第四十三話 未知の異能力
「今日の俺たちは都市部には行かねぇ。都市部から北上した人気の少ない場所で警察と一緒に待機する」
「ここまで来て前線を外れるということかしら? それはどうしてなの?」
「理由は三つ。一つ目に犯人の拠点の特定に成功したため、対能力者部隊が都市部の対応に当たること。二つ目にここまで大人しくしていた犯人が何をしでかすか分からないこと。三つ目に万が一にでもお前らを失うことをしたくねぇからだ」
「……その言葉は嬉しいのだけれど、私は親しい人が殺される可能性があるのなら自分で解決したいと思っているの。この異能力はそのためのものよ」
「今日は土曜日だ。大抵の人にとっちゃ休日。基本的に外に出る用事はねぇ。この状況下で知り合いが外に出ないように警告はしているだろう? だったら問題ねぇはずだ。長谷部さんも今回は指揮に専念して現場には出ないと言っていた」
「俺は昨日霧生さんから話を聞いていたから納得しているよ。霧生さんの立場上、現場には出ないといけないけど危険地帯からは外してもらっているらしい。俺も親しい人の安否が保証されているならそれでいいと思ってる。俺たちよりもプロである対能力者部隊が対処するんだ。わざわざ危険に突っ込む必要はないと判断してる」
実際は霧生さんの立場だけでなく、俺の異能力に期待がかかっているのもあると思うが……。霧生さんには未来が視えないのかと問われたことはない。
その優しさがみんなを騙している自分を苦しめている。だとしても、言えない。これだけは墓場まで持っていかないといけないから。
「そうね……。そういうことなら納得するしかなさそうね。専門家がいるというのに自ら進んでリスクを背負う必要はないもの。了解したわ。霧生さんはそれでいいのかしら?」
「俺も現役の方たちには敵わん。対能力者部隊が対応するというのなら文句はねぇ。それに、異能戦線におけるメンバーの育成も大事だと思った。俺もまだまだ死ぬわけにはいかねぇ。その他のものはやることはない。今日までご苦労様だ。念のため、千尋をここに残して拠点を守ることにする。全員、無事にみんなが生き残れるように祈っといてくれ」
「承知した」
「じゃあ、雲雀、星村、現場に移動するぞ。危険区外とはいえ、しっかりと気を引き締めて最後まで頑張ってくれ」
「はい!」「任せて!」
俺たち三人は防弾チョッキを着たりなど準備をして、カフェを立ち去ろうとする。
「みなさん!」
「ん? どうした真白?」
「必ず……必ず帰ってきてくださいね!!」
「「「もちろん!!」」」
---
俺たちは現場にたどり着く。そこは閑静な住宅が立ち並ぶ、都市部から少し離れた近郊外。周りを見渡しても歩いている人はおらず、不気味なほどに静けさを放っていた。
「流石に、この状況で外に出ている人はいないですね」
「まあ、事件の動向はニュースにもなっている。今週末がやばいことくらいは把握してるだろうな」
「他の警察官もいるみたいだけど、ずいぶんと少ないのね。私たちと同じ少数のチームが一つあるだけだもの」
「警察の人数は都市部の包囲網のためにほとんど割かれているからな。ここにいるのは隣の街から駆けつけてくれた応援部隊だ。基本的には動くことはないだろう」
小山内さんの話を明良から聞いた時は、多少の犠牲と引き換えに犯人をあぶりだすものだろうと思っていたが、そんな事態にならずに済んでよかった。
それに警察や対能力者部隊も想像以上に動員されている。都市部も人は少ないだろうし、ここから犯人が打つ手はあるのだろうか。しばらく無の状態が続いて三十分。
俺たちは交互に水を飲みながら、警戒と休憩を繰り返す。霧生さんによると、そろそろ対能力者部隊が敵の拠点に突撃するらしい。霧生さんは電話を手に取り、警察官と連絡している。
「お前ら、後五分、正午に対能力者部隊が突入する。何が起こるかは分からない。しっかりと準備しとけ。一分前と三十秒に合図、十秒前からカウントを始める。いいな?」
俺と星村はしっかりと返事をする。いよいよか、戦いの幕が切って落とされるのは。
「一分前」
「ふぅー、流石に緊張するわね。心臓がドクドクしているわ」
「俺もだよ。大丈夫。何かあっても俺が何とかするから」
「……頼もしいわね。そういうところ憧れるわ」
「三十秒前」
