第二十話 異能力対策局
金髪の男との異能力バトル、通称九十九事件が起こった週明けの月曜日。俺は朝からずっと地に足が着かない心地であった。
単に週明けの月曜日が嫌だとか、そういう理由ではない。今日のこれからの予定の密度が尋常ではないことが関係していた。
最初に急遽予定に組み込まれることになった、異能力対策局の総務課による異能力の説明。次に放課後、一昨日のショッピングモールでの出来事をみんなに話すこと。最後に星村に異能力が発現したことによる、立ち入った議論。
俺の前には並々ならぬ議題が待ち受けていた。
(「星村の異能力が発現したことは、週明けの月曜日の放課後、湊の今回の件とまとめて話し合いするのが一番だと思ってる。お互いに聞きたいことが山積みだろうからな」)
昨日の電話の時点では詳しいことは聞けなかったが、それはみんなも同じ。簡単に無事であることや謝罪、話し合いの場ですべてを話すという旨のメッセージをみんなに送っているから、あちらからも明良以外は俺の情報を詳しく知らない。場合によってはヒートアップすることも想定される。
問題ない。何を言われてもいい覚悟はしている。それで俺たちの絆に多少のひびが入ることは俺のせいなのだから仕方がない。それよりもまずは、異能力の詳しい情報を入手することに集中しないとな。
今後の俺の人生を左右しかねない、能力者として、これはとても重要なことだ。
重りでも仕込んでいるのかと思うぐらいの足取りで俺は教室を目指した。
長い時間をかけてたどり着くと、教室の中はいつもとは違ってざわめきに満ちていた。
「ねぇ、見た。九十九事件のニュース。あんなことが身近で起きるなんて、とても怖いわ。これからどうしよう」
「異能力が復活したんだってなぁ。もしかしたら俺にも超強い異能力が宿るかもしれねぇ。わくわくしてこないか?」
「今頃になって異能力が復活するなんて。どういうことでしょうか。何か陰謀じみたものを感じますね」
反応は人によって様々。異能力に恐怖する者、喜びを感じる者、懐疑的になる者、どれもこれも五年前に異能力が現れたときと同じような反応だ。
この中で、俺が過去にタイムリープする能力者だと言ったらどうなるんだろうな。
畏怖するのか、羨望のまなざしか、はたまた全く違う感情を向けられるのか、この状況はそんな危うささえ感じさせる。
俺の異能力は秘密となっているが、他の人場合はどうなるのだろうか。そこも今日の異能力対策局の話し次第ってところか。
「おっす、雲雀。今話題の異能力、どう思う? 個人的にはアニメや漫画の世界が近づいたって感じで嬉しいぜ」
「おはよう、羽場。俺はまだ整理がつかないよ。九十九事件もあったばかりだし、綾森はどうだ?」
「僕も雲雀くんと同じような感じですね。九十九事件のせいで素直に喜べないと言ったところが、素直な感想でしょうか」
「……」
「黒峰、大丈夫か?」
黒峰大河。~っすという口調が特徴的な元気はつらつな男子生徒。普段なら元気よく話題に乗ってきそうなのに、今日は調子が悪いのか元気がない。
もしかしたら異能力に対して嫌悪の感情を持っているのか?
