30:ダチョウと全快
「これが、獣王ですかぁ。」
黒いローブに身を包んだ女が、死体を覗き込む。
「上半身しかないし、それも損傷激しいねぇ……。しかも下半身消し飛んじゃってますし。」
焼き焦げていると言えど、死してからそれほど時間の経っていない死体。未だ温かいモノを素手で触れていく彼女。特に切断面をより詳しく眺め、内部へと手を突っ込むことで状態を調べていく。焼き焦げた部分を引きちぎり、より内部へ。いつの間にか彼女の腕は血で真っ赤に染まっていたが、それを気にする様子は一切見られない。
「あ、でも。心臓は残ってますねぇ。あと、頭も結構綺麗ですし、脳も無事そう、お得ぅ~!」
引きちぎった傷口を覗き込む彼女、その視線の先にはすでに動かなくなった獣王の心臓。それを確認した女は、醜いほどに口角を上げる。
「【頑強】の異能持ちでぇ、しかも卓越した魔力操作。こんなお誂え向きの"特記戦力"の素材が手に入るなんて、神様に感謝しないとぉ。……あ、でも。下半身どうしよ、さすがにそこらの雑兵と合わせるには勿体なさすぎるしぃ。かといって他の特記戦力を手に入れようとしても、そもそもあいつらあんま死にませんしぃ……。」
そう言いながら、獣王の体を持ち上げようとする彼女。しかしながら筋骨隆々の大男とも呼べる獣王の体は女にとって重すぎたようで、ほんの少しだけ腕が上がるだけで終わる。何度か挑戦して諦めたのか、苛立ちを露わにしながら持ち上げていた腕をそのまま地面へと叩きつける。それで少し気が収まったのか、息を整えた彼女は辺りを見渡した。
「『‐‐‐』。」
かなり遠くに見えるダチョウによって殺された獣人たちを見た女は、何かをつぶやく。
その瞬間、物言わず死体となっていたはずの獣人たちが起き上がり、女の方に向かって動き始める。上半身だけの死体は地面を這い、下半身は起き上がり動いてくる。腕だけとなったものは指を使って動き始め、動かすことが出来ない部位のものは転がりながら寄って来る。視界を血の赤で埋めた死体たちは、獣王の下へと潜り込み、その大きな死体を運べるように移動する。
「んぉ? あれ、もしかしてコレ獣王国の将軍? わぁ、とってもいい素材じゃんかぁ! 特記戦力の素材も嬉しいけど、こういうまぁまぁ強めの素材もいいよねぇ、ちょうどいい消耗品。これならつなぎ合わせて良い物にできそォ~。」
そんなおぞましいことを口ずさみながら、来た道を引き返し獣王国にある隠れ家の一つへと戻ろうとする彼女。その脳内は獣王の死体の保存と、新しく手に入った獣王国将軍たちの体をどのように組み合わせるのかで一杯だった。
「あぁ、それと。"レイス"、だっけ? ……機会があれば、いいよなぁ。」
あんなにいい素材、絶対ほしいもん。
◇◆◇◆◇
「ぶぇぇっくしょいぃぃッ!!! …………風邪か? いや、ないか。ダチョウだし。」
何故か急に寒気がして、大きなくしゃみをかます。一瞬、獣王にぶち抜かれた体を再生した時に変な菌でも入り込んだかと思ったが、そんなものダチョウの免疫力でどうにかなってしまう。というか私自身生まれてこの方風邪をひいたことはないし、風邪をひいたダチョウを見たこともない。そもそも前世の地球ですらダチョウの免疫力がヤバすぎてコロナ関連でも活躍してる、って話があったぐらいだ。
たぶん別の理由だろう。
「というかダチョウが風邪ひくレベルのウイルスとかいれば、確実にこの世界パンデミックで滅びるでしょうに。」
そうなると、風邪以外のくしゃみの理由としたら……噂話かな? あ、わかった! ウチの子たちが私のことを話してるのね! 待っててねおチビちゃんたち!(年上もいる)直ぐにお母さん、そっちにたどり着くからね!
