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21.アイシャの憂慮

 勇者率いる王国軍が王都を出立し、魔物討伐に向かうという噂は、漣のように国内に広まっていた。

 それは行商人を通じて、銀の森(プラータ・セルバ)に抱かれているカディスにももたらされていた。

 街の至るところで、期待と不安を込めて人々は囁きかわす。それによれば、王国軍が目指しているのはこのカディスだというのが専らの噂であった。

 町長のところには知らせがきているのか。

 それともただのデマなのか。

 ならば討伐に向かう先は「あの場所」しかない、と憶測が飛び交う。

 そして憶測は噂となり、まことしやかに街中に広がっていく。


 ひそひそと囁き交わす人々を、緑陰から凝視する影があった。木立の闇からのぞく両目は人間には持ち得ない金色だ。しかも一対ではない。濃く茂る枝葉、人々の頭上に広がる闇に紛れるようにして、よく見れば幾つもの輝きが明滅している。

 囁き交わす様を眺めていたそれらは、暫くそうして聞き耳を立てる素振りだったが、人々がその場から立ち去ると口々に何やら囀り始めた。


「聞イタカ」

「アア、聞イタ」


 緑陰で囁かれるのはそんな声だ。恰も人真似をする鴉のような、調子はずれの口調。


「急ギ、オ伝エセネバ」


 ばさり、と羽音。それを皮切りに、木立から幾つもの漆黒の影が飛び立った。

 それをたまたま地上から見上げた男が、不思議そうに首を傾げた。

「鴉が群れてるなんて」

 珍しいこともあるものだ、と思ったが、すぐに忘れてしまった。それよりも勇者の噂話のほうが、彼の注意を引いていた。





 広い空間で、エルは深く息をついた。

 ホールのような大広間である。鏡のように磨き上げられた漆黒の床に、複雑な装飾を施した太い柱と豪華な天蓋。この場にスノウがいれば、ここが人間だったときにエルと対峙した場所だとわかるだろう。

 しかし、この場にスノウはいない。いるのは、アイシャとスイ、そして二つの人影である。城の幹部である四天王、それが緊急で召集されていた。

 背もたれの部分が高い石造りの椅子は、いわば玉座のようなものである。その手すりに肩肘を預け、エルは頬杖の姿勢をとっていた。


「ファザーン、報告を」


 問いかける口調は真剣だが、いかんせん態度は酷く投げやりに見える。というのも、エルは玉座とも言える石造りの椅子に腰掛けていたが、その手すりに片肘を預け、頬杖をつくような姿勢を取っているのである。

 常ならば厳しい突っ込みを入れそうなスイやアイシャは、静かな表情で佇んでいた。

 エルの求めに応じて進み出たのは、長い衣を纏った魔物だ。癖のないまっすぐな黒髪を首あたりで短く切りそろえ、長い耳には繊細な装飾の耳飾り(ピアス)をしている。スイのように全体的に長い衣服を纏い、どこか硬質な雰囲気を醸し出してた。幾分幼い面立ちの中で、その琥珀の双眸ばかりが

冷たく乾いている。


「カディスに向かわせた兵によると、勇者が軍を率いて王都より進軍してきているとのことです。あくまでも噂ではありますが、目的地はカディス――ひいてはこの城と」


 彼はそこで一旦言葉を切ると、躊躇う素振りをみせた。


「他にも何かあんのか、ファザーン?」


 その問いかけに、ファザーンと呼ばれた魔物はアイシャに視線を向けた。琥珀色の双眸が僅かに冷たい色を宿す。


「魔法の使い手がいるようです。一個小隊分ほど」

「心配いらねぇよ。雑魚が何匹いたって問題ないだろ」


 人間にとって魔法は特殊でも、魔物にとってはそうではない。貴族と称される魔物ならば殆どが、獣に近い魔物でも軽微な魔法を操ることが出来るのが一般的だ。そんな彼らからすれば、人間の操る魔法など大して脅威にも感じないのだろう。

