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第三十話 初めての異能戦線の活動

 学校の事件から週が明けて数日が経過した。この頃には俺たちの話題も落ち着き始め、見物客もいなくなった。

 それでも、いまだにクラスのみんなからは褒められるというか、尊敬されることが多い。

 俺や明良を含んだ、異能力研究会のメンバーが何かの被害に会うということもなかった。ひとえに西園寺家の力のおかげだろう。九十九日市で暮らす以上、西園寺家の怒りをかってしまえばどうなるか分からない。

 明良の気持ちとしては複雑だろうが、西園寺家という名前に助けられていることには素直に感謝している。今日も異能戦線の拠点に行くつもりだが、一応昨日までのように別々で行った方がいいだろう。

 それに、最近は忙しくてなかなか姿を見せなかった霧生さんから、昨日携帯で私服をもってこいと連絡があった。

 今日までの俺たちはずっとカフェで駄弁っているだけだったので、ついに来たのかと心の準備をした。いよいよ、異能戦線の活動が始まろうとしていた。


「それにしても、私服を持ってこいというのはどういうことかしらね? 私はてっきり異能力のトレーニングをすると思っていたのだけど」

「それでしたら体操服でいいですもんね。わざわざ私服を持ってくるということは、どこかへ調査に向かうんでしょうか?」

「千代の言う通りかもね。いよいよ異能戦線の活動って感じがしてわくわくするわね」

「これもれっきとした活動、いわば仕事なんだから、気を引き締めたほうがいいと思うけどな」

「ま、何かあったら霧生さんが対応するだろう。烈花さんや千代ちゃんにまで私服を持ってこさせたということは、それなりに想定はしてるだろう。難しい任務ではないんじゃないか?」

「それも全部、霧生さんが来たらはっきりすると思うよ。今は霧生さんが来るまで待つしかないさ。とりあえず、更衣室で私服に着替えてこようか」

「「「「了解」」」」

「マスター、更衣室を使ってもいいですか?」

「……大丈夫だ。女子更衣室と男子更衣室に分かれてる。好きに使っていい」


 俺たちはマスターの許可の元、更衣室で服を着替える。俺たち男子が先に出てきた後、しばらくして女子たちも戻ってきた。

 活動ということもあって、各々動きやすい私服に着替えている。


「さて、どうしたもんかね。このまま移動という話なら、ゆっくりもしてられねぇしな」

「軽く一杯ぐらいならいいんじゃないか? いきなり現場に向かうってことはしないと思うよ」

「あー、なんか緊張してきました。失敗したらどうしましょうか?」

「別にそんな気を張る必要もねぇ。待たせたなお前ら。おっ、各々準備もできてるみてぇだな。まずはここで軽く会議を行ってから現地に向かう。いつもの場所に座ってくれ」


 帰ってきた霧生さんに促され、定位置に座る。そこへ霧生さんが何やら写真らしきものを十数枚ほど置いた。


「霧生さん、これは一体?」

「しっかりと、全部の写真を見てみろ。共通点があるからよぉ。何か気づいたことがあれば言ってみろ」


 俺たちは全部の写真を見てみる。すると、どうだろうか。


「これ、写真が偶数枚ありますけど、半分は室内の写真で、もう半分は屋外の写真なんですね」

「いいな、雲雀。まさか先にそっちに気づくとは。いい着眼点してんぜ、お前。そのとおり、気づいてほしいことの一つはそれだ。もう一つ、これよりも分かりやすい要素があると思うが、気づかねぇか?」