そんな話は噂ですら聞いたことがないんだけどな。
「っす! 今朝、鼻血が出たからか、ちょっとボーっとしてただっけすよ。異能力は俺も雲雀や綾森と同じような意見っすね」
「そうか? 辛かったら相談しろよ。まあ、みんな保守的、いや俺が能天気なだけか。でもまた消えるかもしれないし、今は様子見っていうのが一番いいんだろうな」
異能力が現れた、この騒ぎは朝のHRの予鈴が鳴っても続き、担任の先生が来るまで終わることはなかった。
「みんな、落ち着いて席に戻ってくれ。気持ちは分かるが、今日は大事な日だ。急遽授業の予定を変更し、異能力に関する説明会を行うことになった。一限目の授業が始まる前に講堂へ集合するように」
みんなは席に戻ったものの、ざわめきが消えることは無かった。それもそうだ。今まで全然情報のなかった異能力に関する説明会が実施される。それぞれがいろんな思いを胸に抱えていることであろう。
俺は知っていたからこそ驚くことはなかったが、みんなはそれほどまでに異常なことが起きているということを感じ取ったのではないだろうか。
俺はクラス中を見渡す。明良の姿は見えるのに、星村の姿が見当たらない。俺と同じように検査を受けた次の日の午後に退院するということか。まあ、大事なことは後で伝えられるから大丈夫か。
「湊、講堂に行くぞ。今日の説明会で色々と見えてくればいいんだがな」
「少なくとも何かしらの進展は欲しいね。どんな話が出てくるのか興味が湧いてくるよ」
「そんな悠長な話題だといいな。しっかりと構えておいた方がいいと思うぞ」
「うーん、そんな度肝を抜くような話が出てくるかって言われると、俺は正直微妙な気がするけどね」
異能力対策局。一体どこまで知っていて、どこまで開示するつもりなのか。蓋を開けてみたら今までのおさらいでしたってことだけはやめてほしいものだ。
父さんのことに繋がる可能性も含めて情報が欲しい。そうなれば明良を頼って情報を得るという手段もありかもな。
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講堂。主に全校集会や文化祭といった行事に用いられる建物。構造は二階建てになっていて、一階は普通の平面が広がり、パイプ椅子が並んでおいてある。一階は一年生の場所だ。
二階は一階をコの字型で覆うように建設されており、コの形は中央の壇上に向かうようになっている。そこにコンサートホールみたいに下から上に行くほど段差が上がり、階段で登れるようになっている。
それぞれの段差には備え付きの低い背もたれのある椅子が並んでおり、コの字型の両サイドを二年生が、背後の部分を三年生が座るようになっている。
俺たちの席は壇上から見て左側。遠くもなく近すぎもしない距離。これなら聞き逃すようなことはない。講堂の様子は教室と同じでざわざわとしていた。今から一体何が始まろとしているのかという雰囲気を感じる。
喧騒が最高潮に達すると、壇上のライトが点灯する。説明会の始まりの合図だ。講堂の空気が一気に静まり返る。
「九十九日市高校の皆さま、おはようございます。私は異能力対策局総務課の小山内迅と申します。それでは今から我々が把握している異能力の詳細を説明したいと思います。進行をスムーズに行うために質問はその都度、時間を設けますので、その時にお願いいたします」
シュッとした優しい笑顔が似合うイケメン。黒いスーツを着たお兄さんが登場した。いよいよか。さて、どんな情報が出たものか。
「まず、その前に異能力対策局とは何なのかについて説明いたします。異能力対策局とは、とある企業と政府の支援によって構成された、異能力を扱うことに特化した組織です。主に事務的なことを扱う総務課と実際に能力者と対峙し、場合によっては鎮圧する対能力者部隊という陸上自衛隊に属する特殊部隊によって構成されています」
これは長谷部さんから伺った話とほぼ同じだな。陸上自衛隊に属する特殊部隊か。ならば、色々なものを扱えるだろう。何かあったときは頼るのが一番だ。
「基本的に能力者が現れた場合、警察が対応いたしますが、警察では無理であると判断が下された場合、この対能力者部隊が派遣されます。今回の九十九事件がいい例ですね。騒動の犯人である草壁容疑者は鋼鉄化の異能力を有しており、銃弾が効きませんでした。よって対能力者部隊が派遣され、催涙弾によって鎮圧、拘束することができました。ここまでで何か質問がある方はいらっしゃるでしょうか?」
