちは獣王国軍を文字通り吹き飛ばしたわけだが、その後あっちからの連絡みたいなのは一切なかった。けれど軍師さんがここに来てから数日後に使者がやって来て、『停戦交渉したいっす、後何でもするからゆるちて。』みたいなことを言って帰って行った。私たちダチョウからすればあっちが攻めてこないのならこっちから手を出す意味はない。ヒード王国もそれは同じってことで話し合いの場が作られることになったのだ。


因みにこっち側からは、ダチョウ陣営の長である私、ヒード王国代表としてマティルデ、ナガン王国の代表として軍師が参加することになっている。もちろん護衛として他数名とウチの子全員が付いて行く予定だけど、メインはこの三人だ。



「にしてもマティルデ、大出世だよね。普通こういうのって大臣とか結構エライ人が出るんでしょう?」


「だな、基本このようなこと宰相や大臣が担当するだろう。……何故私になったんだろうな?」


「そりゃ一番私に近くて、なおかつこの場で一番位が高いからじゃないの? "伯爵サマ"?」


「…………私、マジで何もしてないんだけどなぁ。」




はい! と言うことで皆さんにHappyなお知らせで~す! なんとマティルデちゃん! なんか色々な功績を認められて気が付いたら伯爵さまになってたそうでーす! いやぁ、めでたい。なんでも特記戦力である私を国に誘致したことと、ナガンに攻め込まれたプラークの防衛。そして獣王国との戦いに勝利し、獣王討伐にも貢献したってことで滅茶苦茶爵位上がったんだって。


……まぁまともに考えてみれば国が一番欲しかった人材を連れてきたうえに、二回も亡国の危機を救ってるわけだからそれぐらいしないといけないよな、ってことなんだろうけど。



「にしてもナガンさんが持ってきたあの魔道具、すごかったよねぇ。」


「あぁ、長距離通信ができる上に、相手側の顔を見れるとは思ってもみなかった。」



このマティルデちゃんが伯爵に任じられるという報告は、軍師さんに教えてもらった形になる。彼が持ち込んでくれたナガンの最新魔道具。馬車一つを占有するほどの大きな魔道具だが、テレビ通話みたいなのが可能になる魔道具。それを使ってあのお爺ちゃん宰相さんと色々お話したのよ。


やれ国を救ってくれてありがとうとか、そういうの。現在マティルデの昇格のお話とか戦勝祝いの準備とか、幼女王ちゃんが喜びすぎてちょっとおかしくなってるため、彼女と顔を合わせることは出来なかった。つまりマティルデの昇格のお話とかもそうやって聞いたんだよね~。



「でもあの魔道具、サイズが滅茶苦茶デカかったでしょ? あれじゃあ持ち運びとか出来ないよねぇ。」


「……確かに、情報伝達の速度は格段に早くなるが大都市にしか置けないようなものだろうな。軍師殿が個人で持ち運びできているのもナガン王国における地位によるものだろう。普通、こんな世界をひっくり返しそうなもの持ち運べんだろうしな。」


「だよね~。ま、軍師さんのことだし、実は小型化しちゃってたり? そこんとこどうなの?」



そう言いながら、私が噴式を習得してしまったことの衝撃が未だ払いきれない彼へと話題を振る。



「えッ! い、いやいや~、さすがにナガンと言えど流石にそう言うのは無理ですよレイス殿。あの魔道具ですら開発にかなりの時間を掛けているのですから。」


「ま、だよね~。」



急に話を振ったせいか、滅茶苦茶大きな声を上げる彼。地球でも固定電話が生まれてから、携帯電話が生まれるまで結構な時間が掛かった。ましてやそれを一般レベルに普及するまでかかった時間はさらに長い。あの大きな馬車ぐらいの魔道具を作るのに結構な時間が掛かったみたいだし、携帯電話を持ち運びできる時代は大分後なのだろう。



「ま、いいや。んじゃマティルデ。私着替えてくるから、それ終わったら出発、だよね?」


「あぁ、他の者の用意は整っているし、早くな。」















〇整理のターン


・ダチョウちゃんズ


ちょっと賢くなった上に、ママが滅茶苦茶強くなった! あとデレがとっても賢くなった! すごい! けどダチョウはダチョウ、ママが大好きな彼らは普段どおり毎日を満喫中! ごはんおいしい!


・ヒード王国


マティルデちゃんの功績がヤバいことになってたので貴族(伯爵)にした。あと軍師さんが動いたため、幼女王の元に獣王が死亡したという報が届く。それまで被っていた王としての仮面が全てはがれ、狂ったように喜ぶ幼女が誕生した。なお宰相殿は色々何とかするために老骨に鞭打ってる。(レイスについての情報は軍師によって隠されているので、怒り狂っている想定で動いている。)


・ナガン王国


軍師さんが情報を手に入れたおかげでダチョウちゃんと友好を結ぶ方針に転換しながらも、いずれ出し抜くかナガン陣営に組み込めるように暗躍中。ヒード王国への一部情報規制もその一環。なお今回の出来事でレイスちゃんの異常なラーニング速度を理解したが、未だダチョウ最大の脅威である"増殖力"には一切気が付いていない。赤騎士ちゃんはずっと涙目、わ、私のわざぁ……。


・チャーダ獣王国


獣王様死んじゃった、あとなんかよくわからんアンデット沸いて来た。ぴえん、戦争なんてできないよぉ。おなか見せるからゆるちてぇ。









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― 新着の感想 ―
[良い点] ドロテアちゃんは不憫可愛い。 恋する乙女という希少なキャラなので頑張って欲しいです。 [一言] 幼女王ちゃん、まだ生きていて良かったです。 全然話に出てこないので、獣王が死んだ報告を受けて…
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