「ええっと、写真の中央?ぐらいかな。何か白いチョークのようなもので書いた後に、それを消したような跡が残っている気がする」

「小鳥遊、正解だ。そう、この少し汚れた白いものからチョークの粉が確認された。これらが示すものは何だと思う?」

「私たち異能戦線が関わっているのだから、ただの悪戯というよりも異能力の痕跡、ということなのかしら?」

「そのとおり。もっと詳しく言うと、これが異能力の発動条件の痕跡だ。二重丸を二つ用意することで、その円の中の物体を、もう一つの円の中にワープさせる異能力のな」

「「「「「ワープの異能力!?」」」」」


---


 俺たちはカフェ近くの駐車場に止めてあった車に乗って、都市部に向かっていた。車でなら十分もかからずに着くだろう。

 俺たちに課せられた初めての任務はワープの能力者の監視ということであった。俺はさっきまでのカフェでの話を振り返る。


「そう、ワープの異能力だ。全く、嫌になるぜ。こんな便利な異能力をもったやつが、悪さをしてしまう側の人間ということにな。もし、そうじゃなければ、いずれは活躍できていただろうに」

「いずれってことは、俺たちよりも若いってことですか?」

「ああ、年齢は十歳。小学四年生の少年だ。逆に小学四年生だからこそ、被害はお菓子やおもちゃの万引きだけで済んでるんだがな」

「異能力の詳細はどうなっているんですか? なんていうか、範囲とか、そういうやつです」

「ちょっと待てよ。俺が最近調査した感じでは、ワープの距離は大体五十メートルぐらいが限界っぽいな。ワープできる大きさも、段ボール箱ぐらいだと想定している。ワープの瞬間は一瞬だった。その後は普通に家に帰ったことから、誰かにやらされているということもなく、単独で、それも自分の意思で行っている可能性が高い」

「異能力対策局は動かないのですか? 子供でも、犯罪を起こせば罰せられるのですよね?」

「そこが今回の難しいポイントだ。一つ目に、犯罪の立証が難しい。現段階では、能力者であることは自己申告に頼り切っている。そいつが能力者だと判断する方法がない。一応、監視カメラの映像や現行犯であるなら、なんとかなるかもしれないが、その少年がワープさせましたっていう証拠を押さえるのは不可能に近い」


 九十九事件の草壁容疑者の場合、異能力を使って暴れているのが監視カメラの映像にばっちり映っていることに加えて、複数の警察官の証言もある。

 だが、今回は誰が見ても、それを少年がワープさせたとは断定できない。やっていること自体が不可思議な現象であるからだ。

 ここら辺の異能力の犯罪についてはしばらく無法地帯だろうな。暴力事件よりも厄介ということか。


「でだ、二つ目に少年がまだ小学生だということだ。異能力の法律があれば裁くこともできるが、流石にかわいそうだ。身辺調査の結果、少年は品行方正で、悪い行いなどしたことはない。周りからの評価も俺が調べてみたところ、汚い部分は出てこなかった。ただ、異能力が少年を唆した。ちょっとした出来心でも犯罪は犯罪だ。それでも、少年の暦に傷をつけるのはどうかと思ってる。もちろん、今後は異能力対策局の監視下に置かれることにはなるがな」


 うーん、納得できる話ではあるな。犯罪の立証の難しさ。少年の未来への懸念。

 では、どうするべきなのだろうか。というか、異能戦線にできることはあるのだろうか。


「でも、このままって訳にはいかないわよね。ずっと、彼の犯罪を見逃すつもり? 彼が犯罪をやめる保証はないでしょう? 彼の行為がヒートアップする可能性だってあるんじゃないのかしら?」

「分かってんよ。そこで俺たち異能戦線の出番ってことだ。何をするつもりかは現場に行って説明する。とりあえず、少年はもっと暗くなる時間に二、三度ほど万引きをすることが分かっている。最初に一回目の万引きを確認した後で、俺たちがアクションを起こす。そんじゃあ、時間も迫ってるから今から車で向かうぞ」


 そして、今に至る。みんな初めての任務で緊張しているのか、誰も喋らない。唯一、明良だけが自然体でゆったりとしていた。


「明良は緊張しないのか? 俺たちがどうにかなる危険はないと言っても、仕事の責任は重大だ。どうしようかって思ったりはしないのか?」

「まあ、嫌な話、俺は西園寺だからな。これよりも緊張する場面や修羅場は数えきれないほどあった。それに多分、今回は俺に重要な役目は回ってこないだろうからな」

「そこまで重要なことじゃねぇ。正直、これは別に失敗してもいい案件だ。理由は後で話すが、そんなに考えすぎねぇ方がいい。適度な緊張感は頭を冷静にするが、緊張しすぎると体が強張り、咄嗟の判断ができなくなる。自分の緊張度を上手く制してみろ」


