26:ダチョウと
「なんというか……、三万ってすごいなぁ。」
現在私たちダチョウの群れは獣王国とやらの軍勢を町の外から眺めている。まだ相手はこの町に向かって移動中、ダチョウに町の中での防衛戦なんか不可能な以上、もう少ししたら突撃して野戦を仕掛けに行くだろうけどね?
あれから数日移動した後、ちょうど最前線の都市に到着することが出来たので、私たちはここに布陣している。とまぁ最前線と言っても現代や近代の戦争のようにすでにバチバチの戦いが起きているわけではない。戦いの仕方ってのも相手の町を囲んで叩いて自分のものにするって言う陣取りゲームの延長みたいなもの。
専門のマティルデからすれば流石に反論が飛んでくるだろうが……、まぁ認識は間違っていないと彼女からOKを貰っている。最前線という言葉も、これより国境側の都市から連絡が途絶えているということからそう言われているわけで、正確にいうのならば『戦闘能力を持つ都市の中で一番敵と近い町』というのが一番合ってそうだ。
「……私には点にしか見えんな。」
「まぁ私ら目が良いし、これがないと生き残れないからねぇ。」
高原の過酷な環境を思い出しながら、この都市に向かってゆっくりと距離を詰める大軍。30000の獣人たちを眺めていく。
様々な種族の獣人がいるせいか特に決まった装備のようなものは見えない。背が高くてガタイの良い奴もいれば、ちっこくてすばしっこそうな奴も。しかしながら、皆何かしら赤色の物品を身に着けている。あれが彼らの国の色なのだろう。私たち側のヒードが青色で、この前戦ったナガンが黄色だった。まぁ戦闘に入って視野が狭くなれば同士討ちの危険性が増える。それゆえに色を合わせているのだろう。
一応今回ウチの群れもヒード側で戦うってことで、全員に青色のスカーフを巻いてもらっているのだが……。これが結構大変だった。そもそもダチョウに服飾の文化は一切ない。というか布切れへの認識が『なんかヒラヒラしてる。』、『食べてもおいしくない』で止まっているのだ。その上唯一何の抵抗もなく装着できそうな私が持つのは翼、スカーフなんて結べるわけがない。
(私は何も問題はない。デレも私が付けていることと、アメリアさんにやってもらったおかげで変に暴れることはなかった。だけど……。)
そのほかの子は話が別である。数が数なのでマティルデ旗下の兵士さんたちにもお願いしたのだが、まぁ嫌がる嫌がる。スカーフを巻く意味すらわからんし、そもそも体に何か張り付いてる感覚が嫌だったり。攻撃された判定はさすがにしてなかったが、兵士さんから逃げ出した子や、着けてもらったスカーフをわざわざ口で破り捨てたりする子もいた。
最終的に私が全員の注意を引きながら兵士さんたちに素早く装着してもらい、ダチョウたちが何か付けられていることを忘れるまで(5秒)気を逸らしてあげることで解決した。まぁ兵士さんたち疲労困憊になっちゃったけど……。
「まぁ突っ込むのは私たちだけだから大丈夫なんだけど……、悪いことしちゃったね。」
「気にするな。言葉は悪いが、そもそも貴殿らに振り回される前提で皆この場に出ている。それに弱小国であるヒードは街一つ失っただけで大損害だ。これ以上攻め込まれれば、後は周辺国による我が国というパイの取り合いに発展する。」
そんな危機を前にして彼らが何も思わない訳がない、前線に出ないが故に溜まる感情を吐き出す良い機会となった。そう笑うマティルデ、……まぁ、それならいいんだけどさ。
「……実際アレ、どんな感じなの?」
ほんの少しの沈黙の後、話題を眼前に広がる敵兵へと変える。30000と言葉にしてみればただ"多い"という感情しか出てこないが、実際に目の前にそれだけの数が並んでいると少しばかり圧倒されてしまう。かるく見た感じ高原レベルでヤバそうな奴は一切見当たらないが……、プラークで戦ったナガンの兵たちの約6倍。高原でも見たことがない圧倒的な数、ウチの群れが300ちょっとだから約100倍。すごいよねぇ。
