第3話 目が覚めると
苦しい――
焼けるような熱さで目が覚める。
苦しいの熱さのせいだけではない、体の節々が軋むように痛い。
ゆっくりと昨日の夜のことを思い出していく。
そうだ、車に跳ねられてそれで――
「ゴホッ」
口の中がジャリジャリする。
何だ――?
異物を吐き出そうと咳き込むと唾液で固まった砂の塊が出てきた。
砂――?
よく見ると体中砂まみれだ。
どうやら、車に跳ねられて砂地の上で気を失ってから、俺はそのまま眠ってしまっていたらしい。
体中についた砂を手で払いながらゆっくりと体を起こす。
冗談だろ――!?
地平線の彼方まで見渡す限り、ずっと黄土色の大地が広がっている。
今まで見たことがないような、異様な景色に思わず目を疑った。
「砂漠じゃねーか!?」
俺の全力を振り絞った大声は砂漠に吸い込まれて、儚く消えていった。
マジでどこなんだ――
頭上にギラギラと輝く太陽が容赦なく俺の体中を突き刺す。
気温はおそらく40度を超えているだろう。
こんな熱さの中ではすぐに脱水症状になってしまう。
まずは日陰を探さないと――
そう思って周囲を見渡すが、日陰になりそうな建物はおろか木も見つからない。
あるのはカラカラになって枯れた草の残骸くらいだ。
日陰がないなら作らないと――
確か砂漠は昼と夜の温度差が大きいとどこかで聞いたことがある。
昼間は行動せずに、夜の行動を心がけた方がよさそうだ。
地面は柔らかい砂地だ。頑張って掘り返せば簡単なシェルターを作れるだろう。
あっつ――
砂漠の地面は太陽光の熱を吸収していてフライパンのように熱せられている。
とてもじゃないが、素手で掘り返せそうもない。
そうだリュック――!!
家出をするときに持ってきたリュック、あそこには生活必需品が入っているはずだ。
ずっと背負っていたはずだから、一緒に砂漠に落ちているかもしれない。
注意深く周囲を観察すると、砂漠の中から黒い突起物が飛び出しているのに気付く。
慌てて駆け寄ると、突起物を砂から引っ張り上げる。
俺のリュックだ――
リュックの中には水や小腹を満たせる一本充電バーなどの物資が入っていた。
今持っている物資を整理してみる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
☆リュックの中身
・水500ml
・一本充電バー
・バスタオル一枚
・フェイスタオル一枚
・長袖の着替え一式
・フード付きパーカー
☆持っているもの
・半袖の服とズボン
・財布
・キャップ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
これでしばらくは生き残れる――
とりあえず、長袖に着替えて顔はタオルで覆う。
少々暑苦しくなるが、直射日光を避けると生存率が高まるはずだ。
とはいえ、結局のところ肝心の穴を掘れそうな道具は見つからなかった。
諦めかけてリュックを閉じようとした時、リュックの底になにか固い板のようなものがあることに気付く。