 鼻で笑うアイシャに、ファザーンは自身も唇を歪めて言う。


「それでも、アイシャ様の足を留めるには十分でしょうね」


 その程度の魔法でも動きを封じられる。

 それは明らかな挑発だった。戦場でアイシャがあまり魔法を使わないのは周知の事実である。勿論、貴族であり高い変身能力を持つアイシャが魔法を使えない筈はない。だが憶測が憶測を呼び「魔法が不得意」なのだと密かに囁かれていた。

 短気なアイシャの神経を逆撫ですることは間違いなさそうだったが、アイシャの表情に変化はない。ファザーンに静かな視線を向けただけで、そこには何の激情も揺れていなかった。

 代わりに言葉を返したのはスイである。


「ファザーン、おやめなさい。今は諍いをしている時ではありません」

「……はい」


 渋々といった態でファザーンが軽く頭を下げた。


「他には?」


 ファザーンにそう促すのは、エルである。

 ファザーンは緩く首を振って答えた。


「正確な情報ではありませんが、勇者に従っている者のなかに、以前この城に乗り込んできた人間がいるのではと」

「……逃げたという二人ですか」


 問いかけたスイにも、ファザーンは首を振る。


「確認はとれておりません」


 部下がそれらしい噂を耳にしただけなのだと、ファザーンは申し訳なさそうに肩をすぼめた。


「顔でも見てれば違うんだがなぁ」


 アイシャは首を傾げて言う。その態度からは、ファザーンの先程の挑発に対するわだかまりは感じられない。


「オレは城にいなかったし……あの時出てたのはお前んとこの兵だっけ?」


 アイシャはスイに問いかける。スイは記憶を辿るように視線を僅かにそらして、ややあって首を振った。


「いえ、私もあの時は城におりませんでしたから……」

「じゃあ、多分あたしの兵だわ。あたしとファザーンの兵。そうよね?」


 スイの言葉に声を上げたのは、今まで沈黙していた五人目の人影だ。

 褐色の肌を持つ美しい女性。首の中程で断ち切られた漆黒の髪は細かく波打ち、濡れたように艶やかな光沢を放つ。薄紫の双眸は妖しく煌めき、成熟した色香を感じさせた。


「あたしは直接出てないから見てはいないけど、幾らか覚えてる部下もいるはずよ」


 直接偵察に出そう、と女は提案する。


「いや……メーベル、その必要はない」


 エルは軽く手を挙げてその提案を退けた。それに、メーベルと呼ばれた女は不思議そうに首を傾げる。


「そうですか? 確認が出来れば、趣向を凝らした遊びもできますわ」


 きっと楽しい、とメーベルは朱唇を歪める。

 城から命辛々逃げ帰った人間。普通なら二度とこの場所には戻りたくない筈だ。それなのに再び乗り込んでくるとなれば、その真意は明白だ。

 想像で楽しくなってきたのか、メーベルは不穏な含み笑いを漏らす。それを横目で眺めて、ファザーンは呆れたように問いかけた。


「復讐に来るような相手に、どう遊ぶのです」


 一度は城へ乗り込んできた相手だ。こちらの手の内をごく一部とはいえ知る敵となれば、少々のことで挫くことはできないだろう。それこそ力でねじ伏せなければ。

 そうファザーンが言うのへ、メーベルは軽くため息をついた。


「だからこそよ。死んだはずの仲間が現れてご覧なさい。一体どう出るかしらね?」


 面白そうでしょう、とメーベル。

 勿論メーベルはそれが「事実」であることは知らない。勇者が生きていることを知るのは、アイシャとスイ、そしてエルのみだ。彼女は単に魔法によって幻覚或いは何らかの偽装を仕掛ける、という意味で話しているにすぎない。

