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第五十話 光陰矢の如し

 目を覚ますといつもとは違う天井がそこにはあった。しかし、知らないわけではない。この光景は二度目であるのだから。


(ここは病院か? ということは俺は助かったのか? あの状況から一体どうやって?)


 俺は体を動かす。胸を撃たれ、太ももを撃たれていたというのに、痛みがまるでない。俺が狐につままれたような感覚でいると、


「よう、ようやく起きたか。今回は本当にお前のおかげで助かった。感謝してるぜ」

「ということは事件は無事に解決したということですか?」

「ああ、おかげさまで昨日の作戦での死人はゼロだ。負傷者も雲雀だけだった」

「……そうですか。それは本当に良かったです。霧生さんはどうしてここに?」


 少し遠くを見ると、霧生さんが椅子に座っていた。時刻を確認すると朝の十時、俺は丸一日ほど寝ていたということか。


「雲雀の傷自体は治っていたんだが、どうにもお前が目覚めなくてな、少し心配だったんで様子を見に来たんだ」

「傷が治っているというのは一体どういうことですか? 俺はあの時死を覚悟していたんですよ。それほどの傷だったはずです」

「ここからは大事な話だ。異能戦線だけの話にしとけよ。実はな……」


 霧生さんから聞いたマスターに関わる話はどれも衝撃的なことばかりであったものの、なぜマスターがこの九十九日市にいるのか、なぜ朧家は三派閥に別れたのか、全てが納得できる話であった。


「と、まあこんな感じだ。何か質問はあるか?」

「そうですね……。マスターの再生の異能力ってどこまでのことができるんですか?」

「病気や出血、怪我、欠損といったあらゆるものを元通りにする。だが、相当なパワーを使うし、治すために対象の体力や異能物質を一緒に使う。だから、体力や異能物質までは回復できないらしい。雲雀が今まで寝ていたみたいにな。腹も減ってるんじゃないか?」

「確かにですね。寝ていた割にはお腹が減っていると思います。私の退院についてはどうなっているんですか?」

「今日検査して何もなかったら午後には無事に退院できるだろうよ。その代わり、異能戦線のカフェには行ってもらうぞ。みんな心配して待っているからな。それと、復帰早々悪いが、事件の全貌についても話さないといけない」

「事件の全貌ですか?」

「ああ。昨日何が起こったのか、その全てだ。犯人の行動には不審な点もいくつかあるんでな。とりあえず、俺は出ていくぞ。今から検査の時間だろうしな。じゃあな雲雀、また後で」


 霧生さんは俺に一礼をして出ていった。無茶したことについて何も言われなかったし、千尋さんを助けるために無茶させてしまったという思いがあるんだろうな。誰かが悪かったという話ではないんだけどな。

 それにしても、どうしたものか。俺は机の上に置かれた山のようなお見舞いの品に圧倒される。この分だと冷蔵庫にも入っているんだろうな。


「霧生さんには悪いけど、迎えをお願いしようかな……」


 これほどの見舞いの品が来るほど、みんなを心配させたし、みんなに慕われているということを十分に感じる朝となった。


---


「すみません、霧生さん。わざわざ迎えに来てもらって」

「別に謝ることはねぇ。元々俺が迎えに行くつもりだったしな。近くの店で待機してたから、手間もかかってねぇ。それよりも帰ったら覚悟しといたほうがいいと思うぞ。今回の雲雀の無茶には全員納得しているが、尋常じゃないほど心配していたからな。多少の小言や我儘は許してやってくれ」

「俺は何も言えないですよ。死を覚悟して俺は行動に移したんですから」

「だが、そのおかげで千尋は死ななかった。お前は撃たれてもなお、千尋の盾となったと聞いている。そんなことは普通にできるもんじゃねぇ。お前はもっと自分を誇っていい」

「そういってくださると、少しは気も休まるんですがね。無茶をしないっていうのがみんなとの約束でしたから」

「まあ、なんかあったら俺たちが止めに入る。そこまで深く考えなくてもいい。今からは事件の話をするのもあるが、雲雀の退院祝いでもあるんだからな」


 俺と霧生さんは事件での話や何気ない会話をしながらカフェを目指していく。


「うし、着いたぞ。事件が解決したから、誰かの送り迎えも当分はないだろう。少し寂しくなるな」

「霧生さんの負担も大きかったですし、これでいい気もしますけどね。それじゃあ、行きますか」


 俺と霧生さんは店の前に立つ。俺は九十九事件の後に視聴覚室でみんなに謝る前のことを思い出した。今回もなんとかなったが、みんなのことを考えると、中々扉を開くことができない。


