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第17話 イザークの目覚め

「真っ暗になっちゃったね?」

(ウン、コワイ?)

「怖くないよ。妖精達が光ってみえるし。それよりも、妖精達がイタズラしてでれないの?」

(イトシゴダカラ、アイショウガヨスギル)


「寝る所がないし、困るよね?お風呂も……」


 アイリーネは王家の森に居た。防御魔法が森全体に掛けられ魔物も悪意があるものも寄せ付けないのでと森に入ると妖精達が一斉によって来た。言葉はわからないものの小さな妖精達はアイリーネの廻りを嬉しそうに飛び回る。お腹が空いたと言えば、果物や木の実をアイリーネに差し出した。ただし、アイリーネが森から出たいと伝えても聞き入れてくれず、目的地に着くことがむずかしそうだ。



(イザトナッタラ、イルバンディサマヨブ)

「イルバンディ様を呼ぶ!?」


 ポポの言葉に驚き思わず叫んでしまう。


(コマッタラ、ヨベバイイトイッテタ)

「そんな簡単に呼んでいいの?」

(カンタンチガウ。モリカラデレナイ、イチダイジ)

「一大事……」

(ツカレタ?)

「うん」



 倒木をイス代わりに疲れたとアイリーネは座り込んだ。アイリーネは公爵家から外出する事はほとんどなく、人生で1番歩いたのが本日である。可愛いと喜んで着たドレスも泥で汚れてしまった。アイリーネは肌寒く感じ二の腕を擦った。ポポはアイリーネが風邪をひかないように保温魔法を使った。ポカポカと暖かくなったアイリーネはウトウトとしている。危険な森ではないので、まあいいかとポポもアイリーネに寄り添うと瞼を閉じた。




 イザークは王家の森を進んでいた。日が落ち闇の中に囚われた森は10歳の女の子だと不安であろうと足早に進む。奥へと進んで行くと小さな光が集まるのが見えた。足音を立てず近づき光りの中心へ踏み込むと少女が眠っている。倒木に伏せる形で横になるこの国では珍しいピンクの髪の女の子を認識すると、捜していたアイリーネ・ヴァールブルク公爵令嬢で間違いないと確認した。



 風が吹き木々がザワザワと揺れ小さな妖精達の光りが大きくなり目が開けていないほどだ。


――これは何だ?


 眩しそうに手で光りを遮るイザークにかつての記憶が流れ込んできた。懐かしくて喜びも悲しみも入り混じったその記憶はイザークを揺さぶり息を呑む。そうかと自分の身におきた出来事に理解を示した。父に憧れ騎士を目指すも、聖騎士に至った理由も納得する。前世で魔力を爆発させ多くの犠牲者を出した自分は魔力を持たず、彼女の盾になることを選び神聖力を得たのだと。


「ん?誰ですか?」


 アイリーネは目をこすりイザークを見た。イザークはたとえ姿形が変わったとしても200年ぶりに再び巡り合った彼女を間違えるはずはなく喜びに震え次の言葉が紡げない。2人の間に無言な状況が続き、アイリーネは不思議そうにイザークを見た。


――この森は……悪い人は入れないのだけど?このひとは?


 

(ポポこの人は?)

(ワルイヒトデハナイ)

(誰だろう?)

(ワカラナイ?)

(うん)


 イザークは我に返り慌てて挨拶をした。


「申し遅れました。イザーク・ルーベンと申します。陛下の命を受けお迎えにあがりました」


 聖騎士の白い軍服とマントを身に着け、片膝を立て礼をとるイザークが童話にでてくる騎士様みたいだとアイリーネは頬を緩めた。


「陛下とは国王さま?」

「はい」

「公爵令嬢じゃないのに……どうしてだろう?私がいなくなって陛下が直接捜すように言ったのですか?」

「………」


 すべての真実を打ち明けるわけにもいかず、イザークは言葉を選んだ。



「招待していた令嬢が王宮より姿を消したので捜すように命を受けました。公爵令嬢の件は……その……わかりかねますが」


「そえですか……」

「では失礼ではなければ、私が抱きかかえてもよろしいでしょうか?お疲れでしょう?」



 アイリーネは顔を赤らめた。恥ずかしい気持ちはあるもイザークの言う通り足が痛くなったのも事実。聖騎士の佇まいが似合うイザークはアイリーネの気持ちを和らげるよいに柔らかく微笑んだ。


「……お、お願いします」


「――わかりました」


 イザークは緊張に手が震えそうだった。そんな姿を微塵もみせず、ゆっくりと壊れやすい物を扱うように優しく触れ、抱きかかえた。足元が悪い森の中でイザークは慎重に歩みだす。


「王宮に帰るのですか?」

「いえ、ここからだとジャル=ノールド教会が近いですのでそちらに向かいます」


「わかりました。ジャル・ノールドは神聖力が高いとされた聖人ですね?」

「そうですね。活躍したのは200年前ぐらいですね、教会の横には神官や聖女の生活している建物もあるのですよ」


「200年前と言えば、エイデンブルグの皇太子もイザークでしたね?」


――アレット……


 歩みをピタリと止めたイザークに慌ててアイリーネは謝罪した。


「今は滅んでしまった国の皇太子と同じと言われても嫌ですよね?ごめんなさい」

「いえ、違います。エイデンブルグには少し思い入れがありまして」


 イザークがニコリと笑ったため怒ってはなかったのだと胸をなでおろした。


「そうなのですか?」

「はい」



 イザークの腕の中でイザークの黒い髪と青い目に既視感を覚えたアイリーネはそっとイザークの胸に頬を寄せた。


 ポポは2人の様子を見守り後ろからついていく。ポポはアイリーネと感覚が共有できるため困惑していた。


(ハジメテ……ナツカシイノ?) 


 森を抜け教会まではあと少しのところまで迫っていた。

 

 

 



 


 

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