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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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242/273

第241話 魔獣の住処②



 再び唱えられた呪文と黄金の光。

 その先に現れたのは、洞窟を利用した檻だった。

 洞窟の入り口にはめられた巨大な鉄格子、奥は暗く見えないけれど、鉄格子の大きさから巨大なものを閉じ込めているのだとそれだけは分かった。

 洞窟の奥から聞こえてくる魔獣の低く唸る声に身を縮めるとイザーク様は繋いだままの手を握り直した。

 森の中を歩いたからだろうか、イザーク様の掌はいつもよりも体温が高く感じられ、魔獣の存在により冷えた私の体には心地良く感じる。



「奥に大型の魔獣がいますねぇ」

「そんな事も分かるのですか、ジョエル殿」

「ええ、生憎種類までは分かりかねますが、大型の魔獣だと言う事は間違いないでしょう。それで?この後はどうされますか?」

「そうだな……まずは建物の中を捜索しよう。潜入隊は少数の方がよかろう。敵が潜んでいる可能性は充分にある。心してかかれ!敵を見つけても一人で立ち向かおうとするな、合図を送るんだぞ」

 ジョエル様の言葉を受けてダグラス様は討伐隊に指示をくだした。



 討伐隊の一部は屋敷の中に入っていく。私やイザーク様はこの場で待機となった。建物は三階建てで壁には蔦が絡まっていて古めかしく感じる。鬱蒼とした森の中でいかにも悪い事をやってます、という雰囲気を醸し出していた。



「建物は見た目よりも新しいようですね……」

「えっ?そうなのですか、イザーク様。蔦が絡まっていて古いのかと思いました」

「イザーク殿の言う通り!新しく建てた物だと思いますよ。元々この森に建物など存在しなかったのですからね」

 私とイザーク様の会話にダグラス様が参加する。


「闇の魔力で隠されていただけではないのですか?」

「それはどうでしょうかね?」

「ジョエル様?」

「アイリーネ様、闇の魔力が膨大にあったとしても、あれだけの建物を隠すとなると魔力の消費は大きいのですよ。だからこそ、この地にあの建物が建ってから時間はさほど経っていないはずです」

「なるほど……」

「見た目に騙されてはいけないと言うことだよ?オチビちゃん」

「分かりました。えっと……カルバンティエ様ですよね?」

「ん?この姿で会うのは初めてだったかな?」

「はい、初めてです」

 

 首を傾げるロジエ先生を見上げた。ロジエ先生というか、カルバンティエ様だ。

 この姿というのなら今回が初めてではないと言うことね、ロジエ先生の身体を借りている、でいいのかしら?そもそも直接の姿で私達の前に現れないのは、私達の身体に負担がないようにと言っていたわよね?

 だとすれば、ロジエ先生は身体を貸しても大丈夫なのよね?



「「フフ」」

 目の前のロジエ先生を考え事をしながらじっと見つめていると、ロジエ先生とジョエル様に笑われた。

 失礼なことしてしまった。


「何か疑問でもあったかな?オチビちゃん」

「あの、ロジエ先生に身体を借りているのですよね?ロジエ先生は身体を貸しても大丈夫なのですか?そもそもお二人は知り合いだったのでしょうか?」

「身体は貸してもらってるよ、ロジエの身体に影響はないだろうね。うーん。知り合いと言うか……これはもう運命だね」

「う、運命ですか?」


 戸惑う周囲を余所にカルバンティエ様は力説しだした。


「だってそうだろう。出会うべきして出会ったんだ。これを運命だと言わずして何と呼ぶ?」

「もう!あなたの言い方は大袈裟ですよ。何が運命ですか」

「そうは言うけどジョエル、君との出会いだって運命だよ」

「……何を言っているのだか」

「大昔から固い絆で結ばれている……そうだろう?」

「いや……それは……」


 戸惑うジョエル様と満面の笑みのロジエ先生。この時、他の討伐隊から注目を集めているのに気付いた。

 


「運命だとか言っていたか……」

「もしかして……お二人は……」

「ああ……そういうご関係なのだろう」

 討伐隊の皆さんも戸惑っているものの、納得しているようであった。



 運命か……

 二人が出会うべきして出会ったというのなら、私はどうなのだろう。私の運命は何だろうか。

 一度目の人生は断罪に終わり、二度目の人生を歩むということ?それとも愛し子に生まれてきたことだろうか?だとすれば、私は決まっている道を歩んでいるだけだというの?いっぱい悩んで考えたと思っていたとしても、それすらも決まっているというのかしら……




「もちろん、アイリーネ、君と出会ったのも運命だと思うよ」

「カルバンティエ様……」

「決められた運命だとしても、必ずしもそうなるわけではない。今、ここに君が存在しているように、君が望んだからだ、君が選びとったからだよ」

「選びとった……」 

「ああ、そうだ。未来はいく通りもある。それはたとえ妖精王にだって分からない。君の人生は君のものだからね」

「妖精王にも分からない……」

「ああ、信じる道を進むがいい」

「――はい!」


 私がしっかりと頷くとカルバンティエ様も微笑みながら頷いた。

 絶対に魔獣の闇を浄化して王都に戻る! 

 早くユーリに会いたいな。






「おい、聞いたか?愛し子も運命だそうだ」

「じゃあ、なんだ?三角関係か?」



「そんなはずないでしょう!お喋りばかりしないで仕事をして下さい!」

「「は、はい!失礼しました」」


 イザークは立ち去る討伐隊の後ろ姿にため息をついた。


「まったく……アイリーネ様を巻き込まないで頂きたい……」

 イザークは人知れずそう呟いた。


読んでいただきありがとうございます


更新速度が遅く申し訳ありません

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