第二十五話 異能力研究会の活動
「それでは、異能力研究会の活動を始めようと思う。点呼、始め! 雲雀湊!」
「お、おう」
「小鳥遊烈花!」
「はい!」
「真白千代!」
「え? なんですか? とりあえず、はい」
「星村凜!」
「ええ。……西園寺くん、これはいったいどういう意味があるのかしら?」
「いや、なんか、こういうのやってみたくて、やっただけだ。雰囲気出るかなと思って」
「どんな雰囲気だよ。次からは無しの方向で」
「ですです。西園寺先輩、これ、ちょっと恥ずかしいですよ」
「私も一回でお腹いっぱいだから。明良、もうやらなくていいわ」
「私はいいと思ったのだけれど、みんながそういうのであれば、仕方ないわね」
「星村には悪いが、俺も満足したのでこれきりだ。それじゃあ、改めて活動を始めますか」
今日は異能力研究会を結成してから初めての活動。今日も視聴覚室に集まっていた。こういう集まりみたいのをやったことがなかったからか、少しだけテンションが高めのようだ。
活動と言っても各々が集めた異能力に関する情報をまとめるだけだ。他の活動は今のところ考えついていない。
情報といえば、俺と星村には昨日長谷部さんに話してもらった重要なものがある。仲間のためだ。ここで使わさせていただこう。
「じゃあまずは私ね。これといった新しい情報はないわ。みんなが学校の説明会で聞いた情報ぐらいの知識しかない感じね。ニュースやテレビ、SNSとか調べたけれど、みんな説明会と同じような内容しかなかったわ。というか、その情報がでかすぎて、その話題で持ちきりといった感じね」
「まあ、そうだろうな。ここ一、二週間はこの話題が衰えることはないだろう。一気にいろんな情報を出すと、みんな混乱するからな。仕方ないっちゃ、仕方ねぇな」
「ちょっと待ってくれ。一応、情報をまとめてノートみたいなの作るんだろう? 司会は明良がやるとして、書記はいったい誰がやるんだ?」
「いけねえ、忘れてた。ちょっと待ってな。……よっこらしょっと」
おもむろに明良がカバンから取り出したのは、みるからに高価そうなパソコンだった。十五インチはあるか。それに分厚いな。性能も普通のと比べるとずば抜けて高そうだ。
「書記も明良がやるのか? というかパソコンを使うのか?」
「当たり前だ。こっちのほうが早いからな。書記も俺がやるぞ。パソコン使うのには慣れてるし、どうせ一般には公開されていない、極秘の情報も出るんだ。俺が管理しといた方がいいだろう? てか紙なんて紛失しやすいものに情報なんて載せられるかよ。このパソコンはこのためだけのものだ。ネットにもつないでないから情報が流出することもないだろう」
か、かなり対策を練っているな。流石は西園寺と言ったところだろうか。どうせ、記録が終わるまで次には移れないしな。
「お言葉に甘えて、明良にお願いするよ。万が一でも情報が外に漏れると、長谷部さんや小山内さんに迷惑がかかるかもしれないからね。みんな、異論はない?」
「極秘情報っていうのが気になるけど……。もしかしなくても、この話し合いって結構ガチなの?」
「ガチみたいね。私や雲雀くんは病院で情報を聞いてるし、西園寺くんもその言い方だと何か入手しているんじゃないかしら」
「この異能力研究会を立ち上げたのが、みんなで情報共有するためではあるからな。情報がある奴は惜しみなく使ってくれ。後、できれば、ここだけの話にしといてくれよな」
「分かりました。では、次は私がいきます。私も何も目新しい情報はありません。家族や親戚、友達に聞いてみたりしましたが、どれも同じような情報ばかりです。九十九日市から遠いとこに至っては、ここよりもさらに情報が少ないと言った感じでした。九十九日市外への移動を考えなくていい分、その他の話題が盛り上がっているという感じです」
「あ、九十九日市以外での話題とか考えてなかったな」
「意外と重要になってくるかもしれないからな。そういう感じで役に立たないと思った情報でもどしどし言ってくれ」
「それと、気づいたことがあったら教えてほしいわね。当事者だと分からない話もあると思うの」
明良の思い付きで始めたと思っていた異能力研究会であったが、普通に実りある会へなろうとしていた。そして話はいよいよ、昨日の話へと移行していく。
