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第十六話 勝利の栄冠は誰の手に

 轟音がショッピングモール内に鳴り響く。俺はまたも店の中に飛び込んで攻撃を避ける。立ち上がると店内を移動して斜線を切りながら男との距離を広げていく。

 男はゆったりとした足取りで近づいてくる。タイミングを見計らって店を出て、男が地面を蹴り上げた瞬間、次の店の中に逃げ込む。

 そうやって俺は男に追いつかれないようにしていた。にしてもあいつは余裕があるな。こんなやりとり、俺が失敗しない限りいつまで立っても決着はつかない。

 時間稼ぎされるとまずいのが分かっているなら、いくら俺が反撃の手段を持っているとしても全力で俺を追いかけるべきだ。

 あいつは楽しんでいる、この状況を。俺が再び立ち向かってくると信じている。まあ、こっちもそのつもりだ。いつまでも待ってくれるとは思っていない。

 

 だから俺はただ逃げて時間を稼いでいるわけではなく、とある場所を目指して移動している。あそこなら、あいつを倒す道具がそろっているからな。

 問題はそれを使ってどう追い詰めるか。あいつは頭が切れるし、勘も冴えている。単純な作戦だと倒しきれないかもしれない。

 成功率を下げてでも、もっとあいつの予想外の状況を的確に作らないといけない。

 その状況を作ったとしても俺の考えが間違っていれば、返り討ちにあうのは必至。本当に分の悪い賭けだな……。


「おいおい、いつまで続けるつもりだぁ。俺もそろそろ飽きてきたぜ。何もねぇなら何もねぇで、もう終わりにするぞぉ」


 嘘つけ。こっちに策があると思っているからこそ追いかけて来ているくせに。こいつは楽しんでいるというより、俺の策を全部ぶっ壊してから勝ちたいんだな。さっきの必殺技を避けられたのが結構効いているみたいだ。

 大丈夫。目的地まではあと少しだ。明良との会話の場所にたまたま選んだだけだったが、こんなところで役に立つとはな。

 俺は目的地に到着する。そこで俺は逃げるという行動はとらず、あるものを探すために動き回っていた。


「ん? 全然顔出してこねぇじゃねぇか。逃げ回んのは終わりってことかぁ? あぁん? 確かあそこは……、いったい何するつもりなんだ、わくわくしてきやがったぜ」


 男の足音が一瞬止まったかと思えば、再び近づいてきた。くそ、こっちの店はあまり来たことがないから物の配置が微妙に分からない。落ち着け、最悪ここでことを構えながらでもいい。


「おーい、俺を倒す準備はできたか坊主。そろそろ入ってもいいよなぁ」


 店内に男の声が響き渡る。どうやら到着したみたいだ。どうにかぎりぎり物を揃えることが出来た。ここからが最終勝負。どうにかしてあそこまで状況を持っていく。


「全くよぉ、何しようってんだぁー。この、アウトドアの店でよぉー」


 そう俺がたどり着いた場所はアウトドア用品店。ここには男を倒すものが置いてある。俺はさっそくそれを男に投げつける。


「うーん? なんだぁ? んなゆっくりじゃ当たらねぇよお。はーん、着火剤かそれも火がついてやがるな。なるほど大体見えてきたぜ。てめぇのやりたいことが」


 男が避けた着火剤を見ていた。大丈夫だ、あそこまでは気が付いていない。何度目になるか分からない時間稼ぎを俺はする。


「お前の体を鋼鉄化させるという異能力は確かに強い。銃弾が通らないなんてあんまりにも卑怯だ。それでも無敵ではない。眼球や口内までは鋼鉄化できないからそこを狙えばなお前を倒せる。何より、いくら衝撃に耐性があるとはいえ、熱までは防ぐことが出来ないんじゃないのか? お前がそれで痛みを感じるかは知らないが、確実にダメージはあるはずだ」

「ふははははははっ、いい考察だな。その通りだぜ。多分だが、俺は目や口ん中は鋼鉄化できないし、火も防げないと思うぜ。試したことはないがな。んで? どうすんだ? この店を火だるまにでもするつもりか。この位置じゃ間違いなくてめぇが先にくたばるだろうがな」

「流石にそこまで馬鹿じゃないさ。けど断言するよ。俺はおまえを倒して見せる」


 啖呵を切った俺は二個目の着火剤を投げる。当然男には避けられ、その場に転がる。


「こんなちっぽけな火種じゃ、俺を焼き切るのは不可能だろ。ま、やれるだけやってみろよ。この攻撃に耐えられればな!」


 男が足を振り上げる。こいつ!

