一般人を辞める日
さて、たどり着きました地上9階層、本日の目的地だ。
流石に疲れたな。2匹目のゴブリンを殺してからここに着くまでに道部分で1匹と空間部分で3匹の合計4匹を殺したのと、単純にそこそこの距離を歩いたのとからくる疲労だ。
特に3匹目を殺した時に角材がまた折れて、分かれ道で行き先を運任せに決めるのにくらいしか使えなくなったのがクソだった。残りのゴブリンは蹴り殺したから余計に疲れたよ。
さっさと帰ってシャワー浴びて晩御飯食べて寝たいところだけど、本日のメインイベントがあるからそうもいかない。
本日のメインイベントはそう、クラスの獲得だ。
クラスといっても日本語で組とか訳されるやつじゃなくて、日本語にするなら……そうだな『兵科』とか『兵種』かな。
クラスシステムは人の持つ無限の可能性に敢えて方向性を与えて有限に制限することによって可能性を引き出しやすくする……だかなんだかというものだが、要は今までの常識的人間から逸した能力が得られますよというシステムだ。
クラスには所謂職業物のRPGみたいな【戦士】だとか【魔法使い】といったものがあり、それぞれのクラス毎に決まった可能性をクラスを得た人から引き出す。
可能性を引き出すというのは、例えば【魔法使い】であれば分かりやすく魔法が使えるようになるし、【戦士】であれば漫画やゲームに出てくるようなギャグみたいな大剣を振り回す怪力がでるようになる。
迷宮の攻略にはこのクラスの力が必要不可欠、というかこっちがクラスを持ってる前提の作りになってる。
じゃあ何故屋上とか地上10階層でクラスが得られないのか? 答えは簡単だ。地上10階層程度突破できないようなら力を手にして迷宮に挑む資格無しってことなんだそうだ。もっとも半分は意味がなくなっているというかなんというか。まあ地上10階層の突破の仕方については拘りはないようだけど。
「全員集合!」
……8時かな? いや、下らないこと考えてる場合じゃないな。今の声は完全にうちの担任だ。もたもた集合なんかしたら張り倒されかねない。そういうプレッシャーを放ってる。急がねば。
今日の迷宮にはE,F,G組の3組が合同で来てる。我が前に整列せよと無言のプレッシャーを放つうちの担任の前に組毎に分かれて出席番号順風に適当に並んだ。基本はどうしようもないやつの集まりたる推薦組でもこういうときは日本人なんだなと感じるね。
集合させたってことは今ここに居ない人間は死んだか生存の見込み無しってことかな。うちの組は確か40人だったから……6人居ない。まあ1回目の迷宮は初めの死にやすいポイントらしいからこんなもんなのかな。6人もなのか6人しかなのかは分からない。
「さて、まずはおめでとうと言っておこうか。今ここに居る君達は迷宮に挑む最低限の資格を手にしたわけだ」
僕達が大体整列し終えたのをみて担任が話し出した。地上9階層はモンスターの一切出ない所謂安全地帯だからこうしてのんびり話を聞いていても問題ない。
「それはつまりクラスを得る資格を手にしたということでもある。向こうにいくつか水晶柱があるのが見えるな?」
そういって担任が背中の方を指差した。前に人がいてあまりよくは見えないけど確かにそれっぽいものがある。
「あれがクラス関連の色々で使う装置というか端末というかまあそんなものだ。でかい六角柱のものとそんなにでかくない五角柱のものがあるのが分かるな? 難しいことはなにもない。六角柱の方に手を当てれば後は全部自動でやってくれる」
そんなに簡単にクラスって獲得できるのか。もう少し面倒な手続きとかがあるもんかと思ってたよ。
「今日はクラスを得たものから順次解散だ」
担任が話は終わりだ行けと示したからさっさと水晶柱の方に移動する。早く帰りたいのもあるけど、ほんの少しの間でも自分だけ力の無い状態で力の有る者に囲まれるなんてとてもじゃないが耐えられない。
スッと集団から抜け出して近くにあった水晶の六角柱に手をおいた。さて僕はどんなクラスが得られるだろうか。
水晶柱にてを触れた瞬間、一瞬視界が真っ白になって突然足元の地面が消えたみたいな浮遊感と不安定感がやってきた。
気がつくとなんだか青っぽい空間に浮いていた。周りを文字とか画とか兎に角情報が流れている。ふむ、もしかして意識の世界的なそういうやつだろうか。
動こうとしても自由に動けない。なんなら手足もうまく動かせない。僕は今この世界にただ在るだけだ。何もできないのがとても気持ち悪い。
僕の目の前にいくつかの情報が集まってくる。なんとなく分かる。これが僕の今の可能性、つまるところ獲得可能なクラスってことだろう。
【剣士】【槍士】【斧士】【戦士】【盗賊】……etc
結構いっぱいある。どうも魔法使いとかその関連っぽいクラスが無さそうだから僕には魔法系の才能は無いんだろうな。
しばらくそれらの情報が僕の周りをグルグルと回っていた。暫くしてその中の1つが目の前に流れて来た。これが僕のクラスか……。
【狂戦士】
……あァ?