「っと、思ったより直ぐだったね。」
そんなことを考えていたら、直ぐに城壁が見えてきた。ここまでくればもうすぐだ。
……あ、そうだ。ちょっと深呼吸しながら行こう。
冷静になって考えてみればすごくアレなんだけどさ……。さっきの戦闘してた時の私ってさ、ヤバくない? 『早く私を殺してみなさーいッ!』みたいなこと言ってたよね……、うわぁ。わ、あぁ……。どうしよ。え、誰にも聞かれてないよね? 結構な黒歴史なんだけど……、どうしよう。滅茶苦茶恥ずかしい。顔とか耳とかめっちゃ熱くなってきた。
そこに追い打ちをかけるように。一瞬、ウチの子供たちが私の真似をする光景が脳裏をよぎる。
……あかん、教育に悪すぎる。デレのこともあるし、多分ウチの子たちはこれからどんどん賢くなっていくだろう。多分記憶力のあたりは脳の大きさの関係性もあるだろうからあまり変わらないだろうけど、知性のレベル。理解力とかそういうのはどんどん向上していくはず。つまり私が言ったことをそのままオウム返しのように繰り返し言うのではなく、言葉の意味やその背景をも理解する子が出て来てもおかしくはない。
私の色々アウトな発言をオウム返しするだけでもかなり羞恥心がヤバいのに、もし意味も理解して『えぇ……。』ってあの子たちに引かれでもしたら……。ゴホォッ! や、やばい、吐血した……。こ、心が痛いですたい……。もしそんなことになったらお母さん首吊っちゃう……、いや首吊る程度じゃ死ねないな私。
(と、とりあえず。げ、言動にはとっても。とっても気を付けなきゃ……。)
「あっ! ママ! ママー!!!」
そんなことを考えていると、デレの声が聞こえてくる。どうやらこっちのことを見つけてくれたみたいだ。
「まま?」
「まま?」
「まま!」
「ママ! ママ来た! あっち!」
「あっち?」
「あっち!」
「ママ! ママ!」
「え~~ッ!!! も、もしかしてこの一瞬でみんな私のことママって覚えてくれたの!? わっ! わぁ! え、どうしよ。ママです、ママですよ~! みんなただいま~! ちゃんといる? 全員いる? うわ、みんなちゃんといる!」
デレが教えたのか、それとも彼らがここで学んだのか、もしくはただ繰り返しているだけなのかはわからない。けれど、これまで面倒見てきた子たちにママと、母親と呼ばれる。……あぁ、ヤバい。収まったはずの脳内麻薬がまたドカドカ排出されてる気がする。ママとっても嬉しい~! というかみんなデレの言うこと聞いてちゃんと町まで戻れたのね! しかも誰も逸れずに! こんなに素晴らしいことはない! だってダチョウだよ! 初めて指示した場所に到着できたんだよ!
誰か! 早くお赤飯炊いてきて! あと今日は国民の祝日にしますッ!
「ママー!」
「褒めてー!」
「ママ! 頑張った! すごい? すごい?」
「うんうん! みんなすごいよ! デレもありがとうね、もうキスしちゃう!」
集まり始めたダチョウたちを上手くさばきながら、一番頑張ったのであろうデレをより長く構ってやる。もうね、おでこにちゅっちゅしちゃう。うれしい? あら~!
……っと、あんまりはしゃぎすぎてもいけないね。
私の下にはほぼ大半のダチョウが集まっているが、ここに走って来れていないダチョウもいる。そう、獣王にやられちゃったダチョウたちだ。もし誰かが天に召されていた場合、多分この子たちはもっとひどく落ち込んでいるはず。けれど見た感じそこまで悲しみは大きくないようだ。私が無事帰ってきたことで喜びを爆発させている個体が多い。
つまり最悪の事態は回避できたということ、回復に徹してくれたであろう人たちに感謝しながら、心を強く持つ。ウチの子たちが怪我を負ってしまう、心配だし心が痛いが弱気な姿を見せるわけにはいかない。私が元気に振舞い、皆を励ます。そうすれば彼らの心の内に残る不安も解消されるはずだ。
(……あれか。)
「マティルデ。」
「っ! レイス殿! 旗下の方々の声が聞こえたと思えば、やはりか! よかった、無事だったのだな……っ!」
「当然! でも私はどうでもいい。ウチの子たちは?」
「全員一命を取り留めた、だが……。」
彼女の言葉を聞きながら、ウチの子たちが寝かされている場所まで案内してもらう。
そこには、40名近いダチョウたちが寝かされていた。皆、『いちゃい……!』『ちくちくする!』みたいなことを言っている。……あら、なんか思ってたより元気だね。声を上げられないくらいに痛めつけられていたから、私もっとひどいことになっているのかとちょっと覚悟していたのだけど……。
(回復してくれた人のおかげ、かな。)
私の姿を見たせいで、喜びの感情が爆発し、全員が無理矢理立ち上がろうとする子供たち。けれど、やはりまだ体が痛むみたいで、みんなイタイイタイと言いながら泣き始めてしまった。あぁ、もう、じっとしてなきゃダメでしょう……? ほら、ゆっくり寝てたらすぐ治るんだから、じっとしときなさいな。ケガしてる間はずっと横についてるからね? 寂しくないよ。わかった? 解ったの、うんうん偉い偉い~。ナデナデしちゃう。いたいのいたいのとんでけ~、ってね?