 それはこの場の誰もがわかっていたが、思わずといった様子でアイシャが視線を泳がせた。幸い、メーベルもファザーンも話に集中していて気づく素振りもない。


「確かに、動揺を誘うことはできますね」


 頷くファザーンは、やや乗り気の様子だ。琥珀色の双眸が僅かに熱を帯びている。


「あーそりゃどうかな……」


 それに異を唱えたのはアイシャである。困惑したような表情のアイシャを、ファザーンはきつく睨みつける。何を言っても噛み付く、といわんばかりの態度だったが、思わぬところからアイシャに賛同の声が上がった。

 スイだ。


「よい案だとは思いますが、いささか限定的すぎませんか。確かに戦力を削ぐ意味では有効かもしれません。けれどその対象が少数すぎます」


 冷静な表情と口調はそのままに、淡々と言う。アイシャは「そうそう」と軽薄に頷いていたが、彼が真実同じことを考えているとは誰も思っていなかった。

 メーベルはすらりと細い指を己の唇にあて、妖艶な仕草で気だるげに言う。


「相変わらず面白味のない男ねえ。遊びだからいいじゃない?」

「そのための労力が問題です。見合うだけの効果がなければ。それに遊んでいる場合でもないでしょう」


 取り付く島もないほど冷静なスイに、メーベルは軽く肩を竦めた。


「堅いわね。それじゃ楽しくないでしょ。そんな堅い戦いして何が楽しいのかしら」


 魔物は本質的に戦いを好む。そしてそれはそのまま快楽に直結し、結果「戦うことが楽しい」という考えに繋がる。生きるために戦う本能から、快楽のために戦うという傾向に変化する。獰猛なハンターが獲物をいたぶるように。高位の魔物ほどその傾向が強く、効率や損得とは別に、いかに自分が楽しく戦えるかということが優先されるようになる。

 そのため、メーベルの言葉は何も珍しいことではなかった。


「何事も侮るのは危険と申し上げているまでです。これだけの規模です、侮ればいたずらに犠牲を増やすことになりかねません」

「慎重すぎるのも考えものよ、スイ。奴らの戦力をどうお考え? ちょっと爪でつついたぐらいでころころ死ぬような生き物なのよ? そんなに用心が必要かしら」


 揶揄する口調のメーベルに、スイは表情一つ変えないまま、淡々と言葉を返した。


「ならばせいぜい窮鼠にお気をつけなさい。噛まれないよう」


 スイの林檎酒色の双眸をちらりとよぎった光に、メーベルが表情を強ばらせる。その一瞬を恥じるようにメーベルは軽く瞬くと、美しい顔に怒りの色を閃かせた。


「なんですって」

「どちらにしろ」


 語気も荒くスイに噛みつきかけたところで、エルの声が割って入った。


「やつらが銀の森(プラータ・セルバ)に入るまでは攻撃は保留だ。その案はしばらく様子をみよう。ファザーン、引き続き情報を集めろ」

「はい」


 エルの指示にファザーンは低く応じて、頭を垂れる。


「アイシャとメーベルは城と周辺の警備の強化を」

「はい」

「それからスイ」

「はい」

「例の軍隊についての情報を集めておけ」

「承知いたしました」


 勇者一行の噂が届くより早く、エルの元には銀の森(プラータ・セルバ)を進む軍隊の情報がもたらされていた。その規模は、噂に聞く勇者が率いる王国軍に比べればやや少ない。しかし明らかに何らかの任務を帯びて編成された軍勢であった。現段階での人間との本格的な戦いを嫌うエルは、相手の目的がわからないうちはと攻撃の命令を出さずにいた。人間同士の争いに下手に介入したくなかったのだ。