「雲雀、そう固くなるな。誰も怒っちゃいねぇからよ」

「はい……。そうですね。入ります」


 重たい扉を俺がようやく開く。……カフェの中にあったのは、俺が守ることのできた笑顔であった。


「おかえり! 湊! 本当に心配したんだから!」

「おかえりだ湊! ったく元気そうで何よりだ」

「おかえりなさい、雲雀くん。本当に良かったわ!」

「おかえり湊! 本当に助けてくれて感謝する」

「おかえり雲雀、よくやったな」

「……おかえりだ湊。ご苦労様だったな」

「おかえりなさい……湊、先輩!!」


 千代が俺の胸に向かって飛びついてくる。無理もない。千代の目の前で撃たれて、意識を失い死にかけたのだから。


「うわっと、ただいま、みんな!」

「ち、千代!? 湊は病み上がりだから、あんまりよろしくないんじゃないかな!?」

「真白さん、大胆になったわね。私もやるべきだったかしら」

「お前ら。一応助言しておくと、湊はそこまで鈍感じゃないみたいだ。千代ちゃんもそれに気づいてアタックしているだけだと思うぞ」

「な!? なんですって!? で、でも今日は千代に譲るわ。次からは譲る気はないけど」

「アタックってどうしたらいいのかしら? 恥ずかしくて、真白さんみたいには行けそうにないわね」


 なんだか明良たちがざわついているが、何を話しているんのだろうか。ま、千代とのこの距離感のことだろう。それにしても千代は遠慮しなくなったな。これも成長ということなのだろうか。


「二人とも、悪いが席に座ってくれ。湊の退院祝いもあるが、昨日の事件を整理しないといけない。退院祝いはそれからにしよう。みんなの見舞いの品もこんだけ残ってるしな」

「はい!」

「は、はい! ちょっとやりすぎてしまったかもしれませんね。余りの嬉しさに飛び込んでしまいました……」


 ぶつぶつと独り言を言っている千代と俺はいつもの席に座る。みんなが一旦落ち着いたのを確認してから、霧生さんは昨日の事件の全貌を話し始めた。


「雲雀の未来予知があったのに、俺たちはしてやられた。それは相手が何個も策を練っていたからだ。一つ目が、洗脳した人間が刃物を持って暴れまわることだ。こっちは雲雀の未来予知で何とか防ぐことができた。二つ目が拠点の偽装。洗脳の異能力によって一般人に黒ずくめの格好でうろつかせた。その上で、もう一人、黒ずくめの男を用意していた。後は犯人が用意していた黒ずくめの男の目撃情報を告げるだけで、周りの警察官を釣ることができるといった寸法だ。それを上手く働かせるための作戦として、犯人の警察官への変装があった。警察手帳も含めて入手していたため、これも洗脳の異能力だと思われる。警察手帳を持っていた人間は一部の記憶がなかったからだ。これらをすべて組み合わせることで、雲雀の周りの警察官をどかしつつ、自分が警察官として怪しまれずに行動できたということだな」


 ……霧生さんの言っていることは中々にやばい。だって、これを成功させた立役者である洗脳の能力者の行方が分かっていないからだ。

 洗脳の能力者が捕まっていない以上、またどこかで同じように相手にいい様にされる事件が発生する可能性は高い。


「銃撃の犯人はどうなったんですか? 殺されてはいないはずですよね?」

「ああ、奴の本名は右京岳。右京は三年半前の事件の自白と今回の九十九日市の銃撃事件と失踪事件についても自白した。奴の異能力が証明できれば、失踪した人間は全員殺したことになる。極刑は免れないだろうな。そして、仲間に洗脳の能力者がいることも認めたが、今どこにいるのか、右京たちの目的は何なのか、他に共犯者はいないのかについては黙秘を決めこんでいる」

