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第三十一話 特訓

 少年の異能力問題を解決した週末、俺たちはとある山奥まで来ていた。ここは今は使われていない採石場跡地のようで、西園寺家が管理していた場所みたいだ。

 異能戦線が場所を見繕い、明良を伝って許可を得ることができたらしい。

 一般人は立ち入り禁止の場所なので、誰かに見つかることもない。思いっきり異能力を使えるということだ。


「なんだか、映画とかの撮影地っぽいですね。ちょっとテンション上がりますよ」

「私たちは見るだけでいいのかな。ここで運動をしてもいいけれど」

「星村の異能力を見てからでいいんじゃないかな。一緒に行うのは危ないと思うし」

「三人とも、見てみろ星村を。ありゃ相当やる気満々だぞ」


 星村はとても上機嫌のようで意気揚々とストレッチをしていた。今から霧生さんの指示のもと、異能力を使う予定である。


「ふふっ、ようやくこのときがきたみたいね。私の異能力を存分に発揮できるこのときが」

「ここならいくらでも暴れていいからって、俺たちを巻き込むんじゃねぇぞ。まずはやれることを一個一個確かめていきながらだ。いきなりぶっ放すなよな」

「分かってるわよ。まずは、風を吹かすことからでいいかしら?」

「風を吹かす以外にも技があんのか? まあ、今はいい。とりあえず、どれだけ異能力を続けられるかを見る。自分が一番楽な技を持続させてみてくれ」

「分かったわ。すうー、っ!」


 星村が息を止めると、辺りに風が吹く。その威力は相変わらずと言ったところで、砂塵が舞うほどの勢いとなっていた。

 霧生さんは星村に話かけようとしたが、異能力発動中は喋りづらいことに気づき、頭を軽く押さえながらも見守ることにしたようだ。

 その状態が一分半ほど続いたころ、ようやく風が収まった。


「ふうー、やっぱり異能力を発動しながらだと、一分半が限度と言ったところね。戦闘しながらだと、この半分くらいだと思ってもらった方がいいかしら」

「おい星村! お前、これが通常なのか?」

「ええ、そうね。制御しないのであれば、これが一番楽だわ。威力を強めたり、複雑なことをするならもっと短くなるでしょうけど」

「そういうことを聞いてんじゃねぇよ。ったく、デフォルトの威力が高すぎるな。星村はもっと制御する方に力を入れたほうがいいかもしれん」

「確かに、そのとおりね。そっちの方がやれることも増える気がするわ」

「ま、今日はせっかくここまで来てんだ。全力の方も見とくか。やれるか、星村?」

「ええ、任せて頂戴」


 今日の星村は随分と楽しそうだった。抑圧されていた異能力を開放するが如く、周りもお構いなしに異能力を使用する。星村の全力は学校で見たときよりも強く、屋外であっても立てないどころか、下手したら引きずられるぐらいの強さになっていた。


「はぁ、はぁ、どう、かしら?」

「どうもこうも、凄すぎんだろ。星村には、異能力の才能があったってことだろうな。これだけでも十分だが、他の技も見せてくれるか?」


 星村が息を整えながら、しっかりと頷く。まだまだ余裕があるようだ。呼吸を止めるのに制限時間があると言っても、異能力自体は燃費がいいということか。


「それじゃあ、やるのだけども、何か壊してもいいものってあるかしら?」

「……嫌な予感しかしないが、本当に大丈夫だろうな? あの山が崩れることはねぇだろうが、一応、あっちの岩の塊に向かってやってみてくれ」

「大丈夫よ、そんなに威力はないと思うから。すうー、いくわよ」


 大きく息を吸った星村は両手を斜めに重ねて前に構える。すると、どうだろう、見る見るうちに星村の前に風が凝縮していく。……本当に大丈夫かこれ?

 思わず、俺たち四人は霧生さんを見る。霧生さんは俺たちに手で待ったの合図を出している。このまま発動させるみたいだ。

 空気の塊がある程度大きくなると、星村が両手を前に突き出す。それを合図に、空気の塊が刃となって岩に衝突する。凄まじい音と同時に、岩の破片が飛び散った。

 岩の塊は一部が何かで削られたかのように砕けていた。俺たちは目を点にして、一部始終を見ていた。


「はあー、流石に異能力を全力で使いすぎたかしら。ちょっと小腹が空いたわね」

「星村……、ほんとにやべぇから、ここ以外では俺の許可なしに絶対使うなよ……」

「そのつもりよ。さっきも言った通り、もっと制御できるような方法を身につけるわ」


 もしかしなくても、あのとき俺が突っ込んでいなかったら、これを黒峰に放つつもりだったのか。命中すれば、確実に死んでいたな……。

 星村は覚悟をしていたとはいえ、星村を人殺しにさせないで本当に良かった。


「よし、お前ら。一旦集まってくれ。みんなを交えて、俺の考察を今から説明すんぞ」


 俺たちは霧生さんに呼び出されて、集合する。星村は流石に少し疲れているのか息が乱れているようだった。


「考察というのは一体何ですか?」

「星村の異能力について、延いては異能力自体についてだ。星村、お前の異能力が発動したのは九十九事件の後だったよな?」

「そうよ。九十九事件のことを知った、次の日の朝に発現したわ」

「そのときの星村は、九十九事件の犯人が鋼鉄化の能力者で、警察の手にも負えない相手だということを知ってたか?」

「……知っていたわ。鋼鉄化の異能力であるならば、銃弾も効かないだろということも予測していたわ」

「おそらく、それがこの強さの原因だ。星村は鋼鉄化の異能力にもダメージを与えられるような異能力を願ったんじゃないか? それがお前自身の才能と組み合わさった結果、通常の威力が強い異能力になったという推測だ」

