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クソ学校クソ迷宮クソ仲間  作者: 雨入り四光
7/7

妥協は大事でどこで妥協するかが進退を決める

 推薦入学組の朝は早い。具体的に言うと朝5時起きで迷宮(ダンジョン)入り口に朝5時半に集合。迷宮入り口で点呼の後に迷宮探索(ダンジョンダイブ)だ。


 朝早くから迷宮に潜らされるのには勿論理由がある。迷宮内のお掃除、言い換えれば一般入学組のための露払いが目的だ。


 迷宮内にはモンスターが勝手に発生(ポップ)する。場所によって発生率は違うけど時間によっては変化しない。そして発生数の上限も存在しない。日中は学生が迷宮に潜ってモンスターを減らすから問題はないけど、皆が寝静まった夜中も迷宮はせっせせっせとモンスターを発生させ続けやがるので朝には中がモンスターでいっぱいってわけだ。クソが。


 モンスターがいっぱいの危険な迷宮に厳しい試験を突破してきた貴重な一般入学組を潜らせるわけにはいかないんでね。一山いくらの推薦入学組を突っ込ませて予めお掃除させるわけだ。


 現在時刻は朝5時20分。正直朝はそんなに得意じゃないけど1秒でも点呼に遅刻したら担任に殺されそうだから少し早めに集合場所に来た。


 さて、点呼までまだ時間があるからパーティを組む相手の候補を探そう。パーティは組みたいけど無能とは組みたくない。生存確率が下がるから。妥協して組むぐらいなら独りで潜る。


 点呼終わったところで目を着けていた人達に声をかけた。何故か僕が近づくとスーっと僕を避けるように離れて行ってしまうし、声をかけた人もパーティを組みたい旨を伝えると「で、クラスは?」と言ってくるのでパーティメンバー探しは難航したものの、なんとかメンバーは集まった。ベストではないがベターなメンバーを揃えられた。


 パーティを端的に紹介すれば、チャラい男子、ゴツい男子、ダルそうな女子、手癖の悪い女子、僕、以上だ。非常に認めたくないが僕を含めてパーティメンバー全員がこの面子以外でパーティを組むのは不可能だろう。何故なら能力に関しては僕の生存のために一切の妥協をせずに選定したがそれ以外は妥協しまくったからだ。


 まずチャラい男子。これはもうそのままチャラい所が妥協点だ。僕はお世辞にも明るい人間とは言えない。そんな僕にとってチャラい奴はどうにも付き合いにくい人間の部類に入る。ノリが合わないとか感性がよく分からないとか理由は色々あるけど兎に角苦手なのだ。


 その上命懸けの迷宮探索でチャラい奴とか信頼できないだろう。だから僕ら以外はパーティを組んでもらえないんだよ。僕はそもそも他人を信用はしても信頼はそうしないからそこはどうでもいいけどね。パーティの信頼関係が何よりも大事とか夢見てる奴らには大事なんだろうけど。


 チャラい感じに改造した制服を着て金髪で星形のサングラスをかけたどう見てもヤバい奴だけど、腕は確かだと思う。【狂戦士(ベルセルク)】になって超強化された感覚で中々の精度で他人の腕前を計れるようになったから、少なくとも僕の生存確率を下げない程度の腕前はあるだろうと思う。


 次にゴツい男子。こいつは意志疎通の面が妥協点だ。もはやコミュニケーション能力を何処かに捨てて来たとしか思えない。寡黙とかそういう次元じゃないからね。僕はお世辞にもコミュニケーション能力が高い人間とは言えない。だから相手のコミュニケーション能力は高ければ高い程いい。だって楽だから。低いと僕の方が頑張らないといけないから面倒だ。


 迷宮探索では情報共有や意見交換も大事だし、パーティの信頼関係を大事にする奴らもいる。コミュニケーション能力は迷宮探索でも結構重要だ。だから僕ら以外とはパーティ組んでもらえないんだよ。まあ僕はそこまで重視してないから妥協してるけどね。最低限任されたパーティ内での役割をこなす能力が有ればそれでいい。


 ゴツい体格に一切表情の動かない厳つい顔で適正サイズのはずなのに窮屈そうに見える制服をきっちりと着ている。制服の下にはただ漫然と筋トレをした程度では身に付かない、目的をもって鍛え上げられた肉体がある。クラスを得る前から鍛えてるやつは基本強い。僕の生存確率上昇に貢献してくれる可能性は高いだろう。【狂戦士】の感覚もそう言ってる。


 次にダルそうな女子。こいつは気力とやる気を妥協した。僕もそこら辺が充実した人間じゃないけどこいつは度を越してる。何せ今も自分の足で立たずに僕に背負われているのだ。こいつにパーティに加入してもらうために出された条件が『迷宮外での日常生活のサポート』だから仕方ないけど面倒なことこの上ない。不幸にも同じF組なのも辛いところだ。逃げられる時間が少ない。


 基本的に自分のことで精一杯な推薦入学組なのに他人の生活も面倒見ようなんてやつはそうはいないだろう。しかも何か特別な事情が有るわけでもなく、ただダルいからやりたくないというだけなのだ。こんなやつは迷宮での働きにも期待できないと思うのが普通だろう。まあ、そんなことないと僕は思うけどね。目を見れば分かる。


 恐らく長いと手入れが面倒とかそういう残念な理由で短く整えられた髪、最低限求められるラインをギリギリ越えた着方の制服、顔は影のある美人といった感じだが力が全く入ってないせいかどこか可愛らしさもある。例によって【狂戦士】の超強化された感覚で腕前は確かだと思われる。多分こいつが一番直接的に僕の生存確率と関わってるだろうから是非とも頑張ってほしい。


 最後に手癖の悪い女子。言わずもがな手癖の悪いのが妥協点だ。あろうことか僕の貴重品類をスろうとしやがったのだ。当然スリ返したうえで腕を捻り上げたんだけど、スリの身のこなしが見事だったから脅迫(かんゆう)した。


 まあ推薦入学組だしこういう奴も居るとは思ってた。このての奴はバレるとパーティには入れてもらえない。不利益しかないからね。まあ僕が勧誘したメンバーは全員この程度は軽く防げるし、パーティの外で誰の何がスリ被害に遭おうが僕が知ったことじゃない。僕の生存確率が下がるとなれば切り捨てればいいし。


 長めの髪に平均以上には整った顔立ちで、油断を誘うためか学校側が定めた通りにキッチリと制服を着ている。スリの腕前と身のこなしを活かして斥候として僕の生存確率上昇に貢献してほしい。まあ最悪罠にかかってくれても構わない。こいつを犠牲に僕は生き残る。それに僕もある程度斥候役はこなせるから。


 とりあえずこのメンバーでクソ迷宮を有するクソ学校を共に生き抜いていくことになる。自分が、そして何よりも僕が、生きてここを卒業するために存分に頑張ってもらいたい。

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