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第三十五話 うごめく影 (side?)

 薄暗い一室。月明かりが差し込んだその部屋の中には、四人の男性と一人の女性が椅子に座っていた。


「それでは、定例会を始めましょうか。最近、何か変わったことはありますか?」

「なんにもだぜ。俺っちは特にやることがねぇんでな。さっさと、暴れまわりてぇのに、なんで駄目なんだよ」

「それはですねー、仕方がないことなんですよー。全てはあの方の意思によるものですからー。君たちの今やるべきことは、待つことしかないんですよー」

「そりゃあ、岳さんは任務を与えられちょるからええじゃろうが、こっちは待つしかないけんのぉ。儂らの気持ちも考えてほしいもんじゃ」

「まあまあ、落ち着いてください。いずれは暴れられる機会もあるでしょう。今は我慢してください。響さん、一将さん」


 司会を務める老年の男が、派手な男と風格のある男を諫める。続けて、老年の男は周りをきょろきょろしながら縮こまっている女に声をかける。


「小夜さんは何もお変わりないですか? あなたの異能力が一番情報を集めやすいのですからね」

「わわ、私は、何も分かりませんでした。だだだ、だって、能力者がたくさん現れて、外に出歩くのも怖いじゃないですか!」

「それでも、やってもらわなきゃ困るっしょ。そんために政宗さんと岳さんがお前を連れてきたんだろ?」

「そうですねー。たまたまでしたが、随分と素晴らしい異能力だと思い、思わず政宗さんに頼んで連れてきてもらっちゃいましたー。ああー、本当に異能力というのは素晴らしいー!」

「外が怖いというのであれば、誰か一緒についていかせましょうか。小夜さん、そう身構えなくてもいいんです。あなたはただ異能力を使って情報を集めてくれればいいのですから」

「なんでですかー! 私は無理やり連れてこられただけなのにー! 悪いことなんてしたくないのにー!」


 その他の四人は揃ってため息をつく。このやりとりは何十回、何百回と行われてきたことだからだ。


「小夜さん。あんたの異能力が唯一、犯人にたどり着く方法なんじゃ。じゃけぇー、多少のことは我慢してくれかんのぉ? 儂が一緒についていくけぇ」

「そんなら、一将に頼むわ。いくらやることがないとはいえ、俺っちはこの女が性に合わないんでね。ったく、気持ち悪いったらありゃしねぇ」

「どうしてそんなこと言うんですか! 私は何もしていないのに! 何もしていないのに!」

「落ち着いてくださいよー、小夜さん。大丈夫ですよー。あなたは何も悪いことをしていません。これからの未来のためになる素晴らしいことをしているに過ぎないのですからー」

「そうですよ、小夜さん。あなたは十分活躍しています。私たち五人とあの方が出会うことができたのは、あなたのおかげですから。どうか、頼みますよ。小夜さん、一将さん」

「分かっちょるよ。やれることはしっかりとやらしてもらうけぇ。小夜さん、日常生活の中でおかしいことはないんじゃろぉ?」

「はは、はい! どれもこれも普通のことしか読み取れませんでした。犯人に繋がる手掛かりは一切なかったです!」

「政宗さん。やっぱり隕石調べるしかないんじゃないっすか? 俺っちたちが到着すんのが遅かったせいで、今は研究者がごろごろいやがるが、夜になればなんとかなるんじゃないっすか?」


 政宗と呼ばれる老年の男は、机を指でたたきながら考え込む。


「……そうですね。響さんのいうとおりかもしれないです。多少危険は伴いますが、一番手っ取り早い方法ではあるでしょう。もし、夜中でも人が多く無理だと思ったら引き返してください。今度は私が小夜さんに同行しましょう」