「「「「っ!」」」」

「……そうね。そのとおりよ。何もできなかったのが嫌で、次にそんなことが起こったときに、私も活躍したい。そんな異能力が欲しいと願ったわ」

「そ、それって! 自分の意思や願いと異能力が関係しているってこと!? 自分の思い描いた異能力は発現できないんじゃないの!?」

「それは合ってんだと思う。星村も空気を操る異能力が欲しいと思ったわけじゃねぇはずだ。だが、星村の鋼鉄化の異能力をどうにかしたいという思いに対応した異能力が、たまたま空気を操る異能力だったということだ」

「霧生さんもスイッチを操ることに関した思いを持っていたということですか?」

「俺が発現したのは三年以上前だ。そんときのことなんて覚えちゃいねぇよ。雲雀の方はどうだ?」

「私は気が付いたら使えるようになっていたので、良く分かりません。いつ発現したのかも分からないので。でも、九十九事件の犯人、草壁も同じようなことを言っていたので、可能性としてはあるんじゃないかと思います」


 草壁の場合、傷をつけられた後だったから、傷を付けられないような異能力を願ったんだろう。その結果、与えられたのが鋼鉄化の異能力といったところか。


「異能力を使えるようになってんのは、未知の物質である異能物質と異能器官のおかげだろ。思いに反応する新たな物質と言われても、俺は驚かんがな」

「明良のいうとおりだ。何があってもおかしくはねぇ。にしても困ったな。ワープの少年と、獣化の生徒には話を聞けねぇからな。ま、頭の片隅にでも置いといてくれ」


 俺は異能力を発動したとき、何を願ったのか。それは多分、なぜ、異能力が復活したのか。なぜ、今日ここへみんなで来てしまったのか。

 それらを解決する異能力が過去へのタイムリープというわけか。……推測には過ぎないが、かなり真実味のある話だな。

 説を提唱した本人である霧生さんも、その他のみんなも考え込んでいる。


「ああーっと、この話は俺の方から朧家や西園寺家の研究者に伝えておく。何か分かるかもしれねぇからな。それと、これで話は終わりじゃねぇ。星村、さっきの空気の刃を飛ばす技、ノータイム、ノーモーションでできるか?」

「いえ、それは難しいわね。しっかりと力を集め、それを自分の意思で飛ばすというイメージとモーションがなければできないと思うわ」

「ということだ。異能力の発動にはしっかりとしたイメージが必要だ。俺もスイッチを操るときはそのスイッチを自分が触っているイメージをする。やっていることが複雑であればあるほどイメージやモーションは大事になってくる。雲雀も未來予知をするイメージをしっかりと持つことが重要になってくるかもしれねぇ。これも頭の片隅に置いとけ」

「はい、分かりました」

「にしても星村。普通は凝縮した空気の塊を飛ばすぐらいだと思ってたが、刃にして飛ばすのは殺意が高すぎんだろ。それも練習しつつ、空気の塊を飛ばすことを練習してみろ。大抵の相手なら、それでも決定打になる上に、発動するまでにかかる時間も減ると思うぞ」

「最初は鋼鉄化の異能力を倒す気持ちでいたものね。どっちも練習してみるわ」

「霧生さん、ふと思ったんですが、霧生さんの異能力って携帯の電源とか操れないんですか? あれもスイッチに似たものを押して、電源のオンオフを切り替えますよね?」

「ああん? 考えたこともなかったな。今やってできる気はしねぇが、暇なときにでもやってみっか。解釈を広げるというのは、割かしありかもしれない。ま、携帯の電源を操れたくらいで何ができるかは分かんねぇがな」

「星村もやれることが多そうだけど、それだけにまずは制御することに重きを置いた方がいいかもね。異能戦線の仕事で力技が必要な場面は少ないと思うし」

「やれることが多そうなだけに色々と悩みそうね。それに加えて複雑ことをするなら、肺活量も鍛えたほうが良さそうね。私の場合はそれが発動時間に直結するもの」

「ってことで、星村も俺たちと同じで運動もしっかりとしといた方がいいな。この後は、俺たちもやるんでしょう、霧生さん」

「そのとおりだ。お前らが現段階でどこまでできるか軽く見ておく。マスターが作ってくれた弁当食ったら、移動すんぞ」

「すごっ! マスターって軽食まで作れるの? 本当にあの人何者なのよ?」

「運動は嫌ですが、マスターの作った料理は楽しみですね。早く食べて、嫌なことは早く終わらせましょう!」


 こうして、第一回目の星村の異能力調査が終わった。昼からは俺たちの番だから、しっかりと英気を養わないとな。

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