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6,図書室の問題児

 ラッキースケベへの対処法を特に思いつくこともなく、放課後。

 俺は生徒会活動のため、生徒会室に直行した。


「やっほー、ハジメー!」


 先に生徒会室にいたオリヴィアとハグをしてから、既に偉そうにふんぞり返っていた会長に声を掛けた。


「昨日言ってた俺に振りたい仕事って、何ですか?」


 俺の質問に、会長は口元に不敵な笑みを湛える。


「一人、更生させてほしい問題児がいるのだよ」


「それは生徒会ではなく、教師の仕事なのでは?」


「全くもって、その通り!」


 俺の指摘に、何故か自信満々に頷いた会長。


「なら、なんでそんな仕事に対応しなきゃいかんのですか?」


 その問いかけに、会長はゲンドウのポーズを取りながら答える。


「ふむ。その問題児の更生を私に頼んできたのは、我が校の図書室司書の先生なのだがね。どうやらその問題児に弱みを握られ、放課後の図書準備室を好き放題に使われているらしい」


「その弱みを、他の先生方にばらされたくないから、生徒会で何とかできないか、って言われたわけですか?」


「うむ、その通りだ。相変わらず話が早くて助かるよ」


 楽しそうにニヤつきながら、会長は言った。


「嫌ですよ面倒くさい。会長の方で解決してくださいよ」


「私もお断りだ。逆恨みされて弱みを握られたくはない。その点君は、弱みだらけだから一つや二つ握られたとしても、何の問題もなかろう?」


「この話はなかったことにしましょうか」


 俺がきっぱりというと、会長は皮肉っぽく笑みを浮かべた。


「本当に良いのかね? その問題児の女子生徒は……私の見たところ、君が入学をしてからずっと探している【謎の美少女】と似た特徴があるのだが。気にはならないのかい?」


 会長は、俺が【謎の美少女】を探していることを知っている。

 そもそも生徒会役員になったのも、全校生徒と関わりやすいだろうと思っていたからだ。


 しかし、この学校の女子生徒の顔写真は生徒会役員として活動していく中で全員分確認済みで、今の2,3年にはいないはずだし、流石に入学して3日程度で先生の弱みを握るような1年生問題児もいるわけがない。

 だからやっぱり、この仕事は何の意味もない。やる意味もなく、断るべきだ。

 ――そう頭では分かっていたが。


「はぁ、分かりましたよ。それを言われたら、確認しないわけにはいかないですね」


 溺れる者は藁をもつかむ。

 期待が出来なくとも、僅かでも彼女につながる可能性があるのならば、動かないわけにはいかない。

 

「そう言ってもらえると思っていたよ」


 僅かに微笑んだ会長はそう言ってから、


「件の問題児は、放課後はいつも図書準備室にいるようだ。早速、対応をお願いするよ」


 と、俺に指示をする。


「了解です」


 俺はそう応じてから、図書準備室へと向かった。



 図書室横にある、図書準備室に到着した。

 図書室自体には何の変哲もなく、今も数人勉強をしている生徒がいた。


 貸出カウンターでPCを操作している司書の先生がいた。

 20代後半の女性。とても上品で、静けさとハードカバーの本が似合う綺麗な先生だ。

 だが今は、問題児のせいか疲れた表情を浮かべていた。


 俺は彼女に声を掛ける。


「生徒会の我妻です。会長からの指示でこちらに伺いました」


 PCのディスプレイから顔を上げ、彼女は俺を見た。

 それからホッとしたように、微笑んだ。


「美冬さんに相談をしたばかりだけど、早速我妻君が来てくれて助かったわ。あなたになら安心して彼女のことを任せられるわね」


 俺はこれまで、生徒会の庶務として学校内の問題ごとを解決してきた実績がある。

 その実績のおかげで、彼女は少しばかり安心してくれたようだ。


「ここから図書準備室に入れるから。ノックしてもどうせ気づかないだろうし、構わず入ってちょうだい」


 彼女は自らの背後にある、図書準備室につながっている扉を指さしてそう言った。

 俺は貸出カウンター内に入ってから、さらに今しがた案内された扉を開いた。


 この部屋に入るまで、俺はどんな問題児がいるのだろうかと考えていたが、この部屋に入って大体を察した。


 ゲーミングチェアに座り、ヘッドセットを装着してゲームに興じている女子生徒がそこにはいた。

 eスポーツ部でもないのに(と言っても、そんな部活はないのだが)校内で堂々とゲームをするような奴は紛れもなく問題児である。


 当の問題児は、入室した俺に全く気付いた様子はない。

 まずは挨拶でもするか、と思い俺は彼女の華奢な肩に手を置いた。


 すると、彼女はびくりと身体をはねさせてから、ゆっくりと振り返った。

 綺麗な黒髪と、真白な肌。

 会長が【謎の美少女】と似た特徴があるといったのも納得だったが……。


(問題児って、こいつのことだったのか……)


 俺は、肩を落とす。

 彼女のことは知っている。

 そして、彼女が【謎の美少女】ではないことが確実なのも、分かっていた。


「……何?」


 低く、小さな声で俺に問いかけたのは、俺と同じ学年の女子。

 秋保綾香あきほあやかだった。

 


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