「いよいよね。お互いに頑張りましょう」
「ああ、頑張ろう」
「十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、零! 始まるぞ!」
ごくりと生唾を飲む。なんだろう、血がたぎってしょうがない。この緊張感は生まれて初めて味わう。九十九事件の時とは別の何かを感じる。
俺たちがどうなったのか考えを巡らしている中、均衡を破ったのは霧生さんの怒号だった。
「何!? もぬけの殻だと!? 一体どうなっている!?」
それは事件が予期せぬ方向に行っていることを表していた。
「お前ら、聞いた通りだ。犯人が拠点から逃走した。ここに来るとは考えられないが、しっかりと気を張っておけ」
俺は腕時計を見る。対能力者部隊が突入してから一分。時刻は正午を既に過ぎている。時計の針は音を鳴らしていないのにうるさく感じる。
なんだ、これは。何か凄く嫌な予感がする。そう思って霧生さんに問いかけようとした瞬間だった。
「おい、どうした!? 電話の音が鳴りやまねぇぞ。一体そっちで何が起こっている!? は? おいおいおいおい、マジかよ!!」
「霧生さん一体?」
「都市部の各地で刃物を持った人物が暴れている。警察が対応に当たっているが、このままだと包囲網が崩れる」
「「っ!」」
全身の毛が逆立つ。警戒レベルが一気に跳ね上がる。どうなっている。なぜ、いきなりそんなことが起きる。いや待て、この状況を可能にする手段があちらにはあるんじゃないか?
「霧生さん! もしかすると洗脳の異能力かもしれません。そうであるならばこの現象に説明が行きます!」
「……なるほどな。俺たちは一杯食わされたってことかっ!」
それにしてもどうして一緒に行動していないんだ。一緒に行動していれば目撃情報はなくせたはずだ。目撃者が多すぎて手が回らなかった?
だったら、なぜ真昼間に事件を起こした。敵の目的はなんだ?
「霧生さん! 私たちは都市部に向かいます! 念のため、あなたたちはここで待機していてください!」
「分かった! そちらは頼みました!」
俺たちの近くにいた四人の警察官が都市部の方へと消えていく。考えろ。敵の思考を。奴らは何が目的だ。何をしようとしている。何を欲しがっている。そんな俺の堂々巡りを停止させる出来事が起こった。それは一発の銃声だった。
「二人とも! 物陰に隠れろ!」
霧生さんの咆哮の前に俺たちは近くの路地裏に身を潜める。どういうことだ。犯人がここまで来ているのか?
先ほどの警察官たちは無事なのか?
しかし、そんな心配をよそに立て続けに銃声が数回ほど響く。交戦しているのは明らかだった。
「雲雀、星村、よく聞け。今から銃声の方に向かう。俺が先陣を切るが、お前らはおれの二十メートル後に付いてこい。警察官が生きているかを確認し、電話をしろ。俺が警戒に当たる。何かあったら俺が時間を稼ぐ。そのうちに二人は逃げろ」
言いかけて
霧生さんはと言いかけて俺は唇をかむ。霧生さんの対応は間違っていない。俺たちじゃ警戒しきれないし、時間を稼ぐこともできない。かといって犯人を逃がせず、警察官の安否確認も大事だ。
霧生さんは電話をかけ終わるとゆっくりと銃声があった方へ進んでいく。俺たちは霧生さんの後方を民家や路地裏に体を隠しながらついていく。
時間をかけながら進んでいくと、一人の警察官が血を流して倒れているのを発見した。
「俺が警戒する。星村は救急車を、雲雀は意識の確認を行え」
俺は警察官を呼びかける。どうやら太ももを撃たれているが意識はあるみたいだ。防弾チョッキのないところを的確に打ち抜くとは、銃の腕も相当なものかもしれない。俺は持っていたタオルで止血を試みる。
「うっ、君、異能戦線の、はぁ、子だよね? 伝えたいことが、ぐっ……ある」
「喋らないでください。大丈夫です。すぐに救急隊が到着します」
「犯人は、ぜ、全身黒ずくめ。ふぅ、ふぅ、い、異能力は……特定の人間を、し、消滅させる。ぐぅ、み、みんなは、はぁ、蒸発するかのように……き、消えてしまった! はぁ、私はなぜ、あがっ、い、生きているのかは、わ、分からない。はぁ、はぁ、奴は危険、だ。ぐおぁ! はぁ、君たちは、逃げ、ろ……」
そう言い残すと、力が抜け落ち、人形のようになってしまった。俺は脈をはかる。大丈夫だ。まだ生きている!