質問ね。ここまでだと俺は特にないな。そう思っていたら、一人の女子生徒が手を挙げて質問した。
「そこの君、質問をどうぞ」
「はい。警察でも対応ができない場合に対能力者部隊が派遣されるとおっしゃいましたが、それは基本的に能力者が危ないと判断された場合は、発砲許可が下りるということでしょうか?」
「いい質問ですね。マニュアルとしては説得、銃以外での拘束が目的とされていますが、被害が拡大する恐れがあった場合、現場と上の判断で発砲許可が下ります。また、異能力を使用した犯罪は罪が普通と比べてかなり重くなります。これは大人に限った話ではありません。未成年でも罪が重くなりますし、危険と判断された場合には発砲許可が下りることがあります」
この言葉を機に沈黙が一気にどよめきに変わる。そりゃそうだ、俺たち高校生でも異能力を使って悪事を働けば、最悪殺されることがあるということなのだから。
こんな規律、準備をするのに時間がかかったはず。三年前にはすでにできていたな。
「だからこそ、異能力が発現したものは、まず第一に異能力対策局総務課に連絡をしてください。人の役に立つような健全な使い道であれば、異能力を制限されることはありません。私たちは異能力を受け入れた新時代を目指しております。悪用することなく、ご協力をお願いいたします」
異能力を受け入れた新時代か。これはどうなることやら。異能力対策局に連絡するということは監視とまではいかなくても、管理されるんだろうな。九十九事件を考えるのであれば当然の話か。今度は違う男子生徒が手を挙げる。
「なぜ、これほど迅速に異能力の詳細を発表しようとしたのでしょうか? 先日の九十九事件と言い、全てを公表することに違和感を感じるのですが。どのようにお考えなのでしょうか?」
「これもいい質問ですね。まず、なぜここまで迅速に発表したのか。それは次の異能力事件を防ぐためです。異能力の発現を我々は抑えることはできません。ならば我々という存在を明かすことで異能力を用いた事件の抑止力になればいいという風に考えております。発砲許可が下りるという私の話を聞いた上で、異能力を用いた事件を起こそうなんて考えるものはそうはいないでしょう。迅速に発表できた理由としましては、三年前には体制が完成していたからですね。これらは全て我々の独自の行動ではなく、政府に認められているということです」
草壁容疑者は頭のねじが外れていたが、普通のやつならここまでの話を聞いて、異能力を悪用しようとはならんだろうな。悪ふざけで異能力を悪用したがる、俺ら世代にも有効ということか。
「では次の説明に移っていきます。次は異能力の特性について説明いたします。前提として能力者には大きく分けて二種類の人間が存在します。どのような者だと思いますか?」
簡単に考えるのであれば、強い異能力か、弱い異能力かと言ったところだろうか。全てが全て強い異能力ではないはずだ。
「では正解に移ります。答えは、異能力を上手く扱える者か、そうでない者かの二種類です。これは異能力が強いとか弱いとかいう話ではありません。単純に異能力への理解度、適応率の高さの話なのです」
俺の中でとあるジグゾーパズルのピースが見つかった気がした。上手く扱える者というのは、噂にある、情報が流れ込んでくる人間のことだろう。そしてそうでないものは、俺のように異能力の情報が分からなかったもののことだろうな。
「そして、異能力には発動条件というものがあります。例えば、両眼を開いている間だけ、鋼鉄化できるといった感じにです。草壁容疑者は鋼鉄化の異能力を使えることは把握していましたが、両眼を開いている間だけという発動条件に関しては把握していませんでした。この場合、そうでない者に分類されます。はたまた異能力と発動条件、そのどちらもを知っていても、発動したいときに異能力を上手く発動出来ない。こちらもそうでない者に分類されます。つまり、異能力を上手く扱える者というのは、異能力を発現したときに頭の中へ異能力の使い方の情報が流れ込んだうえで、発動したいときに自由に異能力を発動できる者のことです」
随分と上手く扱える者の範囲が狭いんだな。草壁容疑者の強さも上手く扱えているのとは関係ないのか。俺はどうだ?