「じゃあ次に俺が、本題となる話題をしようか。星村、俺の方から話すということでいいかい?」
「ええ、構わないわよ。私ではなく、雲雀くんがいたからこそ手に入れることのできた情報だもの。お願いするわ」
「分かった。昨日俺たちが病院で長谷部さんという警察官から聞いた話を今からする。覚悟して聞いてほしい」
烈花と真白が固唾を吞んで俺を見ていた。そして俺は、昨日長谷部さんから聞いた話。異能器官、異能物質のことについてみんなに説明した。
「い、異能器官!? そんな未知の器官が能力者は全員、体の中にあるんですか!?」
「それに異能物質? ダークマターが人間の体内で生まれているなんて信じられないわよ!」
「どれも本当のことだ。俺も昨日、異能力対策局の小山内さんから聞いたから間違いない。正直この話を聞いてみんなどう思う?」
「どうって、納得するしかないじゃないの。ただでさえ、異能力という訳の分からない力を、人間が使えるようになっているのよ。冷静に考えれば、合理的ではあると思う」
「というより、それって、能力者は普通の人間とは違うってことですよね? そんなの、まるで」
「新人類、よね。人間が進化した存在とでもいうべきかしら」
「進化させられたって感じじゃないかな? どれもこれも隕石の影響によるのは、ほぼ決まりみたいなものだしさ」
新人類どころか、別の違う生き物にさせられてる可能性もある。隕石。かつて地球上の恐竜を葬り去り、地球の生態系を変えた宇宙の神秘。
何が目的だと問うたところで、答えてくれはしない。本当にに災厄だな。
「異能器官は能力者にしかないって話だけど、そんなに急にポンっと発生するものなの? 私たち、非能力者の体に存在していてもおかしくなさそうなのに」
「多分だが、一定のレベルにまで成長しないと機能しないんじゃないか? 俺や烈花さん、千代ちゃんの体の中にもあるにはあるんだろうぜ」
「それが、一定のレベルに成長すると、異能力が使えるようになるということですね。確かに説得力はあります」
「成長するってことは、鍛えることができるのかもしれないわね。未知の器官の成長の仕方なんて、見当もつかないのだけれど」
「やっぱり使うしかないんじゃないかな。身体機能と同じような感覚だと俺は思うけどね」
「そうよね。ということで、さっそく使ってみましょ」
「凜?」「星村先輩?」
「冗談よ。まだ調整はできないもの。みんなを危ない目に合わすわけにはいかないものね」
「星村、それって、一人のときだと、練習してたりするのか?」
「……黙秘権を行使するわ」
「「「「……」」」」
相変わらず、異能力が発現してからの星村は危ないな。委員長の面影はどこに行ったのやら。にしても、異能力を使うことで鍛えることができるか。
真実なら、俺の異応力とは相性が悪いな。そのために死ぬなんてこと無理に決まっている。根本的に鍛えたところで何が変わるのかも分からない。
より詳しい情報が思い出せるようになるのか。それとももっと遠い過去に戻れるようになるのか。どちらにせよ、今の俺にはできない。
「いやー、俺にもいつか異能力が発現するってなると、まあまあ楽しみだな。時とか止めれたりすることできねぇかな」
「そうなったら、発動条件もめちゃくちゃ厳しそうだけどね。未來予知の異能力を持っている俺からすると、星村のような便利な異能力の方が良かったなって思うよ」
「私も、もし異能力が使えるようになったら、運動能力の強化とかシンプルなのがいいわ。あんまり難しそうなのは性に合わなさそう」
「そうですね。私はあんまり考えたことがないので、多くは望みません。変な奴でなければ何でもいいです」
「私はこの異能力で良かったと思ってるわ。燃費もよさそうだし。MP切れにはなりそうにないわね」
「そうか、湊の異能力は強い分だけ、燃費が悪いのかもな。だとしたら頻繁に未來が視えないのは納得だ」
「MPの回復速度も個人差があるんですかね。そう考えると、異能力の発現は相当な博打ですね」
みんな、それぞれ異能力というものを受け入れようとしている。それが、すんなりと行けばいいが。この世には色々な人がいる。
異能器官が優れている人、劣っている人。異能力の優劣は必ず格差となって浮き彫りになる。異能力対策局はどう対応するのだろうか。