 この店内でそれをやるつもりか。くそったれ!

 後ろに逃げ場はない。あいつの蹴る瞬間を見逃すな。蹴る方向さえ分かれば、なんとか避けれる。

 足が床に当たるその瞬間俺は思いっきり横方向に転がり込む。物が壊れる音と共に俺が先ほどいた場所を床の破片が通り過ぎる。

 俺はすぐさま近くの棚に体を隠し、床の破片が壁に当たることでより小さな破片となって飛んでくるのを防いだ。

 危なかった。後ろに壁がある状況だと破片が後ろ近くではじける二段攻撃。今までの攻撃から学習しといてよかった。


「ほぉー、これも全部避けんのか。未来が視えるってのはいいもんだな。お前の視る未来では俺はどうなんてんだろうなぁ」


 俺は男の話を聞きもせず手に握りしめていた最後の着火剤に火をつける。着火剤の大半を失ったが、ライターと着火剤を一つ手に握りしめていた。

 そして考え無しに攻撃を避けてはいない。作戦通り、近くには薪が置いてあった。俺は着火剤の火を近くにあった数本の薪に移し、男の方に投げまくる。男の周囲ではたくさんの火の手が上がっているが、どれも男を焼き切るには程遠い。


「はぁ、煙てぇじゃねえか。何がしたいんだてめぇは、そんなんじゃ俺を倒せはしねぇ。どうすんだおい?」


 目をぱちぱちさせながら男は少し移動した。一方黙々と俺は火のついた薪を男のいる方へ投げつける。大事なのは量だ。どんどん投げつけろ。


「ったく話の聞かねぇやつだな。そんなら俺の方から火を放ってやるぜ」


 男が近くにあった火のついた薪を拾おうとしていた。確かに、ここが火事になればかなりやばいことになる。潮時か。やることはやった。

 後はもうなるようになるしかない。男が拾ったタイミングで俺は男がいる出口とは反対側の出口へ向かって走り出す。


「当然そうなるよなあ!」


 再び蹴りの構え、俺は全速力で男の足が曲がり切らない角度、出口まで駆け抜けていく。ストリートに出て俺は振りかえる。店内は男の攻撃でぐちゃぐちゃになっていた。

 一方男の方を見る。距離は数メートル。そして男の足元には大量の火種が転がっており、煙を出していた。


「ようやく出てきたか、そろそろ終いにしようぜぇ」


 今日何度目か分からない蹴りの構えを男がしようとしていた。俺は咄嗟に右ポケットからあるものを取り出す。男が俺の右手に持っているものを確認した瞬間、動きを止めた。


「おっとっと、そういやそんなものまでありやがるのか。あんま詳しくねぇのが裏目ったな。そいつは確かに、火力が足りてんなぁ」


 俺がアウトドア用品で男が到着するまでに調達していたものの一つ。ガスカートリッジである。これはアウトドアでガスコンロを使うときに用いるものだ。

 キャンプはしなかったが、アウトドアについてある程度知識があったおかげで、ここにあるものを把握できていたのが戦いで有利に働くとはな。人生何が起きるか分からないものである。


「もしお前が変な動きを見せたらこいつを投げつける。何かの拍子で引火でもしたらさすがのお前もたまったものじゃないだろ?」

「ちっ、本当に俺に対して優勢に立ちやがるとはな。てめえ! 名前はなんていうんだ!」


 男は銃撃を警戒してか手でサンバイザーのように目を覆いながら問いかけてきた。ん?