「洗脳の能力者の行方と右京たちの目的が分からない以上、安心するにはまだ早いってことですよね。全くどうしたもんか」

「だが、今回の件を受けて、警察も全国的に捜査に乗り出しているし、動きにくくはなっていると思うがな。しばらくは動かないはずだ。また、狙いが九十九日市である可能性も低い。俺たちは起こった事件を対処していくしかないだろうな」

「少し思ったのだけれど、千尋さんの異能力で供述させることはできないのかしら?」


 言われてみればそうだな。千尋さんの異能力は何かを制限する異能力、上手くやれば情報を手に入れることができるんじゃないか。


「それは無理。嘘をつかないという制限と、喋るなという制限はできる。けど、黙るなという制限はできない。何かをしようとすることしか制限することができない」

「一応言っておくが、警察側にも自白専用の能力者がいる。その能力者を以てしても吐かすことができないんだ。奴自身の意思が強すぎてな」


 確かに、あいつは自分の信念に基づいて動くことこそが嗜好というような奴だった。意志が強すぎるということは命令系の能力者か。だとしたら難航するのも頷ける。従うぐらいなら死ぬような奴に思えるからな。


「でだ。ここからは当日に何が起こったのかみんな疑問に思っていると思う。時系列ごとに情報を擦り合わせていくぞ。まず、九時半にはそれぞれの位置には待機していた。間違いないよな。そこから、包囲網に人が引っ掛かり、刃物を持ってることが確認された。これによって一つ目の作戦を瓦解させることができた。ここまでは合ってるよな」

「そうですね。俺たちも一つ問題は突破できたと喜んでいたと思います」

「オーケー、問題はここからだ。十時に対能力者部隊が突入したが、拠点に人はいなかった。その次に、突如として黒ずくめの男が都市部の別の場所で見つかったと連絡が入った。その警察官とは連絡が途絶えたが、黒ずくめの男は実際に発見され、対能力者部隊付近にいた警察官によって取り押さえられた。だが、それによって雲雀たちへの侵入経路ができてしまい、警察官に扮した右京が乗り込んだ。その右京こそが黒ずくめの犯人が現れたと連絡してきた警察官だった」

「情報が錯綜していると思った私は、一応犯人がこちらに来ることを警戒して、一度隠れることにした。そしたら案の定犯人がやってきた」


 あのときの千尋さんはそこまで考えて席を外していたのか。犯人に見つかるかもしれないのに体をさらして犯人を捜していた俺とは違うな。俺の行動はまだまだ迂闊なところが多い。もっと考えて行動しないとな。


「ここからは私が話します。犯人は私という存在を感じてここまでやってきたと言っていました。異能力がある世界ならギリギリ可能かなとは思いましたが、それにしても敵を強化させる必要はないだろうと思いましたがね。そこで敵は俺を殺せないことが分かっていたので、千代を庇いながら時間稼ぎをしました。千尋さんがどうにかしてくれると思ったので」

「その私がへまをしたせいで湊が撃たれた。本当に申し訳ない。先に異能力を封じるべきだった。湊はどうして攻撃を制限したのが駄目だと思った?」

「未来予知の中で右京は自分の異能力は慈愛の塊だと言っていたのを思い出したんだよ。千尋さんの制限は相手の認識に依存しているから、もしかしたらと思って。だから、そのことを伝えていなかった俺が一番のやらかしなんだよ」

「でも結局最後には気づけたならいいだろう。普通はそこまで頭が回りゃしねぇよ。雲雀はよくやった。反省することはあるだろうが、次に生かせる機会がある。あんまり自分を追いつめるなよ」

「はい、ありがとうございます。そして、千尋さんを庇った俺を見て犯人は高笑いしながら標的を俺に変えたんです。最後の銃弾が何を意味していたのか私には分かりませんでした」