「……そもそも獣王国は主力が獣人ということもあり、あまり複雑な戦術は用いない。同じ種族で固めても良いが、そうなると変な仲間意識や他種族との反発が生まれ軍が混乱する。故に統一性のない編成をしている。」
ヒードの場合、訓練によって多種多様の種族を"軍"という一つの団体へと変化させていくらしいが、獣王国の場合個々人の戦力差がかなり離れるためそういった訓練をすることが難しいそうだ。軍をわけて簡単な戦略を立ててくることもあるらしいが、相手から見れば私たちダチョウと言う300が追加されようとも圧倒的不利なのは変わらない。相手の無造作な陣容を見る限り……
「力押しだろうな。単純故に強力、攻城兵器は見えぬが鳥系の獣人は複数見える。都市の防衛戦は中に入られれば終わり、外に出ている我ら分隊も数の前には無力。そう考えているのだろう」
「……となると首狩り戦法はあんまり?」
「だろうな。彼らの王、『獣王』からの指示はおそらく『王都まで前進』などの類の簡単な指示のみ。いくつかのデザインが異なる旗が見えているのだろう? その旗、将旗の近くにいる将軍レベルを落とせば多少混乱は起きるだろうが……。獣王の指示がある以上、それに逆らうことは彼らにとって死以外の何物でもない。おそらく殺し尽くさなければ止まらぬだろう。」
なるほどねぇ、となるとプラーク防衛戦での戦術はあんまり意味がない感じか。まぁアレ途中で失敗したけどさ。多分相手の指揮官を落とすことが一切の無駄になることはないんだろうけど、それで軍が撤退するようなことはない。
さらに相手さんの方針が『王様強くてこわい、特記戦力だし。従わないと死んじゃう! 前進前進!』になっている以上、それこそ軍全体が恐慌状態に陥るまで叩き潰さなければ引いてくれないだろう。あんまり必要以上の殺傷はしたくないし、すぐ忘れるとはいえウチの子たちに同じように? 言葉を操る知的生命体を殺させるってのはちょっと避けたい。教育的によろしくないしさ。
(つまり方針としてはあの"将旗"ってやつ? 将軍の旗の近くにいる偉そうな奴を片っ端から踏みつぶしていって、邪魔する相手も蹴り飛ばしていく。それを相手が引いてくれるまで繰り返すって感じかな。)
「OK、参考になった。相手の動きとかそういうの、ウチの子たちを指揮してる時にあんまり見れるか解んないからさ、そこら辺頼むよ。」
「あぁ、任された。」
……っし! 気合入れるか。
ちょうど相手さんは見通しの良い平原をゆっくりと進んでくれている。空を飛んでいる鳥タイプの獣人もいることだし、こっちの様子はすでに把握済みだろう。それなのに変わらず進んできているってことは……、まぁ私らなんて歯牙にもかけてない、ってわけなのかな? ちょっとムカつくね~。まぁそんなことどうでもいい。
変に動かれて戦場を変えられるのは面倒だし、相手さんが力押しを止めて策を練って来るのも困る。ダチョウたちは突撃と撤退以外出来ない都合上、行軍中の今みたいにある程度一塊になってくれている方がやりやすい。早急に叩くとしよう。
自身の中で意識を切り替え、"族長"としてのものに切り替える。
いまから私たちがやるのは圧倒的な殺戮、そこに変な慈悲なんか要らない。私はダチョウを率いる者、敵が目の前にいて、そいつが私たちに危害を与える可能性が一かけらでも存在するのならば、殺す。高原でずっと生き抜いてきた私たちにとって、相手が何であろうと甘えも慢心もない、ただ単純に相手を殺す、狩り尽くす。それが私たち。
「集合。」
別に、言葉にする必要はない。私が雰囲気を切り替えた瞬間。彼らは集まっていた、だから、私自身に言いかける言葉みたいなものだ。この子たちに長ったらしい訓示なんて要らない。士気を高めるための演説も要らない。ただ指示だけを出してあげればいい。そしてその指示を出すのは、私だ。死ぬも生きるも私次第。