 時間稼ぎか?

 なら俺も都合が良い。今度はこっちがノッてやろう。


「……雲雀湊だ。いきなり時間稼ぎとはどういうことだ。状況が変わるわけでもないだろうに」

「湊か、いい名前じゃねぇか。俺は草壁鉄人っていう。面白いだろ。鉄の人って書いて『てつと』って読むんだ。まんま異能力と同じじゃねぇかってな」

「あんたの名前なんてどうでもいい。それより俺の質問に答えていない。時間稼ぎしてお前に何の得がある?」


 実際、火の勢いは増すばかりである。このまま燃え尽きて火が消えるのを待つつもりか。……とりあずこのまま様子を伺ってみるか。


「それを言っちゃあ、ただの馬鹿だろ。俺にも作戦ってのがあんだよ。逆にいいのか湊? 早めに投げとかないと、対策されるかもしれないぜ」


 そのとおり。時間稼ぎなどせずにさっさとガスカートリッジを投げればいいが、手持ちは一つ。避けられたら、次の手はなくあいつが動き出してしまう。

 そのためあくまで牽制用だ。狙いはそこじゃない。


「こっちは時間稼ぎをして困ることはないからな。どっちかというと何かの要因で俺の攻撃が不発に終わり、お前を自由にさせる方が面倒ってもんだ」

「自由になっても俺はお前を殺すまでは逃げる気はねぇよ。なぁ、互いに時間稼ぎが狙いってんなら、少しばかり俺の昔話を聞いちゃくれねぇか」


 時間稼ぎ。俺が狙っているものとあいつが狙っているもの、同じなのか違うのか。どっちの策が上なのかの単純な勝負。


「さっきから言っているが、時間稼ぎは俺も望むところだ。昔話か……。最終ラウンド前に相応しい話をしてくれよ」

「ははははっ、残念だがご期待には添えそうにねぇわ。湊が嫌いそうな、つまらねぇ話だからよぉ」


 苦笑いをしながら男がシャツをめくる。男の腹には何かで切られたような大きな傷跡があった。


「俺は元々余所者でよぉ、そこで喧嘩三昧な日々を送っていたんだ。この体つきのおかげで武道の類を学んでいなくても敵なんていやぁしなかった」

「その傷は、異能力発現後にできたものなのか?」

「いや違ぇぜ。これは俺が非能力者のときに、とある不良チームの能力者と戦ってできたものだ。びっくりしたぜ。そいつは最初、非能力者だったのに、チームの仲間を逃がすために覚醒しやがった」

「異能力とはそんなに都合よく発現するものなのか? だとしたら異能力事件での被害はあそこまで大きくならならなかったはずだ」

「俺も異能力に詳しくねぇから何とも言えねぇが、少しは関係しているとは思うな。だって俺も傷をつけられて死にそうな場面で覚醒しやがったからな。湊の方は違ぇのか?」

「違う。俺は気が付いたら異能力に目覚めていた。そもそも異能力が消えた現在で、異能力が発現するなんて思わな……、待て。お前は三年前にも異能力を発現していたのか?」

「ああ、そうだ。この傷が今はふさがっていのが証拠だ。俺は四年前に覚醒し、その一年後に異能力を失った。だから後悔してるんだ」

「後悔? こんなふざけた真似をしているお前が、異能力を使ってやりたいことでもあったっていうのかよ」

「へっ、まさにこれが俺のやりたいことさ。強えやつと戦う、それこそが俺の願いだ。この異能力に目覚めてからは益々誰とも勝負にならなくなった。そもそも俺を恐れて勝負してくれなくなったんだ」

「強い奴と戦う? そのためだけにお前は無差別に人を襲おうとしていたのか。反吐が出る。能力者が現れ始めたなら、いつか能力者だけの戦いの場が設けられるかもしれないだろ」