 流石は西園寺家と元自衛隊員ということだろうか。二人とも、冷静に物事を見ている。俺は異能力を自由に使えない。こういう場面で活躍できるようにならないと。


「うし、そろそろ着くぞ。分かっていると思うが、勝手な真似はするなよ。失敗してもいいが、成功するに越したことはないからな」

「「「「「はい!」」」」」


 俺たちはパーキングエリアに止められた車から外へ飛び出す。今のところ、少年は近くには見当たらない。これから見つけに行くのだろうか。


「少年は異能力対策局の人に尾行してもらっている。警察だと怪しまれるからな。今からその場所まで行く。本来尾行は複数人で行うものではないから、みんなばれないように注意しろよ。見つからないことも大事だが、怪しまれないように自然体を保つことも重要だ。それじゃあ、ついてこい」


 霧生さんの言う、異能力対策局の方のところまで向かう。場所は一番の繁華街から少し離れたところ。店もあるのだが、路地裏のような人気の少ない場所も織り交ざっている。

 なるほど、こういうところにワープさせるということか。あたりを観察していると、一人の男の人がこちらに一礼をした。


「霧生さん、お疲れ様です」

「お疲れ。少年の行方はどうなってる?」

「今はもう一人の局員が見張っています。まだ、犯行には至っていません。ですが、こちらをご覧ください」


 一人の局員に導かれて、路地裏をちょっと進むと、チョークで書かれた白い二重丸が確認できた。


「このように、すでに準備はできているみたいで、今は物色中らしいです」

「距離や店的に察すると、近くのコンビニと言ったところか。OK、俺たちがこちらを見張っているから、そっちは少年の方を見張ってくれ。で、少年が異能力を発動したら連絡を頼む。実際にワープしているか確認する」

「了解しました。こちらはお任せします」


 そう言うと、局員の方はコンビニのある方へ向かっていった。


「流石にコンビニにこの人数はばれるからな。予定を変更して、ワープしてくる瞬間を見ることにする。そこから、次の犯行を行うまでに計画を伝える。いいな」


 俺たちは静かにうなずく。そして、路地裏の最奥、二重丸が見える位置であり、あちらからは見えにくい二つの建物の端に分かれて身を隠す。こちらは行き止まりとなっているので、少年がやってくることはないだろう。

 しばらくすると、霧生さんから合図があった。どうやら少年が物品をもってトイレに入ったらしい。俺たちはチョークで書かれた二重丸を凝視する。


(っ!!)


 音も予兆もなく、それは突然現れた。二重丸の中には、ポテトチップスやビスケットといったお菓子やジュース、水が出現していた。大きさの制限はあっても、数の制限はないみたいだ。

 その後も俺たちはじっと息をひそめていた。件の少年がこちらにやってくるからだ。


(おっ、あれがワープの能力者か)


 周りをきょろきょろしながら現れた少年は一直線に二重丸に向かっていく。そこに置いてあったものを一つずつ確認すると、水以外をカバンに全て詰め込んだ。それから、水でチョークの後を消した後、元来た道を戻っていった。


「ふうー。と、まあこんな感じだ。便利そうでいいよな。ワープの異能力、交換とかできねぇもんかね」

「無理じゃないですか。スイッチ操作の異能力で頑張るしかないですよ」

「それにしても、ビュンって感じで、SF的なエフェクトを期待してたけど、案外静かにワープするのね」

「個数制限もないみたいね。でも、生命や自分をワープできないなら、日常生活では使えないかしらね」

「だから、活用しようと思った結果がこれかもしれねぇな。もっと、良い方向に使うという手段がなかったのか?」

「霧生さん、それで作戦というのはどのようになるんですか? 無理やり脅すとか、良くない手段ではないですよね?」

「当たり前だ。……と言ったが、近くはあるかもしれない。それでは作戦を発表する」


 俺たちは霧生さんの次の言葉を見守る。一体、その作戦とは何なのか?