「マティルデ、中央に。全体を俯瞰して。何かあれば即座に報告。」
「承った。」
「アメリア、貴女も中央に。私にはまだ魔法についての知識が薄い。頼むよ。」
「えぇ、任せなさい。」
私たちのように強靭な肉体を持たない彼女たちを内側、群れの中でも比較的若い子たちのエリアに入れる。先頭は変わらず私。
うん、これでいい。
「よし、じゃぁ……、気張って行こう。突撃ィ!」
「「「わー!!!!!!」」」
◇◆◇◆◇
「陛下。」
「あぁ、理解している。」
配下からの報告を全て聞かず、そう答える獣王。魔法使いとして優秀な彼は、強大な魔力が近づいていることを察知していた。
そんな王は現在、ゆったりと野戦用の椅子に腰かけながら体内の魔力の動きを止め、さらに外殻を生成しより内部へと押し込むような操作を行っていた。魔力隠蔽の作業である。
細心の注意が必要になる作業であり、普通の術者であれば一言も発することが出来ぬことであったが、獣王はそれを才能でカバーしていた。背後には獣人の中では珍しい魔法使いが複数人杖を掲げ、その隠蔽の効果を引き上げている。
本来であれば特記戦力に至ったものの魔力など、ある程度魔法を修めていれば察知出来てしまう。未だ魔力をろくに操れていないレイスは別だが、準特記戦力級と判断されているエルフのアメリアほどの実力があれば、ある程度距離が離れていたとしても簡単に居場所がバレてしまうだろう。
故に獣王は自身の魔力を徹底的に隠すことを選択した。
レイス本人は全然そんなことはないのだが、獣王は新たに生まれた特記戦力を『魔法型』。つまり自身と同じように魔力を以って特記戦力に数えられる存在だと判断した。ヒード王国に侵攻を始めた当初に感じたあの強大な魔力という唯一の判断材料が、その思考を後押ししている。故に彼は自身の隠蔽という手を取ったのだ。
この理由はまず、獣王自身がヒード王国に生まれた新たな特記戦力だった場合。どのような行動を起こすのかと考えたことから始まる。
特記戦力というものはその国へ他国が侵攻することへの抑止力と成り得る、そしてヒードの現国王の性格からして特記戦力を手に入れたのならばすぐに獣王国へ侵攻していてもおかしくはない。しかしながらそうならなかったということは、特記戦力の発見、もしくは特記戦力へと至ったのが最近だと判断できる。
「(故に、我は相手が成長する前に叩き潰すことを選んだ。)」
つまり、『特記戦力がいないと思われる戦場におびき出す』必要があるわけだ。いくら人間よりも強力な獣人相手であろうとも特記戦力というものは三万程度軽くひねることが出来る。それが新人でありギリギリ一万を相手できるような出力の低い特記戦力であろうと、あの魂を震えさすような魔力を考えるに、殲滅が出来ないとは到底考えられない。
故に、油断させる必要がある。自身の魔力を隠し、それと同時に間者を放つ。ヒード王国は多民族国家と言うこともあり獣人は多く生息している。そのためヒード国民としてデマを流すことは不可能ではなかった。獣王自身が侵攻ルート上にあったすべての都市を吹き飛ばしたということもあり、生き残った者は誰一人いない。それゆえにできる作戦であった。
獣王の目論見は、『その策を事前に見抜いていた軍師のフォロー』、そして『幼女王の特記戦力同士をぶつけたい思惑』が重なり、完璧に成功することになる。事実彼らと戦う前のレイスたちは完全に特記戦力がいないものとして判断していた。
「(魔法による完全な遠距離型であれば軍を後退させることで、我と同じように近接もできるのであれば撤退を見せかけることで。我が軍中央であるここまで誘導する。)」
そして、おびき寄せた瞬間。隠蔽を解き放ち獣王自身が持つ最大の攻撃によって全てを吹き飛ばす。
