涙の河
ある病人の見た夢。
Ⅰ.詩
過ぎ去った日々が
掌からこぼれて
涙になり
河になった
Ⅱ.終局
蟻が死ぬとき 世界もまた消え去る
己 即 世界
ただ それだけ
人も一匹の蟻でしかない
Ⅲ.星
死がすぐ隣にいる
手ぐすね引いて僕を待っている
出口は見えない
祈りも聞こえない
毎日老いていく
何かが死んでいく
不味いビールの味
憂鬱な新聞記事
チャーリー・ワッツはもういない
誰も気に留めることはない
Ⅳ.命
まだ死んでいない
ただそれだけ
Ⅴ.鏡
希望の裏にある九分九厘の絶望
あらゆる暴力と倫理
過ぎていく時間と消え行く若さ
民衆の味方面した俗物
知った風な口を利く老人
引きこもりの差別者
Ⅵ.青い薔薇
生きる意味など無い
それなしに生きられない
Ⅶ.神話
愛国者が言う
夢の中で私を犯せ
ジャック・ケルアックは笑った
オマエ イカれてるぜ
谷崎潤一郎は跪く
貴女の犬になりたいと
ロバート・キャパが叫んだ
ビリー・ザ・キッドを撃つな!
フランツ・カフカの遺言
私は作家になりませんでした
ジャック・ケルアックは笑った
オマエ イカれてるぜ
谷崎潤一郎は跪く
あの白鳥に乗れ
ダシール・ハメットの怒り
決して倒れるな!
ジェイムス・ジョイスは神と出会う
アメリカ、ルート66で
トーマス・マンはタッジオを慈しむ
黒いヴェールをそっと被せて
レイモンド・チャンドラーの独白
愛とはむなしいもの
フィリップ・K・ディックは旅に出た
キース・リチャーズに会うために
車谷長吉は書き記す
人の命は工業製品だ、と