番外編 竜人族について
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今回は番外編という位置付けです。
登場人物との会話や世界背景の説明を主とした回となります。
ストーリー進行に係わる部分ではないので、時間がない方は読み飛ばしてもらって問題ありません。
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スティオはなぜか自分の種族についてあまり話したがらない。
竜人族の生活については断片的にしか教えてくれないのだ。
毎日コツコツ引き出した情報から、やっと竜人族の生態が浮かび上がってきた。
竜人族はボルボ砂漠の最深部にあるオアシスの周辺で遊牧しているらしい。
羊と馬を主な家畜としており、余った羊毛や肉を竜人族の交易商が人里に持っていて穀物と交換する。
スティオのような交易商は人間の言葉を話せるが、竜人族は独自もあるらしい。
ある時、スティオは俺に竜人族語を教えてくれたことがある。
ボルボ砂漠には枯れたような草が至るところに生えているのだが、――あれで生きているのだから驚きだ――この草の名前は竜人族語で『ガウデ・グラス』というらしい。
『ガウ』が『食べる』、『グラス』が『人・もの』という意味で、人間の言葉に直訳すると『喰らうもの』ということらしい。
なぜ萎びた草にこんな物騒な名前が付けられたのか、スティオはその由来も教えてくれた。
ガウデ・グラスの種はトゲトゲしているので、通りがかった旅人の体毛や服にすぐ引っ付くそうだ。
旅人が砂漠で命を落とすと、この種はすぐに発芽する。
ガウデ・グラスは旅人の死体から養分を吸い上げて真っ赤な花を咲かす。
それがまるで人を喰らっている見えるので、『喰らうもの』と名付けられたそうだ。
馬の主食はこのガウデ・グラスという植物だ。
馬は『喰らうものを喰らうもの』ということになる。
竜人族語に訳すと『ガウデ・グラス・ガウデ・グラス』とでもなるのだろうか?
荷馬車に揺られながら、いつもそんなしょうもないことを考えている。
以上