 実際、俺はマスターの異能力が無ければ死んでいた。その俺に対してわざわざ銃弾を脳天に打ち込む理由は何か。

 あそこまできたら確実に殺すしかないと思ったのだろうか。真相は右京にしか分からないといったところだな。


「そこで、湊先輩が殺されてしまうと思った私が、異能力に目覚めました。その異能力で犯人の異能力を封じることに成功しました。私をどうにかしようと思った犯人でしたが、千尋姉の異能力が作動していて、私に危害を加えることができませんでした」

「そして、何とかたどり着いた俺がゴム弾を使って制圧したということだな。千代だっけか、千尋とは違って触れずに相手を封じ込めてたみたいだけど、どんな異能力なのか説明してもらっても構わないか?」

「はい、私の異能力は対象の異能力の正体と異能力の発動条件を知ることで、対象の異能力を封じるというものです。どれくらいの距離まで発動できるかは分かりません。ただ、気になるのは異能力が目覚める前に私と千尋姉の体が光ったことです。そのあとに情報が流れてきて異能力が使えるようになりました」

「千代、光るっていうのは、体の外側が輝きを放つ感じ?」

「そうです。千尋姉の体も光ったのが不思議でしたが、一体あれはなんだったのでしょうか?」


 傍で見ていた俺も理解できない不思議な現象だった。二人の関係を考えるのであれば、共鳴といった形になるのだろうか。

 思いに反応する異能物質ねえ。ありえない話でもないが、一体異能物質は、異能器官は、何のために人間にできたのだろうか。


「その現象に関しては研究者に任せるとして、千代の異能力の詳細については隠すべきだと思ってる。マスターの異能力同様、誰かに狙われてもおかしくはないからな」

「俺も賛成だ。こんな便利な異能力、俺の派閥や他の派閥も放っておかないだろう。厄介ごとを避けたい俺としては、隠していてほしいものだな」


 明良の時みたいに強引な引き抜きの可能性もある。確かに隠しておくことの方が正解かもしれないな。


「異能力対策局にはどう伝えるんですか? 騙すことになってしまいますが……」

「それでいい。今回の件、洗脳の異能力があったとしても、敵の準備が良すぎると思ってる。疑うことにはなるが、警察と異能力対策局は少し様子を見ようと考えてる」

「……もし、ばれたら俺の名前を出せ。いくらか融通は利くだろう」


 警察、異能力対策局、研究者、スポンサーである明良の父さん、政府、朧家、中々一筋縄ではいかない話ではある。こんな世界だからこそ、信頼できる仲間が必要だ。背中を預けることのできる仲間の存在が。


「これで、昨日の事件に関する話は終わりか。だったら俺は帰らせてもらうぞ。早く帰らないと上のやつらがうるさいんでな」

「ああ終わりだ。せっかくだ、俺が見送ってくる。お前らは先に雲雀の退院祝いを始めといてくれ」

「……今日は好きなものをなんでも頼んでいいぞ。大抵のものは作れるからな」

「よっしゃ! せっかくこの困難を無事に乗り切ったんだもの。今日は盛大に行きましょう!」

「今日はチートデイだ! 甘いものを好きなだけ食ってやるぜ!」

「明良、うるさい。少し音量を落として」

「まあ、千尋姉もそういわずに、一緒に楽しみましょうよ!」

「ここで、口にクリームをつけたら、雲雀くんがとってくれるかしら?」


 ……ったく騒がしいことこの上ないな。本当に良かったよ。みんなを守ることができて、俺が生き残ることができて。頑張ろう……頑張ろう!

 こんな理不尽な世界にも幸せが溢れているのだから!


---


「どうやらもう始まってるみたいだな。まあ、元気なことはいいことだ。霧生、いい仲間を持ったな」

「だな。歳の差は大分離れてっから、友達というよりは弟や妹みたいな感覚だな。お前の方は大変そうだな」

「全く貧乏くじを引いたものだよ。異能力撲滅派の柏原に比べたらまだマシな方なんだろうけどな。それよりも霧生、忘れてないだろうな。俺たちの本当の任務を」

「忘れてるわけねぇだろうが、異能戦線も大事だが、こっちも大事なことだからな。お前の方こそ忘れていねぇだろうな」

「当たり前だ。と言っても士門さんのおかげで何とか続けることができるようになったがな。それじゃあお互いに武運を祈るぞ」

「ああ、またな時枝」


---


 その日俺たちは夜まで続くどんちゃん騒ぎをした。カフェの防音設備がいいこともあって、騒ぎに騒ぎまくった。たくさん喋ったし、たくさん食べて飲んで、たくさんゲームをした。

