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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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14:ダチョウと魔法



「あ、アメリアさ~ん。こっちこっち~!」


「おはよ、レイス。お酒は残ってる?」


「ぜ~んぜん、欠片も。」



あれだけ飲んでたのに……、という言葉を聞き流しながら彼女を見る。無理を言って、朝早くに来てもらったせいかちょっと髪がボサボサだ。まぁそれにくらべりゃ私たちなんて毎日全裸みたいなものだし、それぐらい、ねぇ? 文明圏に来たのだからお願いして服とか用意してもらってもいいんだけど、10年も高原で何も着てなかったせいかちょっと羞恥心が崩壊してまして……。


それに私が服を着始めたら、ウチの子たちも欲しがるだろうし……。考えても見て? 毎朝300人のお着替えを手伝うんだよ? しかも着替え途中に絶対脱走するし。というか服の概念すら理解できないかもしれない。まぁそんなわけで多分、何かしらの必要性が出てくるまで私たちはこのままだろう。それに比べたら髪がボサボサなんてかわいいものだ。



「それにしても、死屍累々ね……。料理人の人とか、あの怪しい商人とかも倒れてるし、貴方たちはなんか震えてるし……。」


「あはは……。あ、そうだ。マティルデは?」


「彼女? ちょっと"あるもの"をお願いしたの。昨日の作業の時、ちょっと気になったから。」



そんな話をしていると、噂をすればと言う奴で。町の方からマティルデさんが走って来るのが見える。常在戦場を意識しているのか、今日も鎧姿だ。というかずっと鎧着てるけど、重くないのかな? 宴の時もずっとこんな感じだったし……、まぁつらくないのならいいけれど。私服ないなら私の羽あげようか? 多分そんな枚数あげられないし、隠せるの大事なところだけだろうけど。


ガシャガシャと大きな音を鳴り響かせながら。ダチョウには劣るものの、結構なスピードで走って来る彼女。その手には何か黄色いものが握られていた。……な~んか、見たことあるような気がする物体だね。



「お待たせして申し訳ない! レイス殿にアメリア殿、良く寝れたか?」


「ばっちし!」


「私はあんまりね。」



パーティの人たちもまだ寝てたし、と続けるアメリアさん。貴重な睡眠を削ってもらってごめんね~! 終わったらデレのほっぺわちゃわちゃしてもいいから。……え、許可貰わなくても勝手にする? なるほど、賢い。確かに私もデレが嫌そうにしていない限り何も言うことはない……! じゃあアメリアさん、今からデレちゃん専属の飼育員さんとして雇用契約結びたいんだけど、今から契約のすり合わせしない?



「いいけれど魔法の時間が無くなるわよ、せっかくの機会なんでしょう?」


「確かに!」


「じゃあ早速、基本から始めていきましょうか。」



マティルデと視線を合わせ、頷き合う。その場に体育座りをして聞く準備完了、魔法講義の始まりだ。



「まず"魔法"というのは、全ての生物が持つ魔力というものを消費して、世界に影響を及ぼすことを言う。こんな風に……、水を出したり、種から植物を急速に成長させたり。普通じゃ出来ないことをできるのが魔法ね。」



そう言いながら左手を広げ、水球を生成する彼女。さらに懐から小さな種を取り出すと、その水球の中に放り込む。そして何かしらの言葉を唱えた瞬間、その種が発芽し急激に成長し始める。私たちがその光景に驚いているうちに、アメリアさんがポイっと地面に放り投げるとすぐさま地面から小さな木が生えてきた。



「「おぉー!」」(パチパチパチ)


「ちなみにこれがエルフ特有の魔法、その一つね。それで魔法を扱うには魔力が必要、そしてもう一つ必要なのが"適性"。そうね……、昔弟子にも"あぁ"やって教えたし。お店屋さんを例にしてみましょうか。」



……あ、もしかして説明すごく長くなる? じゃあちょっと頑張って声を変えまして……んんっ!(CVアメリア)説明していくわね。





私たちが魔法を使いたいとき、"魔法屋さん"でお買い物する必要があるの。支払いは魔力、という貨幣を使うのだけど……。残念なことに人によって"貨幣"の大きさや形はまちまち、"魔法屋さん"に持ち込んでも使えるかどうかは解らないわ。