死んだときに発動するというのは自由に発動できるという認識でいいのだろうか。どちらにせよ、俺の頭の中には情報が流れ込んできていない。そうでない者には違いないな。
「そして大事なのは、自分の思い描くような能力者にはなれないということです。これは狙って能力者になれることもなく、能力者になったとしても、自分の欲しい異能力を手に入れることは不可能ということです。これらをまとめますと、異能力の発現には三つの運の要素が関わってきます。一つ目は異能力を発現できる可能性が高い人間であるのか? 二つ目はどんな異能力が発現するのか? 三つめは異能力自体との適合度が高いのか? といった形になります。ゆえに間違ってもかの最初の異能力事件みたく自分にも異能力が発現するかもしれないと過信して、蛮勇を働かないようにしていただきたいのです。そういった多くの尊い命がどうなったかは皆さまもご存じでしょう。何かあれば、警察、異能力対策局を頼ってください。くれぐれも異能力を発現したいがために無謀なことをしないようにお願いいたします」
この発言が本当ならば、草壁容疑者の異能力の発現には気持ちが関わっているという発言はおかしいことになる。
けれどもこの疑問は後にしておこう。この説明自体は一般人の無謀な行為を止めるためにあるものだ。後であちらに時間があれば個人的に伺ってみよう。
「ここまでで質問がある方はいらっしゃいますか」
みんな思っていたよりもとんでもない情報の数々に頭が混乱しているのだろう。周囲を見渡しても手を挙げてる生徒は見当たらなかった。
「はい、私から質問があります」
「そこの、先生でございましたか。質問をどうぞ」
「これらの異能力に関する情報はどこから出てきたのでしょうか? 先ほどの説明では異能力対策局に研究チームがあるようには思えません。機密情報であるなら、答えてもらわずとも結構です」
「なるほど、鋭い質問ですね。いいでしょう、別に機密情報でもありません。ここで黙っていては説得力に欠けるというものです。先生のおっしゃる通り、異能力対策局には研究チームはありません。情報源はこの組織を構成する手助けをしてくださった企業、西園寺グループに属する研究機関となっております。そして他にも、異能力対策局以外の組織が存在し、そちらと連携をとっております。そちらに関しては我々が話せる権限がないので、この場での詳細は秘密という形にさせてください。私たちの組織が設立できたのは西園寺グループのおかげであり、願いでもありました。ゆえに、嘘の情報を掴まされたということはなく、とても信頼できるものであります。ただ、異能力に関しての質問は我々、異能力対策局が承っておりますので、西園寺グループに直接、対応を求めないようにしてください」
他にも異能力対策局みたいな組織が存在しているのか。異能力対策局に話す権限がないということは、政府でもなく西園寺家以外の有名な企業。怪しくて心当たりがあるグループが一つ。確か、最初の異能力事件で関係者が被害にあったという情報をニュースで見かけたことがある。
日本だというのに、政府が関わっていない民間の軍事会社らしきものがあるのだろうな。あくまで憶測にすぎないが……。
「他に質問がなければ最後の話に移りたいと思います。異能力が人間に発現するようになった理由。これも皆さまご存じの通り、九十九日市にある隕石が関わっていると思われます。どのようにして異能力を発現させるのか、なぜ突然消えて、再び現れたのか、その理由は未だにはっきりとしておりません。それほどまでにあの隕石は難解なものだということを知っていただきたく存じます。それとここからが本題なのですが、単刀直入に申しますと、九十九日市から他の場所へ居住地を移動することを検討してくださいませんか?」
空間から音が消えた。正に凪といった状態。誰もが言葉を失った。
「驚かれるのも無理はありません。しかし、過去のデータから見ても、隕石に近い場所ほど能力者の発生率が高いのです。その分だけ、危険が伴うということでもあります。もちろん、最初の異能力事件のように離れた場所でも事件は起こります。それでも九十九日市よりは可能性は低いでしょう。現に能力者が現れてから数日、すでに九十九事件が起こっております。また、移動することを決められた場合、国からの援助が出ます。但し、異能力対策局の本部はここ九十九日市になります。異能力事件が起こった場合、確実に対応できるでしょう。起こらない前提のことを考えるのか、起こった後のことを考えるのか。皆様の安全を、これからを左右する出来事です。ぜひとも熟考の上、判断してくださいませ。以上で異能力対策局総務課からの説明会を終了します。各自先生の指示に従って退出してください」