 重たい目をこすりながらなんとか家に帰り、布団に入った俺であったが、次の日の俺に突き付けられた現実は学校であった。俺はその日、初めて遅刻をした。

 それからもまた大変であった。俺たちは忘れていたからだ、来週がテストだということに。大変といっても普段から勉強している俺たちは余裕があったのだが、千代は違った。

 泣きわめきながら、なんとか千尋さんに教えてもらい赤点を回避することができたという。俺はなんとか十位以内に入れたが、星村は三位で明良は一位だったのだから、化け物と言わざるを得ないだろう。

 烈花もいつも通りの調子だったようで、親や教師に何か言われることもなかったみたいだ。一方、千代はその名の通り、真っ白に燃え尽きていた。


 それからの俺たちは、異能戦線、勉強、遊びといったように、息抜きをしながら楽しく暮らしていた。給料と言われて渡された金が、高校生が手にしてはいけない額であったのは流石に驚いたし、腰を抜かしそうになった。

 それでも返すことはできず、俺はそのほとんどを貯金することにした。いつか母さんを旅行にでも連れていければいいな。

 そんな目まぐるしい日々を過ごしていたら、十月も終わって、十一月に入り、紅葉の旬を迎えていた。いつの間にやら銃撃事件から一か月が経とうとしていたのであった。


「おい、そこのお前。ガムを食べることを発動条件に、身体能力が向上する能力者だな。窃盗の容疑がかかっている。大人しく捕まってもらおうか」

「へっ! いやなことった。そういうのはな、俺を捕まえてから言うんだな! じゃあな、のろま野郎!」

「ったく、しょうがねぇな。湊、明良、そっちに行ったぞ」


 霧生さんの指示で俺と明良が待ち構える。どれだけ足が速くても、コースを制限すれば邪魔することはできる。


「そんなのに引っかかるかよ。おらよっと!」


 男は思いっきり跳躍すると、俺たちの頭上を飛び越えていった。しかし、俺たちは驚かない。男なら必ず挑んでくると踏んでいたから。


「こちら雲雀。男は作戦通り、俺たちを飛び越えてそっちに向かったぞ」

「ええ、分かったわ」


 男は俺たちを挑発するためと人通りの少ない道を選ぶために路地裏へと逃走したようだ。残念だが、引っかかったな。


「ったく、あんなので止められると思ってるのが腹立つぜ」


 男は路地裏を駆け抜ける。路地裏のフェンスも今の身体能力を持ってすれば乗り越えられると思っているから。しかし、


「うわ! なんだこの強風は!! 前に進めねぇ!」


 男の行く手を強烈な風が阻む。男はついに立っていられなくなりその場に膝をついてしまう。


「ったく、一体なんだって言うんだ!? なら引き返せばいいことだ。まだなんとかなるって、あれ!? なんでだ!? 異能力が発動しねぇ!?」

「あなたの異能力はガムを食べることを発動条件に、身体能力が向上する能力者ですね。もう異能力は発動できませんよ」

「はぁ? てめぇは誰だよ? まさか、てめぇもなんかの能力者か!?」

「これは命令。あなたの攻撃を制限する」

「って! てめぇは何処から現れた!? この野郎! って、はぁ!? 攻撃ができないだと!?」

「もう一度。これは命令。あなたが逃げることを制限する」

「おい!? 何やってんだって!? こいつらだけならまだ!? ……逃げられねぇ。一体どうなってやがんだよー!」

「もうここまでだ。観念しな。じゃないとこいつを使っちまわないといけなくなるぜ」

「な、な、銃だと。ままま、待てよ。こっちは何もできねぇんだぞ。降参だ! 降参する!」


 こうして男は協力していた警察官によって捕まり、異能力の発動条件も没収された上で連れていかれた。俺たち異能戦線は界隈で名が知れ渡るほど有名で強大なものとなっていた。

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