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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第58話 前世のからの絆②

 静かに息を吐き出すと尋ねてみる。


「イザークを呼んで来たほうがいい?」

「いや、急に近づき過ぎても向こうも警戒するだろう」

「………」



 アルバートの今の立場はわかった。

 では回帰の記憶については、どう説明するのだろうか。

 家系や環境だというのなら他の人間でも当てはまるるはずだ、しかしアルバートは自分だけだと言い切っていた。


 ユリウスが再び考え込みふと目線をアルバートに向けるとククッと楽しそうにアルバートは笑った。



「アル兄様?」

「回帰についての記憶について知りたいんだろ。お前の考えていることぐらいわかるさ」


 アル兄様はいつもそうだ、お前の考えていることぐらいわかると言い子供扱いされてきた。


 今は年齢も数年しか変わらないのとにユリウスは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 一方のアルバートは懐かしそうに目を細め口角をあげた。


「悪い、俺にとってはお前はいつまでも弟なんだよ」


 ずっとそれが歯痒かった、いつまでも守られている存在。昔はそう思っていたけれど、逆の立場になった今ならわかる。

 守らりたい者がいるから強くなろうと願う。実際、アルフレートは帝国一と呼ばれていた。

 

 ただアルフレートが一番守りたかったアレットは守る事はできなかったのだが……



「なあ、前世でアルフレートの最後を知っているか?」

「……あの後、アル兄様は――」


 エイデンブルグが滅亡し領地に帰った二人はデリウス、エールドハルトの二つの領地をまとめ上げ復興に尽力した。

 ユージオが成人するとアルフレートはユージオに全てを託すと領地から出ていき二度と会うことはなかった。



「お前に全てを任せてしまいすまなかったユリウス」

「……どこで何をしていたの?」


「――今のお前と似たようなことだ」

「今の俺と似ている?」



 ここだとアルバートは自身の手を指差す、そこはユリウスの腕輪を位置していた。

 

「この腕輪と似ているというのは、聖遺物を探していたの」

「いや、聖遺物ではない。アーティストだな、それも闇の魔力が込められていた」


「闇の魔力のアーティスト……」



 闇の魔力を持つアーティストといえばマリアのつけていたあのペンダントが思い出される。

 あの魔力は強力で長い間多くの者たちが操られていた。教団によりアルアリアに持ち込まれたのならば、他にも存在するというのだろうか。



「闇の魔力を持つアーティスト自体は他にも存在する」

「やはり、存在しているんだ」

「ああ、表に出ていない分もあるがすでに悪用されている分もある」



 悪用されている、とは回帰前のアルアリアのようにどこかの国を滅ぼすのが目的なのだろうか。

 ユリウスの考えている程大掛かりなことではないとユリウスの考えは否定された。



「そもそもあのペンダントほど強力な物はそう多くない。大半は魔力も弱く個人的な使い方をされている」

「個人的な使い方……。誰かを操ったり、呪ったりとか?そうゆうことで合ってる?」



「ああ、国を狙えるほどではない。前世での俺はお前と別れたあとテヘカーリに入国して、エイデンブルグに闇の魔力が使われていたか調べていた」

「……どうだったの?」

「ああ使われた痕跡があった。あの教団が関わっていたんだ」



 それからと言うとアルバートは過去の出来事を順を追って説明した。


 アルフレートはテヘカーリに入国し教団を探っていると闇の魔力の実験に参加することになる。

 アルフレートは自ら参加することでより多くの情報を集め残されたユージオのためにも真相に近づきたかったのだ。

 いざ参加してみると闇の魔力が込められたアーティストをつけて自らの体に闇の魔力を取り入れる実験であった。



 元々魔力と神聖力は共存はしないが光と闇の魔力も他の属性とは共存しないため、光の魔力を持つ者は光の属性のみ、闇の魔力を持つ者は闇の属性のみを所有している。

 ユリウスが今回魔力に加え神聖力を使えるように訓練をしたがすでに200年前には闇属性を取り入れる実験を行っていたと言うのだ。



 アルバートによると実験はされていたが成功例はなく犠牲になった者も多かった。



「――じゃあ、アル兄様は……」過去のことだと言うのに、自分の声が掠れているのに気付き動揺する。



「……闇の魔力に囚われて死んだはず……だった」

「だった?」


「ああ、死は迎えたんだが最後の最後で闇から解放されたあと、この世を去った」



 アルフレートがそのような最後を迎えているなんて予想もしていなかった。あの時のユージオは成人を迎え新たな領主として奮闘していた。

 ユージオの両親は息子にその座をゆずり新しく迎え入れた滅びた他の領地の民の生活を援助していた。

 アルフレートの父はすでに病気で他界していたためユージオは二つの領地の後継者として新しい領地の領主として役目を果たしていた。



 アルフレートは元気でやっているものだと決めつけていた。帝国一の武人であるアルフレートならば危険なことはないだろうと。



「……ごめん、アル兄様。アル兄様の事だからと大丈夫だと思ってた。帝国一なんだから大丈夫だって……」

「そんな顔をするな、ユリウス。昔のことだ、それに自分で言うのも何だがアルフレートは魔力は平均的だった。今の俺なら闇の魔力を取り入れることが出来るかも――」


「ダメだ!アル兄様せっかく会えたのに嫌だ!」




 融合すればユリウスの一部となってユージオの想いに引きずられることもない、そう言っていたはずなのに。


 融合されてなおこんなにも懐かし思い、アルフレートの最後を聞くと悲しく思う、ユージオ自身だとしたら耐えられていないだろう。



「俺もお前も昔とは違う、そうだろう?ちゃんと今を生きている、あいつを守るためにここにいる」



 上手く言葉に出来なくて、代わりに「うん」と頷くと昔とは似ても似つかない赤髪、赤目のアルバートが目を細めて微笑むとユリウスの頬にひとすじの涙がこぼれ落ちた。



 ―――昔のアル兄様と同じだ。

      例え見かけが変わったとしても……




 

 



 



明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。

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