「霧生さん! どうしても伝えたい情報があります!」
「どうした!?」
「犯人は全身黒ずくめ。異能力は特定の人間を消滅させるみたいです。銃の腕も確かなのものを感じます。犯人の動向だけ探って、撤退するべきはないですか? 俺たちではどうしようもないです」
「……だとしても、俺は行かなきゃなんねぇ。これ以上被害が広がらないように。お前たちは物陰で大人しくしとけ。こっから先は俺だけの仕事だ」
「そんな命令、受け入れられないわ!」
「馬鹿野郎! 俺が一番守りたいのはお前たちなんだよ! だから大人しく下がってろ!」
……この言葉には歯向かえない。俺たちも同じ気持ちだから。ここで何をするべきなのかは俺たちが一番よく分かっている。霧生さんに任せて、俺たちは逃げるべきだと。だが、
「うわああああああああああ、誰か助けてくれええーーーー!!」
「ああん!? くそったれ! 俺が先行する。お前らは今叫んだ人の安否を確認しろ。分担はさっきと同じだ!」
誰かの叫びが俺たちの会話を中断させる。俺たちは先ほどと同じようにして進んでいく。
「おい、お前! 大丈夫か!」
「大丈夫じゃないです! 銃を持った人物が先ほどあちらの路地裏に逃げて行ったんです! もう怖くて、怖くて! ひええええええええええええ!!」
「どこへ行く! おい、待て!」
男は犯人が逃げた方向とは逆方向に逃げいていく。それにしてもこの路地裏か、抜け道を使ってこのまま俺たちや警察を撒く気か?
「霧生さん、これはどうすれば」
俺と星村が霧生さんに近づいた時だった。
「お前ら!! 路地裏に飛び込め!!」
次の瞬間銃声が空気を引き裂く。
「ぐおぁ!!!」
俺と星村はなんとか路地裏に飛び込めた。霧生さんは!
「お前ら、もっと奥だ! くそったれ!!」
悲鳴を上げた霧生さんだったが、生きている。けれども、左手で右手を抑えていた。
「ほう、今のを防ぐんですかー。流石は異能戦線ですねー」
独特の口調をした男が声をかけながら近づいてくる。俺たちはできるだけ奥まで移動し、物陰に身を潜める。
「霧生さん、大丈夫ですか!?」
「なんとか、スマホで銃弾の方向を変えることができた。スマホと利き手である右手は持ってかれたがな」
「おかしいですねー。私は黒ずくめではないのにー。どうして私が犯人だと気づいたんですかー?」
先ほど悲鳴を上げて逃げた犯人が黒色のコートを羽織り、帽子をかぶる。どこかで脱いでいたのか。シンプルゆえに、効果的な作戦だ。犯人はリボルバーを構えながら問いかける。
あれがハンドガンだったら連発されて死んでいたな。おそらく、特定の人間を消滅させるという強い効果のために連発ができないようになっているんだろう。
「俺の異能力はスイッチを見つけることができるんでな。ずっと、周りを索敵していたのよ。そしたら、先ほど逃げたやつがこちらに戻ってくるじゃねぇか。路地裏に気をとられて反応が遅れちまったがな」
「スイッチ? 私はそんなもの持っていませんが……。なるほど、携帯の電源ボタンもスイッチと判定できるんですねー。弱い異能力を工夫して応用する。素晴らしいですねー」
「霧生さん、手の内を明かしてもいいんですか?」
「少しでも時間稼ぎをすりゃ、お前らが助かる可能性が上がる。逆に都市部郊外で包囲網から離れた場所であることが裏目っちまったがな」
それにしても運が悪すぎる。犯人が逃げた先にちょうど俺たちがいるなんて。どうすれば、全員が助かる?
