ブスの作った料理は生ゴミだ
忘れられない料理がある。
にんじんポタージュ
かぼちゃのドリア
鮭の塩焼き
ヨーグルトサラダ
上手に作れたけど、美味しくない料理。
後にも先にも、こんなにも悲しい料理は
後にも先にもこれだけ。
ことの発端は高校生の時の調理実習。
当時好きだった男の子とグループを組めた。
あの子に私の料理を食べてもらえるかも!
と思うとドキドキして……
美味しい!って言ってもらいたくて1週間前からお母さんからアドバイスをもらいながらコツを掴み、ようやくマスターした。
毎日同じ料理、しかも失敗作を毎回食べさせてしまったけど、家族は何も言わなかった。本当に申し訳ないなって思う。
いよいよ当日‼︎
朝、頑張れってお母さんが背中を叩いてくれた。
笑顔で制服に着替えて、ポニーテールに赤いリボンを結んだ。
気合の証だ。
顔を洗って歯を磨いた後、ほっぺたをパン!パン!と2回叩いた。
そして家庭科の授業になった。
グループは私、好きな子、ギャル2人だった。
私以外は調理に参加せず、四人分全て作った。
その間、好きな子とギャルは流行りのアーティストの曲を歌ったり、ケータイをいじったりして、何もしない。
料理を全て作り終え、先生に見てもらう。
「うまくできてるじゃない。食べていいよ」
「食べていいよってお前が作ったわけじゃねーし。クソ女」
と、ギャルの一人がぼやいた。
「私、にんじん嫌いなんだけとな」
ギャルは続ける。
「私パセリ食べられないんだけど!嫌がらせ?」
もう一人のギャルも言う。
だったら先に言えば入れなかったよ。
「なんか、スープもぬるいし、マズい」
好きな子は料理に目もくれず、言った。
「ブスの作る料理なんてさ、生ゴミでしょ」
「確かに‼︎ウケる〜」
目の前の三角コーナーに、ギャル2人と好きな子は私の料理を捨てた。
料理は私の分だけが残り、私は一人で残さず食べた。
泣いてはいけない。泣いたら負けだ。
この時の料理ほど、しょっぱい料理はなかった。
私は、料理なんてしたくない。
本気でそう思った。