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第五十一話 エスの記憶 (sideエス)

 今日の新聞の見出しは連続失踪事件と銃撃事件の男の逮捕。その正体に迫ると書いてあった。俺は新聞に目を通す。


「おいおい、またなのかよ!」


 そこには犯人の右京岳という男は能力者であり、今まで失踪していた人間は全て殺されている可能性が高いということが判明したと書いてあった。

 能力者による事件が次々と起こる中、エスの憂鬱度はどんどん高まっていった。もう異能力がない世界とはどんどん程遠くなっていく世界にエスはため息をついた。オーからの連絡はいまだにない。

 もしかすると俺と同じように誰かから狙われている可能性もある。今はその体の安全を考慮して、潜伏しているということか?

 ……それにしても奇妙な感覚に陥っている。この右京岳という男の名前と顔を俺はどこかで知っている気がするのだ。それだけじゃない、その仲間の洗脳の異能力にも覚えがある気がする。

 なんだ、どういうことだ。俺は記憶がなくなる前に二人にあっているということなのか?

 調べものをしても俺の記憶には一切たどり着かなかったが、こんなところで俺の失われた記憶の欠片におけるヒントが見つかるとはな。些細なことではあるが、これは豪徳に伝えておいた方がいいだろう。

 こちらにもまだ利用価値があるということを示さなけなればならない。俺は豪徳に電話をする。


「もしもし、豪徳。今大丈夫か?」

「問題ない。また出かけるのか?」

「いや、そうじゃない。今日の新聞を見た。俺はこの右京岳という男に面識があるかもしれない。多分、洗脳の能力者にもだ」

「ほう、それは興味深いな。ちょうどこちらもエスに聞きたいことがあったんだ。今から俺が向かう。構わないか?」

「ああ、大丈夫だ。問題ない、ここで待っているよ。じゃあな」


 俺は電話を切る。あちらから俺に聞きたいこととは一体何だろうか。あれに関しては俺も分からないことだらけだ。答えられることであるといいが。それから一時間以内に豪徳はやってきた。


「忙しいところにすまないな。わざわざやってきてもらって」

「構わん。時間は作るものだ。それに、こちらからも話があると言っているだろう。まずは、そちらの話から聞こうか」

「ああ分かった。俺の記憶が正しければ、この右京岳という男には覚えがある。いつ見かけたかは覚えていないがな。洗脳の能力者も同様だ。この洗脳の能力者は六、七十はある男だったと思う。そして、こいつらには他にも仲間がいたはずだ。しっかりと覚えてはいないが、三人はいたと思う」

「それが本当なら、かなり良い情報だな。洗脳の能力者が老年で男だと分かっただけでもでかい。お前の存在が秘密だから、どうやって警察に伝えるかは分らんがな」


 俺の記憶は間違っていないはずだ。右京岳という男のイメージと写真はぴったり当てはまっている。俺に残された記憶がこれは間違いないとゴーサインを出している。しかし、一つだけ厄介な可能性があるな。


「なあ豪徳。俺があいつらと仲間だった線はないか? 俺は異能力を消すために、あいつらは異能力を広めるために仲違いした可能性はないか? それで俺が洗脳の異能力で記憶を失う、辻褄は合っているだろう」

「だとしても、エスがオーと会ったのは記憶を失った後なのだろう? なら大事な情報は抜かれていないんじゃないか。それにお前ほどの異能力、記憶を失わせるより、寝返らさせたほうが得だと思うが」


 それは確かにそうだ。ということは仲間の線はないのか。俺があいつらと一度でも仲良くしているイメージが湧かない。本当に仲間ではなかったのかもしれないな。


「豪徳の言うとおりだな。俺が一方的に知っていただけかもしれない。こちらからは以上だ。それで、そっちが聞きたい情報というのは一体なんだ?」

「お前がオーから受け取ったと言っていたデータがあるだろう。例のものをつくるための作り方と技術のすべてが詰め込まれたあのデータだ」


 豪徳が言っているのは俺が持っていたオーの全てが詰まったとされるデータのことだ。俺はその中に記された技術と引き換えにあるものを何も知らない西園寺家につくらせた。ゆえに共犯者は一人。俺とオーだけなのだ。


「あのデータは技術と作り方しかなかったはずだ。俺に答えられることはもうないと思うが」

「それがそうでもない。エスはオーにそう伝えられていたのかもしれないが、そのデータには他にも情報があった。そして、それをこの前何とか解明することができた。しかし、それはにわかには信じられないものでな。エスに確認しに来たのだ。エスはこれなるものをオーのところで見たことがあるか?」

「……ああ、これか、見たことがある。何なら使ってみたこともあるぐらいだ」


 豪徳に見せられた設計図なるものには見覚えがあった。だって、これは俺の中では当たり前のものなのだから。

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