「不思議ですよねー。どうして、ここに私がいるのかー。こっちも教えてあげましょうー。時間稼ぎをされたところで、援軍が到着するにはまだまだ余裕がありますからー」
「お前が俺たちに教えるメリットが分からない。そんなことをしてまで何がしたいんだ?」
「ああー、やはり素晴らしいですねー。その色。私、人の強さや潜在能力が色として見えるんですよー。そこの君、君は素晴らしい色をしていますねー。こんなダイヤモンドの原石は一つしかないと思ったのですが、生きているって素晴らしいことですねー」
色だと?
いわゆる共感覚ってやつか。もしかすると俺はこいつに見られていたのか、この状況はあいつにとっては必然だとでも?
「まさか、洗脳の異能力で他の警察官から俺たちの居場所を把握したということか!」
「ご名答ですー。そこまでばれているんですねー。やはり一緒に行動しなかったのは正解でしたねー。おっと!」
奴の銃から銃弾が放たれる。遮蔽物がなければ、霧生さんの顔面に確実にヒットしていた。
「変な動きを見せたら、こちらも撃ちますよー。そちらのお嬢さんも能力者ですよねー。大人の方はゴム弾を持っているそうですしー。まあ、その手で狙いを定めて撃てるかは分かりませんがー」
霧生さんの右手は青くなっている、明らかに内出血、骨折しているな。霧生さんは両手持ちで銃を扱う。星村の異能力が頼りか?
「星村、異能力で暴風を起こせるか? その隙に全員で逃げるしかない」
「駄目だ。それは最終手段だ。俺もあいつも銃弾は当たらねぇだろうが、奴が逃げてしまえるのが危ねぇ。洗脳の異能力と合わせれば、このまま逃げ切れられるかもしれない。それに、奴の消滅の異能力の仕組みもまだ判明してねぇ。風が暴風へなる前に詰めてこられる可能性もある。それは最後だ。今は時間稼ぎを徹底しろ」
奴の異能力が何か分からない以上、星村の異能力に頼るのは危険ということ。風を消滅させて、銃で撃ってくる可能性も考えられるか。はぁー、落ち着け。あいつを出し抜く方法を考えろ。
いや、あいつの異能力の発動条件があるはずだ。それだけ強い異能力なら発動条件も厳しいはず。何かないのか。奴が銃を打つ瞬間に、怪しいところは!
「あ、そういえばですねー。私の異能力の発動条件だけ教えておきましょうー。私の異能力の発動条件は心臓が動いているときなんですよー。つまり、生きている限りは、異能力を使えるんですねー」
「んなこと、ありえねぇ!! そんな強い異能力にそんな軽い発動条件、見合ってなさすぎるだろうが! お前ら、こっちの心を揺さぶるのが目的だ。あいつの言ってることは嘘に決まってやがる!」
「嘘じゃありませんよー。発動条件というのはいわゆる自分の理性のようなものです。私はこの異能力が使えることが当たり前だと思っていますので、難しい発動条件はいらないんですよー。なんで明かしたかと言われれば、大人しく降参してほしいからですねー」
「こうやって人を殺すのが、あなたにとっては当たり前ということかしら!?」
「殺しではありませんよー。私にとってこの異能力は慈愛の塊です。ゆえに当たり前のことなんですよー。では、そろそろ近づきましょうかねー。ずっとこんなやりとりを続けるのも暇ですからー」
男がゆっくりと銃弾を放ちながら、近づいてくる。タイミングをずらして飛んでくる銃弾にこっちは身動きが取れない。だが、あいつが持っているのはリボルバー。なら装弾数は六発のはず。
最初から数えて今ので四発目。後もう二発撃ったらリロードの時間がやってくるはず。そこを逆に詰め寄って、どうにかするしかない。あいつがコートを着る前の体の様子からして、銃は一丁しかない。
星村もさっきから銃弾を数えて、残りの銃弾を計算している。暴風がだめなら、空気弾がある。それに乗じて俺が突っ込めばいい。
「五」
星村が小さく呟く。後一発だ。リロードの瞬間を見逃すな。次の銃声が響くタイミングが勝負!