これが何故か、と言うと"魔法屋さん"も店主さん一人で魔法を作ってるんじゃなくて、各属性の職人さんに発注して私たちに届けてくれるの。まぁ仲介業者ね。火の属性の職人さんはこんな形が大好き、水の職人さんはこの大きさの貨幣は大嫌い、とかあるのよ。一応たくさん貨幣を積めばどんな職人さんも仕事を受けてくれるのだけど……、まぁお勧めしないわね。吹っ掛けられるから。



「ちなみに、私は"植物"と"水"、あと"土"とかかしら。昨日死体の処理でも使った"火"や、この後話そうと思っていた"雷"にも適性はあるけど、あんまり燃費は良くないわね。」


「へぇ~、ちなみにその適性ってのはどうやってわかるんです?」


「気合よ。片っ端からやってみるの。」


「えぇ……。」



一応教会で適性を見てもらう、ってこともできるのだけどこんな辺境の町じゃそんなことできる聖職者はいないからね。誰かに師事して、その人が知ってる魔法を片っ端から試して調べるのが一番の近道よ。……あ、領主様。別にプラークのことをディスってるわけじゃないわ。客観的事実よ。



「理解はできるが、こう。心に来るものがあるな。私だってもうちょっと頑張って発展させたいんだがなぁ……。」



話を戻すわね。


それで、自分に合った属性を見つけたら次に注文。魔法屋の店主に『こういう魔法が欲しい』と説明する必要があるわ。この説明する方法が、『詠唱』だったり『刻印』だったりするわね。さっき私が魔法を使ったとき、何かつぶやいていたでしょう? あんな感じで注文をして、魔力を対価として払って魔法を行使したというワケ。


この注文方法は本当に色々あるし、それぞれメリットデメリットあるから自分でうまく見つけていくしかないんだけど……。とりあえずレイスには帝国式の詠唱を教えていくわ。発声の行程に魔力を乗せて、世界に宣言する。そういうイメージでやるの。



「実はコレが一番簡単なのよ。最初は細長い靴みたいな半島しか領土を持たなかった帝国、それがあそこまで強国になったのはこの詠唱法の影響もあるでしょうね。簡単で、なおかつ威力が高い、そして個々人でアレンジもできる。正直もう化石レベルのエルフ式の詠唱と比べたら、断然帝国式の方がいいわ。私も最近はこっちしか使わないし。」


「へぇ……(なんか話聞くたびに帝国がヤバい国に聞こえる。)」


「うむむ、歴史の勉強も出来てしまった。やはり先人に話を聞くのはいいな。」



というわけで早速詠唱を……、と言いたいところなのだけど。レイス? 多分なんだけどね。



「え? あ、うん。なに?」


「あなたの自分の眼を疑うレベルの魔力量で魔法を行使した場合、何が起きるか解らないわ。最悪この町ごと吹き飛ぶわね。」


「……マジ?」


「マジ。『今のは極大爆発(エクスプロージョン)ではない……、小火球(ミニファイアボール)だ!』になりかねないわ。まぁそうしたいのなら別にいいけれど。……これ何のネタだったかしら?」


「ぜ、全然良くないからな! やらない、やらないよねレイス殿!」



と言うわけで、貴女が最初に覚えるべきは魔力操作、ね? これを習熟できれば暴発して全部吹き飛ぶ、なんてことにはならないだろうし上手く使えば身体能力の向上なんかも狙えるわ。こう、高速で魔力を循環させることで身体の性能を引き上げるの。私の弟子に化け物がいたんだけど、まだ剣もまともに振るえない年齢で魔力操作覚えて家の柱引っこ抜いてたわ。



「アレのせいで私死にかけたのよね。瓦礫の下敷きになる経験、もうしたくないわ。……ということで、今からコツとか色々教えていくから。頑張ってみて。」



魔力操作ができれば、魔法行使時に使う魔力の使用量もコントロールできるはず。コレは勘なんだけど、あなたは私の弟子と同じタイプだと思う。コツを掴めばすぐにできるはずよ。











 ◇◆◇◆◇










「う、うぎぎぎぎぎ! な、なんやこれぇ! ちょ、アメリアさんや! これこんなに動かないもんなんすかね!」


「……魔力が大きすぎるのかも。もうちょっと、こう、なんとかなると思ったのに。」



アメリアさんに魔力のイメージや動かし方のコツ、そのほか諸々を色々教えてもらった後。実践してみているのだが……、コレが一向に上手く行かない。かれこれ30分ぐらい顔を真っ赤にしながら動かしているのだけど、全く成果なし。一応アメリア先生によると私の体内に蠢く魔力、それに対して確かに何かしらの動かす力が作用しているので才能がないわけではないらしい。しかしながら自身の持つ魔力の大きさ故か、全然動かないみたいだ。