「作戦名、神は全てを見ておられるだ!」

「「「「「はい?」」」」」


---


「これが作戦の全貌だ。理解したか?」

「いや、理解しましたけど……、本当に効果あるんですかこれ?」

「でも、意外と小学生には通用するかも。この頃はまだ、そういうの信じてると思うし」

「異能力っていう、異常な存在が出てきたからな。普通に信用するんじゃないか」

「この作戦、私が結構重要なんじゃないかしら? どれくらいまで制御したほうがいいか分からないわ」

「最初に視聴覚室で見せてくれたぐらいでいいんじゃないかな? あれだけでも十分怖がると思うよ」


 俺たちが聞いた作戦はいたってシンプルだった。それだけに成功するのか分からず、このように話しあっていた。


「どうやら、少年はちょうど、おもちゃ屋に入ったみてぇだ。上手くいく可能性が上がったぞ」

「まあ、失敗してもいいという理由は分かったから、頑張ってやってみるしかないんじゃない。星村もそんなに気負う必要は無いと思うよ」

「そうね。適度に気を引き締めつつ、やるだけやってみましょうか」

「ワープ先の二重丸はすでに書いてあるんですよね。それじゃあ、もう向かった方がいいんじゃないの?」

「だな。よし全員。小走りで向かうぞ。到着次第、ぶつをセットする。各々の配置は場所を見てから決めんぞ」


 俺たちは霧生さんの指示に従い、急いで目的地まで移動する。どうやら今回のワープ先も、先ほどのような路地裏と同じ構成になっているようだ。


「これなら、霧生さんはここから遠く離れた位置にいて、俺たちは先ほどと同じ場所でいいんじゃないでしょうか?」

「それで構わんが、……俺がいなくてもお前たち、やれるか?」

「「「「「はい!」」」」」

「いい返事と面構えだ。それじゃあ全員、武運を祈る」


 霧生さんはここを離れて、別の路地裏に隠れることにしたようだ。初めての作戦。リーダーの霧生さんはいない。

 でも大丈夫。俺たちならできる。適度に緊張感を持て。冷静に物事を観察するんだ。


「星村、タイミングは俺が指示を出すよ。星村は異能力を使うことに集中してくれ」

「分かったわ。任せて頂戴」

「烈花さんは星村に何かあったときのサポート。千代ちゃんはタイミングを見計らって霧生さんにメッセージを送ってくれ。俺は少年の様子を伺い、何かあったら保護に向かう」

「了解!」「任せてください!」


 それぞれが準備に入っていると、霧生さんからメッセージが届いた。どうやら少年がおもちゃをもって、人気の少ない奥に向かいチョークを取り出したらしい。

 俺たちはいつワープしてきてもいいように、二重丸を凝視する。


(っ! きた!)


 一分も経たないうちに、プラモデルやゲームソフトといったおもちゃがワープしてきた。ここからが正念場、俺たちは静かに潜伏する。


(よし! やってきたな!)


 しばらくして、少年が挙動不審な状態で二重丸に向かった。今回はコンビニの時とは値段が違う。罪の意識をより感じているのだろう。

 少年は二重丸があるところに向かうと、不思議そうに首を傾げた。そこには、少年がワープさせたおもちゃとは別の、動く動物のおもちゃやトランシーバーが置いてあったからである。


(真白!)


 俺が目で合図を送ろとしたが、すでに携帯で文字を打ち込んでいる途中であった。少年が恐る恐るといった感じで、スイッチの入っていないトランシーバーを掴んだ瞬間だった。


「やあ、少年。私の声が聞こえているかな」


 プツンと音と共に、トランシーバーのスイッチがオンになった。トランシーバーから聞こえてくる声の持ち主は霧生さんである。


「な、何ですかこれは!? 一体どうやってスイッチを入れたんですか?」

「私は異能力の神からの使いだからね。これくらいのことは訳ないさ。それよりも、なぜ私が君に喋りかけているのか、分かっているのかね?」

「し、ししし、知りませんよそんなこと! 何かの悪戯でしょ、こんなもの! 警察に連絡してやる!」

「おや? 警察に連絡しないといけないのは君の方じゃないのかな? ワープの異能力を使って万引きをしている、ねえ?」

「そそそ、そそそそ、そそれをどこで知ったんですか!? いい、いや違います。僕はそんなことしてません!」

「残念だが、全てを見通しておる。君の名前もお家も全て分かっているぞ。ほら、見ろ! おもちゃたちも怒っておる!」

「そんな馬鹿なこと! なっ! どうして!」

 

