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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第164話 潜入

 二日後、俺達は闇オークションにやって来た。

 昼は劇場であるこの建物は夜にはオークション会場となっている。劇場のオーナーがオークションに関わっているのだろう。劇場内にいる人は気づいていないが、すでに周囲は大勢の兵士が潜んでいる。全員牢屋行きになるのも時間の問題だ。

 オークションの招待客らしき人達は正装で着飾って目元を覆う仮面をつけ、入口で招待状を見せている。

 俺たちには招待状はないが、心配は要らない。なぜならジョエルがいるからだ、まず仮面で目元を隠して自らの身分が分からないようにする。そして案の定入口にいる護衛に招待状を提示せよと求められたのだが、ここでジョエルの出番だ。


「あれ?私には招待状なんて必要ないのですよ」

「何?」

「何だと?」


 ジョエルの言葉を聞いた二人の護衛は警戒を示したが、すぐにジョエルが手をかざし闇魔法を使用すると金色の光に包まれた。そして二人の護衛は笑顔で俺達を中に通した。


「相変わらず凄い能力だな」

「お褒めに預かり光栄です」

「いや、褒めてないけど……」


 恐ろしい能力だと言う言葉は飲み込んだ。ジョエルは気にしないかも知れないが自分の能力を恐れられれば気分はよくないだろうから。

 招待客達は観客席に座って行くが俺達は裏口にまわる。人目を避けて裏口の扉を開けると、外で待機していたアベルとローレンスが入って来た。ローレンスはどう見ても大人の身長には達していない為、正面から入るのを断念した。ジョエルの能力を使えばこの場の全員の記憶を弄る事はできなくもないが、何があるか分からないから能力を温存することにした。


 ローレンス達と合流すると会場ではアナウンスが流れ、オークションが始まった。会場に注目が集まっている内に誘拐された聖女を探そう。



「オークションが始まりましたが……」

「ああ、聖女は目玉商品だから最後だから大丈夫だよ」


 ローレンスの心配をよそに聖女がいるという地下室への階段を探すが見つからない。


「おかしいな階段がない?」

「情報では地下があると聞きましたが、情報が間違っていたと言うのでしょうか?」


 アベルの言葉に緊張が走る。

 もし、間違っているならば今から他の場所を探すとなると時間がかかる。そうなると会場でオークション中を狙うしかないのか、そんな風に考えていると、壁の中から声が聞こえてきた。不思議に思ったが空き部屋に入り様子を伺っていると壁だと思われていた場所が空くとその奥に階段がみえる。


「見つけたな」

「はい、ありましたね」

「では、行きましょうか」

「くれぐれも怪我なきように気をつけて下さい」


 俺にローレンス、その後ジョエルとアベルが続いた。地下に繋がる階段は薄暗く狭い、そもそも劇場に隠し扉や地下への階段など、初めから悪事を働く気だったのではないのか。階段を下りると見張りがいたがジョエルに任せて先に進んで行く。



 大型の動物が入るくらいの檻の中に一人の女性が膝を抱えて座っている。髪はブロンドで年格好からいって誘拐された聖女に間違いないだろう。


「セーラ・クロデル伯爵令嬢?」


 名を呼ばれて顔を上げたセーラの頬は涙に濡れていた。もしも、これがリーネだったらと思うと胸が痛む。それからリーネでなくて良かったと思ってしまい、少しだけ罪悪感が芽生えた。


「あなた達は――ヴァールブルク小公爵にええっ!ローレンス殿下!?それからルーベン侯爵様にスカルパ様?どうしてこのような場所に……?」


 状況がわからずに目を見開いて驚いているセーラからは涙は止まっている。



「あなたを助けに来ました」


 そう言って檻の鍵を風魔法を使い破壊すると彼女を連れて地上を目指す。俺達が来るのは想定外なのだろう、警備は大したことはない。その辺のゴロツキと変らない傭兵の様な男達だ。アベルの剣とジョエルの魔法があれば簡単に突破出来た。


 俺達が馬車に乗り、アベルが合図をすると潜んでいた兵士達が一斉に劇場内に突入した。怒号や叫び声が飛び交っているが罪を犯したのだ大人しく捕まってくれ。

 アベルは現場に残り、後から俺達と合流となる。思ったよりもスムーズに事が運ぶから、俺は必要なかったのではないかとそんな気がした。アベルを残し馬車が動き出そうとした、その時にローレンスが叫んだ。



「馬車を止めて!!」

「どうした、ローレンス!?」


 俺の質問に答える事なく、馬車の扉を勢いよく開け外に飛び出したローレンスはキョロキョロと上を見上げた。


 上?上に何かあるのか?

 ふと、闇の中に浮かんだ人影が見える。屋根の上に魔術師らしきローブを着た人物が見え、こちらに向けて攻撃をしようとしている。明らかに、アベルを狙っている。

 

「アベル危ない!」


 『祈りを捧げます、光よ我が声に応えよ!』


 ローレンスが呪文を唱えると、その手には光が現れて屋根の上の魔導師に向けた。光は今まさに魔法を使用しようとしていた魔導師を攻撃すると屋根から魔導師が落ちて来る。すかさず兵士達が取り押さえて、対魔術師用の首輪(魔術が使用出来ないようになる)を付けられた。


 ローレンスが光魔法で攻撃する所を初めて目撃したが凄い威力だな、感心する。

 ローレンスのお手柄で魔術師を捕らえる事が出来たが危険だと判断して早々に馬車でこの街を去ることにした。



「魔術師がいるなら、私も残ったほうがいいですね」

 と言ったジョエルを残し今度こそ馬車は走り出した。




読んでいただきありがとうございます

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