「アレね、長年放置してたらもうどうしようもないほどに凝り固まった肩。300年くらい眠ってたら周囲に木が生えて来て閉じ込められる奴。あれと同じ。」


「な、なにそれ。」



え、長命種ジョークだよね、ソレ。……え? エルフの社会問題になるくらい頻発してる事件? 動物の冬眠のノリで数百年寝落ちしちゃうせいで、森の開拓してたら干からびたエルフが発掘される? そして水掛けたら復活する? なにその生物。ダチョウもヤバいけどエルフも大概な性能してるな……。



「まぁ力は作用しているようだし、ちょっとずつだけど加える力も大きくなってる。魔力自体の理解もすぐできたし……、それを絶えず続けていればいけるんじゃない?」


「ど、どれくらい……?」


「10年くらい?」



ちょ、長命種の基準ッ! コレ結構つらいんすよ!? こう、体内にある鉄筋コンクリート造りのビルを前世人間だった頃の私が押しているような感覚! か、かなりしんどいっす……。



「それにしても、何故こんなに魔力量が増えているのかしら。明らかに生物の範疇を超えている気がするのだけど。」


「……レイス殿の魔力とはそれほど多いのか。」


「そうね、おとぎ話に出てくる魔王よりも多いんじゃない? まぁ見たことないけど。……レイス、言いたくないのなら別にいいのだけど、死の縁とか彷徨ったりした?」



死の縁? ……もしかしてアレか? 記憶思い出した瞬間の脳みそ爆発パレード。前世の情報量にダチョウの脳みそが耐え切れずに爆散し、再生を繰り返したあの時期。半年だっけ? 植物人間状態だったころがあったよね~。ある意味アレが死をさまよっていた瞬間かな。普通脳が爆発したら死ぬし。



「やっぱりあるのね。……全員がそうではないんだけど、たまに死にかけた後の超回復で魔力が急激に増加することがあるみたいなの。多分そういう体質だったんだろうね、レイスは。」



そのせいでなんかもう気持ち悪いぐらいに魔力が多い体になっちゃったのかもと続けるアメリアさん。なるほどなぁ……。というかそんなに私気持ち悪いんすか? なんか一応魔力の把握、ってのはできるようになったんですけど、まだその端っこしか見えてない感じでして。全貌が解らないんですよね……。


それにしても、あの植物人間状態だった期間。普通に脳が爆破する瞬間の痛覚は生きてたから苦痛でしかなかった、けれどそういう利点があったのならまぁ良かったのかな? 知能もちゃんとあるわけだし。ま、でも。魔力が使えなけりゃ意味ないんですけどねぇ~!



(後。別に転生特典とかではなかった、と。)


「さて、じゃあレイス。今から違う話をしていくけどそれを聞きながら"魔力操作"続けてね? 戦闘中で使うことも考えたら息をするように出来ないといけないわよ。」


「が、がんばります……。」


「うむ。頑張れ若人。じゃあ領主様。お願いしてたのを渡してくれるかしら。」



彼女がそう言うと、先ほどマティルデが持ってきていた黄色い卵型の物体が渡される。……あ、思い出した! これ昨日攻めてきたナガンの国の人が持ってた奴! うちの子たちが結構入念に踏みつぶしてたんだけど、よくこんな綺麗な状態で残ってたね……。コレを持ってた人、みんな魔法使いの杖みたいなの装備してたし、もしかして魔道具って奴?



「正解。"後始末"の時も気になっていたのだけど……、やはりこれはすごいね。」


「どんなふうに?」


「雷魔法以外の使用不可、という縛りはあるけれど。適性のないものでも軽い魔力消費で雷魔法が使える上に、威力の増大もあるわね。コレをオークションに出せば小さな家ぐらいなら買えるんじゃない?」



魔道具に魔力を通しながら、淡々と効果を調べていく彼女。"魔力"というものを知覚できるようになったおかげか、目の前にいる彼女の力量というものが見えてきた。私がなんというかダチョウっぽい操作、力ずくでウギギギ! って言いながら無理矢理動かしてる最中なんだけど、アメリアさんの操作はなんというかきめ細かな感じ。指の先から魔道具へと流れる魔力が絹の糸みたいに細くて、輝いてる。



