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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第125話 気になる存在

「あなたはどう思う、ロジエ・ミケーリ?」

「王女殿下……」


 まただ、とロジエは思う。


「だから、王に資質は必要だと思う?あなたなら、どう答えるの」

 

 王子と王女、二人の家庭教師であるロジエは二人の勉強部屋で授業を開始した所であった。

 いつもコーデリアはこうして答えにくい問題をロジエに投げかけてくる。

 ジッと見つめてくるコーデリアに正直どう答えたらいいかと、ロジエは困っていた。


「コーデリア、止めなよ。ロジエ先生が困っているじゃないか」

「だって、ローレンス。先生と言うくらいなら、何でも知っているでしょう?」

「コーデリアはいつも正解がある質問じゃなくて、ロジエ先生の答えを聞きたがるよね?」


 ローレンスの指摘により、ロジエはハッとした。

 一貫性のないように見える質問ばかりだが、ロジエ自身の回答を聞きたがっているようにも思える。



「……王女殿下は何か私に思う事があるのですか?」

「……あなたという人物を知りたい、ただそれだけよ」


 そう言うとコーデリアはテーブルの上にあるジュースを一気に飲み干した。

 そして、にっこりと笑ったコーデリアは次の質問に移ることにした。



「では、新たにヴァールブルク公爵の家庭教師になったという噂は本当なの?」

「あっ……ええ、本当です」

「ふーん、マリアなんかに何を教えても意味ないと思うけどねぇ」

「コーデリア!いい加減にしなよ」

「はいはい、わかりました。では、授業の続きをどうぞ」


 ロジエは苦笑いをすると、二人の授業を再開した。


「マリアなんかに何を教えても意味ない」か……

 確かにユリウス君を教えていた縁がなければ、その妹を教えることはなかっただろう。

 兄があれほど優秀なのだからと思っていたが、第一印象と同じく彼女には勉強をする意思がない。

 というか、必要に迫られていると感じていないようだ。彼女の父である公爵の望むような結果は得られないだろう。

 その事を報告する日を思うとロジエは思わずため息をついた。



「あら?ため息」


 コーデリアの指摘によりまだ授業中であったと思い出す。


「申し訳ございません、王女殿下」


「……いいえ、大丈夫よ」


 ロジエは再び苦笑いをすると授業を再開した。




♢  ♢  ♢ 


「ねぇ、コーデリア」

「なあに?」

「どうしてあんなにもロジエ先生に絡むの?」

「……自分でもわからないわ」

「わからないだって?」

「うん、ただ気になるのよね……」

「………」


 コーデリアとローレンスは昼食の時間となった。

 今日はピクニック気分で外で食事を取ることにした。侍女達は二人のためにシートを引くと食事の準備を行い、二人はその様子を眺めていた。


 コーデリアが気になるとは、ロジエには何かがあるのだろうかとローレンスは疑問に思う。

 二人の授業に携わる前にロジエに対しての一応の調査は済んでいる。至って平凡な経歴だった。特に突出した所もない、田舎の貴族の三男で裕福でも貧乏なわけでもない。ただ、人より学力は高かったのだろう、学園に入学するとその才能を買われ、その後教師の道を進んだ。私生活においても問題はなく、見た目も地味な男、それがロジエの印象だ。


 しかし、コーデリアがあんなふうに気にするのは、めずらしい。もっと念入りに調査をした方がいいのかも知れないな。


「お二人共、こちらへどうぞ」


 準備を終えた侍女が二人を呼びに来た。


「はーい」

「ありがとう」


 シートの上に座った二人は、早速料理長の自信作であるサンドイッチを堪能する。

 卵にハム、レタスにトマト、更にはチキンと数種類ありコーデリアは何を食べるか迷っているようだ。

 ローレンスが卵とトマトのサンドイッチを選ぶと、コーデリアはチキンとレタスを選んだ。


「「いただきます!」」


 うん、料理長の自信作なだけのことはある。

 確かに美味しい。

 コーデリアの様子を見ると目を輝かせて食べている。満足しているようだ、よかった。


 時々、まだ子供のこの体に嫌気がさすことがある。

 制限が多く、出来ない事が多すぎる。

 一人で王宮内を歩くことも出来ないなんて。

 何かをするにも人を介すしか方法がない。

 回帰前の記憶がある事を話していれば、もっと自由に動けるだろう。

 だけど、今はコーデリアと一緒に過ごしていたいとも思う。成長してしまえば、男女で学ぶ事は違ってくる、だからこうしていられるのも、あと少しなのだから。


「どうしたの?ローレンス。食べないの、口に合わなかったの?」


 考え事をしている内に食事をする手が止まっていたと、コーデリアに声をかけられ気付いた。

 不思議そうな顔をしてこちらを見るコーデリアを見ると、色々考えても仕方ないじゃないかと思えてきた。


「食べる、食べるよ!コーデリアよりもいーっぱい食べるよ」

「ズルいわ、ローレンス。ちゃんと二人で分けないとダメでしょ」


 そう言ってコーデリアはサンドイッチを慌てて食べ始める。そんなコーデリアを見ていると自然と笑みがこぼれてくる。


 サンドイッチを食べながら、辺りを見渡した。

 外の日差しが気持ちいいな、風もそよいでいて近くの花壇の香りが漂っている。

 平和だな……ずっとこうやって暮らして行けますように……



 ローレンスはそっと妖精王に祈った。



 


 



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