この作戦は非常に成功率が高く、同時に確実に特記戦力を屠れる方法であったが、その代わりに数多くの兵を消費してしまうという欠点があった。事実獣王自身もその可能性に気付いており、自身が抱える知識人たちからも同様の指摘を受けていた。
しかしながら、彼はその犠牲を許容する。
「(特記戦力一人を屠れるのならば、この三万の軍が壊滅しようともおつりがくる。そして最悪我さえ生き残れば王都は落とせる。)」
事実、彼が軍を率いずに単身で王都に向かった場合。足元から魔力を噴射することによって高速での移動が可能になる。彼が獣王として築き上げてきたブランドが少々崩れるが、自国の民がいないのであればいくらでも使えてしまう。そしてその速度でヒード王都まで向かえば昨今軍事同盟を結んでいたナガン王国の援軍は間に合わない。そう、考えていたのだ。
……参考までにそのルートを辿った時の話をしておくが、獣王の策は途中まで成功する。ヒード王国の王都までたどり着くことは可能だ。しかしながら、そこが彼にとっての死地となる。ナガンが誇る"軍師"が獣王の考えを見抜けないはずがなく、また軍事同盟を結んだことでナガンからより諜報員を送りやすくなった王都に、何の細工も施していない訳がないからだ。
さて、話を戻そう。
「伝令ッ!」
「仔細、全て申せ。」
「敵300がこちらに向かって突撃を敢行! 驚異的な速度っ」
伝令がダチョウたちの速度を述べようとした瞬間、空に複数の獣人が打ち上げられる。通常では考えられない角度に体が曲がったソレは、獣王の頭上を飛び越え、消えていく。
「すでに接敵、か。速いな。」
自身の考えた策はすでに各指揮官に通達済み。相手が近接タイプ、もしくは接近戦を好む存在と言うことが分かったため、これより獣王国軍は犠牲を以って敵を死地に送り込むことになる。
「(ヒードの騎兵、重装騎兵では決して出せぬ速度。一点モノの駿馬なら話は別だろうが、それを300も用意することは難しい。……補助魔法か。)」
獣王の頭の中で、特記戦力の形が定まっていく。補助魔法を付けての300という団体での突撃。これすなわち特記戦力自身に"打開力"もしくは"攻撃力"が不足しているという暗示。しかしながらソレだと対象がもつ強大な魔力について証明が出来ない。その魔力を使えばそれこそ対象の身を滅ぼすような強力無比な補助魔法が使えるだろう、しかしそれを使用しているというには"遅い"。
「(……ブラフ?)」
現在世界で確認されている特記戦力、それはこの大陸と帝国を含めてほぼ個人に向けた称号となっている。そして歴史として残る過去の特記戦力たちも、その多くが個人。現代にも一応"双子"という例外が存在しているのだが、ダチョウたちのような300を以って特記戦力となることは獣王が把握している歴史において存在しなかった。故に、そのすべてを以って特記戦力、という考えは思い至らない。
「(いや、ブラフでも構わぬ。誘い込めればそれでいい。)」
一抹の不安を覚えながらもそう考えた獣王は決して魔力隠蔽が乱れぬように心を落ち着ける。強い感情を持ってしまえば同様に魔力も乱れてしまう。故に王として、何が起きようとも感情を高ぶらせるわけにはいかなかった。
そんな王を追い詰めるように、次々と伝令が流れ込んでくる。部隊が全滅、三割以上の被害を出した報告。その部隊の長が討たれた報告、その長たちを纏める将が先に逝ってしまった報告。ナガンとヒードの同盟をいち早く潰すためすぐに動かせる常備軍、主力を持ってきたのが仇となった。階級が上がれば上がるほど強くなるのが獣王国の習わし、そして位が高いほどに王との関係性も深くなっていく。
友が、次々と先に逝っていく。
王として冷酷な判断をしなければならぬ時は常にあった、獣王は国家のためにそれを決断してきたのだ。しかしながら、友を失い何も感じないほどに冷徹ではない。しかし、心を動かすわけにはいかない。