「政宗さんと岳さんが同時に任務にあたるのは不味いじゃろう。あの方と対等に話せるのはお二方だけじゃけぇ。両方一遍に事故にでもあったら困るじゃろう」

「そうですねー。そういう事態になりましたら、私も大人しくしておきましょー。それでいいですかねー、政宗さん?」

「岳さんは夜中でも日中でも構わず動き回りますからね。分かりました。私が小夜さんに同行することになったらそのようにお願いしますよ。よろしいですか? お二方とも」

「はは、はいー!」「了解したけぇのぉ」


 部屋には静寂が訪れる。世間話など一切する気もない。あの方に従うという意思のもとに集まっただけだからである。


「……岳さん、任務の方は順調ですか? 前の時みたいに私がいないので、かなり大変なのではないですか?」

「仕方がないことです。これはあの方が望まれたことですからねー。前とは違い、いずれは足もつくでしょう。私はどうなるか分かりませんが、好きなことをやらしてもらっていますからねー。悔いは全くないですよー」

「岳さんがやっちょることは、自殺行為もいいとこじゃろう。これで本当にいいんですかい? 政宗さん、もっと慎重なやり方もあるじゃろう。こんな強引な方法で本当にいいんじゃろうか?」

「岳さんが納得しているので、これでいいんです。慎重と言いますが、あの頃よりも技術も対策も進歩しています。昔のようにできると勘違いして私たち二人がどうにかなってしまう方が危険ではないですか?」

「だったら、異能力対策局やら対能力者部隊、異能戦線をどうにかした方がいいんじゃないっすか? どれか一つは力を合わせりゃどうにかできるっしょ。特に異能戦線は西園寺明良が加入して、やばいことになりそうな雰囲気があるじゃないっすか。今のうちに西園寺明良だけでも先に潰しとかないっすか?」

「駄・目・で・す! あなた、馬鹿なことを言うんじゃないですよー! あれほど素晴らしいダイヤの原石は、二つと存在しないでしょう! これだから、人を見る目のない低能な人は困るんですよー」

「おいおい、いくら岳さんでも聞き捨てならねぇなあ。俺っちは間違ったことは言ってねぇだろうがよ!」


 響は床に置いてあったあるものを持つ。それは異能力を使うという意思と同義であった。


「私もですねー。我慢ならないことはあるんですよー。あなたは理想も夢もない、ただ暴れたいだけの人でしょう? そんな人に彼の凄さの何が分かるというのですかー?」


 岳も構える。彼らはある方に惹かれて集まっただけの名もなき組織。考えも違っていれば、仲もいいわけではない。一触即発の空気が漂っていた。


「そこまでです! いくら目的に違いがあれど、戦うのは許しません! それはあの方の意思とは程遠いものでしょう! どちらも矛を収めなさい!」


 二人は同時に臨戦態勢を解く。どちらも納得しているといった顔ではなかったが、あの方に失望されないためにやめるしかなかった。


「現段階で西園寺明良くんに手を出せば、私たちが追いつめられるだけです。それに、あの方には西園寺明良には手を出すなと言われています。それを破れば、私たちとて、どうなるか分からないでしょう」

「ちっ、それを先に言っといてくださいっすよ。無駄なことしちまったじゃないっすか」

「全くですねー。私も気分を害しました。しばらく外に出るとしましょう」

「わわ、私も外に出ます。もう今日の話は終わりですよね!? そ、それでは失礼しましたっ!」


 ドアを勢いよく閉めて部屋の外に出る岳。その後に続いて、恐る恐るといった感じで小夜が外に出て行った。

 誰も文句は言わない。どうせ、今日の定例会は終わりだからだ。


「それにしても、あの方は何を考えちょるんじゃろうのぉ。このままじゃ、岳さんがいなくなって戦力不足になるだけじゃないじゃろうか?」

「大丈夫ですよ。私の異能力と合わせれば、簡易的に補充できます。岳さんにはその足掛かりをやってもらっているのです」

「なるほどな、そういうことっすか。そんなら、捕まるか死ぬまでに、十人以上はやってほしいもんっすね」

「それも大事ですが、一将さん。そちらの方も頼みますよ。私たちは必ず、異能力を消滅させた犯人を見つけなければならないのですから」

「分かっちょるよ。任せてください」


 こうして名もなき組織の定例会は人知れず行われた。闇に紛れる彼ら彼女の目的は分からないが、九十九日市に災いをもたらすことだけは決まっていた。

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