「旗下の方々の回復力が高く、そのおかげで皆何とかなったようだ。しかし教会の方やアメリア殿の魔力が底をついたようだ。これ以上の回復は難しいと聞いた。……敵の後続のことも考えると300の内の40、1割強の損害は非常に大きい……、レイス殿。ここは一旦引くべきだ。」
「え、なんで?」
「な、何故って……。」
「来ても倒せるよ? ほら。」
そう言いながら頭上に向かって『魔力砲』を撃ち上げてみる。あ、もちろん安全確認とかしてるよ? さすがに周りに被害出るようなこと私がするわけないじゃん。私のそれを見て、驚愕に染まったとんでもない顔をするマティルデ、そして何事かと奥の方から飛び出して来たアメリアさん。……あ、やっぱごめん。何か一言言ってからやるべきだったね。
まだちょっと戦闘の余韻が残ってるのかも……。気を付けよう。
とまぁそう言うわけで、魔力を使えるようになった私がいる限り、何がこようとも安心安全。子供の安全は母親が守るってのが道理でしょう? まぁ獣王ちゃんと約束しちゃったから殺し尽くすのはさすがにしないけどさ。威圧して帰らせるぐらいならいくらでもお任せあれ、よ。
「れ、れれれ、レイス殿? い、今のは……!?」
「うん、『魔力砲』。獣王から、教えてもらった? そんな感じ。……あ、ちゃんと殺して来たよ。そこはご安心。」
「お、教えて? い、いや撤退時に確かに見たが……、って殺した!?」
え、なんでそんなびっくりしてんのさ。というか殺してなかったら私この場所にいないでしょうに。
「い、いや、確かにそうなのだが、あまりにも無傷というか……。あ、あれ? レイス殿。確か我らが撤退する時、あ、頭がこう、半分……!?」
「あぁ、それ。なんか魔法で頑張ったら治せた。見る? やろうと思えば中見せられるけど。」
「い、いやいやいやいや! そそそ、そういう物じゃないだろうに! と、というか治せるもんなの!? え、何!? こわい!!!」
半ば素を出しながら驚愕に染まる彼女。
えっと、つまり? 私が魔力砲使うところも撤退時にちゃんと見てたけど、あまりにも私が無傷で元気一杯な状態で帰って来たもんだから、いつも通り受け入れてしまって。それで、よくよく考えてみれば『そう言えばコイツ頭半分損失して片翼無くなってたはずなのに! 無傷! 怖い!』ってなっているわけか。
あ、もしかしてそれだけじゃない? 私たち群れ全体で特記戦力扱いだったけど、私単体で獣王に勝っちゃったせいで、私一人でも特記戦力として数えられてもおかしくない存在に。さらに少なくとも獣王と同じかそれ以上と示せたわけで……。つまり、この場には二つの特記戦力がいることになる。あ~、確かに高原でヤバい奴二体に挟み撃ちされるのは死ぬほど怖いし、その気持ち解るかも。
「違う違う違う! え、も、もしかして。あの半分になっちゃった脳、治っちゃってる、の???」
「え、うん。そうだけど。……あ、戦闘中に一回自分で全損させて再起動したよ。」
「なんで自分で壊しちゃうの!? というかなんで生きてるのッ!!!!!」
え、なんでって言われても正直自分でも理由解らない……。レイスちゃんだから? ほらほら、無限の族長パワーって奴。あ、後たぶん脳みそ全部破壊されても生きてるの私だけだからね、他のダチョウたちは多分無理だろうし……。私だけの特権? みたいな。ほら、私を除いたダチョウの中で大天才のデレちゃんも『ママすごい!』って言ってるし、そういうもんよ。
「領主様、たぶん気にしたら負けよ。そもそも特記戦力とはそういうものだし。あとレイス、町の近くでアレを放つのはやめなさい、危ないわ。」
「それはそう、ごめんちゃい♡」
「解ってるのならいいわ、色々言いたいことがあるのだけど……。先にやるべきことをやりましょう。あなた、まだ魔力は残っている?」