……銃声が響くタイミング?
なぜ、銃声しか聞こえない。
弾頭の跳弾音は?
弾頭はどこに転がっている?
「六!」
星村が物陰から姿を現し、手を前に突き出す。空気が凝縮していく。
「駄目だ、星村!!!」
俺は勢いよく星村に飛びつき、そのまま向かいの遮蔽物まで転がり込む。星村の頭があった場所を銃弾が通り抜ける。追撃が来ると思ったが、霧生さんがゴム弾を打って相手をけん制しながらこちらへ走ってきた。
犯人はどうやら霧生さんが動き出す前に近くの電柱に身を潜めたみたいで攻撃はすべて避けられていた。
「よく気づきましたねー。この銃に装弾数なんて関係ないことにー。本当に素晴らしい逸材ですー。他の二人も素晴らしい色をしていますがー、彼らには一歩届きませんねー。私はあなたを撃ちたくない。あなたは大人しくしといてくださいー」
間一髪だった。もし気づくのが数コンマ遅れていたら、星村は死んでいただろう。
「雲雀! お前が先に気づいてくれてよかった。お前のおかげで助かったぜ。っておい! 星村! 大丈夫か!」
見ると、星村は大量の冷や汗を流し、うまく呼吸ができていない。無理もない。今星村は死にかけたのだから。これで正気でいられる方がやばいという話だ。
……打つ手なしか。奴の異能力はあの銃自体。それなら、星村の異能力を防ぎながら、銃を撃てることはないが、当人の精神状態がやられてしまっている。時間稼ぎもいつまでできるか分からない。
奴の銃に撃たれても生きている人はいる。そこが狙い目だ。なぜ、消滅しなかった。消滅しなかった人の関連性はなんだ?
「雲雀、星村を連れて逃げろ。奴の言ってることが本当なら、お前が殺されることはない。お前が星村の盾になりながら逃げろ。星村、逃げることはできるか?」
「ふぅ、ふぅ、で、できるわ。はぁ、は、はぁ、で、でも」
「気にするな。これは俺の責任だ。俺の考えが浅かった。何としてでも時間は稼ぐ。お前らはこれからの異能戦線に必要な人間だ。これからの異能戦線を頼んだぞ」
霧生さんは覚悟している。自分が死ぬことを。俺はいつの日かの羽場との会話、マスターとの会話を思い出す。
(「けどな、最後に言わせてくれ。お前が死んだら、俺は悲しいぞ。……じゃあな、また学校で会おう」)
(「だから生きて帰ってこい。これは命令だ。ここにいるみんながお前を必要としている。必ず生きて帰ってこい。分かったな」)
羽場、マスター、ごめん。約束守れそうにないや。俺はみんなを守るって決めてるから。俺の答えはずっと変わることがないから。これからの異能戦線を背負っていくのは俺じゃなくてもいい。
それよりも成長させてくれる霧生さんが死ぬ方が問題だ。マスターが言ってくれた、俺を異能戦線のメンバーだと認めてくれると。だったら俺も覚悟を決めないといけない。異能戦線のメンバーとして。
さらに言えば、一度冷静になったおかげで奴の異能力も大体分かった。後のことは霧生さんに任せるしかないな。
「時間稼ぎもいいですがー、私は彼以外の二人は必ず殺しますよー。それが私がここに来た目的ですからー。では、そろそろ行きますよー」
男が銃を撃ちながらこちらへ近づいてくる。俺は霧生さんに話しかける。
「霧生さん、最後に握手してもいいですか?」
「……ああ、銃越しで済まねぇがな」
そうして握手しようとした瞬間、俺は霧生さんの銃を奪い取る。
「雲雀、てめぇ、何を!」
「霧生さん、奴の異能力が分かりました。俺が突っ込むので、そのあとに続いて体術でねじ伏せてください」
「おい、雲雀。待て! 待ってくれ!」
俺はすぐさま立ち上がり、後ろを振り返らずに犯人へ向かって突撃する。そこから先、どうなったのかは分からない。ただ、確実に言えることとして、俺はこのとき、死んでいる。