 だが、ここにきてそれらが「援軍」である可能性が出てきた。

 そうとわかれば、叩いておかねばならない。

 厳しい表情のまま、エルは全員に退室を命じた。





 広間から退室して、暫くした頃。


「貴方が堪えることができるとは驚きでした」


 スイがぽつりと言った言葉に、隣を歩くアイシャは「ん?」と首を傾げた。

 メーベルとファザーンが命令を遂行するべくそれぞれの方向へ歩み去り、その頃は廊下を歩いているのはアイシャとスイの二人だけになっていた。


「堪える?……ああ、さっきのことか」


 スイが言うのはファザーンとのやりとりだろう、と当たりをつけて、アイシャは藍色の頭をがしがしと書きながら言う。


「別に堪えるってほどのことでもねぇぜ?」

「貴方ならすぐ食ってかかるかと」

「お前オレを何だと思ってんだよ。オレだって時と場所は選ぶっつーの」

「そうですか……私はてっきりサカリのついた犬か何かと」

「犬じゃねぇ! ってか何だそのサカリがつくとか!」


 早速の食いつきに、スイは静かな視線を隣に送る。それみたことか、と無言で訴えてくる目線に、アイシャはバツが悪そうに視線を逸らす。


「あーだからな、お前とか敵とかあのヘタレ猫とかならともかく、子供相手に喧嘩する気はしねえんだよ」

「子供……」


 思わず目を見開いてスイはアイシャを見つめた。

 ファザーンが、子供?


「あいつまだガキだし、怖がらせたらそりゃ単に苛めだろ? 怖がらせるのはバカなことしたときだけで十分な訳だしさ」


 どうやらアイシャが「子供」と表しているのは、ファザーンのことで間違いないらしい。勿論、見た目はアイシャやスイと大差ない。二人に比べてやや幼さが目立つのは、単に顔立ちの問題だ。しかし、実年齢は確かにアイシャやスイよりも大分若いのは事実である。


「ひとまず礼を言っておきましょう」


 スイは頷いて、言う。


「え?」

「先程のあれは貴方が腹を立てても無理もありませんでした。……とにかく、貴方が抑えてくれて助かりましたよ」


 ファザーンは城の幹部であり、その立場はアイシャと同等である。しかし年齢や経験、力の面で言えばアイシャには遠く及ばない。直接の戦いとなればそれそこアイシャのひとひねりだろう。それがファザーンに理解できないはずはなかったが、ファザーンは何かとアイシャに突っかかる傾向がある。

 別に保護者でもないんですけどね、とスイは内心ごちる。

 アイシャは少し首を傾げたまま暫く沈黙していたが、ややあってぽつりとつぶやいた。


「……なあ、ところでさ、あいつおかしくないか」


 何気ないその口調の中に迷いのようなものを感じて、珍しいことだと思いつつスイはアイシャを見遣る。


「ファザーンのことですか?」

「いや違う。勇者だよ。あいつなんか妙だ」


 アイシャは視線を逸らしつつ、渋面になって言う。アイシャの言わんとすることがわからず、スイは素直に首を傾げて問い返す。


「勇者ですか? 妙とは?」

「なんていうかな……気配が、おかしい。感じないか?」

「気配……生憎、私は貴方ほど勇者を構ってはおりませんので」


 スイの返答に、アイシャは一瞬眉根を寄せたが、すぐに首を振って言う。


「お前とつまらん言い合いする気分じゃねぇんだよ。なあ、ほんとに何も思わないのか?」


 珍しく冷静な対応をするアイシャに、スイは僅かに表情を引き締めた。とはいっても、元が元なだけに傍目にはその違いはわかりにくい。


「……そうですね。最初の頃よりは怯えなくなったと思ってはいますが……これは単なる慣れかと」


 ああ、と頷いて、アイシャは続ける。


「最近はむしろふてぶてしいしな。けどオレがいうのはそこじゃなくて……どういったらいいかな」


 言葉を捜す様子のアイシャ。スイは首を傾げる。アイシャのいうような「不自然さ」はスイには感じられなかった。気配が妙だとアイシャは言うが、勇者の気配などスイは殆ど頓着していない。勿論例の一件からこちら、なるべく気配を追うようにはしていたが、こんなことでもなければ黙殺しているところだ。