魔力? うん、そりゃたくさんありますよ? なんか戦闘中湯水のように使ってたけど、全然足りない感じはしなかったし、使えば使うほどに補充されていくような感じがした。だから魔力自体は全然残ってる、それこそもう一回獣王と戦って勝てるぐらいには。というかそれぐらいアメリアさんだったら、わざわざ聞かなくても目に魔力通して……。あぁそういやさっきウチの子たちの回復のために使い切ってくれたって聞いたんだった。
教会の人にもお礼を言おうと思ってたのだけど……。アメリアさん、ウチの子たちを助けてくれて本当にありがとう。
「いいのよ、それぐらい。それよりも、残っているのなら話が早いわ。ちょっと私に魔力を流し込んでくれる? その魔力でこの子たちの怪我、全治させるわ。」
「え、ほんと!? 是非、ぜひお願い!」
この子たちが生き残ってくれただけで、心に重く伸し掛かっていた重圧から解き放たれたような安心感があった。けれど、やはり必ず治ると理解していたとしても、痛みに悩むウチの子たちの姿を見るのは心苦しい。私が魔力を渡すぐらいでなんとかなるのであれば、いくらでも渡しますとも! ほら! 全部持って行って!
「やり過ぎないでね、本当に。失敗すると私が耐え切れずに破裂するから。今できるギリギリ、最小の魔力を送り続けて頂戴。」
「あ、はい。」
そう言いながら差し出された手の上に自身の翼を乗せる。そして言われた通り、自分のできる最小の魔力を送り続ける。アメリアさんや獣王が見せた絹の糸のような魔力と比べると、私はフランスパン並みの太さだ。ちょ、ちょっとまだ練習不足でして……。
苦しそうな顔をしながらアメリアさんがそれを受け取り、体内で変換させながら魔力を紡いでいく。
「本来、魔力の譲渡ってとても非効率だからやらないの。人には人の魔力の形があって、もらったものを自分用に作り替えなければ何もできない。そして作り替えようとしても、そもそも求められる技術がかなり高い上に消費魔力が多すぎて全然割に合わない。魔法型の特記戦力から全魔力を受け取ったとしても、常人程度の魔力しか変換できないの。」
寝込んでいるウチの子たちに対し、優しい緑の光を放ちながら師匠として私に教えを説いてくれる彼女。
受け取る側の技量や、送り出す側の技量によって生み出せる魔力量は変わって来るそうだが、どれだけ技量の高いものを呼んできたとしても無駄にしかならないのが普通のようだ。両替しようと思ってやってみたら手数料として9割以上取られた、とかそういうレベルらしい。
けれど、私の場合は別。魔王並みの魔力、しかも前より増えている魔力があれば文字通りどれほどロスしようが構わない、水の代わりに金貨をお風呂に張って金貨風呂を一か月毎日するレベルで無駄遣いしても平気なレベルとのこと。……改めて言葉にするとヤバいですな。
「えぇ、ヤバいのよ。高原のイメージが強いせいか、あまり自分のこととして捉えられないのかもしれないけど、自覚しなさいな。……っと、これで終わりね。」
彼女がそう言いながら、私の魔力を使って行っていた回復を止める。
そして私たちの視線の先には、完全に回復したダチョウたちの姿が!
「いた……、ない! ない!」
「なおった?」
「なおった!」
「げんき!」
「わー!」
「あら~! よかったねぇ! ……本当に、よかった。……あ、お前ら! アメリアさんにお礼言いなさいな。ほら、お礼、わかる?」
「おれい?」
「わかる?」
「わかんない!」
「むずかちい!!!」
ん~、まだわかんないか。と言うかいつも間にか他の子も集まって来たねぇ、うん? みんなイタイイタイの無くなったからお祝いしに来たのかい? 偉いねぇ、みんな元気になってほんとよかった。……うん? どうしたのデレ。あ、もしかして! なんて言うのか解っちゃった!? デレ群れで一番の大天才だもんねぇ、ほらほら、みんなに教えてあげて?