「仕方ねぇさ。そうやって襲った誰かを守ろうとするやつが能力者かもしれないし、能力者になるかもしれねぇだろ? 俺は俺の経験からそう思ったわけよ。それに考えてみろよ。三年前、異能力は突然消えやがったんだぜ。今回もいつ消えるか分かんねぇだろ。そんなのに期待してられっかよ」


 聞いてみれば本当につまらない話だ。要は強い奴と戦って楽しみたいだけで、そのためなら殺しも厭わないと。同情の余地もない、ただの戦闘狂だったか。


「ちゅーことでマジで嬉しいんだぜ俺は。警察がいるとはいえ、俺を本気で倒そうとしてきたやつは久しぶりだ。あんとき、お前が俺の大技を避けるまでは、本気で逃げようと思ってたんだぜ。俺だってこんなことして、無事に逃げ切れるとは考えちゃいねぇよ。だから、どうなってもいいから骨のあるやつとバトルがしたかった。湊、てめぇは強い。俺が人生をかけるのにピッタリの相手だ。俺は間違えていなかった。誰かのために戦える奴は強え。どうせこの戦いが終わったら俺は捕縛されるか殺されるだろうな。湊、てめぇの命だけはもらっていくぜ!!」

「悪いけど俺には心配してくれる仲間が、俺を待っている仲間がいる。こんなところで……、くたばってたまるかよ!!」


 それぞれの気迫がぶつかり合う中、それは突如として起こった。警報音。火災報知器が作動したようだ。あたりの空気が一気に張り詰める。火種から発生した煙は天井へと立ち上っていたのだ。

 次の瞬間、室内にもかかわらず雨が降ってくる。スプリンクラーが作動していた。


「やっときやがったか、この瞬間がよお! もうそれは使えねぇ!」


 瞬時に男が突進してくる。スプリンクラーが作動していては仮に男に引火しても消されてしまう恐れがある。俺は右手に持っていたガスカートリッジを男に投げつける。


「目くらましにもなんねぇよ! 降ってくる水の方がまだうぜぇ。今度こそ終いにしようや!」


 体を捻って避けた男がさらに迫ってくる。もう逃げられる距離じゃない。俺は迫ってくる男を真正面から見据える。

 男との距離は数十センチ。男は両拳を振り上げて、必殺技を繰り出そうとしていた。

 前回と同じような避け方はもうできない。対応しているからこそ打ってきたのだろう。まさに絶体絶命。俺は……、


「うおおおおらあああああああああああ!! っ! な、なにを! っぐおおおおお! い、痛えぇ!! ど、どういうことだ!!!」


 苦し気に男が顔を歪ませて片膝をつく。鋼鉄化していると思っていた男は完璧なノーガード、俺の拳はみぞおちにクリティカルヒットしていた。

 いくら屈強な体つきをしていても力を込めていなければそれなりにダメージは入る。男は動きを止める。俺は間髪入れずに男の膝をついていないほうのふくらはぎを狙って蹴りを入れる。


「ぐおおおおっ、はあっ!! なぜだ!? はぁ、なぜ痛えんだ!! っくそが!!!」


 これまたクリティカルヒット。男は立てなくなり、両膝をついて下を向く。これで終わりにする。

 最後に男の顎目掛けて、蹴りをぶち込もうとした。しかし、ピタッと寸前で足を止めた。男の顔が見えていないのが気がかりだった。


「どうしたっ、はぁはぁ、打ち込んでこねぇのか。はぁ、そりゃそうだわなぁ、はぁ、今は……、俺の顔を確認できねぇもんなぁ?」


 こいつ気づきやがったのか!

 この二撃の間に!!!

 恐ろしい、確かにこいつは敵なしだな。真に恐ろしいのは、圧倒的な力ではなくこの勘の鋭さだ。こいつは今、成長しやがった!