 突如として動き出すおもちゃたち。少年の顔がみるみる青ざめていくのが分かる。


(今だ!)


 俺が星村に合図を出す。星村が息を吸うと同時に、路地裏を風が吹き抜ける。その風はどんどん威力を増していき、ついには少年が立てなくなるほどの勢いとなった。


「ほれ見たことか! 皆、君の行いに怒っている! 無論私もだ! この怒り、どう鎮めるべきか! なあ少年!」

「わわ、分かりました! ぼ、僕が、僕が万引きをしました! 二度としないので許してください!」


(星村! やめだ!)


 少年の言葉を機にあれほど荒れていた風が一気になくなる。少年は憔悴しきった顔でその場にへたり込んでいた。


「そうか。ならば許してやらんこともない。しかし、もし次に同じようなことがあれば、どうなるかは分かっているかね?」


 再び風が通り抜ける。ナイス演出だ星村!


「……しません。二度としませんので、神の使いさん、どうか許してください……」

「うむ、いいだろう。盗んできた物たちは、ここへ置いていきなさい。そうすれば、私が上手く元通りに直しておこう。ほれ、分かったらこの場を立ち去るがよい! 私の機嫌が変わらぬうちになあ!」


 さきほどよりも、強い風が吹き抜ける。少年は無言で何回も頷き、すぐさま表通りの方へ走り抜けていった。少年が走り去った後も俺たちはじっとしていた。

 霧生さんの合図があるまでは少年が戻ってくるかもしれないからだ。じっと待つこと数分。別の路地裏からこちらの方へ霧生さんが向かってきた。


「おお! お前ら! 上出来じゃねぇか! 少年が帰った後の対応も良かったぞ! 局員によると、少年は家に帰っている途中みたいだ。こちらにやってくる気配もない。少年がその後どうすっかは分からんが、ひとまずは、大成功と言ったところだな!」

「ふうー」「うし!」「やったー!」「やりましたね!」「はあー」


 それぞれが喜びや安堵の息を漏らす。初めての任務は無事成功したみたいだ。烈花と真白は飛び上がって喜んでいる。


「星村、お疲れ」

「ええ、お疲れ様」


 俺と星村も軽くハイタッチをする。それよりも、


「星村、異能力を大分制御できるようになってたんだな。驚いたよ」

「そうね。こっそり練習した甲斐があったというものかしら。上手くいって良かったわ」

「星村なぁ、目立つようなことはすんなって言っただろうが。まあ、今回は助かった。ありがとな」

「そういう霧生さんも、素晴らしい異能力の使い方だったんじゃないの? お見事だったわよ」

「はい、それに演技も良かったんじゃないですか? 神の使いさん?」

「馬鹿野郎、よせやい。褒められてもなんも出やしねぇよ……、といいたいところだが、お前ら今日はよくやった。後処理は警察と異能力対策局に任せて夜飯でも食べに行かねぇか? お前らの都合が良ければ、このまま今日の夜は俺がなんでも奢ってやるよ」

「え、いいの? 流石霧生さん! 太っ腹ね!」

「どうしようか悩むね? みんなどこにする?」

「どこでもいいぞ。金のかかる趣味もない、独身男性の貯金を甘く見るな。それに異能戦線は朧家だけあって給料もいいからな。どこでも好きなところを選べ」


 俺たちは夜ご飯の案を出し合いながら、路地裏を引き返していく。初めての異能戦線の活動は大成功で幕を閉じたのだった。

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