「俺たちの話はここまでだ。これ以上の情報はないよ。明良はどうだ? 昨日、異能力対策局へ向かったんだよね。俺たちと同じくらいの情報しかなかったりするのか?」
「いや、そうでもない。湊たちが聞いた話に加えて、異能力対策局関連の話をたくさん聞けた。それに、小山内さん自身の考えもな」
説明会の後に俺へ機密情報を与えてくれた小山内さん。この情報はみんなに話すつもりはない。異能力の発現、発達のために、命を危険に晒すような真似をさせたくはないからだ。
……俺に情報をくれた小山内さんの考えか。気にはなるな。
それから明良は小山内さんとの話の内容を教えてくれた。今度は驚きこそしなかったが、みんな腰を据えて考え込む。
「異能力対策局がなぜ、今になって情報を共有したか。全てはタイミングということなのか。話の内容も筋が通っていると思う」
「異能力事件後の異能力に対する風当たりは強かったもんね。それでも、いや、だからこそ欲しがるようになったのが異能力。自衛するための武器が欲しかったから」
「異能力が当たり前の世界ですか。確かに、夢を見る人は多そうですよね。けど、九十九事件が起こったので、また風当たりが強くなりそうですね」
「考え自体は悪いものではないと思うわ。実際にそうなる可能性も高いでしょうし。これからの異能力対策局に期待ということかしら」
「今思ったけど、ファンタジーの世界を目指すなら、魔道具みたいのが生まれても面白そうだよね。異能物質をなんか上手い感じに使ってさ」
「大体、こういうのは電気エネルギーに変換したがるから、エネルギー問題は解決できるかもしれねぇな」
「異能物質を使った車とかも面白そうじゃない? もう、ガソリンに頼ることは無くなるかもね」
これからの世界は、ネガティブな問題にぶち当たるし、ポジティブな出来事も訪れるだろう。たくさんある可能性の中で、何を取捨選択するのか。
星村の言ったとおり、異能力対策局次第ではあるが、気になることが一つある。
「明良、これだけ日本で話題になってるんだ。世界の反応とか分かったりしないか? このまま、何も介入しないということはありえないと思うんだけど」
「それなんだが、今度父さんに聞いてみようと思う。まだ、日付は確定していないが、父さんが暇なときに家族で話し合う約束をしておいた。その話も、星村の異能力の活用についてもまた今度だな」
「あら、ありがたい話ね。どこか練習させてくれる場所が見つかるといいのだけれど、あんまり期待するのも西園寺くんに悪いわね。できたらでいいわよ」
「まあ、できることはしてみるぜ。どうするかの最終判断は星村に委ねるからよ」
「はあー、ここまでみっちり話し合いをしてると結構疲れるわね。誰かお菓子とか持ってないの?」
「お菓子の持ち込みは禁止されていませんが、パーティーみたいのはできないですしね」
「視聴覚室ではなくて、カフェとかでできればいいわね。どこか良さそうなところはないのかしら?」
「そういえば湊の家の近くに雰囲気の良さそうなカフェがあるじゃない? あそことかどうなのよ?」
「あそこは無理だよ。三年前ぐらいにできたのはいいけど、営業中の看板を見たことがないから。ずっと閉まってるんだよ」
「あのな、無茶言うな。他の人に聞かれたら不味い話もしてんだぞ。ここでもいい方なんだからな。それとも、都市部にある西園寺家が保有するビルの一角でも借りるか? 俺は構わんぞ」
「それは駄目だ。俺たちの遊びで西園寺家の恩恵を受けるようなことはしないって話だろ。明良が良くても、俺たちが駄目だ」
そう。これは俺と烈花と明良が作ったルール。西園寺家の力にあやかって、豪勢な遊びをしたり、過剰なサービスを受けないようにすると言った約束だ。
上
「けど、この異能力研究会自体が西園寺家の恩恵の上にあるようなもんなんだからよ。いいじゃねぇか、それくらい」
「今はここでいいんじゃないかしら。学校から近いというのはいいことよ。しばらくは、ここにしておきましょう」
「でも、ちょっと気分転換はしたいですね。何かいい感じの息抜きがあればいいですけど」
「なら、せっかくだし隕石でも見に行かないか。今までの情報を揃えた上で見に行くと、今までとは違ったものを発見できるかもしれないよ」
「いい案ね、湊! それじゃあ、異能力研究会の活動として、いっちょ行きますか!」