「彼らの装備から見て明らかにナガンの正規兵。……それほどまでにナガンは進んでいるのか。」


「でしょうね。それに……、コレ。全部の攻撃に『貫通』の効果が発揮するようになってる。コレが一番大きいわね。」


「なにッ!」



え、なに? その『貫通』ってそれほどヤバいんですか? マティルデの顔が見るからにヤバい感じになってるんですけど。私、体中にいっぱい喰らったけど、何ともなかったよ? 全然痛くなかったし、今もピンピンしてる。多分あの威力ならウチの子たちが受けてもちょっとピリピリする程度で済んだと思うけど。



「え! ほんとに!?」


「口調崩れてるわ、領主様。この子たちは"例外"。気にしちゃ負けよ、多分。それでえぇ、っと。『貫通』効果についてね。」



私も言われて思い出したが、電気自体の性質として金属。鉄と相性が悪いらしい。詳しくは知らないんだけど、相手が鉄装備の時、かなり大きな威力の魔法じゃないと、電気が散らされてちゃんとしたダメージにならないんだって。


んで、一般的な防具として鉄製のものが流通しているこの世界において、雷魔法の対人性能の評価はとんでもなく低かったらしい。


けれど、それをひっくり返した人がいたそうな。



「帝国の特記戦力の一人、『ヘンリエッタ・マニスカラ・クストス・アプーリア』……。長いからヘンリちゃんね。」



何でもそのヘンリという人がこの雷魔法に『貫通』効果、金属によるダメージ緩和を無視する方法を編み出したそうな。そしてさらに『威力減衰』無しに近くにいる"金属を持っている相手"に連鎖していくという凶悪過ぎる魔法を開発しちゃったそうである。齢12でそれを生み出してしまった彼女は、スキップをしながら戦場に赴き、軽く2万程度の敵兵を殲滅した後優雅にご帰宅したそうな。


まぁつまり、この魔道具は威力はそれ相応に低下するが、ミニマムな特記戦力を再現できるお化け魔道具だったそうだ。



「彼女の偉業はヒード王国にも届いている、詠唱の複雑さなどから再現不可能と言われていたものを魔道具にしてしまうとは……。」


「ヘンリちゃんの魔法は連鎖数無制限だったけど、この魔道具は上手くやって三回。威力も彼女に比べたら可愛らしいもの。けど一般の兵士相手だったらどうしようもないわね。レイスたちが相手してくれてよかったわ。」


「でしょー、ダチョウちゃんはすごいのです。……まぁ私は全く魔力動かせませんが。」



にしても、なるほどなぁ……。この世界にはそんなヤバい人もいるんだねぇ。高原は高原でヤバいと思ってたけど、人間社会も人間社会で大変そうだ。特に『帝国』ってお国。たぶん絶対にヤバい超大国だ。関わることがあったとしても、敵対だけはしないようにしとこ。戸締り戸締り……。



「というかアメリア殿、確かヘンリエッタと言えば帝国を代表する大貴族で、実質的なNo.2の女公爵だったと私は把握しているのだが……、何故に"ヘンリちゃん"、と?」


「ん? あぁ、昔彼女の先生してたのよ。彼女が一番弟子、それでレイスが二番弟子。」


「え!?」



今日一番のびっくり顔を見せてくれるマティルデさん。彼女の顔から察するに、というか今帝国のNo.2って言った? 推定超大国と思われる帝国さんの二番目??? ……アメリアさんさ、マティルデには悪いけどこんな辺境? で冒険者してるような身分じゃなくない? というか絶対"高原"に来ちゃダメな感じでしょソレ!



「そう? もう40年近く前の話だし……。ヘンリちゃんも、孫がいるくらいにお婆ちゃんよ? この前もらった手紙にお孫さんの絵描いてあったし。それに、私が先生してたのもほんの数年。4桁近い間魔法の鍛錬に費やして来たのに、半年程度で追い抜かれちゃったし……。ちゃんとした先生ではなかったかもね。」



……なにその頭おかしいレベルの天才。



「レイス殿。貴殿も含めてだが……、こういった常識外の存在を"特記戦力"というのだ。『あ、もう住む世界が違うというか、同じ生物じゃないというか、もう"化け物"だなぁ』という存在が彼らなのだよ。」



へ、へぇ……。







〇がんばれ! ナガンの軍師くん!(part2)



「ふ、ふぅ。ようやく落ち着けましたね……。」



馬車に揺られながら、ひと時の安寧を享受する。できればこのヒードへの移動時間に睡眠をとってしまいたいが、仕事は山積み。休む暇などあるわけがない。それに、貴族たちの対応によって生じた遅れを取り戻すために全速力で馬車を飛ばしてもらっている。この振動の中で眠るのは……、できなくはないが起きた時に体がバキバキになっていそうだ。