「湊ぉ! てめぇは俺の攻撃に対して予想外という反応をしていたことがあった。この戦いの最中でずっと未來予知をしていたとは俺には思えねぇ。俺の異能力というか、異能力全般、発動条件があるんだろ? で、俺の発動条件は両眼を開いていることだ。ふぅー、奇しくも異能力の弱点と発動条件の弱点が同じとはよぉ」


 そう。こいつの異能力の発動条件は両眼を開いていること。さっき死にそうになったおかげで、俺が死ぬ前のイメージを鮮明に思い出すことが出来た。あいつはほほから血を流していた。なぜか?

 あのとき、めぼしく変わったところはただ一つ。男が片目をつぶったことだ。そのうえ男が目に向かって銃弾を打たれたとき、目をつぶるのではなく、顔をそむけた。

 かと思えば男は煙が目に入りそうなとき、何の気なしに瞬きを繰り返した。これは本能的に発動条件の弱点を理解していながらも、自分では気づていないのだと推測した。

 ゆえに火の熱による攻撃と思わせて、それを防ぐことだけに集中させた。賢いこいつのことなら、スプリンクラーが作動するのを狙っていると思った。

 後はスプリンクラーの水を嫌がり目をつぶったタイミングを見計らって、無防備な体に打ち込むだけでいい。俺の攻撃を全部さばいたうえで勝ちたいと思っているからこそ、こいつは俺の作戦にはまった。


「そうだ。異能力の発動には条件がある。詳しいことは俺も分からないけどな。まあ、今頃気づいたところで遅いさ。そのダメージじゃもう、あのスピードと威力は出ない」

「ったくそんとおりだな。発動条件に気づいてねぇ俺にとっちゃ、どうしようもねぇ二段構えだったぜ。ところで湊、随分と余裕じゃねぇか。別に俺の発動条件が分かったところで俺の異能力が破られたわけじゃねぇ。二度は通用しねぇぞ!!」

「だがお前の攻撃が当たることはない。勝負はすでに決まった。時間まで逃げさてもらうよ」

「ははっ、ふははははは!! いや駄目だ。てめぇだけはもらっていくぜええええええ!!!」


 男は膝をついた状態で上体を起こした。座りながら必殺技を繰り出そうとしている。

 しかし、走れない足。濡れた地面。先にも述べたとおりだ。勝負はすでに決まっている。

 俺は左ポケットからハンディライトを取り出す。男は不思議そうな顔していたが、途中で気づいたようだ。

 それでも、気づくにはあまりにも遅すぎた。男の顔面にライトが照射され、強制的に目を閉じさせる。等しくして俺の蹴りが男の顎を貫いた。


「あがっ!!! が、がぁ……、あ、あぁ、三段っ、構えかよぉ……」


 力が抜けた男は頭から崩れ落ち、床に伏したまま動かなくなった。顎を思いっきりぶち抜いたんだ、しばらく動くことはないだろうな。

 男がスプリンクラーで目をつぶらなかったとしても、最初からスプリンクラーを狙ってなかったとしても、あいつの弱点を確実に突く手段は保険としてちゃんと持っていた。

 博打要素の高い作戦にしたのは、これで致命傷を与えられなかった場合がどうしようもなくなるから。相手が自分の発動条件の弱点を分かった状態で戦闘を再開しないといけなくなる。

 だからこそいつ使うのかが重要で、この状況に持ってこれた時点で俺の勝ちは、ほぼほぼ決まっていたのだった。

 濡れた地面も気にせずに、俺は大の字になって倒れ込む。


「っはぁーーー、……全く勝負なんて楽しむもんじゃないよ。どんな手段を使ってでも勝った方がいいに決まってるからな」


 気を失った男はその後、すぐさま駆けつけてきた警察官に拘束され、それから十五分後にやってきた特殊部隊に連れていかれた。男がどうなるかは知らないが、しかるべき罰が下されるだろう。

 俺はというと、体に異常がないか確認するため、九十九日市の大きな病院に運ばれて検査を受けることになった。ま、かなーり怒られたんだけど。

 この事件は俺の存在は隠蔽された上で、警察が事前に対処したという形で全国的に報道された。九十九日市で起こったことから九十九事件と呼ばれるようになり、新たな歴史の幕開けを告げる出来事となった。




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