「うんっ! 『おれい~!』」
そう言いながら、どこで覚えたのか頭を下げる彼女。そして、何となく自分たちが何をすればいいのか察し始めた他の子たちも、デレの動きを真似しながら動き始める。
「「「おれい~!!!」」」
「あらら、ありがとう。デレもよく言えたわね、でも貴方たちのお母さんのおかげよ? ほら、レイスにもしてあげ……、レイス?」
「……ゴフォッ!」
あまりの尊みに、吐血する私。
うちの子が 可愛すぎて 死にました(辞世の句)
我が生涯に一片の悔いなし!
※死んでません。
〇第三回ダチョウ被害者の会【獣王編】
「デロタド将軍と!」
「ボブレの!」
「「ダチョウ被害者の会~!!!」」
「と、いうことで今回はゲストとしてあの獣王殿をお呼びしたのだが……。」
「あ、あの、なんか我の体よくわからん奴に持ってかれてるんですけど……。」
「め、滅茶苦茶タイミングが悪い感じですよね……。」
(しょ、将軍! こ、これどうしましょ! 明らかに予定と違いますよ! せっかく"生前頑張った会"みたいな感じで酒とか鍋とか用意したんですけど! 私らのボーナスで買ったいい肉! これ完全に楽しめない奴です!)
(しかしボブレよ! 現世で起きていることに対し我らが行動を起こすことは不可能! ど、どうしようもないぞこれは!)
「……む、この肉。非常に美味だな。デロタド殿、ボブレ殿、感謝する。」
「い、いえいえ。そう言って頂けるとこちらありがたい限り。」
「………あ、あの。もうぶっちゃけますけどアレ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫と聞かれれば……、まぁ大丈夫ではないし、思うことがないと言えば嘘なのだが……。まぁもう死んでしまった故な。どうしようもあるまい。それに……。」
「「それに?」」
「なんか最終的にダチョウ殿たちに轢き殺される気がする。」
「「あぁ……。」」
(ところで気になっておったのだが、あそこにおいてある女児向けのかぼちゃパンツ、アレはなんだ?)
(ヒード王国の幼女王のものっすね、あれは。)
(……なぜここに?)
(それが我らも皆目見当がつかず……、まぁある意味ダチョウの被害者故にここにあるのだろうが。)
(なるほど?)
「と、いうわけで! 昨今寒い季節になってきましたし、鍋でも楽しみながら、ゆったりと感想戦みたいなのをしていきたいと思います!」
「うむ、よろしく頼む。獣王としてなんでも答えよう。」
「では獣王殿、さっそくなのだが……。この度の戦いの勝利への道。本人の考えを是非お聞かせ願いたい。我ら二人とも手に汗握りながら応援しておったのです。」
「それはそれは、最大限の感謝を。しかし勝ち筋か、うむ、やはり……。初撃で潰すべきだったな。そこ以外には思いつかぬ。」
「やっぱりそこですよね……。」
「というか、ぶっちゃけてしまうと。脳を全壊させても生きている相手に正直勝てるビジョンが浮かばぬ。魔力とかヤバいし。というかもう我が与えた傷全快させられてるし。」
「「それはそう。」」
「初撃で、ほら我が最後にやった攻撃。アレは『獣王砲』と言うのだがな? 民が名付けてくれたのだ。アレを最初に撃ちこんでいれば勝てたかもしれぬ。しかしアレはチャージ時間が長く隙も大きい、さらに魔力消費量が高すぎるが故に実戦にはあまり向かぬ。最初に獣王砲を撃つ決断は出来なかっただろうし、正直どうしようもなかった感がすごいのよな……。」
「我らナガンが戦った時よりもヤバい存在になってしまったしなぁ。」
「ですねぇ。」
「ここに来てからそなた等の健闘も見せていただいたが……、本当に"触れてはいけない存在"になってきたのだぁ、と。」
「「ですよね。」」
「とまぁ、こんな所か。あまり敗者が言葉を重ねてもみっともない。今後はこの場で彼女らの活躍を見せてもらうとしよう。我が死した後の獣王国の様子も気になる故な。」
「はい、ということで今回はこのあたりで締めさせていただきたいと思います!」
「獣王殿、わざわざ参加いただきありがとうございます! ささ、肉だけでなく、鍋も丹精込めて作ったものですし、是非に。」
「おぉ、これはこれは。しかし我だけ頂いても申し訳ない。せめて酒ぐらいは注がせていただく。ささ、デロタド殿もボブレ殿も一献……。」
感想、評価、ブックマークの方よろしくお願いいたします。