「……とりあえず、順調ですか。」



ナガンの王都を出発した今。後はヒードの王都にてあちらの王や大臣などと条約の締結に向け言葉を重ねていくだけなのではあるが、実際それが一番問題である。諜報員たちの弛まぬ努力によって、すでにあちらにはナガンからの要請が届いているはず。しかしその先がどうなっているのかは不明だ。いくらナガンの諜報員が優秀であろうと、そう簡単に国の中枢に入り込むことは難しい。



「私が向かうということも伝えている、さすがに条約の内容的に門前払いを受けることはないだろうが……。どれだけ時間を削減できるか。」



最上は対等の立場での軍事同盟だが、最悪6対4程度であちらが優位な条約を結ぶことも視野に入れている。我が国がこれまでヒードを潜在敵国として扱ってきた手前、あちらがこちらに対する友好度は低いだろう。『これまでの詫び』という建前でそこまでならば受け入れると陛下から許可を頂いている。



「……いえ、あまり考えすぎるのもいけませんね。これからのためにカバーストーリーの確認を進めましょうか。」



今回の条約にて、我らが先に攻めたことは最後まで隠し通さなければならない。故に何故このタイミングでナガンが条約を結びたがっているのか。その明確な理由を用意する必要がある。



「『暗黒地帯』である南の未開エリアから驚異的な魔物の侵攻を受け無視できない被害を受けた、そして我が国は北のトラム共和国、そして西のリマ連合と関係が悪化しておりいつ攻められるか解らない、故にせめて東方面の安全を確保したい。ま、そんなところでしょうね。」



ヒード王国やナガン王国の南に位置する魔物の生息圏、その先の調査は派遣した者たちが誰一人帰って来ない未開地域である。故に『暗黒地帯』と呼ばれている。恐ろしい魔物が住んでいる場所、人食いの部族が住み着いている場所、そんな様々な憶測が飛び交う地帯ではあるが、誰一人真実を知る者はいない。故にこんなでまかせも通用する。



(いかにもありそうなこと、ですしね。)



そして、北のトラム共和国、そして西のリマ連合と関係が悪化しており、"いつか"戦争をする予定だったのも確かだ。当初の計画ではヒード王国を占領した後に行う侵攻計画であったが……。まぁ間違ったことは言っていない。


"ダチョウ"の脅威度がこちらの想定を上回っていた場合、条約の期間内にこの二国を占領し、特記戦力と通常戦力の回収を行う必要があるかもしれない。故に、カバーストーリーは真実になる可能性もある。



「ヒードの女王は幼君ながら賢王の素質あり、とのことですし傍に着く宰相も長年外務大臣として勤めてきた優秀な人物であると聞きます。……気を引き締めていきましょうか。」



そう言えば、プラークに詰めているアランさんからの報告がまだありませんね……。彼のことですから諜報員であることがバレるといったことはないでしょうが……。少々不安、ですね。新たな特記戦力とも呼べる"ダチョウ"という存在。彼女たちの情報を唯一手に入れられるのが彼、無事であるといいのですが……。









以下、ナガン陣営に所属する諜報員にしてダチョウのごはん係予備軍であるアラン氏の保有する情報についてまとめました。ご査収ください。



※アラン氏が手に入れた情報


〇手に入れた情報

・レイスは大の酒好き、そして蟒蛇

・"ダチョウ"たちはだれもが大食漢、すでに自身の商館で確保していた食料が喰い尽くされた。食べるのが好きみたい。

・レイスへ攻撃するとダチョウはブチギレる。

・とてもつよい、こわい。食べられるかも。



〇手に入れられなかった情報

・キレたあとにある"筋肉痛"

(その会話が行われていた時、レイスの酒を取りに行くため離席。そして朝の時間帯も昨晩こき使われたため気絶していた)

・強い雷耐性

(防がれたことは理解しているが、その要因まで未だたどり着けていない)

・レイスの魔力

(こちらも気絶していたため、入手できず。)



なお、昨晩の宴にて途中から料理人の一人としてこき使われていたため、全身に美味しい匂いが染みついている。そのため筋肉痛から復活したダチョウたちに『ごはん? ごはん?』と言いながら他の料理人同様叩き起され、ブランチを作らされる羽目になった。作らなかったら? 最悪食べられてたかもね。







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― 新着の感想 ―
話が脱線したりするところとか、レイスもダチョウなんだなって思えます笑
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