「魔力の残滓でもありますか」

「いや。相変わらず魔力らしい魔力は感じねぇ。ただ時々……」

「時々?」

「別人みたいな感じがする」

「別人、ですか」


 アイシャの言葉の意味を図りかねて、スイは口元に指を遣る。考えるときの癖だ。


「ああ。なんつーかな……一瞬なんだけど、全く別の気配がするんだ」


 言葉を探し探し、自信なさげにアイシャが言う。


「あいつ人間だろ。なのにさ、人間を相手にしてることを忘れてるときがあるんだ」

「それは貴方があの勇者を気に入っているからでは」

「馬鹿いえ、誰が人間なんか。ってか、そういう話じゃねぇよ。オレの鼻が利くことはお前だって知ってるだろ。そのオレの鼻が、人間だって知覚しねえ時があるんだよ」


 咄嗟に噛み付きかけて、アイシャはそんな自分の反応を振り落とすようにひらひらと手を振る。


「知覚しない?」

「ああ。目の前にあいつがいても、意識して嗅いでみても、人間のものに感じないときがあるんだ」

「ネコに……」

「いや、違う」


 アイシャは首を振って断言する。


「最初はエル様の魔力のせいかと思ったんだよ。ありえねぇからな。けど、人間と感じる時とそうでない時があるのはなぜだ?……それで思ったんだ」

「何です」

「あいつ、魔物じゃねぇのか? それもあっちの」


 "あっち"、の指す意味に気づいて、スイが目を細める。林檎酒色の双眸が、不穏な影をちらつかせる。


「魔物がわざわざ勇者に化けて、ということですか」

「そう、人のフリでエル様を殺しに来たんだとしたら?」

「エル様が気まぐれを起こすことすら計算と?」


 だとしたら随分危険な綱渡りだ。魔物は気まぐれな性質とはいえ、その気まぐれが生かすほうに回るとは限らない。それどころか、残虐な方向に転がる可能性の方が高いのだ。

 アイシャは軽く肩を竦めた。


「そこまでは知らねぇよ。大体あくまでも推測だ。けど、奴にとってただの捨て駒なら、死のうがどうしようが関係ないだろ?」


 スイは黙考する。

 捨て駒に「人間」だと暗示をかけて攻め込ませる。

 首尾よくエルを倒せば上々、逆に倒されても痛痒は感じない。万一捕まっても首謀者の名が出ることはないだろう。エルや自分たちですら見抜けない暗示と魔法なら、まず魔物であり刺客であることを看破するのは難しい。


「確かに……可能性はゼロとは言い切れませんね」

「まぁ、暗示にしちゃあ随分間抜けな暗示だけどな」


 あんな勇者など見たことない、とアイシャは口元だけで笑う。金色の目はどこか暗い炎を宿して虚空を見つめていた。

 確かに「勇者」の暗示としては不出来だろう。一般的な勇者など魔物である彼らにはわからない。けれどそれでも、スノウが勇者としては異端だと言うことはわかる。城に攻め込んでおきながら、逃げ惑いべそをかくなどと勇者として……否、戦士として失格だ。

 だが、エルの性格をよく知っているならあり得なくはないのだ。エルはあの一族の中では珍しいほど、温和な性格をしているのだから。

 スイは深く息をつく。

 ヒトの軍が攻め込んでくる。それはこれまでのような、小規模なものではない。しかし脆弱なヒトなどと侮る魔物が大半であり、脅威を感じていないものがほとんどだ。もちろん、スイ自身もヒトに対してはさほど脅威に思っていない。

 けれど、スイの中でしきりと警鐘が鳴っている。

 ヒトは恐ろしくはない。今確認している程度であれば多少の犠牲はあろうとも、城が落ちることはあり得ない。

 ただそこに、ヒト以外の意図が紛れているとすれば。

 形ない不安の理由が見えた気がして、スイは口元を珍しい笑みに歪める。脅威に思う理性と、手応えある戦いを望む感情は別物だ。

 高揚する感情に、スイは笑みながら呟く。




「なんにせよ、用心しなければいけませんね」


 戦いの気配はすぐそこに。




ぎゃーぎりぎりやぁ!



……なぞ噴出です。何がなぞって、頑張ってるのに捗らないのが謎。

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