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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第24話 断罪された日の私

プロローグと重なる部分があります。アイリーネの主観から見た形となってます

 王が城を不在にしたとマリアの耳に入ると、すぐにアイリーネを断罪するようにクリストファーに耳打ちした。クリストファーは黒い霧を強く拒絶する。いつも自身の意識が乗っ取られる感覚に抗っていた。しかし何度も黒い霧を浴びると自我は無くなり記憶も残っていない。今回の断罪という言葉を聞きこの一線だけは駄目だと必死で抗う。


「今日はいつもより頑張るんですね?」フフッと笑いながらマリアはペンダントを握りしめる。



 ギリギリの所で抗っていたクリストファーも黒い霧を何度も浴びたのち瞳から光が失われついには「許可する」とマリアの言う通りになっていく。



「では、準備をしましょう」


 マリアは王太子の近衛兵にすぐに準備をするように命令した。


――これであの女はいなくなる。そうすれば私を見てもらえる!


 誰に?マリアは自分の考えに疑問を呈した。マリアはアイリーネに何かをされたわけではない。初めて会う前このペンダントを貰い話しを聞いた時からマリアの幸せをアイリーネが邪魔をしている、そんな風に思えていた。断罪の先に何があるのかマリアにはわからない、最善だとそう信じてるだけだった。マリアは考えるのを辞めた信じた道を行くだけだと、ただそれだけだと。



 

「おい、時間だ」



 ゆっくりと瞼を開けると赤い騎士服を着た王太子の近衛騎士がこちらを見下ろしている。   

        

――とうとう処刑されるのね?今日で全部終わる。



処刑される時がきたのであろうと、アイリーネ辺りを見渡した。今日でカビ臭くジメジメした場所ともお別れだ。今日処刑されないとしてもアイリーネに残された時間は短いと理解している。それだけアイリーネの体は悲鳴を上げていた。



 粗末な馬車に荷物の様に乗せられ街の広場に到着した。夕焼けで赤く染まる街の広場に断頭台は設置されている、赤い騎士に赤い夕日が流血を連想させ背筋が寒くなる。アイリーネは豪華な椅子に並ぶ二人に目がいくと笑っているマリアが見えた。



――クリストファー殿下、それからマリア・テイラー本当に芝居見物だとでもいうの?



 アイリーネは自分の死を見世物にするのかと怒りを覚えた。断罪されるだけの罪を犯しただろうかと嘆いた。アイリーネはこの五年を思い出していた、どれだけ辛くどれだけ悲しかったか。また怒りという感情を知ったのもこの五年の間であった。




――愛し子と呼ばれながら能力が使えないのが罪なの?

――それとも公爵夫人の言う通り生まれた事じたいが罪だというの?




――アイリーネ、ヤミニトラワレナイデ。


(ミンナ、アイリーネスキ)

(……)


 アイリーネが前を見据えた時、前方から何かがアイリーネの額に当たった。激痛に加え、ぬるりとした生暖かい感覚が額から流れる。足元に転がる石と赤い液体をみながらアイリーネは思う。


――石?……私があの人達に何かしたというのだろうか?


 アイリーネの心の中に黒い染みができたようだった。一点の染みはこのこままでは広がってしまうそうで、アイリーネは恐怖を覚える。



「アイリーネ様!」

「アイリーネ!」


 イザーク様、シリル様。二人の姿を確認しアイリーネは心の中の染みを覆うように暖かなものを感じる。それはランプの灯のように柔らかかな暖かさだった。

 

 私はこの五年辛いこと以外にも楽しいことも嬉しいことも、ちゃんとあったわ。二人がいてくれてどれだけ励まされ、勇気つけられたか。直接伝えることはできませんがありがとうございました。だから、そんな顔しないで下さい……



「リーネ?」


――お義兄様?


 五年ぶりに見たユリウスは以前よりも背が伸び体も引き締まり逞しくなっていた。シルバーの髪は相変わらずサラサラとして美しく、紫紺の瞳はこちらを一直線に見つめていた。


 私はもう一度お義兄様にお会いしたかったのです!アイリーネは大きな声で叫びたかった、今は声を出すこともかなわないけど……


 お義兄様、知ってましたか?私はお義兄様が大好きです、五年前にあんな形で別れてしまい会えなくなってましたが、もちろん今も。


 もし叶うのならプレゼントのお礼を直接言いたかったのです、とても素敵で宝物にしますね。お礼の手紙も出せそうにありませんが、ありがとうございました。



――……ポポ。次があると言うのなら、思いはここに置いていこう。




 嬉しいことも楽しいことも


 辛いことも悲しいことも


 怒りも恐怖も


 全部、全部、ここに置いていこう。


 今日が最後だから





(イマダヨ!)


(今?)


(チカラ、カイホウシテ。イノチ丿スベテカケテ)


(命のすべて?)


(イノッテ)


(祈り、命のすべてで……)



 私は祈る、私の中を空っぽにして……私の命を対価にして……


 

 最後の一瞬に見えた……お義兄様……どうか悲しまないで



 ここでアイリーネ意識は止まった。


 この日、アイリーネ・ヴァールブルクは15歳という短い人生を終えた。



 アイリーネが人生を終え、ポポも役目を終える。ポポは妖精の瞳と呼ばれる全てを記録した宝石に変わる。コトリと床に落ちた宝石はアイリーネが悲しみを表現するかのように、ドロップ型となる。様々な葛藤があったが最後には真っ白な気持ちで旅だったアイリーネに反映して色は真っ白となった。


 ポポはみんなに真実を見てほしいと思う。そしてアイリーネに二度目の人生を、次は笑顔で満たしてほしいとみんなに伝えたい。一度目を決して忘れないでと……




 



 





 










 


 

読んでいただきありがとうございました

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