「……な、なんだよそれ! どうすればいいんだよ!」
「でもここにいれば私に異能力が発現する可能性が高いってことだよね?」
「そんなこと言ってられるか! 発現する確率も低けりゃ、どんな異能力が付くかも分からないんだぞ!」
「これは大スクープよ! 放課後、すぐさま記事にしましょう!」
張り詰めた糸を切ったように、講堂が騒がしくなる。結局、みんなが静かになり退出するまで、相当の時間がかかることとなった。
俺は退出するとすぐに小山内さんが来るであろう場所に向かった。あれだけの話題を提供したんだ。先生からの質問攻めにあっているだろう。まだ帰ってはいない。
来客専用の駐車場で待っておけば会えるはずだ。俺から一つだけ質問をしたいことがあった。
(来た! 間違いない、小山内さんだ)
小山内さんが同僚らしき人物を連れて、車に向かってきた。他には誰もいない。聞くならここだろう。
まずは、俺のことを知っているかどうか、質問はそこからだ。
「あれ、君はこんなところで、どうされたのですか? ふむ、ここで待っていたということは個人的にお話があるようにお見受けします。時間は……、少しありますね。聞きたいことがあれば一つ答えましょう」
「ありがとうございます。私は雲雀湊と申します。私のことをどこかで聞いたことがあるでしょうか?」
「ほう、君が雲雀くんですか。存じていますよ。警察の方から話は伺っています。それで、雲雀くんは私にどのような質問があるのでしょうか?」
よし、俺のことを知ってくれている。感触も悪くない。正直に答えてくれるとは限らないけど、聞いておいて損はないだろう。
「九十九事件の犯人。草壁容疑者が言っていたんです。異能力の発現には少なからず、感情や意思が関わっていると。私は完全にそうとは思いませんでしたが、一理あるのではないかと思いました。異能力対策局は、小山内さんはどう思われますか?」
「……雲雀くんは私の話よりも草壁容疑者の話の方が信じられるということですか?」
「いえ! 決してそうではなく、単純に気になったんです。感情や意思が関わっているのであれば、私の異能力も鍛えることができるのではないかと思いまして」
そう。俺は自分の異能力を使いこなしたいと思っている。俺が思い出すことができたのはイメージと少しの会話だけ。もし異能力を鍛えることができるのであれば、もっとしっかりと、死ぬ前に至る経緯や大事な会話を思い出せるのではないかと考えたのだ。
「残念ながら、そのようなデータは確認されていませんね。皆さまの無謀を止めるための出まかせと言った訳ではないのです。ご期待に沿えず申し訳ありません」
「そう、だったんですね。お時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした」
違ったのか。まあそう都合の良い話があるわけではないよな。所詮はあいつの時間稼ぎに使われた話だ。一礼をして、大人しく帰ろうか。
「……待ってください、雲雀くん。いいですか? ここから先は機密情報ですよ。最初の異能力事件、そこで多くの尊い命が失われたと説明しましたよね?」
「はい、自分にも異能力が発現すると信じて、亡くなられたという事件ですよね」
自分の教室に帰るために振り返ろうとした俺を小山内さんが引き留めた。一体どういうことだろうか?
「そうです。実はですね、そこで死んだ方の数人が能力者であったんですよ。これは生き残った方から伺ったことなので間違いありません」
「えっ?」
「お、小山内さん! その話は!」
「大丈夫です。責任は私がとります。詰まるところ、異能力を発現できる可能性が高い人間は、窮地に追い込まれると、異能力を発現するみたいなのです。君の異能力を鍛えることと関係があるかは分かりませんが、お役立てできれば幸いです」
なんだよ、それ。大それた情報じゃないか!
何が無謀を止めるための嘘だ。これこそ、無謀を扇動するような危険な情報じゃないか!
「こんなこと、私に話してもよろしいのですか? 一番重要な秘密にも思えますが……」
「別に構いません。未來予知の異能力を有する君にであるならば。重荷を背負わすわけではありませんが、これからのご活躍を期待しておりますよ」
そう言い残して、小山内さんともう一人の方は車に乗ってしまった。俺はただ呆然と、車が離れていくのを見つめることしかできずにいた。




