第六話 ヨゾラVSガルグ
一話完結ですけど……まあ濃い中身になればいいかな、と思います。
書いてて思うのはファンタジーはやっぱり激戦区なんでPV数を稼ぎにくいっすねwww
キリアを逃したヨゾラはガルグと対峙している。
かつての依頼人であり、今は麻薬の売人というターゲット。
胸中は複雑そのものだったが、シンバラエキアの未来のために、と一息吐き、刀を握りしめる。
「……お前は私の依頼人だったはずだ。何故ラスティアを討たせようとした? 何が目的だったんだ。」
ガルグは悪びれもなく答えた。
「密猟の領域を俺の縄張りで広げやがってたのさ。……貴族の特権を活かしてな。かといってウチにはヤクチュウどもが多い。それでお前に頼んだというわけだ。」
ヨゾラは、なるほど、と一言呟き、さらに問い詰める。
「……だがお前のやっていることは民衆を不幸にさせている……それはわかるだろう? そこまでして何をしようとしていたんだ。……わざわざラスティアを私に討たせてまで、何を企んでいた?」
これにガルグはニヤリと笑う。
「俺は人の不幸話を聞いたり人の不幸を見るのが大好きなんだ。だから……ジャレットのクスリに手を出したのさ。……縄張り(シマ)を繁盛させるために、な。」
これを聞いたヨゾラの啖呵が切れ、ガルグに襲いかかった。
ガルグはヨゾラの刀をバットで受け止めて鍔迫り合いになった。
「……ようやく分かったよ……お前の依頼を受けた私がバカだった。……お前は社会のゴミであり、ただの外道だ。」
「何とでも言え、殺人鬼。数多の人間を殺しておいてよくそんなことを宣えるなぁ。」
飄々としながらガルグはバットを振り下ろした。
ヨゾラはこれを右にサイドステップをして避ける。
尚も斬りかかろうとするヨゾラに対してガルグもバットで受け止める。
「私の過去のことで……なんと呼ばれたっていいさ、だが……未来を見据えていない奴なんかに言われたくはない!」
刀を振るい、競り合いが始まる。
ガルグもバットでヨゾラの素早い刀捌きをバットで捌いていく。
「だから何だと言うんだヨゾラ……今を生きて生き延びる、それの何が悪い!?」
「確かに私は今も人を斬っているし過去にも大勢のソールワン族を葬ってきた……だがそれは一時のエクスタシーにすぎないさ。国の安寧のために斬ってきたし……今は民衆のために斬っている。……この世から悪を無くし……民のための世の中にするために!!」
刀を思い切り押し、バットを弾き返したヨゾラ。
刀を胴抜きで振るが、ガルグも間一髪で躱す。
「……民のための世の中にする……か。結構なことだ、ヨゾラ。……だがな、いいことを教えてやろうヨゾラ。」
ガルグはこう続ける。
「悪の反対は正義じゃねえ。ましてや正義の反対が悪でもねえ。正義の対義語ってのは……また違う正義なのさ。人間何かしら、何かのために戦っているのさ。人によっては悪が善にもなるもんなんだよ。」
ガルグの言葉は真理を突いている。
ソールワン大戦の時も、ソールワン族に大義名分があったのは今なら分かるし、ヨゾラも帝国の異民族からの侵略を防ぐという大義名分の元で戦っていたのだ、ヨゾラはそれも理解は出来ているが、ガルグのやり方には納得は行ってはいない。
何せ、ガルグは自分のためにしか戦っていないのだから。
「……お前の言う通り、勝者だけが『正義』を語れる。だがそれは……また更なる悲劇を生むだけだ。私は……いや、私たち『ゲバラ』は……そんな世界を無くしたいだけだ。」
ヨゾラは本心を語るが、ガルグは含み笑いをする。
「ハハハ……面白い奴だな……だがそんなもんは理想郷にすぎねえよ!」
といい、ガルグは思い切りバットを横振りに振ってきた。
ヨゾラは低い姿勢になって避け、地面を思い切り蹴った。
そして袈裟斬りでガルグを斬ったあと、ヨゾラは左に一回転し、ガルグの胴体を引き裂いたのだった。
斬られたガルグの胴体は地面に転げ落ちたのであった。
「………何故私たちがお前を襲うと知っていた?」
ヨゾラはまだ息のあるガルグを尋問していた。
今回、何故襲撃を予測できていたのかを問いただすために。
「ハッ……そんなもん、簡単だ。……ジャレットの部下からの伝言でそれを知っただけさ。……俺は負けたんだ。お前の『正義』にな。さあ……煮るなり焼くなり……好きにしとけよ。」
何故か最期だけは潔いジャレットだったのだが、ヨゾラは呆れ返っていた。
大きなため息を漏らしてこう、ガルグに告げた。
「……たとえ私の行動が世界への『汚点』だったとしても……私は私の『正義』を貫くだけさ。……私はお前の屍を超えていく。……何故なら『屍のヨゾラ』だからな……。」
こう言ったヨゾラに対し、ガルグは薄笑いを浮かべる。
ヨゾラは刀を垂直に振り下ろし、ガルグの首を刎ねたのであった。
窓から脱出し、周囲を包囲していた残党を一掃した後、ヨゾラはデバイスを手に取り、キリアに連絡を取った。
「キリア? 無事か? 今終わったぞ。」
『ハハッ……すごいねヨゾラは……今港で船を奪い取った! 密輸船にいるからそこで待ってる!』
「分かった。場所を送ってくれ。すぐに行く。」
『了解。じゃ、また港で。』
ヨゾラはキリアから送られたマップの位置を確認し、足早に夜の街を駆け抜けた。
キリアと合流したヨゾラは、船のエンジンをフル稼働させてアジトへと戻って行ったのだった。
しかし、最悪の事態がこの後「ゲバラ」に襲い掛かろうことなど、彼女らはまだ知る由もなかったのだった。
次回から新章となります。
お楽しみください。