そして多くの将が討ち死にし、全軍の6割が死亡した瞬間。その時は訪れる。
兵たちの犠牲によって、誘い込まれたヒードの新たな特記戦力たち。
生まれた直線の空白。
獣王が、レイスを初めて視界に収めた瞬間。
魔力が解き放たれる。
それまで抑え込まれていた分を取り戻そうと急速に回転し始めた魔力は、先日の獣王による攻城戦と同じように彼の獅子の顔、その口内へ急速に集まり始める。しかしながら、その圧力は前回の比ではない。
防衛戦力3000もろとも堅牢な防衛拠点を吹き飛ばした攻撃は、獣王にとっては"ただのジャブ"に過ぎない。
"特記戦力"とは、『片手間に10000の兵を殲滅できる』力を持つ者たち。その実力が下位の者であれば、1=10000の数式が成り立つ者はいるだろう。しかしながら、中位となった獣王はそれに当てはまらない。彼にとって片手間、あの防衛拠点を吹き飛ばした攻撃が獣王にとっての"通常攻撃"なのであれば、"全力の攻撃"は、いかほどの威力になるのか。
「(狙うは一点突破、その全身全てを消し飛ばせる威力ッ!)」
獣王の口に集まる魔力が変色し、より黒い黒へ。レイスの身に宿る魔力を見た者が表現する"吸い込まれそうになるほどの黒"、それと同じような色へと変ったソレは、たった一人を消し飛ばすために。
広域を吹き飛ばす威力のものをさらに強力にし、その範囲を狭め攻撃力を上げる。
特記戦力たる獣王の全力攻撃。それが今。放たれた。
今、この瞬間ほど。魔法について、魔力について学んで良かったという瞬間はない。
「ッ! レイスッ!!!」
「わかってるッ!」
急速に世界の時間がゆっくりになっていき、思考が高速化されていく。まずい、明らかにまずい。"アレ"は、確実に私たちを殺しうる。
思えば、変な予感はしていた。手ごたえがなかったわけではない。しかしながらずっと変な違和感を感じていた。マティルデからその懸念を聞かされ、より不安は大きくなったけどその全貌までは理解できなかった。知らず知らずのうちに、大量の兵とほぼすべての将を犠牲にするという奇策に、私は最後まで気が付くことが出来なかった。
たぶんだが、兵には聞かされていなかったのだろう。逃げ惑う姿に誰も違和感を感じなかった。けれど、全ての将の眼が諦めておらず、何かの意志を感じていた。
そして、空白。
本来戦場において素人でもわかること、ありえないはずの"一直線の空白"が目の前に。
そしてその瞬間、急速な魔力の高まりを感じる。自身が知る自分以外の魔力、自身の師匠であるアメリアよりもずっと強力で、ずっときめ細やかな魔力。それこそこんな場所じゃなかったら芸術品の一つとして鑑賞したいほどの。その、高原にいたころに感じた恐怖と同じような存在が、目の前に。
「横に跳べッッッ!!!!!!!」
私の叫びのような声と、あの魔力が解放たれたのは、ほぼ同時。
私は、"跳ばない"。
アメリアが急いで生成してくれたのだろう魔力の防壁が射線上に生成されるが、直ぐに消し飛ばされる。
ウチの子たちは賢いんだ、前からくるだろう攻撃。そして私の指示。本能で確実にソレが避けられる方向へと跳んでくれたはず。
だけど、私のちょうど後ろについてきてくれていた子たち。その子たちは、絶対に間に合わない。
なら、上に打ち上げるしか、ない。
未だ動かぬ魔力をでたらめに動かしながら、全身へと流そうとする。
だけど、動かない。
なら、無理矢理やるしかない。
やり方なんて解らない、けれど。
なにもしないわけには、いかない。
迫りくる極光から、
少しでも後ろの子たちを守ろうと、
体を、
広げる、
そして、
何も見えなくなった。
次回、覚醒。
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