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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第222話 旅立ちの日

 いよいよ辺境に旅立つ日がやって来た。と、いってもゲートで移動するので移動に対しての荷物はない。そのため、今回魔獣が出没している辺境で手に入りにくくなっている物を物資として持って行くことになった。新鮮な果物や香辛料や砂糖、それからチーズなどの乳製品は手に入りにくくなっている。食料不足になっては王宮魔術団の士気にも健康状態にも影響を及ぼすだろう。


 それから、その他に最も重要な物資は武器だ。

 今回は通常の魔獣よりも闇が濃い。その為、通常の武器では攻撃の威力が落ちるそうだ。

 よって精度を上げるために私の浄化の能力を込めたクリスタル。ローレンス様の光の魔力を込めた魔石のどちらかを使い剣や弓に装着してある。浄化を使えるのも光の魔力を持つのも私とローレンス様だけ、大量生産は出来ないけど少なくとも今よりは攻撃の威力は上がるだろう。そして、私の護衛であるイザーク様の剣にはクリスタルと魔石、両方か使用されている。ガード部分に光るクリスタルと魔石は存在感があり、神々しく見える。どんな魔獣であっても倒してみせる、そんな頼もしさをも感じさせる。


 

 王宮の裏庭にゲートは設置されることとなった。

 集合場所に行くとすでに見送りの人も含め大勢の人が裏庭に集まっていた。

 陛下により一緒に辺境に行く者の名が述べられた。

 私にお父様、それからイザーク様。ここまでは私も知っている。それからコーデリア様の名が呼ばれると周囲がざわついた。それもそのはず、コーデリア様は今年で11歳まだ子供。もちろん中身はそうではないと知っている私は一緒に行けて嬉しいけれど、周りの動揺する姿も気持ちは分かる。



「皆の者、静かにまだ全ての名を呼び上げておらぬのだからな」

 陛下がよく通る声でそう告げると静まり返った。

 陛下は辺りが静まったのを確認すると辺境へ向かう者の名を続けて読み上げた。


 

 王宮魔術団に王宮騎士の名が呼び上げられる、そこは予想していたのだけど、なぜかジョエル様とロジエ先生の名が上がった。ジョエル様は実践に出る事はあまりないと聞いていたけれど、闇の魔力に関して膨大な知識があるから選ばれたのだろうか。それならばロジエ先生が選ばれたのも、同じ理由なのだろうか。

 後は聖女が数名選ばれている。解毒の能力を持つセーラ様も名を連ねている。

 セーラ様とはあえて避けているわけではないが、積極的に関わった事はない。今はもう噂になる事はないけれど、ユーリとお似合いだと言われていたセーラ様に少なからずいい気はしなかったから。



「……リーネまだ怒ってる?」 

「アイリーネ……」

 陛下が参加者を呼び終えるとユーリとシリルが近づいてきた。

 私がゆっくりと首を横に振ると二人は眉を下げた情けない顔から笑顔となった。


 そう、実は私は二人に怒っていた。

 ユーリが青い顔色で突然現れた日、私はユーリの事を心配していた。それなのに、シリルは急に私を眠らせるし、朝起きたら二人共いなくなっているし、帰ってきたと思ったらいつもと変わらないユーリに戻っていた。ユーリの顔を見て、ホッとしたのに同時にすごく腹が立った。朝目覚めてから二人が帰ってくるまで、私がどんな気持ちでいたと思っているの?と言って怒ってしまった。本当はすぐに「ごめんね」って仲直りしようと思っていたけど、考えて見ればユーリに対してこんな風に怒ったのは初めてで、仲直りのタイミングが分からなかった。

 でもその後、私が旅立つ日が決まったからしばらく会えなくなる。その前にとちゃんと仲直りした。と言うか私が怒っていただけなのだけど。

 結局の所ユーリが頼っていたのは、シリルで私は蚊帳の外だったから子供みたいにすねていただけなのだ。



「私こそごめんね、ユーリ。私ね、二人だけで解決してしまったから少し寂しく感じていたの……私よりもシリルの方が頼りになるってことでしょう?」

「……リーネ、俺の方こそ心配かけてごめん」

 ユーリが私の手を取り包み込むようにそっと握った。ユーリとしばらく会えなくなる、そう思うとこの手を離しがたくなる。ゲートが準備でき次第旅立てば、今度いつ会えるかは不明。魔獣の討伐が終わらなければ王都に再び戻って来れないだろう。



「まもなくゲートの準備が整います。辺境に向かう皆様は順次お集まり下さい」

 いよいよユーリと別れする時間がやって来た……

読んでいただきありがとうございます

今回少し短めです。

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